松琴亭のデザインを見て、
日本人は古家としか思わないかもしれません。
ところが、20世紀の現代建築の先駆としての
アイディアが随所にあります。
「松琴亭5」の写真を見てください。
1、モジュール(基準寸法)に基づいて計画されている。
この概念はコルビジェが提唱したということになってますが、
日本には尺(フィートとほぼ同じ)の基準があって、
畳は3尺×6尺、建具も基本同じ、廊下幅や仕上げまで
尺、寸、分で割り切れます。
これがあると、材料の生産、加工、現場組み立てまで
合理的に無駄なくすすめることが出来ます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB
もちろん、尺は人間のサイズ、行動を基にした寸法
ですから、床の間、ふすまの石畳模様も
違和感なく受け入れられるのです。
2、スライディングウォールの利用
なんのことはない、襖のことです。
現代のホテルのホールは、宴会の規模に応じて自由に間仕切ることができます。
ところが、日本では何百年も前から実用化されていたのです。
よく、時代劇で襖をあけると、次の間にまた襖があって、さらに次の間には・・・
という場面がありますが、人数に合わせて空間を調整できる仕掛けです。
障子は光を透過するスライディングウォール、バリエーションも豊富です。
3、多目的空間である。
和室は、寝室にも食堂にも、応接室にもなります。
ポイントは なにもない空間なのに、布団やお膳・座布団などの道具が出てくると
その目的の使用が出来るということです。
壁みたいな襖をあけると押入れで、様々な道具が入っている。
外人は、忍者屋敷と思ってびっくりするそうです。
日本人建築家が、現代建築の旗手として世界で活躍できるのは、
先人たちの工夫と、努力の積み重ねの素地があったのですね。