京都社会保障推進協議会ブログ

京都社保協のニュースや取り組み案内、タイムリーな情報・資料などを掲載していきます。

特定健診そもそも論(最終回)

2008年09月08日 05時53分50秒 | 資料&情報
 前回の記事にも登場しています(財)住友病院院長、日本肥満学会理事長・松澤佑次氏(「診断基準」作成の責任者)をめぐる問題を紹介します。


 松澤氏の言い分を紹介します。腹囲男85cm女90cmについて以下のように説明しています。

[松澤]そもそも、診断基準は腹囲に重点を置いたわけでなく、内臓脂肪を基盤にしているのです。こうした決め方をしている国は日本だけです。
 日本では20年以上前から内臓脂肪をCTスキャンで計ったデータがあって、それをもとに面積100平方センチメートルを超えると動脈硬化が起こりやすいという研究がされてきました。ですから、男女とも100平方センチメートルを基準に、それに見合う腹囲を決めました。その際、女性は男性より皮下脂肪が多いため、その分、腹囲が大きくなり、男女の「ねじれ」が生じたことが奇異に受け取られているのです。(ホームページ「メタボリックシンドローム・Pro」飽食社会取材班より ここから


 
 松澤氏については、国会厚生労働委員会で企業との関係が問題になったことがあります。

(2006年5月10日 衆議院厚生労働委員会議事録抜粋)
○郡委員
 ですから、そのエビデンスが全く根拠のないものだということはあらかじめ申し上げました。そして、今御説明にありましたように、厚生労働省からいただいている資料、皆さんにもお配りしておりますけれども、「一に運動 二に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ」というキャッチフレーズでございます。これは、きのうの新聞の各紙にも、こういうキャッチフレーズで厚労省は皆さんに注意してくれと呼びかけているのだというふうに報じられました。大変私はびっくりいたしました。大変びっくりいたしました。
 これも一部しか現物がありませんものですから、皆様のところにコピーをさせていただきました。「メタボリックシンドロームに注意しましょう」というものでございます。どこが出しているかといいますと、グラクソ・スミスクライン株式会社、大手の製薬会社であります。
 読ませていただきます。「先生に「尿酸値が少し高めですね」と言われたあなた。 「まだ薬を飲むほどではない」と安心していませんか?」そして、中をめくってみますと、厚労省のキャッチフレーズと全く同じでございます。「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」。そして、その最後の薬の名前までここにちゃんと載っております。びっくりいたしました。尿酸生成抑制薬というんですか、ザイロリック。それから、酸性尿の改善には、尿アルカリ化薬ウラリットなどを服用します。そして御丁寧にここにおなか回りの数字をちゃんとはかって、何月何日、チェックしましょうということなんですけれども、それだけではございません。(発言する者あり)はい、申し上げます。
 実は、このグラクソ・スミスクライン株式会社のお薬のパンフレットですよ、これの監修に、大阪大学名誉教授、財団法人住友病院院長松澤佑次氏の名前がトップにございます。この松澤佑次先生、大変権威のある先生というふうに伺っております。きのうの新聞にもメタボリックシンドロームについてさまざまなコメントをお載せでいらっしゃいました。テレビの報道でも取材に答えておられました。大変驚きませんでしょうか。そういう方が、グラクソ・スミスクラインが主催するセミナーでも御講演をなさっております。
 こうした専門家の方々が、こういった製薬会社からパンフレットの監修の謝礼ですとか、それからセミナーでの講演料、幾らもらっているのかは存じ上げませんけれども、検討会で欧米の共同声明について全く議論しようとしないというのは、どういうことですか。この松澤先生もメンバーの中に入っておられるはずですよ。これにお答えいただきたいと思います。
○中島政府参考人
 まず、松澤先生初め専門の先生方につきましては、それぞれの専門分野をお持ちで、現実に診療をやっておられるというお立場から、いろいろな機会で御説明をされるということで、これは専門的な立場からいたし方のないことであるというふうに考えております。
 それで……(発言する者あり)そうではありますが、実際に、国民、患者さんの中には……(郡委員「そこまではひもつきだということですね」と呼ぶ)いえいえ、私が申し上げたかったのは、運動それから食生活といって、最後に薬が出てくるのがいかぬというふうに言われたので、そういうことではなくて、やはり薬でなければ治せない患者さんもおられる。そういう方に対する治療がおくれると、これはこれでまた大きな問題であるということで、そういうものが入っているということでありますし、また、その松澤先生の監修されたパンフレットにもそのような趣旨で書かれているのかなというふうに推測をしたということでございます。
 それからまた、欧米のペーパーが今回の中で議論されなかった云々につきましては、これは、中間まとめがされた後に出てきたペーパーということもございますので、その前段階においては議論がされていないということだというふうに理解しております。(郡委員「やり直さなくちゃいけません」と呼ぶ)やり直す必要があるかどうかについては、先生方と意見交換をしておりますが、今のところまだ特にその必要があるという御意見はいただいておりません。


