獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その9

2024-08-05 01:55:22 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。
一部、引用します。


■第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
 ■第1部「福祉との出合い」
 □第2部「司法と福祉のはざまで」
 □第3部「あるろうあ者の裁判」
 □第4部「塀の向こう側」
 □第5部「見放された人」
 □第6部「更生への道」
 □第7部「課題」
□第2章 変わる
□おわりに 

 


第1部「福祉との出合い」

=2011年7月2日~8月2日掲載=

(つづきです)

9)愛
  もう罪は犯さない

2年前の初秋。諫早市の食品工場の更衣室。中村雅人(33)=仮名=は同僚のロッカーをあさっていた。女物のかばんを開けた瞬間、物音がした。振り向くと同僚の女性が驚いた様子で立っていた。
工場長の前に突き出された。怖くて言葉が出ず、足が震えた。
「もうこんでよか」。
解雇だった。警察に通報されなかったのは、不幸中の幸いだった。
雅人の窃盗癖はこの日に始まったことではなかった。その何年も前から同僚の金を盗んでは、ゲームセンターやパチンコに通った。解雇後も盗みをやめることはできず、やがて警察に逮捕されるようになった。
「警察に捕まるんじゃないかとは思ってたけど、やってしまっていた」。
雅人は今、多くを語らない。しかし、彼の半生にもまた、多くの累犯障害者たちと同じように孤独と差別の影が差している。
福岡県出身。生まれつき軽度の知的障害がある。人との会話にさほど不都合はないが、難しい読み書きは苦手。小学校高学年で親元を離れ、長崎市の知的障害児施設に入所した。そこから、近くの中学校の特殊学級に通った。
19歳で諫早市のパン工場に就職した。パン生地に卵を塗る作業を任せられた。一生懸命しているつもりだったが
「障害があるけんこがんともできんとやろ」
「おまえはすんな」と、同僚から毎日のように罵倒された。
悔しかったが、弱音を吐ける友達はいない。心配を掛ける気がして、家族にも打ち明けられなかった。次第に追い詰められ、どこにも逃げ場がない、と思った。荒れるようになったのはそんな時期だ。出口のない鬱屈とした人生が続いた。

4年前。突然、1人の女性から連絡があった。
「久しぶり」。 
受話器の向こうから懐かしい声がした。中学時代、同じ障害児施設にいた二つ先輩の岸本澄華(41)=仮名=だった。
「偶然会ってからだから1年ぶりだ」
「昔は交換日記もしたね。ふふ」―。
うれしくて、1時間も話し込んだ。旧知の学友、かつ障害者同士という気安さもあった。ふさぎ込んでいた気持ちが、軽くなった。2人の交際が始まるまで、時間はかからなかった。
「澄華がいれば、罪など犯さない」。
雅人はそう思った。愛する人を見つけた自分は、過去と決別できると思った。

(つづく)


解説
知的・精神障害があるのに、福祉の支援を受けられず、結果的に犯罪を繰り返す人たち……
福祉の網からこぼれ落ちたこうした「障害者」たちの多くは、社会で孤立し、生活に困窮した挙げ句、罪を重ねている。

福祉の網からこぼれ落ちたこうした「障害者」を支えるのは、法律でしょうか。
制度や組織でしょうか。
ボランティア活動でしょうか。
地域の人々でしょうか。
宗教でしょうか。
友岡さんは、どういうアプローチができると考えていたのでしょう。

獅子風蓮



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