京都社会保障推進協議会ブログ

京都社保協のニュースや取り組み案内、タイムリーな情報・資料などを掲載していきます。

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2012年11月02日 15時00分27秒 | 介護保険不服審査請求

第34回総会63人の参加で議論

消費税増税中止・社会保障制度改革推進法撤回

にむけて、学習・宣伝・署名に全力をあげよう!

9月27日、ラボール京都で京都社保協第34回総会を開催しました。会場には加盟21団体、12地域社保協から63人が参加して、民主・自民・公明3党の談合で決まった消費税増税・社会保障制度改革推進法の実施を止めようと、熱気にあふれた学習・交流・討論を行いました。

総会は魚山副議長の司会ではじめ、冒頭に林光一副議長から開会あいさつを行いました。

  林副議長は、社保協というのは社会保障の推進に向けて各団体が活動しているが、そのことが生活弱者をはじめ、いろいろな面で困っておられる方の唯一の拠り所であり、いま最もそれが求められている時局であると思っています。そういう意味でこの総会では今までの活動、これからの運動を議論し、議案を審議いただきたいと結びました。

続いて、佛教大学教授の岡祐司氏から「消費税増税と社会保障の危機を考える」というテーマで、記念講演をいただきました。以下はその概要です.

(文責:社保協事務局)

記念講演「消費税増税と社会保障の危機を考える」

岡祐司氏(佛教大学教授)

今の政治経済情勢は、新自由主義改革の反転攻勢

今の消費税増税と社会保障の危機という一体改革の局面は、全体的な政治経済情勢から言うと民主党政権のもとでの新自由主義改革の反転攻勢、パソコンに例えれば財界はじめ支配層がフリーズしかかったものを再起動している状況、やられっぱなしという風に見えるかも知れないが、構造改革と言われる新自由主義改革を強烈に進めたい財界の側からみれば、この間国民の運動だとか世論に押されて、思うように「改革」が進んでいないのが現状だ。

民主党への政権交代とは何だったのかというと、いわゆる新自由主義改革=小泉構造改革を強烈に進めることが自民党ではできなくなってきた。つまり新自由主義改革プラスアメリカ追随型の政治では政権交代が絶対起こりえなかったという状況です。

そして構造改革勢力の急速な巻き返しのなかで野田政権が誕生し、マスコミが、苛立つ財界やアメリカの代弁をする中で「税と社会保障の一体改革」に進んでいったということです。

一体改革の本質は社会保障費の抑制と消費税の基幹税化

「税と社会保障の一体改革」の本質は、端的に言うと1つは、増大するであろう社会保障需要に対して未然に対応策を打って、多少増大しても公的保障が拡大しないような仕組みをつくっておく。第2は仮に社会保障が増大しても、それが大企業を中心にした企業負担に直結しないような財政の仕組みをつくっておこうということです。

消費税の増税は、今後の日本の税制改革をめぐって消費税を基幹税化していく、これを基本の税金にしていくという流れです。単に5%が10%になるという話しだけではなくて、所得税とか法人税ではなくて消費税そのものを基幹税化していくという流れだということです。そういう点でも非常に問題の多い改革です。

一体改革とは消費税増税と法人税の一層の減税

消費税の増税というのは、法人税率の切り下げとセットになっている。今回の、「税と社会保障の一体改革」の起源は2008年の経団連の提言にある。しかし、経団連の提言は2008年に突然出たわけではなくて、やはり小泉構造改革に対する不満。小泉時代は、小泉だとか竹中のような歳出削減は徹底してやる、しかし消費税の増税はやらない。歳出カットをすれば十分だ.

というところが主流を占めていた。財界の方はそれだけではだめだ、お金を出す方は削減してきたが、お金を取る税体系の方の改革をしていない。それでは社会保障の機能強化にはならないということで、「税・財政・社会保障制度の全体を見通して歳出構造の改革と税体系の改革を同時かつ一体的に進める」。これが消費税の増税、法人税の一層の減税です。

消費税の増税によって社会保障の機能強化が必要

一方、社会保障をめぐっては、これだけ格差・貧困が広がり、地方が疲弊してくれば一定の社会保障需要は発生する、そうすると社会保障の機能を強化してある程度それに応えざるを得ないのではないかという議論がある。構造改革による新自由主義改革の矛盾が非常にはっきりしてくると、社会保障に対する需要が増えてくる。その時に一定程度社会保障が、例えば量的に拡大しているとか、ある程度の役割とか機能を持っているということを見せる必要がある。そのためには、社会保障を動かす。そうすると社会保障の財源が必要になってくる。ところが、法人税とかはぐっと落としていっているから、もう見込めるのは消費税しかないということで、消費税をむしろ基幹税化してそこで社会保障需要に応えるような機能強化をさせていこうということです。

社会保障のあり方、考え方を解体する一体改革

そうなると実は、社会保障のあり方とか考え方そのものを大きく転換させる必要があります。それがこの間の一体改革の議論です。消費税を基本的には社会保障財源に当てるということになると、ほとんど国民の負担ですから国民の相互扶助的な負担、保険料もそうですね。ほとんどそうなってしまって、いわば社会保障・社会保険を成立させている根幹にある国家の負担と資本の負担を外していくという流れです。つまり、社会保障そのものを考え方も含めて大きく解体すると。

この間、議論されているのは世代間所得再分配ということ。つまり、社会保障というのは世代と世代の支え合いだったという間違った理屈を持ってくるということです。高齢者の世代を若い世代が支えているとか、相対的に高齢者が得をしていて、若い世代が損をしているんだという世代間対立をあおる議論です(社会保障制度改革推進法第1条・第2条)。共助・公助、そして家族相互および国民相互の助け合いの仕組みを通じてやっていく。つまり、社会保障とか社会福祉は国民の間の助け合いなんだと、ここに議論を落としてしまうというか、転落させるような話しです。

財政赤字だから消費税を上げなければならないのか?