(2008年4月4日 衆議院厚生労働委員会議事録抜粋)
○阿部(知)委員
 三月三十日の読売新聞によると、高血圧やメタボなど主要四十疾患の診療指針をつくった国立大学医学部の医師の九割が製薬会社から寄附金を受領していたという事実が明らかになりました。これは、読売新聞社が各大学に情報公開を用いて、個別の医師にどのくらい寄附金が来ているかを調べたものです。
 なぜこういうことを調べるに至ったかというと、実は、〇五年の四月に、メタボリックシンドローム診断基準検討会、学会の中に置かれたものですが、これがつくられて、その中のお一人である松澤先生、このときは阪大の先生ですが、この先生には、二〇〇〇年に九千五百七十九万円、二〇〇一年一億四千六百四十七万円、二〇〇二年一億四千五百六十一万円、二〇〇三年一億六千八百二万円の、関連の薬剤会社あるいは機器メーカーからの寄附があったということが情報公開からわかったわけです。
 私は、大臣も大学におられたからわかると思います。寄附はあっていいと思います。ただ、それが利益相反、すなわち、自分が検討会で基準をつくっている、おなかの腹回りが幾らだ、皮下脂肪が幾らだを決めなきゃいけない基準づくりに参加しながら、この松澤さんだけではないですが、個人を取り上げて恐縮ですが、この方が三共製薬から年次にわたって多額の寄附金を受けておられました。
 大臣のお手元の、ページでいうと四ページでございます。これも全部情報公開法を用いて引っ張り出したものであります。ちなみに、松澤先生の三共というのは、メバロチンという高脂血症のお薬です。山之内製薬というのも、同じようにリピトールという、これも高脂血症のお薬の販売メーカーです。N2システムというのは、皮下脂肪、特に、皮下ではなくて内臓脂肪をはかる機械のメーカーです。どんなものかというと、その次のページにちょっと例示してございます。
 まず、大臣、私は前の柳澤大臣にはお伺いしました、利益相反は問題だ。特に、これからいろいろな研究、指針づくりなどには、そうした寄附金を受けているか受けていないか明確にしてくれなければ、国民は最大限これは怪しいと思います。なぜその教授に億の単位のお金が行って指針づくりに関与しているのか。
 大臣には、このことをどう思われるかと、もう一つ、時間の関係でこれも、両方で恐縮ですが、国立大学病院は、現状においては寄附の総額しか情報公開されておりません。どこから幾ら寄附があったかをホームページにアップできるように、というのは、国民が知る必要があります。情報公開をやっても、ここには二年間かかったんです。これでは、事は進んで、指針はできて、国じゅうメタボ健診で、しかし、変だ、おかしいと思ったとき、国民からとめられません。
 情報公開は、まず、今こんなツール、インターネットを初めとしてIT技術は進んでおります。文科省と相談して、国立大学病院の寄附をきちんとホームページ上、どこから幾らであったかを載せるように検討していただきたい。いかがでしょう。
○舛添国務大臣
 今委員が御指摘の問題も、基本は国民から利益相反について疑義を抱かれないようにする。
 ただ、ここから先は、今それで苦闘しているんですけれども、では、例えばある薬であるとかある問題について本当に知っている方がどこにいるのかというときの専門性と利益相反の問題、これも課題として今考えております。
 それから、今おっしゃった、どこまでの情報公開をするか、これはちょっと状況を少し精査させていただいてその上で検討させていただきたい、ちょっと状況を把握しておりませんので。それで、いろいろな改革を、今ホームページの改革もやっております。そういう大きな改革の中の一環として検討させていただきたいと思います。



