京都社会保障推進協議会ブログ

京都社保協のニュースや取り組み案内、タイムリーな情報・資料などを掲載していきます。

お知らせ★11月13日(土) 「介護なんでも110番」を実施します!

2010年11月02日 15時06分59秒 | 資料&情報
介護サービスを利用するには、どうしたらいいの? どんな条件なら受けられるの?
ケアマネに相談したら、同居者がいるのでダメだとか、病院内の介助は断られたりとかで困ってませんか?
介護の仕事に就いているが、いつまでも続けられるか不安になっていませんか?
介護に関わる疑問や要望を介護現場で働くベテランや専門家が電話でお答えします。
利用者の方も、介護の職場で働いている方も、どんなことでも結構です。お電話ください!
  • 日時 11月13日(土) 午前10時~午後6時
  • 電話番号 0120-110-336
  • 相談料無料
主催 : 京都社会保障推進協議会(電話075-801-2526 メールshahokyo@labor.or.jp)

不可解な京都市の「散歩の同行」の取扱い

2009年10月08日 07時58分13秒 | 資料&情報

 今年8月24日付けで京都市は「訪問介護における『散歩の同行』の取扱いについて」なる文書を公表します。7月24日付の厚労省事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)を受けての文書ですが、明らかにローカルルールとしか言えない、不可解な内容です。


 京都市は、文書の公表に当たり次のように述べています。(以下、京都市ホームページより)

 訪問介護におけるサービスの内容等については,介護保険法第8条等に規定されているほか,「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年老計第10号通知。以下,「老計第10号」という。)において示されているところです。また,平成21年7月24日付で厚生労働省老健局振興課から事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)が発出され,訪問介護員による「散歩の同行」を含む訪問介護サービスについては,適切なケアマネジメントに基づくものであって,かつ保険者が個々の利用者の状況等に応じ必要と認める場合には,保険給付の対象となる旨が周知されました。
 これを受け,訪問介護における「散歩の同行」について,本市における取扱いを別紙のとおりまとめましたのでご参照いただきますようお願いします。なお,本取扱いは平成21年8月24日から適用することとします。


 以上の説明文書に続き、
1、訪問介護における「散歩の同行」の考え方
2、算定要件について
3、適切なケアマネジメントの実施について
4、その他の留意事項
について、詳細な留意点・開設をつけ記述をしています。


 まず、京都市の8月24日付文書を見てみます
。(ここから

 多くの疑問点がありますが、一番の問題は、不可解な独自算定基準を設けたことです。つまり、「いずれも満たす必要がある算定要件」として
(1)①他の介護サービスを受けることが困難、②他のサービスでは目標の達成が困難、③他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由があること。
(2)利用者の自立支援に資する(たとえばケアプランにおける長期目標又は短期目標に示された目標達成に必要な行為である)ものとしてケアプランに位置づけられていること。の(1)の基準なるものは、まったくの不理解から来るものです。(蛇足ですが(2)は当然の内容です)


 京都市が独自算定文書を出すきっかけになった「介護保険最新情報Vol.104」を見てみましょう。


    「介護保険最新情報Vol.104」は(
ここから

 どう読もうとも、京都市の言う「他の介護サービスを受けることが困難、他のサービスでは目標の達成が困難、他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由」が導き出されるのか、まったくわかりません。そもそも、「△△が困難」という理由が「合理的」と解釈すること自体に無理があります。厚労省事務連絡にはわざわざ、「自立支援、日常生活動作向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものであって、利用者の自立支援に資する(例えば、ケアプランにおける長期目標又は短期目標等に示された目標を達成するために必要な行為である)ものとしてケアプランに位置づけられるような場合については、老計10号別紙「1 身体介護」の「1-6 自立生活支援のための見守り的援助(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)」に該当するものと考えられることから」と記述し、ケアプランでの位置づけがされれば該当すること、そして、「行為の内容のみで一律機械的に保険給付の支給の可否を判断することなく、必要に応じて介護支援専門員等からの情報を得るなどし、個々の利用者の状況等に応じた判断」を行うために、保険者(京都市)が個々の状況判断を行うことが条件付けられているものです。