よく財政赤字の問題が言われ、だから消費税だと言われますが、消費税を10%にしたところで、日本の財政赤字にとっては焼け石に水なわけですね。この間、歳出に占める一般税収の割合というのはますます下がっている。この減った主な原因というのは、やはり法人税の減税とか富裕層の所得税の減税です。基本的に所得税・法人税を大幅に減らしてきて、歳出の方が大企業向けの開発に使われてきたことが財政赤字の主要な原因だということです。富裕層にきちっと課税をして税収を上げ、法人税率の課税を強化し、さらに法人の内部留保に対して過剰資金だということで適正に課税して税収を上げて、雇用を改善し国民生活を安定させて、国内の需要・消費を一定喚起して景気を安定させるという方向性を選ぶのか、消費税を増税して法人税の減税を行って、内部留保にも手を付けず、過剰資金をさらに増やしていき、そして雇用者報酬を減らしていってデフレスパイラルどころか生活悪化、業者が本当につぶれていくようなスパイラルをつくっていくのかということが大きな争点になっているということです。

国家財政の歳出目的は本来福祉目的である

いずれにしても、①一体改革の中で強調されているような自助・共助・公助で、歳出の中で社会保障を別枠にしてやるということではない。そもそも国家財政の目的そのものが、一般歳出の目的が基本的には福祉目的でなければならないということ。だいたい社会保障にもし消費税を当てるとして、じゃそこだけ取り出した一般財政というのは何に使うのかということになろうかと思います。一般歳出の全てが本来は福祉目的であって、むしろ法人税だとか所得税とかその他の税制を含めて、それが広い意味で福祉目的に使われる。

財政民主主義を徹底して、応能負担原則を

②財政民主主義の徹底。応能負担の原則をもう一度再生するということ、過剰資金に適正に課税をするということ、富裕層と法人大企業の大変やさしい減税策を止める。それから国民の最低生活水準ですね。この間、全労連が熱心に取り組んでいますが、国民最低生活費用、最低生計費を明らかにして最低賃金を引き上げて暮らせる賃金をつくっていくと。そして、雇用です。この間の、雇用者報酬の減少とかいうのは明らかに雇用破壊の効果なので、正規雇用を増やし、雇用確保をしていって安定的な生活の道をつくる。国際的な視野から見たら決して日本の法人の負担が途方もなく重いというわけではない。むしろ、かなり低いグループに入っていると言えます。そういう意味で国際的視野から法人税をきちんと課税するとか、あるいは様々な金融通貨取引税等を強化するという税制の適正化が必要だということになろうかと思います。

一体改革は消費税の基幹税化と福祉の後退

今回の一体改革というのは、単なる税率アップではない、むしろ、今後消費税を基幹税としてしまおうという流れで来ている。名目として社会保障機能強化で来ているけれども、社会保障そのものは給付の削減とサービスの営利化・市場化路線を変えているわけではありませんから、機能強化はおこらないということです。むしろ、極めて限定的な給付と個人負担が増える状況になりますから、社会保障のあり方そのものが問われるということになろうかと思います。ちょっと短い時間でしたので、全てを報告しているわけではありませんが、政党の構図は別にして、やはり我々は今新自由主義的な改革に対して真正面から運動すると、そして我々は新たな福祉国家構想と言っていますけれども、これに対抗する社会構造というか、改革の構図を打ち出していく必要があるということを感じています。

南事務局長が活動報告と方針案を提案

 総会は、西京社保協の鍛冶貝事務局長が議長を務め、議案の審議に入りました。南事務局長から、①昨年度の活動のまとめ、②今年度の活動方針を提案。続いて稲村事務局次長が2011年度決算と2012年度予算を提案、矢野監事が監査報告を行いました。討論では、6団体・2地域社保協から発言がありました。内容は次のとおり。

6団体・2地域社保協が発言

 ①京都生活と健康を守る会連合会の大本さんは、生活保護への攻撃がつよまっていて、来年度予算で生活保護基準の引き下 げが検討されている。国民生活に大きな影響を与える。生存権裁判は、大阪高裁で原告敗訴の不当判決だったが、最高裁に上告して、最後まで闘うので署名や街頭宣伝への支援を。

②京都障害者の生活と権利を守る連絡会の松本さんは、障害者自立支援法を廃止して総合福祉法をつくる運動をしてきたが、総合支援法になり裁判での基本合意や骨格提言が生かされていない。障害者の権利保障の考え方を入れるとか1割負担をなくすようさらに改善を求めて行きたい。

③年金者組合の長田さんは、今年介護保険の見直しで保険料が2割アップとなった。年金は下げられ、支出はどんどん増えていくという状況に我慢できないと、介護保険不服審査請求の運動に取り組んだ。京都府全体で1154人が提出してがんばっている。

④右京区常盤野社保連の田阪さんは、学区で8団体1オブザーバーの構成で社保協運動を進め、いろいろな取り組みをしている。なんでも相談会は常盤野以外の4学区に広がっている。ぜひ各団体の学区にある班や分会の力で草の根で学区単位の社保協運動をつくっていこう。

⑤保育運動連絡会の能塚さんは、昨年来、保育新システムに反対一色で運動してきた。世代交代が進む中、若い世代が関心を持てる工夫をしている。10月から学習会と反対署名をスタートし、11月には国会議員要請を行うので支援を。

⑥高齢者運動連絡会の重本さんは、9月29日にラボール京都で京都高齢者大会を開くので、出席をと要請。

⑦北社保協の葛西さんは、ここ3年くらい総会を開いてないが、事務局会議は毎月・街頭宣伝も毎月行ってきて、12月に総会を開く。プレ企画として11月13日に格差と貧困をテーマにしたシンポジウムを開く。