 なんともうさんくさい話です。


(おわり)





特定健診そもそも論(3)

2008年09月05日 06時39分25秒 | 資料&情報
 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」の評価です。
 「診断基準(ここから)」については多くの疑問点が出されています、

①「診断基準」6ページの図1 内臓脂肪面積とリスクファクター保有数の関係をみると、サンプル数が男性479女性181であり極めて少ない数です。同様に、図2 内臓脂肪面積とウエスト径の関係も男性559女性196となっています。
②前提として、腹腔内脂肪面積100平方㎝を男女共通したカットオフ値としていますが、男女共通が妥当な基準なのか疑問が出されています。
③ウエスト径男性85cm女性90cmとした根拠は、男女の皮下脂肪の違いとしています。

 「診断基準」に対する疑問は、上記の直接的な点のみならず、研究グループからも様々な意見が出されました。


日本のメタボリックシンドローム診断基準の問題点(Wikipediaより転載)

2002年、日本肥満学会(JASSO)はBMI 25 kg/m2以上、内臓脂肪面積 100 cm2以上 (男女無差別)、腹囲 男性 85 cm、女性 80cm以上を「肥満病」と定義し、2005年、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会はJASSOの提案した「内臓脂肪症候群」診断基準を日本のメタボリック症候群診断基準とした。この診断基準の問題点を列記すれば以下のようになる。

①「内臓脂肪症候群」は科学的に確立された概念ではない。
1997年、松澤は、限られたデータを基に、インシュリン抵抗性は皮下脂肪肥満よりも内臓脂肪肥満で重症であり、皮下脂肪は内臓脂肪の病的作用から生体を守る作用があるだろうと述べた。しかし、2006年、Reavenはそれまでに報告された19の研究をまとめて、インシュリン感受性insulin-mediated glucose uptake (IMGU)と内臓脂肪面積との関係は、IMGUと腹部皮下脂肪面積との関係とほぼ同等であることを明らかにした。2007年、Pouらは内臓脂肪体積および腹部皮下脂肪体積と各種炎症マーカーおよび酸化ストレスマーカーとの関係を詳細に検討して、内臓脂肪体積と炎症マーカーとの関係は腹部皮下脂肪体積と炎症マーカーとの関係とほぼ同等であることを明らかにした。内臓脂肪はエネルギー過剰環境に対して皮下脂肪よりも強い炎症反応を示すが、これは内臓脂肪量とは平行しない。Wellenらは内臓脂肪だけに炎症を生じるメタボリック症候群のマウスモデルを作成したが、このモデルでは内臓脂肪の増加は見られず、皮下脂肪と肝脂肪が増加していた。

②JASSOが腹囲基準値を決めた方法は論理的に矛盾している。
JASSOは、心血管危険因子と内臓脂肪面積との関係において性差が大きいことを無視して、男女無差別に内臓脂肪面積の基準値を決め、この男女無差別な値から男女別の腹囲基準値を決めたのは論理的一貫性を欠く誤った解析である。日本国内の多くのグループがJASSOと異なる腹囲基準値を提唱しており、JASSOとは逆に、すべて男性の方が女性より大きな値となっている。

