昔、働いていた
大阪中央卸売市場 の話をひとつ。
毎年、年末になると
大阪中央卸売市場 に泥棒がやってくる。
市場内の高級魚介類を狙って
泥棒が押し寄せるのだ。
毎年、泥棒は捕まると縄でグルグル巻きにされて、
マグロの競り場の一等高い梁にぶら下げられる。
警察が来るまで、
泥棒はブラーン、ブラーンと
情けない姿でぶら下げられ、罵声を浴びせられる。
年末の 大阪中央卸売市場 の風物詩だった。
なぜ、泥棒をグルグル巻きにして
マグロの競り場の一等高い梁にぶら下げるのか?
これには、深い理由がある。
その理由とは・・・・
大阪中央卸売市場 で働く労働者から
泥棒の命を守るためである。
とある昔、
捕まった泥棒は、皆からボッコボコにされた。
とにかく、
その場を通りがかった労働者の皆が
ボッコボコにするわけだから、
泥棒は最悪の悲惨な結果となった。
誰の一撃で死に至ったか?
なんて調べようがないくらい
大勢の労働者にボッコボコにされた。
元プロボクサーをしていた労働者・・・・
元お相撲さんをしていた労働者・・・・
元ヤクザをしていた労働者・・・・
元芸人をしていた労働者・・・・
大阪中央卸売市場 には、
夢と挫折が入り混じった独特の殺気があり、
年末に、そのボルテージは最大になる。
だから、
泥棒が捕まると・・・・
大間の漁師が、
釣り上げたマグロを手際よく船べりに縛るように・・・・
縄でグルグル巻きにして
屈強な労働者の手の届かない
梁にぶら下げることになったのである。
やさしい男たちの知恵である。
ブラーン、ブラーン、ブラーン・・・・
今からウン十年前、
暴力とやさしさに包まれて
大阪中央卸売市場 は確かに存在していた。