八濱漂泊傳

ダラシナイデラシネ記

ネクタイ工場

2009-04-08 23:12:03 | イケン!

 

本日は!

イトシマ号 で ハカタイキ

 

博多駅では本日も、

ネクタイ を キリリ と締めた人々が

 

てんでバラバラの方向に歩いていた。

 

だけども、なぜか

みんな、同じ方向に歩いているように見える。

 

 

とても不思議な光景だ。

 

 

ふと、

大杉栄 の 『鎖工場』 を思い出した。

 

 

 

(参考テキスト)

 

  『鎖工場』

 夜なかに、ふと目をあけてみると、

 俺は妙なところにいた。

 目のとどく限り、無数の人間が

 うじゃうじゃいて、みんなてんでに何か

 仕事をしている。鎖を造っているのだ。

 

 俺のすぐ傍にいる奴が、

 かなり長く延びた鎖を、自分のからだに

 ひとまき巻きつけて、

 その端を隣りの奴に渡した。

 

 隣りの奴は、またこれを長く延ばして、

 自分のからだにひとまき巻きつけて、

 その端をさらに向うの隣りの奴に渡した。

 

 その間に初めの奴は横の奴から鎖を受取って、

 前と同じようにそれを延ばして、

 自分のからだに巻きつけて、

 またその反対の横の方の奴に

 その端を渡している。

 

 みんなして、こんなふうに、同じことを

 繰返し繰返して、しかも、それが

 目まぐるしいほどの早さで行われている。

 

 もうみんな、十重にも二十重にも、

 からだ中を鎖に巻きつけていて、

 はた目からは身動きもできぬように

 思われるのだが、鎖を造ることと

 それをからだに巻きつけることだけには、

 手足も自由に動くようだ。

 

 せっせとやっている。

 みんなの顔には何の苦もなさそうだ。

 むしろ喜んでやっているようにも見える。

 

 しかし、そうばかりでもないようだ。

 俺のいるところから十人ばかり向うの奴が、

 何か大きな声を出して、その鎖の端を

 ほおり投げた。

 

 するとその傍に、やっぱりからだ中

 鎖を巻きつけて立っている奴が、

 ずかずかとそいつのところへ行って、

 持っていた太い棍棒で、三つ四つ殴りつけた。

 

 近くにいたみんなは、ときの声をあげて、

 喜び叫んだ。前の奴は泣きながらまた

 鎖の端を拾い取って、小さな輪を

 造っては嵌め、造っては嵌めしている。

 

 そしていつの間にか、そいつの涙も

 乾いてしまった。

 ・・・・・

                     大杉栄

 

 

 

ふと、

 

『ネクタイ工場』 という

寓話を書いてみようかと思った。

 

 

 


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