京都社会保障推進協議会ブログ

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政府ごまかし宣伝 「75歳超の医療費は5倍」というが

2008年09月16日 06時46分13秒 | 資料&情報
 「政府ごまかし宣伝『75歳超の医療費は5倍』というが」のタイトルで、8月18日付「しんぶん赤旗」に記事が掲載されています。
 9月5日に発表された「国民健康保険・後期高齢者医療 医療費速報(平成20年4月分)」(国民健康保険中央会)にもとづき、後期高齢者医療費を検証します。



<報道記事>
政府 ごまかし宣伝 「75歳超の医療費は5倍」というが…1日当たり ほぼ同額


 政府は、年齢で医療を差別する後期高齢者医療制度を正当化するため、「七十五歳以上の高齢者一人あたりの医療費は、六十五歳未満に比べると約五倍にもなる」(舛添要一厚生労働相、『中央公論』九月号)と盛んに宣伝しています。
 まるで、高齢者が必要以上に医療費を「浪費」しているかのような印象を与えますが、実際はそんな単純な話ではありません。
 一人当たりの医療費は、「一日当たりの医療費」、「一件当たりの受診日数」、「受診率」の三つの要素で決まります。それぞれを、高齢者と若い人で比べるとどうなるでしょうか。厚労省のまとめた「老人医療事業年報」の二〇〇四年度の数字でみてみました。
 「一日当たりの医療費」は、七十五歳以上は七十五歳未満と比べ、外来で一・一倍とほとんど変わりません。入院に関しては〇・九倍とむしろ七十五歳未満の人の方が医療費がかかっています。
 病院にかかった人の「一件当たりの受診日数」でみても、七十五歳以上の高齢者は、入院と外来のどちらでも若い人の一・三倍で、それほど多くはありません。
 大きく変わるのは「受診率」です。高齢者が、外来で二・六倍、入院で六・三倍でした。病院にかかっている人や入院している人の割合が、高齢者の方が多いということです。
 しかし、これは決して、無駄づかいではありません。年を重ねれば、病気になる人が多くなるという事実を示しているだけです。
 「五倍」かかるという宣伝は、政府・厚労省の常とう手段です。同省の高齢者医療制度施行準備室室長補佐として、制度を推進した土佐和男氏は「年間一人当たりの若人の医療費は大体十六万円だが、年間一人当たりの高齢者の医療費は七十七万円なので、約五倍の差がある」(『高齢者の医療の確保に関する法律の解説』)などと強調しています。しかし、その同じ著書のなかでは、「老人医療事業年報」などから数字を引用し、「一日当たり医療費」や「一件当たりの受診日数」には、高齢者も若い人も差がないことをはっきり記載しています。
 「五倍」という数字を強調して、高齢者の医療費を削減するということは、高齢者にとって命に直結する費用を無理矢理削るということです。ましてや、都合のいい数字だけを抜き出して、“誇大”宣伝することは許されません。(小林拓也)
(2008年8月18日(月)「しんぶん赤旗」)



「国民健康保険・後期高齢者医療 医療費速報(平成20年4月分)」がしめす数値
 (注:国保中央会の集計であり、後期高齢者との比較は市町村国保の数値とする。いすれも08年4月分)


①一人当たり医療費は、後期高齢者は市町村国保の3.1倍ですが、被保険者全員で除した数値で、高齢者一人一人のの受診(医療費)実態を反映したものではありません。
・市町村国保 22677円
 (8299億円を被保険者数36,597,813人で除した数値)
・後期高齢者 70350円
 (9202億円を被保険者数13,080,086人で除した数値)
②一日当たり医療費は、1.1倍と大きな差がないのがわかります。
・市町村国保 12575円
・後期高齢者 14026円
③一件当たり受診日数(日数/件数)で比較すると、外来で1.2倍程度、入院で1.1倍程度と、ほとんど差異が無いことがわかります。
・市町村国保 2.24日(外来1.83日、入院16.5日)
・後期高齢者 3.02日(外来2.22日、入院18.6日)
④受診率(被保険者のうち何人が一ヶ月に受診したか)は、今回の統計ではわかりませんが、件数を被保険者数で除した数値で比較すると、後期高齢者数に占める件数は市町村国保に比べてほぼ倍の比率となります。
・市町村国保  80.3%
・後期高齢者 155.6%


 後期高齢者の受診一回当たりの医療費や一ヶ月間に受診する日数に極端な差異が無いことが、国保中央会の統計(市町村国保との比較)でも明らかです。

 問題は、④でも推測できるように、年齢を重ねると受診率が高くなるのは当たり前のことだという事です。自公政府や厚労省の「高齢者は医療費がかかりすぎる」「だから後期高齢者医療制度で医療費抑制をはかるのだ」という根拠はありません。

 厚労省が先日発表した「07年 国民生活基礎調査の概況」でも、
「4 健康状態 6歳以上の者(入院者は除く)について、自覚症状の有無、通院の有無、日常生活影響の有無による健康状態の構成割合を性別にみると、「自覚症状・通院・生活影響ともなし」の者は男49.6%、女42.1%となっており、「自覚症状・通院・生活影響ともあり」の者は男6.7%、女8.6%となっている。」
と記述していますが、上記の数値を75才以上では「なし」が男19.7%、女10.7%となっており、「あり」は男23.2%(「いずれかあり」も含めると66.8%)、女27.0%(「いずれかあり」を含めると69.5%)と、当然ですが高い比率となっていることがわかります。



 国民健康保険・後期高齢者医療 医療費速報(国保中央会).xls



 自公政府の「高齢者の医療費は高い」キャンペーンは、高齢者の尊厳を踏みにじり受診抑制に誘導するものです。また後期高齢者医療制度の目的でもあります。


 後期高齢者医療制度の廃止を実現し、高齢者の又、国民の医療を受ける権利を守りましょう。

(以上)