③腹囲85cmを基準に診断された男性のメタボリックシンドロームは心血管疾患発症の有意なリスクにならない。
2006年、清原らは久山町研究で、男性で腹囲85cmを基準に診断された腹部肥満とメタボリックシンドロームはどちらも心血管疾患発症の有意なリスクにならなかったと報告した。しかし、腹囲90cmを基準に診断した場合はどちらも心血管疾患発症の有意なリスクになった。

④腹囲90cmを基準に診断された女性のメタボリックシンドロームは多くの高リスクの女性を見逃すことになる。
女性では腹囲基準値を90cmとしても80cmとしてもメタボリックシンドロームは心血管疾患発症の有意なリスクになったが、心血管疾患の発症は腹囲80-90cmの女性に集中しており、基準値を90cmに設定すると多くの高リスクの女性を見逃すことが、久山町研究で明らかになった。

⑤肥満をメタボリック症候群の必須条件とすると心血管疾患リスクの高い多くの人を無視することになる。
KadotaらはNIPPON DATA 90で、非肥満者で代謝性危険因子の集積した人がかなり多く、このグループの心血管疾患発症率が高いので、肥満をメタボリック症候群の必須条件とするのは危険であると報告した。また、Okamuraらは国保10年コホルト研究で、BMI 25未満で心血管危険因子を有する人の費やす医療費は総医療費の16.5%だったのに対し、BMI 25以上で心血管危険因子を有する人の費やす医療費は総医療費の7.1%であり、BMI 25以上で2つ以上の心血管危険因子を有する人の費やす医療費は総医療費の2.9%だったと報告した。したがって、肥満をメタボリック症候群の必須条件とすることは、予防医学的にも医療経済学的にも不適切であると考えられる。

⑥メタボリック症候群の診断は困難である。
日本人のための暫定的な5つの診断基準について、その一致度を検討した研究では、2つの異なる診断基準で一致してメタボリック症候群と診断される割合は、男性で19-60%(均41%)女性で31-89%(均51%)あり、すべての診断基準で一致する割合は、男性で15%、女性で21%だったと報告されている。したがって、メタボリック症候群の診断は暫定的にも困難であり、現時点では、ADAとEASDの共同声明に従うべきであろう。

⑦日本の診断基準はメタボリック症候群の国際比較研究の障害となる。
日本の診断基準はIDF診断基準に協調して作成されたはずであるが、実際には診断項目の数も、腹囲基準値も、血糖基準値も、HDLコレステロール基準値も異なり、メタボリック症候群の国際比較を困難にした。我々の検討では、IDF診断基準と日本の診断基準の一致度は男性で30%、女性で40%だった。

⑧内臓脂肪面積の臨床的有用性が確立していないにもかかわらず、メタボリック症候群診断基準検討委員会が、CT等による内臓脂肪面積の測定を研究目的以外で奨励したことは倫理的に問題と考えられる。


 上記にも記述されていますが、九州大学久山町研究グループの考え方を紹介します。(久山町研究の概略はここから


 88年に健診を受けた健康な町民2452人を14年間追跡したところ、日本の学会が定めた同症候群の腹囲の基準(男性85センチ以上、女性90センチ以上)では、基準値以上の人も、そうでない人も、心筋梗塞などの発症率に、はっきりした違いが見られなかった。
 一方、国際糖尿病連合(IDF)が推奨している日本人の基準(男性90センチ以上、女性80センチ以上)を当てはめると、基準を超えた場合、心筋梗塞などになる危険度は、男性で1・8倍、女性で1・5倍高かった。
 清原さんは「日本の基準だと、生活習慣病になる危険が高いかどうかを判定できないことになる」と指摘する。これでは予防に役立てられない。(08年7月11日付読売新聞)

 
 全文はここから


(つづく)



 
 