⑧京都商工団体連合会の益田さんは、社会保険料や国保料の滞納が増えており日本年金機構などが納付誓約不履行で直ちに差押えを行ったり、本人だけでなく連帯義務者の配偶者に世帯主の給料や財産を差し押さえると通告している。国税徴収法では納税緩和措置もあるので、それも適用して無理な差押えや徴収強化に対する運動を強める。国保は法的に納税緩和措置がないので、社会保障としての国保を充実させるために学んで、知って、知らせるという運動を広げたい。

討議の後には、事務局次長の藤岡孝之さんから新しい役員体制が提案され、全員拍手で承認されました。最後に、閉会あいさつを梶川副議長が行い、岡先生のお話しを聞きながら「自己責任」、「弱肉強食」というのがもう一度本格的に頭をもたげた。私たちが本当に運動の中からしっかりと闘い抜いていく。1つ1つの運動を練り上げて横につなぎ、地域でつないで先程学区でつなぐという話しもありましたが、社会保障の大きなうねりを私たちの側から作りだしていくという、社保協の役割発揮のときではないかと結んで総会を終わりました。

新役員体制

議  長     津田光夫(保険医協会)

副議長      魚山栄子(新婦人)       尾崎 望 (民医連)            梶川 憲 (総評)           松本隆浩(医労連)

事務局長    南 博之 (自治労連)

事務局次長  稲村 守 (総評)            藤岡孝之 (民医連・新)         坂田政春 (医労連)            西浦 哲 (福保労)

            西山英利 (自治労連)

運営委員    池添 素 (京障連)           井手幸喜 (京保連)             浜松 章 (保険医協会)            長田 豊 (年金者組合)

          佐藤陽子 (自治労連)       珊瑚雅統 (京建労)            杉山 勉 (高運連・新)        益田真理 (京商連・新)

           多田哲子 (府職労連・新)     中村東輝子 (生健会)         中本邦彦 (京都国公)        浜辺勝美 (歯科保険医協会)

           南 隆一 (市職労)           柳生剛志 (医労連)            森脇芳男 (全厚生労働組合OB)

 監  事    岩田正勝 (府患者同盟)      矢野芳彦 (京都国公)

 事務局  北山善敬

 


介護保険不服審査請求に1154人分提出

2012年09月13日 13時43分21秒 | 介護保険不服審査請求

介護保険不服審査請求第2次集団で提出

  府内全体で1154人分の審査請求書を提出

  「もう黙っていられない!」、介護保険料の大幅値上げをするなと、京都市や各市町村の介護保険料決定に不服審査を求める人たちが「京都・介護保険不服審査請求にとりくむ会」を結成して、集団で不服審査請求書を提出する運動が、府内全域で取り組まれ、8月2日の第1次集団提出に続いて9月6日(木)午後2時から京都府庁で第2次の集団提出を行いました。

当日は午後1時30分から京都府庁議会棟に集合して、京都社保協の南事務局長から取り組みの趣旨と審査請求の手順を説明し、京都社保協介護部会の西浦さんが、請求書の点検と記入の注意点を説明して質問等に答え、年金者組合の長田さんから請求書の集約状況について説明した後、提出先の1号館4階「健康福祉部高齢者支援課」へ向かいました。

         40人が高齢者支援課へ直接提出

  会場には約40人が駆けつけ、「みんなで介護保険不服審査請求を!」という横断幕を掲げるなか、担当職員に不服審査請求書を手渡しその後散会しました。この日は京都市内の10地域と2団体から40人が参加して185人分の不服審査請求書を提出しました。

    府内全体で13地域2団体から1154人が審査請求

  今回の取り組みは、6年ぶりに府内全域で取り組まれ短期間で前2回の提出者を大きく上回る不服審査請求となりました。地域では京都市を含む13地域から提出され、丹後、宮津・与謝、八幡、綴喜の地域からは8月2日の第1次提出に府庁に駆けつけての提出。福知山市・亀岡市・向日市・長岡京市・大山崎町・宇治市・城陽市・相楽で独自に各地域の市町村窓口に提出する運動も取り組まれました。

  また、団体では年金者組合をはじめ、高齢者運動連絡会・高齢者退職者協議会・退職者教員の会・新婦人・生健会など多くの団体で取り組みが広がりました。 

  「介護保険不服審査請求にとりくむ会」では京都市の審査請求締め切りが、9月16日頃となるため、まだ提出されていない方は最寄りの区役所か市役所に提出するか、京都府保健福祉部高齢者支援課へ直接提出または郵送するよう呼びかけています。


介護保険料の不服審査請求運動を行います

2012年07月18日 10時34分37秒 | 介護保険不服審査請求

もうだまってはいられない!

あなたも、介護保険不服審査請求運動に参加しませんか

8月2日(木)午後2時~集団提出します

場所  京都府庁福利厚生センター

 高齢者のみなさん、高齢者を抱える家族のみなさん!