 「他の介護サービスを受けることが困難、他のサービスでは目標の達成が困難、他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由」とする京都市の算定基準そのものが、個々の利用者の状況判断を否定する一律機械的基準であることは明らかです。


 「散歩の同行」問題は、すでに国会でも決着済みの問題です。


 昨年12月2日付の「参議院議員大河原雅子君提出介護保険制度に関する質問(質問主意書)」に対する政府答弁では、

「訪問介護員による散歩の同行については、適切なケアマネジメントに基づき、自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、現行制度においても、介護報酬の算定は可能である。」としています。


 大河原雅子議員の「
質問主意書」、「答弁書




 京都市が不理解なのか、意図的なのかはわかりませんが、この間の政府答弁及び関係文書をよく読みこみ、なによりも、介護保険制度の根幹である介護支援専門員のケアマネジメント能力を信頼することが必要ではないでしょうか。


(以上)


資格証明書の交付についての厚労省事務連絡

2009年10月06日 12時15分34秒 | 資料&情報

 9月25日付厚労省事務連絡「新型インフルエンザの流行に関するQ&Aについて」で、事実上、資格証明書交付理由を「無効」にした内容が記載されています。
 ただちに市町村での徹底が求められています。

 「Q&A」は、2問の簡潔な文書ですが、流行期を迎えた新型インフルエンザ対策にとどまらず、重要な内容を含んでいます。


 問1では、5月18日付「新型インフルエンザに係る発熱外来の受診時における被保険者資格証明書の取り扱いについて」の文書について、現時点における一般医療機関での診察には適用しないとしています。


 しかし、問2では、「感染したと疑がわれるが経済的理由から医療機関で10割の医療費が払えないと申出があった場合、…特別の事情に当たると判断してよいか」との答として、

①資格証明書交付世帯員が医療を受ける必要があり、かつ、医療費の一時払い(10割)が困難な場合は、特別の事情に準ずるものとして短期証を交付する。
②上記①は、新型インフルエンザ感染の疑いにかかわらず対応するもの。
③そもそもこのような場合は、資格証明書の交付対象でなかった可能性がある。
④資格証明書の交付時点でなぜ把握できなかったか、事務処理体制のチェックが必要。
⑤資格証明書交付の全世帯にたいし、新型インフルエンザの大流行の前に、再度、特別の事情の把握を徹底すること。

としています。


 資格証明書の発行により、受診の手控えがおこり死亡にいたるケースがあとをたちません。(
全日本民医連調査


 厚労省は、後期高齢者医療に関しては、4月の通知文書で「特に、入院又は継続的な通院等により診療等を受けている、又は受ける予定のある被保険者については、その収入、生活状況、診療等の内容を勘案し、仮に資格証明書を交付した場合、医療費の全額を一時的に負担することが困難となり、必要な医療を受ける機会が損なわれるおそれがあると認められる場合には、上記の②に類する事由により特別の事情があると認めることが適当であること。」とし、高齢者への資格証明書交付を大幅に制限する内容を示しています。


 すでに、今年1月には小池晃参議院議員が質問主意書で同様の答弁を引き出しています。(
小池質問主意書等について



 これらは、「資格証明書交付をやめろ」との全国の運動の中で勝ち取ってきた前進です。


 今回の「連絡文書」は、保険料滞納による資格証明書交付世帯(経済的理由で保険料が払えずやむを得ず滞納している世帯=当然、医療機関で10割の医療費が困難な状況にある世帯)が、治療を受ける場合は、短期保険証を交付するとしただけでなく、もともと、「資格証明書交付にあたらない特別の事情」に該当しているのではないかと、至急に事務処理体制のチェックを求めていることです。


 保険者である市町村は、この「事務連絡」に基づき、経済的理由にもかかわらず資格証明書交付が行われていることを認識し、資格証明書交付をまず停止し、全世帯に保険証を交付すること。資格証明書を交付されている方が、そのことをもって「受診しない」ことが無い様に、とりわけ誰もが感染の可能性がある新型インフルエンザの流行期を前に、早急に保険証交付が求められます。