10月から政管健保が「協会けんぽ」―都道府県単位で保険料設定に

2008年09月04日 14時58分24秒 | 資料&情報
 西濃運輸のグループ企業が加入する健康保険組合の解散(報道記事)が大きな話題になっていますが、政管健保自体が、この10月から大きく変化します。

 京都府職労情報ボックスより 



 
 全国保険医団体連合会が、9月3日付で「新制度「協会けんぽ」のもたらすもの…政管健保廃止で都道府県支部に移行」との文書を公表していますので紹介します。




保団連ホームページより(ここから
新制度「協会けんぽ」のもたらすもの…政管健保廃止で都道府県支部に移行

 2006年に成立した「医療制度改革関連法」によって、2008年10月より政府管掌健康保険(政管健保)が廃止され、新たな保険者である全国健康保険協会が運営する健康保険(略称:協会けんぽ)が発足する。一方で、今年度に入り、収支の悪化を理由に健保組合を解散して政管健保に移行するケースが発生している。都道府県単位に分けて財政運営を行う全国健康保険協会の問題点を探った。

全国一本の制度から都道府県単位に分割

 政管健保は約3600万人が加入し、国(社会保険庁)が保険者として運営しているが、今年10月1日以降は、国と切り離した保険者として「全国健康保険協会」が運営する。47都道府県に支部を設置し、支部単位の財政運営を行う。
保険料徴収や被保険者等についての情報提供については、新設の「ねんきん事業機構」が行う。
現在、社会保険庁が保有する全国の社会保険病院(53カ所)と厚生年金病院(10カ所)は、医療施設を譲渡・売却するための組織である年金・健康保険福祉施設整理機構(略称:PFO)に移管する方向で準備が進んでいる。
全国健康保険協会は、厚生労働大臣が任命した運営委員(事業主3人、被保険者3人、学識経験者3人の計9人)による運営委員会が、予算、事業計画、保険料(率)を決定する。事実上、保険者となる都道府県支部では、支部長が委嘱する評議員による評議会が置かれる。

厚労省試算でも 保険料格差は深刻

 全国健康保険協会の保険料は、現在の政管健保の保険料(保険料率8・2%)が適用されるが、協会成立後1年以内に、地域の医療費を反映した保険料が設定されることになっている。したがって、2009年10月から全国一律の保険料は廃止され、都道府県ごとの保険料となる予定だ。
都道府県支部は、単年度の収支が均衡するよう保険料を設定して財政運営を行う。保険料率の上下限は、健康保険組合と同様とし、3%~10%の範囲で設定する。
ただし、支部が決めた保険料について、厚生労働省が「収支の均衡を図る上で不適当」と認めた場合は、「協会けんぽ」に対して、支部の保険料を変更するよう求めることができる。さらに、保険料の変更の求めに応じないときは、厚生労働省の社会保障審議会の議決を経た上で、厚生労働大臣が職権で保険料を変更することも可能である。
都道府県ごとの保険料への移行に当たり、保険料が大幅に上昇する場合には、5年間に限り、激変緩和措置が講じられることになっているが、激変緩和措置が終了したときには、都道府県間の保険料の格差は著しいものとなることが予測される。事業所と従業員の数が多く、給与水準が高い地域と、そうでない地域の格差がいっそう深刻になるものとみられる。
厚生労働省が2003年度の政管健保の医療費実績で、都道府県ごとの保険料を機械的に試算したところ、最も低い長野県は保険料率が7・6%(つまり、長野県の医療費が全国で最も低い)で、最も高い北海道の8・7%とは、1・1ポイントの差が生じた。