 6月から7月にかけて、みなさんのお宅に介護保険料の決定通知が送られてきます。通知を見て「また値上げか」と嘆いておられるのではないでしょうか。2009年度につづき今回もまた、全国的に65歳以上の高齢者の保険料が上がります。介護サービスを使えば使うほど、保険料が引き上げられる介護保険制度の構造的な欠陥を変えなければ、高齢者が安心して介護を受けることができません。

 介護保険がスタートして12年になりましたが、「42万人を越える特別養護老人ホーム待機者」に象徴されるように介護サービスがまだまだ不足しています。また、今年4月から在宅介護を支えるホームヘルパーの生活援助時間が60分から45分に切り捨てられるなどの問題も指摘されています。まさに「保険あって、介護なし」という介護保険制度の根本的な問題は改善されていません。

 年金支給の引き下げ、介護保険料の大幅引き上げ、医療費の高騰など「もう黙っていられない!」の声があがっています。

 こうした中で、京都社保協介護部会では、介護保険制度の改善・保険料の引き下げ・減免制度充実などの運動を進めてきました。その一環として、介護保険不服審査請求の運動に取り組みます。

 法律に明記されている「不服申し立て制度」の活用で、誰でも簡単に介護保険料を決めた「市町村に対して決定に不服だ」と意思表示できるのです。2003年と2006年の不服審査請求運動のあとは介護保険料が据え置きまたは引き下げとなったり、減免制度などができたことからも、この運動の重要性が伺えます。以下に、介護保険制度の問題点と不服審査請求の具体的な方法について掲載します。

 介護保険料不服審査請求運動の手引き(2012年度版)

1、介護保険制度をめぐる現状―介護は良くなったのか?

1) どんどん値上げされる保険料

今年度(2012年度)は、3年毎に策定される介護保険事業計画の第5期の初年度に当たり、全国的に介護保険料の見直しがされました。その結果、全国平均で月額4160円から4972円(引き上げ幅は20%)に大幅に引き上げられました。

京都府内では、全市町村が値上げをしました。その結果、府内の平均(単純)保険料(月額)は4332円から5280円に21.9%アップしました。一番高いのが精華町の5850円、次が和東町の5667円、その次が京都市の5440円となっています。

前回(2009年度)と比較してアップ率が一番高いのは南丹市の35%、続いて大山崎町(34%)、精華町(33%)、伊根町(335)、城陽市(31%)、京丹波町(31%)が30%以上の値上げになっています。

これは、介護費用の半分が公費(税金)、残りの半分が保険料(40歳以上)で賄われる仕組みになっており、基盤整備が進み介護サービスが使われれば使われるほど保険料負担も増えるしくみになっているためです。

 その結果、介護保険がスタート(2000年)してから介護保険料は約2倍ほどに値上げされています。

*3年毎の介護保険料の推移(京都市・京都府・全国の平均)

 

第1期

2000年

第2期

2003年

第3期

2006年

第4期2009年

第5期

2012年

前期比増加率

第1期との比較

京都市

2958

3866

4760

4510

5440

21%

1.84

京都府

2669

3131

4064

4332

5280

22%

1.98

全国

2911

3293

4090

4160

4972

20%

1.71

 

 

 

 

2) 使えない介護のサービス

 介護保険はそもそも「介護の社会化」を目的に制度がスタートしました。家族介護に頼ってきたことを解決するための様々な介護サービスが提供され、国民はそれを自由に選択できるはずでした。

ところが、現実は特養ホームの入所待機者が全国で42万人を超え、介護保険制度が始まる前に比べて4倍も増えています。京都市内の特養ホームでは入所待機者が1000名を越えているところもあります。

また、緊急に介護サービスが必要になっても直ぐにヘルパーが来てくれたり、ショートスティが利用することはできません。まさに、「保険あってサービスなし」の状況は依然解決できていません。 

3)介護職場では慢性的な人手不足

 介護の仕事を直接担う介護職員の人手不足の状況は一向に改善されていません。厚労省の調査でも介護職員やヘルパーなどの訪問介護職員の離職率は17.8%で全産業の平均離職率よりも常に高くなっています。その原因としては、「仕事の内容の割に賃金が低い」「人手が足りない」などが考えられます。(介護労働安定センター調査)

施設が開設しても介護労働者が思うように集まらないので、定員通りの入所がままならない特養ホームもあります。

 そのような状況を改善しようとして、国は2009年10月から介護保険給付とは別に介護職員処遇改善交付金(介護労働者1人あたり平均月15000円の賃上げ)を創設しましたが、今年の3月末でそれを廃止して介護報酬単価に加算方式で組み込みました。 

4)2012年度の「改正」介護保険法の特徴

1)介護報酬は実質マイナス改定

 厚生労働省は、介護報酬の改定を全体で平均して1.2%のプラス改定だと説明しています。しかし、前述したように介護職員処遇改善交付金相当額が介護報酬加算として2%含められていますので、実質的には-0.8%となります。 

2)ホームヘルパーの生活援助の切捨て

 在宅介護を支えるホームヘルパーの生活援助の基本的な提供時間が今までの60分から45分に切り下げられました。この根拠になったのは洗濯は16.6分で終わり、調理や掃除も15分で終えることができるという現実離れした厚生労働省の調査結果です。 

3)24時間定期巡回・随時対応サービス

 今回の「改正」の目玉ともいえる「地域包括ケアを支える基礎的サービス」として登場してきたものです。このサービスは、重度者を始めとした要介護高齢者の在宅生活をささえるため、日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護が密接に連携しながら短時間の定期巡回をするというものです。(1回5分~15分程度)しかし、実際は担い手の問題や採算性も含めて思うように進んでいません。  

4)介護職員の医療行為の合法化

 たんの吸引や経管栄養は医療行為にあたり、医師や看護師などが実施可能でした。厚生労働省は、介護現場での看護師不足などから、今までは例外的に一定の条件下でヘルパー等による実施を容認していました。しかし、今回の「改正」によって介護職員によるたんの吸引などの実施を可能とする法整備を行い、医療行為の「解禁」への大きな一歩を踏み出しました。まさに「医療」から「介護」への移行を狙っています。

2、介護保険料のしくみと問題点

1)保険料の決められ方―税金からの負担は半分、残りの半分が保険料

 介護保険にかかるサービス給付に関わる費用の内、利用者負担1割負担分を除いて、税金(公費)から5割、残りの5割を保険料で賄うしくみになっています。なお、保険料負担の内、65歳以上と40歳~64歳までの国民の保険料の負担割合は人口構成比によって3年ごとに見直しされ、2012年度の第1号被保険者(65歳以上)は21%です。 