 厚労省はこれまでも、資格証明書について「国民健康保険においては収納率の向上はその保険運営上極めて重要であり、悪質な滞納者については、従前どおり、滞納処分も含めた収納対策の厳正な実施に努めること。」といってきました。十分な資産等があるにもかかわらず保険料を滞納している悪質者に資格証明書を発行しても収納率の向上に結びつかないことは明らかです。


 実際には、低所得者世帯をはじめ経済的困難から「高すぎる保険料は払いたくても払えない」のが実態です。ところが、市町村では、経済的理由による滞納を「特別の事情」として認めない、または短期保険証交付に当たっては「滞納額の半額を支払うこと」「○○○円でも支払え」との条件をつけているところが多くあります。これでは、医療をうける機会を奪ってしまうことになります。

 今年4月から中学生までには世帯への資格証明書とべつに短期保険証を交付することが義務付けられましたが、今回の再度の「事務連絡」により、すべての市町村が資格証明書交付を行わないことを求めていくことが大切です。



 事務連絡「新型インフルエンザの流行に関するQ&Aについて」




 (以上)



派遣村からの「抗議文」

2009年08月26日 08時00分52秒 | 資料&情報
 8月24日に発表した舛添厚労大臣に対する抗議文です。

                  抗 議 文
  
                        元派遣村名誉村長 弁護士 宇都宮健児
                            元派遣村実行委員会有志一同
                        〒104-0061 東京都中央区銀座6-12-15
                         COI銀座612 7階 東京市民法律事務所
                       TEL:03-3571-6051 FAX:03-3571-9379

厚生労働大臣 舛添 要一 殿

 私たちは、年末年始、日比谷公園にて派遣村を企画した実行委員会の有志です。
 貴殿は、8月18日、横浜市内の街頭演説で、年越し派遣村の取り組みについて言及し、「4000人分の求人票を持っていったが一人も手を上げなかった。大事な税金を働く能力があるのに怠けている連中に払う気はない」と発言しました。
 私たちは、この発言は、事実誤認により生じる偏見、もしくは、事実を捻じ曲げた中傷であり、命からがら派遣村を訪れ、今もなお厳しい雇用情勢の中で生活の再建を目指して努力している方々への侮辱であると考えます。自立を目指し、切実な思いで求職活動をしながら、何件も何十件も断られ、それでも求職活動を続けているのに、よりによって厚生労働大臣という立場にある人からこんなことを言われたら、どういう気持ちになるか。村民一人一人の心情を考えてください。
 派遣村は、厚生行政と労働行政の双方に対し、重たい提起を投げかけた取り組みでした。しかし、貴殿は目の前の現場に、一度も足を踏み入れなかった。そうした方が、事実を捻じ曲げた言動を繰り返していることを、私たちは黙認することはできません。上記の発言を撤回し、文書による謝罪を求めます。
 また、派遣村に持ち込まれた求人票に関する事実、及び私たちの見解を以下に記しますので、ご一読ください。

1)「一人も応募しなかった」というのは、1月5日の4施設入所初日のことである1月6日にも、派遣村実行委員会に対して、大村厚労副大臣から同様のクレームを受けました。しかし、1月5日は日比谷公園撤収作業後、国会への請願行動や議員申入れなどをしており、都内4施設に入所したのは午後4時ごろでした。東京都職員から施設の決まりごとなどの説明を受けるとすでに5時になり、ハローワークの出張窓口が閉まりました。初日の応募がなかったのは、こうした理由によるものです。
 また、このことは、大村氏にはその場で説明し、誤解を解いていますし、貴殿もその報告を受けているはずです。6日からは朝から相談が始まっていましたし、今ごろになって言い出すのは「為にする」議論です。

2)「手を上げなかった」というのは誤り
 1月18日の時点で、求職者登録をした村民は百数十名に上っており、4施設に滞在していた村民の半数に上りました。
 4000件の求人中から応募し、旅館の住み込みや清掃、警備、タクシー会社などに就職し、派遣村を去った方もおります。

