八濱漂泊傳

ダラシナイデラシネ記

憎むな、殺すな、赦しましょう

2014-01-21 00:40:25 | イケン!

 

高度成長初期に、

日本社会の憂いを表現した人が、

小津安二郎 ならば、

 

高度成長中期から後期に、

日本社会の憂いを表現した人は、

川内康範 だろう。

 

 Photo 

 

川内康範 は、

『おふくろさん』 『恍惚のブルース』 等の

作詞家としては有名だが、

 

『月光仮面』 の原作者であることを

知る人は少ない。

 

月光仮面 の不思議なところは、

善人を助け悪を懲らしめるのだが、

悪を殺したりせず、諭して赦(ゆる)す点にある。

 

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つまり、

悪を殺さず、改心させるという

菩薩の精神 に貫かれているのだ。

 

月光仮面 のモチーフは、

薬師如来の右脇侍を務める

月光菩薩(がっこうぼさつ) にある。

 

月光菩薩 は月光遍照菩薩とも呼ばれ、

月の光のようなやさしい慈しみの心で

煩悩を消すといわれる。

 

他者の痛みを顧みず、

誰もが自分だけの金儲けに走り始めた

殺伐としてゆく高度成長中期に、

 

子供たちに向かって放った

川内康範 のメッセージは・・・・

 

月光仮面 の言うところの

憎むな、殺すな、赦しましょう なのである。

 

そもそも、

川内康範 は日蓮宗の住職の子である。

彼の精神に宿る仏教哲学は、主題歌にも現れている。

 

  (2番)

  どこかで不幸に 泣く人あれば

  かならずともに やって来て

  真心こもる 愛の歌

  しっかりしろよと なぐさめる

  誰でも好きに なれる人

  夢を抱いた 月の人

  月光仮面は 誰でしよう

  月光仮面は 誰でしよう

  ・・・・

 

そんな 川内康範 も、

高度成長後期になれば、

憂いの表現が政治的に過激になってゆく。

 

代表作品は、

知る人ぞ知る 『愛の戦士レインボーマン』

 

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♪インドの山奥で 修行して

  ダイバ・ダッタの魂を宿した・・・・

ヤマトタケシこと レインボーマン が戦う相手は、

 

日本国家を滅ぼし、日本人皆殺しを企む

秘密結社 死ね死ね団!

 

この作品は、

レインボーマン の活躍よりも、

死ね死ね団 の悪の手口が面白い。

 

日本殲滅を図るために、

気が狂って最後は自殺してしまう

恐ろしいキャッツアイという薬を使ったりとか。(キャッツアイ作戦)

 

偽札を大量に印刷し、

御多福会という新興宗教団体を通して

日本中にばらまき、狂乱物価を招くとか。(M作戦)

 

まあとにかく、

高度成長末期の毒々しさ満載で

日本人の煩悩を超えた我欲が表現されていて胸が痛い。

 

もはや日本社会は、

仏教哲学では救えないと、

川内康範 はサジを投げたのだろうか?

 

死ね死ね団 の組織は、

リーダーのミスターKと

美人の女性幹部たちで構成されるのだが・・・・

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なぜか 川内康範 と

銀座の美人ホステスたちがモチーフのように思えるのだ。

 

川内康範 は、

レインボーマン よりも 死ね死ね団 を通して、

逆説的にメッセージを投げかけたのだろうか?

 

極めつけは、キャッツアイズが歌う

『死ね死ね団のテーマ』 という名曲である。

 

 

   (川内康範 作詞 北原じゅん作曲)

  死ね 死ね

  死ね死ね死ね死ね死んじまえ

  黄色いブタめをやっつけろ

  金で心を汚してしまえ

  死ね(アー) 死ね(ウー) 死ね死ね

  日本人は邪魔っけだ

  黄色い日本ぶっつぶせ

  死ね死ね死ね 死ね死ね死ね

  世界の地図から消しちまえ 死ね

  死ね死ね死ね 死ね死ね死ね

  ・・・・

  死ね 死ね

  死ね死ね死ね死ね死んじまえ

  黄色いサルめをやっつけろ

  夢も希望も奪ってしまえ

  死ね(アー) 死ね(ウー) 死ね死ね

  地球の外へ放り出せ

  黄色い日本ぶっつぶせ

  死ね死ね死ね 死ね死ね死ね

  世界の地図から消しちまえ 死ね

  死ね死ね死ね 死ね死ね死ね

  死ね死ね死ね 死ね死ね死ね

 

 

話は変わるが、

 

戦前の昭和8年、

死のう団事件 という騒動があった。

 

既成宗教の退廃を批判し、

国家権力へなびく日蓮宗から飛び出した

日蓮会殉教衆青年党(死のう団)が起こした騒動である。

 

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日蓮を原理的に純化しようとする

彼らの思想はしだいに先鋭化し、

 

不惜身命(身命を惜しまず)の理念から

死ぬこと自体を目的にした行動へと変質してゆく。

 

皆で 「死のう、死のう、死のう」 と

繰り返し叫び、太鼓を打ち鳴らし、

街を練り歩いたという。

 

川内康範 が、

13歳の時の事件である。

 

死のう団 と 死ね死ね団 ・・・・

 

ついつい、

川内康範 の背景にある日蓮系仏教哲学と

日本社会を憂う気持ちを深読みしたくなる。

 

 

  


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