 

 

 

 

 

     

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

                                           

 2)     介護保険料の徴収方法

 毎年4月1日を基準日として65歳以上と64歳までで徴収の仕方が違います。

1) 65歳以上の方(1号被保険者)

イ)年額18万円(月額15000円)以上の老齢・退職・障害・遺族年金を受給されている方は「特別徴収」として年金から一方的に天引きされます。偶数月の年金支給額から1回あたりおよそ2カ月分が一方的に引き落とされます。1号被保険者の内、約8割の方が特別徴収になります。

ロ)特別徴収以外の方は、普通徴収として、納期毎に給付書や口座振替によって毎月納付することになります。1号被保険者の内、約2割の方が普通徴収です。

2)40歳以上64歳までの方(2号被保険者)

 協会けんぽや国民健康保険など加入している医療保険の算定方式に基づいて計算されます。そのために介護保険料の金額が分からないままに徴収される場合があります。 

3)     介護保険料の問題点

1)65歳以上は全員が強制加入、無収入でも保険料が取られる

65歳以上の高齢者は全員、強制的に住所地の市町村の介護保険に加入させられて「第1号被保険者」となり、個人単位で保険料が徴収されます。(国保は世帯単位)

国民健康保険では生活保護受給者は加入対象からはずされていますが、介護保険は生活保護受給者であっても例外ではなく保険料を徴収するといった方式をとっています。(ただし、生活扶助に保険料分が加算して支給されるため、実質的に負担はありません)だから、無年金・無収入の方であっても保険料がかかってきます。さらに、本人が無収入の場合でも世帯主や配偶者に「連帯納付義務」があることも大きな問題です。 

2)低所得の方ほど収入に占める保険料の割合は大きい

 「わしの年金から保険料を引いた上で、なぜ無年金の妻からも保険料が取られるのか」といった苦情がよく聞かれます。住民税や健康保険では「被扶養者」になっている方は、税金や保険料がとられません。しかし、介護保険では65歳以上の高齢者一人ひとりに「被保険者証」が渡され、扶養や収入に関わりなく「保険料」が徴収されます。

*京都市の場合

 老齢基礎年金を満額「788900円」を受給している一人暮らしの高齢者の

   介護保険料の年額は   32640円

   国民健康保険料の年額は 22224円

    ⇒介護保険料は国保料の1.47倍 

介護保険料は、「世帯に住民税の課税者がいるが、本人は非課税」の場合を『基準額」として保険料を設定しています。これでも、年収入100万円の方と年収1千万円以上の方との保険料格差は3倍にしかなりません。介護保険料は逆進性が強いといわれるゆえんです。まさに、最低限度の生活を下回っていても「情け容赦なく」保険料を取り立てる制度になっています

*京都市の国保料と介護保険料の最低と最高の倍率

 

最低額(年額)

最高額(年額)

最低と最高の倍率

国保料

22224

770000

34.6倍

介護保険料

32640

153408

4.7倍

 

 

3)介護給付(介護サービスの量)が増えれば自動的に保険料は値上げになる

 介護保険料の決められ方のところでも説明したように、高齢化社会の進行に伴って介護保険給付が増えれば自動的に介護保険料は値上げされる仕組みになっています。介護保険給付費に対する負担割合を見直すか、都道府県に設置されている介護保険財政安定化基金を活用しない限りこの悪循環は続く事になります。

 今後の保険料は2015年には5700円、2020年度には6900円に、そして2025年には8200円もの高い保険料になる予想です。 

4)年金から天引きされる

 月額15000円(年額18万円)以上の年金受給者は強制的に天引きされるために、介護保険料は国民健康保険料に比べて「滞納させずに確実に徴収率を上げる」効果があります。実際に京都市の国保料の滞納率は22.7%ですが介護保険料の滞納率は3.5%です。

 保険者にとって徴収するのに大変都合が良い仕組みになっていて、年金からの天引き方式は、日本の社会保障制度上初の「画期的」なことで、75歳からの後期高齢者医療保険料も介護保険料をお手本にしています。 

5)保険料を支払っていても直ぐに介護サービスは利用できない

 医療保険では保険証があれば誰でも医療機関で受診できますが、介護保険は要介護記定という判定をうけ、「要支援」ないし「要介護」といった認定が出た人でないと保険給付(介護サービス)を受けることができません。だから、65歳以上の高齢者のうち、保険給付を受けている方は2割程度にとどまっています。

介護保険法では、第二条で「被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サーピス及び福祉サーピスが…総合的かつ効率的に提供されるよう配慮」するとしています。介護保険の実施前から特別養護老人ホームの待機者の解消が強く求められていましたが、それに見合う整備がされておらず、依然として長期にわたる待機を強いられています。

3、不服審査請求について 

問1、不服審査請求とは何ですか? 

「行政が決めたことについて、例え違法でなくても不服があるときに、その当・不当を争う権利です」 

役所からあなたに送られてくる「介護保険料納入(決定)通知書」の隅に「この決定に不服があるときは、この通知を受け取った日の翌日から、60日以内に京都府介護保険審査会に不服審査請求ができます」と書いています。介護保険法では、保険料の決定や要介護認定など市町村が行った決定(行政処分といいます)に対し、都道府県に設置された介護保険審査会が審査することになっています。あなたには、審査を請求する権利があります。

京都府の審査会は、1,被保険者代表、2,市町村代表、3,公益代表から6人ずつ、18人の委員で構成されています。役所が決めたことだからといって正しいとは限りません。不服審査は、権力の濫用を防止し、是正するための制度であり、積極的に活用するべきです。この制度を利用して、介護保険制度を改善しようというのが、私たちの介護保険料不服審査請求の運動です。 

問2、不服審査請求をするにはどうしたらいいですか? 