3)4000件の求人には実態のないものも多かった
 応募をした村民は、ほとんど断られてしまっています。応募した会社から返ってきた返事は、「もう決まっちゃいました」「実は募集していないんです」「ハローワークから求人を出すよう言われて、ホントは募集してないんだけどお付き合いで求人を出しているだけなんです」といったものでした。こうした実情を、大臣は御存じでしょうか。

4)寮付き求人へのトラウマ
 当初の応募が少なかった背景には、派遣村に持ち込まれた求人の多くが、「住み込み」など寮付きの求人だったことにも原因があります。
 派遣切りは、雇用契約の解除と同時に、住まいを追われるという過酷な首切り体験でした。寒空に放り出された彼・彼女らは「二度と同じような目に遭いたくない」という思いをもっています。今度こそは、自分の住居を確保して、職場に通いたい、だから住み込み求人への、応募には躊躇する、というのは心情としても理解できることではないでしょうか。

5)求職活動どころではなかった
 年越し派遣村では、心身の不調を訴える人や、今日の食費もない極限状態に追い込まれた人が多く、生活保護を受給し、その日の生活費を確保することが最優先の課題でした。 
 実際、緊急小口貸付資金の特例交付が始まる1月7日夕方までは、ほとんどの人が無一文の状態であり、求職活動のための面接交通費などを持っていなかったのが実情です。
 また、既に、大半の方が派遣切り後に、ハローワークや様々なところに相談に行ったり、必死の思いで職探しをおこなって来られていました。その結果、有り金も底をつき、どうしようもなくなって派遣村にたどりつかれています。心身共に疲弊した状態では求職活動を満足に行うことはできません。

6)誰でも年収1000万以上稼げる求人があったらください
 上記の発言のあった翌19日も、貴殿は「求人は、すべて寮付住み込みで、年収1000万以上稼げるものだった」などと発言されたと聞いています。耳を疑いました。そんな求人があったという話は実行委員会では聞いていません。
 また、もしあったとしても、ある種の専門性が問われる職務である可能性が高く、派遣切りされたり、数年間の野宿経験をしてきた失業者が就ける仕事でしょうか。ミスマッチが大きすぎたとしか考えられません。そのことを、求職者が怠けているといった文脈にすり替えないでください。

7)政策の実施と言っていることが違います
 政府が21年度補正で「第二のセーフティネット」を構築したのは、昨年秋からの派遣切りで派遣村村民も含め、職も住居も失う労働者が大量に出たにもかかわらず、セーフティネットが機能していないというその反省の上に立ってのことだと思います。
 派遣村の村民は、多くの失業者と同様に求人活動をし、同様に就職できていませんが、これらの人たちに対する「第二のセーフティネット」が無駄だというのでしょうか。そうであれば、政策決定者自ら「第二のセーフティネットなど不要だ」と言っているのと同じです。閣僚としての自らの行為に矛盾する発言であり、その社会的責任は重大であると考えます。
                                              以上

一部負担金に係る2つの通知文書(5)

2009年08月11日 06時32分39秒 | 資料&情報
 7月10日付「国民健康保険における一部負担金の適切な運用に係るモデル事業の実施について」の検討に入ります。

 「モデル事業」とは、8月7日掲載の(3)の、参議院厚生労働委員会での質疑で述べられている事業のことですが、これまでの国保44条の活用による一部負担金減免問題と異質な内容をもった通知文書です。



  国民健康保険における一部負担金の適切な運用に係るモデル事業の実施について


 まず、モデル事業は
①各都道府県で少なくとも1市町村を選定する。
②実施期間は、今年9月から来年3月までの7ヶ月間。
③モデル事業の結果を検証し、来年度中には全市町村で実施予定。
となっています。


 ところが、問題はモデル事業の内容です。
内容として「協力医療機や生活保護部局を含めた協議会等を設ける」など、行政と医療機関との連携体制をとることは重要なことですが、

