昭和の名船 勝丸 に乗って、
福岡糸島半島から、
岡山児島半島に帰省した折、
山口宇部沖で、
日方(ひかた)の風に吹かれて、
海がひどく荒れた。
何度も、舳先から大波に突っ込み、
何度も、頭から潮をかぶり、
どうしようもない恐怖に
身体中が凍りついていた時、
なんの拍子か、
口をついて出てきた歌が 下津井節 である。
大声で 下津井節 を歌い続けていたら
不思議と不安が消えて気持ちが楽になり、
こんなにありがたい歌は、他にないと思った。
下津井港はョ~ 入りよて出よてョ~
まともまきよて まぎりよてョ~
トコハイ トノエ~ ナノエ~ ソ~レ ソレ
下津井港にョ~ いかりを入れリゃョ~
街のあんどの 灯が招くョ~
トコハイ トノエ~ ナノエ~ ソ~レ ソレ
下津井女郎衆はョ~ いかりか網かョ~
今朝も出船を 二艘止めたョ~
トコハイ トノエ~ ナノエ~ ソ~レ ソレ
船が着く着くョ~ 下津井港ョ~
三十五丁艪の 御座船がョ~
トコハイ トノエ~ ナノエ~ ソーレ ソレ
白石瀬戸からョ~ お船がみえる ョ~
あれは肥後様 九曜星ョ~
トコハイ トノエ~ ナノエ~ ソ~レ ソレ
まともまき とは、
船が、追っての風で走ること。
まぎり とは、
船が、向かい風にジグザグに走ること。
三十五丁艪の御座船 とは、
艪が三十五本も付いた、参勤交代の殿様船。
肥後様 九曜星 とは、
肥後熊本、細川家の家紋のこと。
トコハイ は遊郭での床這い。
トノエ は殿、つまり遊郭の客。
ナノエ は女、つまり遊郭の女郎。
海で恐い目にあったら、
下津井節 をオススメします。
<勝丸綺譚>
http://blog.goo.ne.jp/sholly/d/20110512