「『保険料通知』を受け取った日の翌日から60日以内に、審査請求書を出すだけでいいのです」 

毎年6月か7月に、その年度の「介護保険料納入(決定)通知」が送られてきます。(京丹後市は6/13、京都市は7/17頃)その通知を受け取った日の翌日から60日以内に、審査請求書を府の介護保検審査会に提出すればよいのです。

審査請求書は、府や市町村の窓口でもらえますが、一定の様式を備えていれば受理されますので、この冊子に載っている請求書をコピーして使ってください。請求書には、1,請求人(あなた)の氏名、生年月日、住所、2,審査請求の対象である処分、3,処分を知った年月日、4,審査請求の理由、5,教示の有無、6,審査請求年月日を記入します。

請求書の提出先は、京都府の介護保険審査会(窓口は高齢者支援課)ですが、市町村の介護保険担当部署や府の地方振興局などを通じても提出することができます。

必要な記載項目に漏れや誤りがない限り、受理されることになっています。しかし、問題は市町村の窓ロが不服審査請求の方法についてきちんと説明しない場合があるということです。法律では、行政(市町村)は不服審査請求の仕方について教示しなければならないとなっています。市町村や府の出先機関の窓口が、きちんと説明しない、あるいは知らないようであれば、抗議しましょう。 

問3、不服審査請求をすることによって不利益はありませんか? 

「審査請求は権利であり、不利益になることはありません」 

不服審査請求は、法律に則った権利の行使です。だから、仮に不服審査請求が棄却されたからといって、請求人に対して何の不利益もありませんし、何の制裁もありません。お金も一切かかりません。不服審査請求は、保険料納入を拒否する「実力行使」とは全く性格が違います。介護サービスを受けている方を含めて、保険料に異議のある方、「納得ができない」という方なら誰でも安心してできる制度です。

わが国には、まだまだ「お上(役所)」に文句を言うのは何か「怖い」ことであるかのような風潮があります。しかし、主権者は国民であり、行政はその負託を受けているに過ぎません。行政が一方的に決めた保険料について、法に則り正当な手続きで審査請求をすることに有形無形の圧力をかけるようなことがあれば、それは国民の権利への侵害です。堂々と権利を行使しましょう! 

問4、審査請求をしてどんな意義や効果があるのでしょうか? 

「介護保険料への不服を通して、サービスの問題点や減免制度の拡充を訴え、行政を動かすことにあります」 

多くの人が不服審査請求を起こすことによって、介護保険料や制度の欠陥を行政や世論に大きくアピールすることができます。これによって、保険料の減免や制度の見直し改善に向け、次の予算や事業計画に大きな影響を与えることができます。

実際に、不服審査請求運動など声を上げることによって下記のような介護保険料の改善が実現しています。

・保険料段階の階層を多くし、本人・世帯非課税段階より安い保険料段階設定や年金年収80万円以下の段階の新設(2006年度)

・府内15の市町村で介護保険料の値下げ(2009年度)

・府内21の市長村で保険料段階の変更(2012年度)

・第1階層の保険料に減免制度を創設:京都市(2012年度) 

不服審査講求の運動は、大阪から始まり京都、東京、福岡など全国的に広まっています。京都では、2003年の全国的な値上げの時に「不服審査請求にとりくむ会」を結成し、京都市内に住む方を中心に、向日市・長岡京市・城陽市・八幡市・亀岡市などに住む425人が審査請求を起こしました。また、2006年には行政区毎に世話人の配置し、19市町842人が集団申請を行いました。

審査の結果は、全て却下や棄却となりました。これは、審査会の権限やあり方とも関わっています。私たちは保険料の水準や制度そのものを問題にしているのに対し、審査会は「市町村が正しい税や所縛惰報に基づいて法令や条例に従って保険料を決定しているか」に限って審査しているためです。

しかし、審査会に対し、保険料の水準や制度そのものへの不服を訴えたり、行政と識論することは自由にできるのです。私たちの審査請求に対し、市町村は「弁明書」を出さなくてはならなくなります。これに対して、私たちは「反論書」を出すことができます。さらに、希望すれば審査会の場で意見陳述の機会が与えられます。

このように、たとえ一人の「不服」であっても市町村は必ず文書で「弁明」をしなければならないのです。審査請求は住民が行政と対等に議論でき、文書で回答を求められる貴重な制度です。市町村の窓ロに不満を怒鳴り込んだとしても、それは単なる「苦情」として記録されるか、多くの場合は担当職員によって「聞き流される」だけで終わります。審査請求は、訴えの件数や内容が行政の記録に残されます。京都府のホームページにも2003年前のことが「集団不服申謂によって請求件数が急増した」と書いています。 

問5、保険料以外にも不服審査請求はできますか? 

「要介護認定の決定についても審査請求ができます」 

市町村による住民個人への決定は、保険料の決定以外に要介護認定の決定があります。そこで、要介護記定の決定にあたっても、決定を受け取った日の翌日から60日以内に、審査請求を出すことができます。

要介護謹定にあたっては、以前から国のコンピューターシステムに問題の多いことが指摘されています。

本人の状態が以前とは変わらないのに、更新認定を受けたら「要介護2」の方が「要支援2」と判定され、サービス利用を減らさなければならない事態が起こっています。要介護認定でも積極的に審査請求を活用していくことが大切です。これまで要介譲認定の不服審査請求では、請求が認められて市町村に再調査を求める裁決が数多く出されています。 

問6、審査で認められなかったら、次は裁判ですか? 