2.医療機関等との連携による一部負担金等の適切な運用
(1)省略
(2)市町村は、あらかじめ定めた基準に該当し、減免の決定をしたときは、(中略)一部負担金減免証明書を交付する。ただし、その基準については次のすべてに該当する世帯を減免の対象として含むものとする
 ①協力医療機関において入院治療を受ける被保険者がいる世帯
 ②災害や事業の休廃止、失業等により収入が著しく減少した世帯
 ③収入が生活保護基準以下、かつ、預貯金が生活保護基準の3か月以下である世帯

と、厚労省が「対象として含む」としながら、一定の減免基準を示している点です。上記の3点のすべてに該当する世帯に対象者を限定すれば、事実上、一部負担金減免が極めて狭い範囲に限定されることは明らかです。
 これでは、「低所得者」世帯や、「生保基準の1.5以内」等の減免規定を持っている自治体の規準を、引き下げることになりかねません。



 もうひとつは、
3.保険者徴収制度の活用
(5)前略…ただし、保険料の滞納処分を実施する状態である者については、保険料徴収が未収金徴収に優先するため、徴収額から保険料滞納分を差し引いた額が請求額に満たない場合、その差し引いた額の範囲で協力医療機関に支払う。
としている点です。

 実際には医療機関にとって未収金対策にならない、「保険料滞納」に利用されるだけの結果となりかねないものです。この方式が、全国の自治体で実践されれば「保険料収納率向上対策」の決め手として使われる可能性があります。

 なお、国保42条第2項による保険者徴収の実施そのものが、低所得者世帯への強制的な徴収です。
 問題の解決には、一部負担金減免制度の拡充や無料低額診療実施医療機関の拡大など、社会的なセーフティーネットとしての整備こそ求められるものです。


(以上 おわり)

一部負担金に係る2つの通知文書(4)

2009年08月10日 07時31分45秒 | 資料&情報

 「生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について」の、もう一つの問題である「無料低額診療」についての検証です。

 上記の「通知文書」には、「医療機関、市町村の国保部局、福祉事務所等に国民健康の保険料や一部負担金を支払うことが困難である被保険者が相談に訪れた場合には、いずれの窓口においても、必要に応じて、一部負担金減免制度、生活保護制度、無料低額診療事業などについて、十分な情報提供ときめ細かな相談対応が出来るよう」と記載されています。


 医療機関での「無料低額診療事業」とは、生計困難者が、無料または低額な料金で診療を受けられる医療機関のことであり、社会福祉法の「第2条(3)次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。」の「五 生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業」として位置づけられています。


 無料低額診療事業は、医療機関の未収金問題にかかわらず、早くから厚労省の様々な文書でその意義が述べられています。

 2003年「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(2008年改定)」では、「保健及び医療の確保について……無料低額診療事業(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第3項第9号に規定する無料低額診療事業をいう。以下同じ。)を行う施設の積極的な活用を図るとともに、病気等により急迫した状態にある者及び要保護者が医療機関に緊急搬送された場合については生活保護の適用を行う。」と積極的活用をすべきとの立場を表明しています。
 また、2004年「人身取引対策行動計画」では、「婦人相談所に置かれた医師の診療に加え、状況に応じて、無料低額診療事業を行う医療機関を始めとする周辺の病院、利用可能な諸制度等について情報提供等の支援を行う。」とし、無料低額診療事業の役割について記載しています。
 さらに、2005年の厚労省通知文書では「そもそも無料低額診療事業は、広く生計困難者一般を対象とするものであり、被保護者やホームレスに限られるものではありません。つきましては、生計困難者であれば、人身取引被害者、配偶者からの暴力(DV)被害者その他の者についても、積極的に無料低額診療事業の対象としていただくようお取り計らい願います。」と、さまざまな原因・理由による「生活困難者」全般について、積極的に事業の対象とするよう徹底を図っています。


 

  ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(旧)

  人身取引対策行動計画

  社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で診療を行う事業における人身取引被害者等の取扱いについて




