Naked Heart

その時々の関心事をざっくばらんに語ります

在外邦人

2005年12月01日 23時54分54秒 | 時事・社会
旧ソ連軍の侵攻によって追い立てられ、日本の敗戦で帰国することに
なりましたが、かつての「満蒙開拓団」もまた、実質「移民」であった、
と言えると思います。
日本が軍事占領して傀儡政権を作った満州国だから、「日系満州人」
にならなくても開拓できただけの話です。
そう考えると、そのような「在外邦人」の生命・財産の保護を理由に
日本軍が中国に駐留し続け、戦争を起こしたことは、明らかに「自衛」
の範疇を超えていたと言えるでしょう。
また、自国の領内にいる者は外国人であれ保護するのは、国家の務め
です。(日本はその義務をきちんと果たしているかどうか、怪しいところ
ですが。)「邦人保護」目的の軍事行動は、相手国の政治の否定・主権
侵害にほかなりません。

イラクで日本人が人質になった時には、「自己責任」を大義名分とした
凄まじいバッシングが起こりましたが、もしあれが自衛隊が派遣される
前だったら、反応はまるで違っていただろうと思います。
今の自衛隊に人質救出能力があるとは思えませんが、派遣するにして
も止めるにしても、「人質の命を守るために」が合言葉になっていたこと
でしょう。しかし派遣してしまえば、「邦人保護」なんてどこかへ行って
しまうのです。「国益」のためには、個人の権利は無視されます。
それは非常時に限ったことではありません。「公共の福祉」の名目で
国民の権利が奪われた事例は、枚挙に暇がありません。
その際、もっともらしい理由付けがなされますが、よくよく見れば裏には
大きな矛盾をはらんでいたりします。
例えばイラクの人質事件では、「テロに屈しない」以前に民間人、特に
ジャーナリストの拘束は、国際法に反することを主張して国際世論を
味方につけるべきでした。「大義」無き戦争に協力した後ろめたさから
言えなかったのであれば、まだこの国も救いようがありますが。