「行政訴訟を起こすには、お金も時間もかかるため、かなり覚悟が必要となります。」 

これまでの例からいくと、不服審査請求では、各市町村の介護保険条例に基づいて、適正に保険料の賦課・徴収処分がなされたか否かをなど、法令の適用に問題がなかったかどうかを審査するにとどまっています。残念ながら処分の根拠になっている介護保険法令や条例の不当性・違法性までを審査してくれません。

しかし、多くの方が不服審査請求を起こして、その問題点を具体的に訴えることによって「介護保険は欠陥の多い制度だ」「不服がある」ということを行政に訴え、社会的にアピールできます。そのことによって、制度の抜本的な改善へつなげていくことが、私たち「不服審査請求にとりくむ会」としての運動の目的です。

それでは我慢できなし。「不当性をあくまで追及したい」そんな場合はどうしたらいいのでしょうか。不服審査請求の裁決が下りた後に、裁判所に処分の取り消しを求めて行政訴訟を起こすことができます。大阪では裁判で介護保険の違憲訴訟を起こして闘っておられる方があります。ただし、費用も時間もかかるため、かなりの覚悟が必要になります。弁護士とよく相談してください。

 問7、不服審査請求と「とりくむ会」の関係は? 

「審査請求を行なうのは、あなた自身です。「とりくむ会」はあくまで請求人をサポートする組織です。」

当然、不服審査請求を行なうのは、当事者であるあなた自身(又はあなたの代理人)です。「不服審査請求にとりくむ会」(以下「とりくむ会」)は、あくまでも、あなた自身の思いが行政に届くように、サポートに徹します。

「とりくむ会」では、介護保険制度や保険料についての問題点について学習会をとりくみます。講師も派遣します。また、マスコミや世論に注目されるように、宣伝や集団での不服審査請求にとりくみます。

今年は、8月2日(木)午後2時から京都府庁の厚生棟内の会議室で集団不服審査請求をおこなう予定です。京都市内や京都市近隣地域にお住まいの方は、午後1時30分に集まってください。(詳しい内容は追って連絡します)

府庁まで出向けない方は、地域ごとに相談して市町村役場や府の地域振興局に講求書を提出してください。別に個人でしていただいても結構です。

 また、宣伝行動は7月21日(土)午前10~11時 弘法さん(九条大宮京都銀行前)

と7月25日(水)午後12時30分~1時30分 天神さん(御前今出川滋賀銀行前)で行う予定にしています。

4.審査請求の流れ

請求書を提出して裁決が出るまで、過去の例でいくと6ケ月程かかっています。

1)審査請求書の提出 

審査請求書に講求理由等を書き、京都府庁の介護保険審査会事務局(地域振興局や市町村の介護保険の担当部署を通じてでもよい)に、保険料決定通知が届いた翌日から60日以内に提出します。

請求理由 例

「年金支給額を削っておいて、見直しのたびに、介護保険料を高くするのは我慢できない」*さらに介護保険サービスについての不満も書いておくとよいでしょう。 

2)弁明書が来る 

しばらくするとなぜ保険料を○○円に決定したかという理由を書いた市町村の「弁明書」が京都府介護保険審査会から送られてきます。およそ理由は、「市町村民税のデータを根拠に、条例に従って決めた」と書いてきます。 

 3)反論書を提出

市町村の弁明に納得できるはずがありません。さらに反論を書いて府の介護保険審査会に送りましょう。また、「直接意見を聞いて欲しい」とロ頭陳述を求めることができます。 

4)口頭意見陳述

介護保険審査会から日程を連絡してきます。指定された場所に出向いて、なぜ今回の介護保険料の決定に不満があるのか意見を堂々と述べてください。陳述を代理人に任せることもできます。公關にさせることも要求してください。 

5)採    決

 最後に、介讃保険審査会から審査結果を知らせてきます。裁決は、却下・棄却・容認に分かれます。却下・棄却の裁決に不満があれば、裁判で争うこともできます。

5、審査請求書の書き方 

審査請求書は、京都府や市町村の窓口でもらえますが、必要な項目さえそろっていれば請求書として受理されますので、誰でもつくることができます。この手引きには「とりくむ会」でつくった請求書を載せていますので、それを利用してください。記入にあたっては、認印と介護保険料の納入(決定)通知書を用意してください。 

請求書の全ての下線の部分に必要な事を記入してください。

ア)審査請求人について

審査請求人には、介護保険料の納入(決定)通知を受け取ったあなた自身の名前を自分で書いてください。名前の右横に認印を押してください。1の欄にも、請求人の氏名、生年月日、住所を正確に書いてください。介護保険被保険者番号は、納入(決定)通知書に載っていますので、それを見て書いてください。 

イ)審査請求にかかる処分について

市町村から送られてきた介護保険料の納入(決定)通知のことです。京都市なら区長が、京都市以外なら市町村長が決定者になります。通知書に決定日が書かれています。 

ウ)審査請求にかかる処分を知った日

介護保険料の納入(決定)通知書が郵便配達されて来て、あなたが受けとった日を書いてください。通知書の決定日の翌日以降の日になるはずです。 

工)審査請求の理由について

例1) この保険料では、生活を圧迫し苦しい(最低限度の生活が維持できません)。

例2) 介護保険料はまだまだ逆進性が強く、不公平だ。

例3) サービスを切り捨てておいて、保険料を値上げするのは納得できない。

例4) 国にもっと負担を求めて、保険料を値上げすべきではない。

例5) 年金支給額は削減されているのに、住民税の増税に加え、介護保険料の値上げをしないでください。

記入例をあげておきましたが、保険料に関わってのあなたの思いや怒りのポイントを簡潔に書いてください。ただし、もっと具体的に請求理由を書きたいと考えておられる方は、別の紙に書いて添付してください。後日、反論書や意見陳述の機会に、言い足りなかったことを訴えることができます。 