 ところが、派遣切りや解雇問題、低所得者やホームレス、DV被害者対策など現在で最も求められている事業の一つである「無料低額診療事業」を行う医療機関が、果たしてどれだけあるのか、そのことが国と京都府(京都市)に問われています。


  京都府内の無料低額診療事業医療機関(老健等除く)


<京都市内の無料低額診療事業医療機関>
〇社団法人京都保健会
 吉祥院病院
 上京病院
 仁和診療所
 九条診療所
 久世診療所
 春日診療所
 朱雀診療所
 京都民医連中央病院
 京都民医連太子道診療所
〇社団法人信和会
 京都民医連第二中央病院
 東山診療所
 川端診療所
 京都民医連あすかい診療所
〇財団法人京都健康管理研究会
 中央診療所
〇財団法人京都工場保健会
 京都工場保健会診療所
〇社団法人視力愛護協会
 富井眼科診療所
〇財団法人仁風会
 嵯峨野病院
〇財団法人川越病院
 川越病院
〇財団法人真和会
 京都大橋総合病院
〇社会福祉法人博愛会
 京都博愛会病院
 冨田病院
〇社会福祉法人京都社会事業財団
 京都桂病院
 西陣病院
〇日本赤十字社京都府支部
 京都第一赤十字病院
 京都第二赤十字病院
〇財団法人京都予防医学センター
 京都予防医学センター付属診療所

<京都府内の無料低額診療事業医療機関>
〇日本赤十字社京都府支部
 舞鶴赤十字病院(舞鶴市)
〇社団法人京都保健会
 京都協立病院(綾部市)
〇社会福祉法人 宇治病院
 宇治病院(宇治市)
〇財団法人 長岡記念財団
 長岡病院(長岡京市)
〇社会福祉法人 恩賜財団済生会
 済生会京都府病院(長岡京市)
〇財団法人 丹後中央病院
 丹後中央病院(京丹後市)


  全く少ない「無料低額医療機関」、自治体立の公立病院はまったく無し!


 京都府内での公的病院での事業実施があまりにも少ない点について、今年3月18日京都府議会府民生活・厚生常任委員会で、日本共産党光永敦彦府会議員が取り上げていますので紹介します。
 結論からいえば、京都府は「他人事」の答弁に終始したと言えます。


【光永議員】
  無料低額診療事業の今日的意義への評価は。
【健康福祉部長】
 無料低額診療事業自身の歴史は古いが、これを各医療機関が採用されるかどうかは、患者の層、所在地、対象となる患者の疾病の状況や所得階層など色々な状
況があるので、個別的に各医療機関が判断するものと考える。
【光永議員】
 当然、それぞれの社会福祉法人等が判断して申請するものだが、京都府の対応
として、届け出があった場合、要件さえ合致していれば、国の通知で抑制という方針が一時あったが、今は、届け出があれば受理するとうスタンスでよいですね。
【健康福祉部長】
 受理、受理しないというものではなく、実態として当該医療機関が実施されることが適当であるかどうか、また、要件を満たす可能性があるのかどうかといったものも含めてお話を聞かしていただき、判断をした上での対応となる。
【光永議員】
 無料低額診療を実施している施設一覧をみると、京都府下は数が少ないし、なおかつ、老健施設でいくつか実施されているが、病院はほとんどないですね。公的病院と言えば、舞鶴赤十字病院や済生会京都府病院くらいしかない。直接不動産取得税や固定資産税の減免というものがあるからやることができるという面もあるのだろうが、ほとんど民間であって公的病院がない。公的病院なり、京都府の病院なども積極的に取り組んでも良いと思うが、検討しているか。
【健康福祉部長】
 実施するかは、その地域の実情や各医療機関のかかえる患者の状況、そういったもので判断されている。私ども、決して少ないとは思っておりません。委員ご紹介の病院も財団法人、公益法人などいわゆる公的病院が実施していると理解している。
【光永議員】
 公的病院がそれくらいしかないから、もう少し公的病院を増やすべきでないかと提案している。京都府として府立の病院について対応については検討されるのでしょう
か。
【健康福祉部長】
 現在のところ考えていない。
【光永議員】
 これだけ深刻な事態が広がっていて、窓口負担も景気が悪く大変という声もあがっているので、必要があればやるというなら、その必要があるか判断をすべきでないかと思うがどうか。
【健康福祉部長】
 無料低額診療の要件を受けるには、一人二人という事ではなくて、全患者数の一定割合を満たさなければなりません。そういったことを含めての判断となるということで、今の府立病院で一定割合を超えるという状況にあるとは今考えておりません。
【光永議員】
 考えていないではなく、事実としてどうかを調べて、私は必要だと思うので、検討していただきたいと思います。以上、求めて終わります。