都道府県別診療報酬が可能に―地域医療に大きな混乱

 厚生労働省は、都道府県ごとの保険料では、年齢構成が高い県は、医療費が高くなり、保険料も高くなることから、都道府県ごとに差異がある年齢構成、所得水準については、都道府県の間で財政調整を行うことにしている。
一方で、都道府県ごとに差異がある医療費については、地域間の差異をストレートに保険料に反映するとしている。保険者を事実上、都道府県ごとに細分化し、医療費を点検・削減するねらいである。
「平成20年度全国健康保険協会 事業計画及び予算(検討のための素材)」では、「医療費の適正化の推進」を課題に挙げ、「2011年4月からのレセプトの原則オンライン化を見据えた点検体制の検討を進める」としている。「被保険者1人当たり点検効果額(6カ月) ・内容点検:439円以上 ・外傷点検:218円以上」という削減目標を掲げている。
医療費を削減し、保険料の上昇を抑える切り札として考えられるのが、県内の医療機関に支払う診療報酬の削減である。例えば、その県だけは診療報酬単価を1点10円から何円に削減する、半年以上入院している後期高齢者の診療報酬を何割カットするなどの特例措置によって医療費(ひいては保険料)が削減できる仕組みになっている。
第1期の都道府県「医療費適正化計画」が終了した翌年の2013年度以降に、都道府県を実績評価の上、医療費の高い特定の都道府県だけにこうした特例措置を認めることが可能となる(高齢者の医療の確保に関する法律 第13条・同14条)。都道府県別の診療報酬が導入されるならば、同じ医療行為が都道府県によって費用が変わることになり、地域医療に大きな混乱をもたらすことになる。

医療費抑制政策からの転換を

 2006年7月11日、厚生労働省と社会保険庁が開催した「健保法等一部改正に伴う施行準備に関する説明会」で、社会保険庁の武田俊彦医療保険課長(当時)は、「全国健康保険協会は全国一つの法人だが、可能な限り、独立の保険者の集合体として運営することがこの制度改正の本旨である」(国保実務 第2517号)と、そのねらいを語っている。
これまで国が保険者として担ってきた全国一本の健康保険制度を、事実上、都道府県単位の健保制度に分割し、国の責務を投げ捨てるとともに、都道府県単位で医療費削減を行い、競い合わせようとするものである。いまでも崩壊が進む地域医療が、ますます荒廃することになる。
医療費抑制政策を根本から転換することが求められている。




<関連資料>
 社会保険庁のホームページ「協会けんぽに関するQ&A」でも、1年後には都道府県別保険料率への移行を説明しています。

 協会けんぽに関するQ&A

Q5  保険料はどうなるの?
A5  本年10月の協会設立時の健康保険の保険料率は、9月30日までの政府管掌健康保険の保険料率(8.2%)が適用されます。
 なお、協会設立後、1年以内に、都道府県毎に地域の医療費の反映した保険料率を設定することとなります。都道府県単位の保険料率の場合、年齢構成の高い県ほど医療費が高く、保険料率が高くなったり、所得水準の低い県ほど同じ医療費でも保険料率が高くなることから、年齢構成や所得水準の違いは都道府県間で調整した上で、地域の医療費を反映した保険料率を設定することとなっています。また、都道府県別保険料率への移行に当たり、保険料率が大幅に上昇する場合には激変緩和措置を講ずることとなっています。

 


「保険料を払えなければ医療機関にかかるな」―これが医療費適正化計画の中味です。政府・与党がすすめる社会保障費削減を許してはいけません!


(以上)


京都府広域連合平成20年度定例会の結果報告

2008年09月03日 05時39分13秒 | 資料&情報
 8月26日、京都府後期高齢者医療広域連合議会が開催されました。
 定例会では、京都府保険医協会会長名による請願書「後期高齢者医療制度を廃止するよう求める意見書を国に対して提出することを求める請願書」を提出、結果は不採択となりましたが、議員の3分の1が賛成するなど、後期高齢者医療制度に対する府民の怒り・運動の広がりを反映した議会となりました。

 請願書には保守系議員も含む8名が紹介議員になり、議会でも道理ある発言を行っています。


 後期高齢者医療制度を廃止するよう求める意見書を国に対して提出することを求める請願書

 請願書本文


 意見書

 意見書本文


(以上)