オ)代理人について

不服審査に関わること一切(意見陳述など)を代理人に任せたい場合は、1の欄に代理人の氏名住所を記入し、委任状を添付してください。委任状を添付する場合は、「7添付書類」の欄に「委任状」と記入してください。用事があって請求書の提出に出向けず家族や他人に持って行ってもらうだけなら代理人は必要ありません。 

6、反論書やロ頭意見陳述での訴え例 

2003年の不服審査請求のとりくみで、約40名の方が、口頭意見陳述をされました。その中から、今後の陳述例として5人の方の陳述の一部を抽出して紹介します。 

例1 弱者に鞭打つ仕打ち、減額年金からの強制的な天引き

私は、大正7年生まれで85歳になります。旧満州からの引揚者で、引揚げ後は日雇労働者として36年間生活してきました。老後の生活は国民年金に頼っています。昭和36年に国民年金制度が発足しましたが、当時の年金制度は老後の生活のための制度ではありませんでしたので、私は加入しませんでした。そこで、老後の生活のための年金制度に変えるよう当時の厚生省にたびたび陳情しました。

昭和45年、制度が変わり老後の生活のための年金制度になりました。私は、60歳になったら満額年金の資格を得られるようにと2つのことを陳情し、年金に加入しました。

陳情事項は、1,さかのぼって発足時から加入したことにすることと、2,60歳になったときに加入期間の不足がないようにすることでした。厚生省は、1,については認め特例措置をとりましたが、2,については認めませんでした。私の場合は、特例措置により18年間加入したことになりましたが、7年間の空白を生じて減額年金になりました。私のような理由で減額年金になった方が多数おられると思います。国民年金は満額でも生活保護基準以下になります。ましてや減額年金から強制的に天引きすることは、弱者に鞭打つ仕打ちで到底容認できません。 

例2 森永ヒ素ミルクの被害者の長男と二人暮し、年金7万5千円

私は、A市の市営住宅に住む72歳の○○子と申します。長男との2人暮らしです。長男は、昭和30年当時の森永ヒ素ミルク中毒の被害者です。13歳の時に大阪で大空襲にあって母親を亡くし、A市に引っ越してきました。結婚をして、一生懸命に働き、厚生年金と国民年金をかけてきました。そのおかげで、年間90万円を受け取っています。夫は平成lO年に亡くなりました。亡夫の厚生年金の半額は頂けるものと思っていましたが、貰えませんでした。亡夫が一生働いて得た金から差し引かれていたのかと思うと腹が立ちます。

そして、新しくできた介護保険です。国で決まったこととはいえ、本人への確認、了承もなく、一方的に私のお金から勝手に天引き、まるで詐欺に遭ったような気がしてなりません。私の年金は月7万5千円。そこから介護保険料が7500円引かれます。先ほども述べましたが、長男は森永ヒ素ミルクの被害者です。私が死んだ後のことがとても心配です。何とかやりくりして少しでも長男にお金を残してやりたいと思うのが親心ではないでしょうか。病院にも月に3-4回通院しています。最近とても心細くなってきています。あまりにも介護保険料が高すぎます。減免制度をつくってください。老後を安心して暮らせるように、これ以上年寄りをいじめないでください。 

例3 保険料の減免制度の充実、利用料の減免制度の創設を

京都市の介護保険料の減免制度は、本人の所得制限など条件が厳しい。日本の高齢者は収入が低い。社会保障の水準も低い。だから、1円でも始末して誰にも面倒をかけないように、特に子どもには迷惑をかけないように、葬式代まで貯金をしている。このお金は、高齢者にとっては介護保険料や生活費になりうるお金ではない。そんな高齢者の実態、状況にあてはまらない減免制度である。

もっと減免制度の充実、利用料の減免を行なうことが大切だ。福祉制度を重点とし、国からの圧力に対し、福祉を守る防波堤になって欲しい。サービスを利用できる見通しもないのに保険料を払うことは絶対に納得できない。 

例4 役所の弁明書は、理解しにくい

審査請求は、住民の意見を聞き、よりよい介護保険制度をつくることに役立てる趣旨だと理解している。少しでも、制度がよくなることを期待しているからこそ審査請求させていただいた。事務局は反論書の中身に沿った意見陳述に限るというが、審査会長から委任されたことだけをするのではなく、制度の改善のためにがんばっていただきたい。

まず、京都市の弁明書の文章が難しすぎる。高齢者が分かるとは思えない。市の意図が伝わらない。「処分」という言葉は、日常的な役所の言葉だと思うが、市民の印象は悪い。「もう決めたぞ」という印象を受ける。わかりやすく、平易に書くこと、よく理解してもらうようにすることが大切です。

暫定賦課処分は、4月からの保険料徴収の根拠であり、事務処理上の間違いを正す審査請求も含め、「利益がない」などということはありえない。こんな裁決を京都市が求めるのだとすれば、そもそも審査請求などできないではないか。「却下」を求める意味が分からない。繰り返しますが、暫定賦課通知は4月から6月の保険料徴収の根拠ではないのですか? 

例5 介護保険料は、極めて逆進性が強い

まず、当審査会にただしておきたい。その一つは、審査委員がなぜこの場にいないのかという点です。二つめは、この口頭陳述をなぜ非公開にされたのかということです。何らの説明もありません。

介護保険料は、逆進性が強い。保険料の区分が6段階で、第1段階は生活保護受給者などで年に17,600円の保険料に対し、第6段階は所得600万円以上が対象で何千万円の所得があっても保険料は年63,460円。その格差はわずか3.8倍と極めて逆進性が強い保険料設定となっています。各社会保険料の区分設定を比較してみますと、健康保険が39級制、厚生年金が30級制、雇用保険が48級制です。これらからすると、介護保険料の区分設定は異常だといわざるを得ません。