  すべての公立病院で「無料低額診療事業」の実施を求めます


 京都府内で無料低額診療事業を行う医療機関の拡大は急務です。生活保護世帯は全国で166万4892人(昨年4月から10万人以上増加)となっています。国保料の滞納世帯数は453万世帯(20.9%)と増加しています。生活困窮者が急激に増加しているのは京都でも同様です。依然として資格証明書、短期保険証を発行している府内の自治体があります。派遣切りの解雇等で無保険になった方、窓口に取りに来ないという理由で未交付状態になっている無保険者など、「誰もが安心して医療機関に受診できる」ため、一刻も早く無料低額診療を行う医療機関の拡大が求められているのです。
 公立病院など公的病院が果たす役割がここにあります。


 京都府の府民生活・厚生常任委員会での、当局の答弁は、無料低額診療事業のまったくの無理解でしかありません。
 まるほど、無料低額診療を行う場合には、一定の基準が定められています。


  平成13年7月23日「社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で診療を行う事業について」


 問題は通知文書にもあるように「低所得者、要保護者、行旅病人、一定の住居を持たない者で、野外において生活している者等の生計困難者を対象とする診療費の減免方法を定めて、これを明示すること。」としている点です。
 事業を行っている医療機関は、どこも医療機関(法人)規定や関係機関との協議で独自の減免規定を持っています。
 つまり、公立病院が「対象者がいない」「基準を満たない」でなく、幅広い「生計困難者」「低所得者」「無保険者」「DV被害者」等が利用できる減免規定をまず作り上げ、「府民だより」や「市民しんぶん」等で積極的に広報すること、各行政機関の窓口で無料低額診療事業のお知らせを行い、公立病院をはじめとした医療機関との密接な連携を図ることが必要だということです。

 どのような減免規定をつくり、積極的な広報活動を行えばよいのか、このことを考えるのが行政の責任ではないでしょうか。

 生計困難者に重くのしかかる医療費の一部負担金問題の解決のため、国保44条による一部負担金減免制度の拡充とともに、く量定額診療事業を行う医療機関の拡大は急務です。その先頭に京都府立、京都市立の医療機関は立つべきではないでしょうか。


(以上 つづく)


 



  


  
 


 


 

 



 

 


一部負担金に係る2つの通知文書(3)

2009年08月07日 05時07分51秒 | 資料&情報

 今回は、国保一部負担金減免に関する参議院厚生労働委員会での質疑を紹介します。

 6月18日参議院厚生労働委員会での小池晃議員(日本共産党)の質疑

○小池晃君 
 (前略)医療保障の問題をちょっと今日取り上げたいんですが、国民健康保険法の四十四条は一部負担金の減免制度を設けております。医療機関の未収金問題の検討会の求めに応じて、厚生労働省が一部負担金減免の実施状況について調査をやっていますが、全国の保険者のうち減免制度があるのはどれだけでしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君) 
 国民健康保険制度におきましては、法律に基づきまして、保険者は、これは市町村でございますけれども、一部負担金の減免又は徴収の猶予を行うことができると、このようにされております。したがいまして、特段の定めがなくてもすべての自治体でこれを実施することは可能となっているものでございます。なお、条例、規則等におきましてその運用の基準を定めている自治体の数で申し上げますと、平成十九年度の調査では、1818保険者のうち1003保険者となっております。
○小池晃君
 この一部負担金減免制度というのは、本来公平性の観点からいえばすべての自治体で実施されるべき制度でありますし、非正規雇用の広がり、あるいは不況の深刻化の中で生活苦しい方は増えているわけですから、これは制度の必要性が増していると思うんです。 大臣にお伺いしますが、今御説明があったように、これは条例がなくても国民健康保険法四十四条を根拠に直接実施可能というふうにされている、そのことから考えても、保険者の半数近くが制度を持っていないという実態について、このままでいいというふうにお考えなのか、どうすべきなのか、大臣の見解を伺います。
○国務大臣(舛添要一君)
 今、未収金検討会の報告書は出ていまして、それに基づいてこの二十一年度にモデル事業をやりたいと思っていますが、様々な識者の意見をお聴きした上で統一的なガイドラインのようなものが出せるかどうか、まさに国保法の四十四条で規定がなくてもやれるんですけど、これは半分ぐらいがやっていないということですから、どうするかちょっと検討させていただきたいと思います。
○小池晃君
 基準を示すということになると、今既にやっている自治体の関係者からは制約されるんじゃないかという心配の声が上がっているので、低所得者に対するものを含めて今やっているその制度を否定しない、手を縛るものでないというふうにしていただきたいと思うんですが、その点確認します。大臣、いかがですか。
○国務大臣(舛添要一君)
 これは費用負担の問題がありますから、先ほど申し上げましたモデル事業を見た上で、その点についても検討させていただきたいと思います。
○小池晃君
 今やっているものを、手を縛る、制約するようなものにはしないということでいいですね。イエスかノーかでお答えください。
○国務大臣(舛添要一君)
 そのことも含めて、特別調整交付金の算定との絡みもありますから、少し検討させてください。
○小池晃君
 今お話もありましたが、やっぱり財政影響というのを自治体は心配をしているわけです。これは未収金検討会の報告書でも、市町村への財政影響に対する配慮等の対策を検討すべきと、こうなっております。やっぱり今、自治体財政厳しい中で持ち出しが増えるようなことになると、二の足を踏む自治体が多いことは、それはそうだと思うんですね。局長、具体的な財源の手当てについて、検討状況どうなっていますでしょうか。
○政府参考人(水田邦雄君)
 今お話ありましたとおり、医療機関の未収金問題に関する検討会の報告書におきまして、市町村の財政影響の懸念に対する配慮を検討すべきであると、このようなことは記載されてございます。この内容を含めまして、私どもとしてどのような方法がいいか検討をしているところでございます。
○小池晃君
 大臣、基本的な認識をちょっと聞きたいんですけど、やっぱりこれ、今こういう社会状況、苦しい人が増えている中で、この制度をやっぱり前向きに広げていくという基本姿勢で臨むべきじゃないかと思うんですが、その点について、大臣、スタンスをちょっと言ってください。
○国務大臣(舛添要一君)
 滞納者の中に悪質なやつもいるわけですね。これに対しては厳しく当たらないといけない。しかし、生活が困窮してどうしてもという方に対しては、それはセーフティーネットを更に広げるという方向で努力すべきだと思っております。
○小池晃君
 是非そういうふうにしていただきたい。一部負担金減免制度を持っている自治体のうち、低所得を理由にする減免制度を持っている保険者は155なんですね。基準はいろいろあるんですが、ほぼすべてが生活保護基準を参考にして減免の判断を行っております。最後に、大臣に伺いたいんですが、医療を受ける権利を、低所得者の皆さん、生活に本当に苦しんでおられる方も含めてひとしく保障していくためにも、やはりこの低所得者に対する一部負担金減免制度というのは重要な制度だというふうに思っておりますし、本来は国がやはり自らやるべきような仕事ではないかなというふうにも思っております。やっぱり自治体がやっている取組を国としても支援をして、更にこれ拡充を図っていくということが必要じゃないかと思いますが、大臣の見解を最後に伺います。
○国務大臣(舛添要一君)
 まさに、モデル事業でそういうことが実現できればというふうに思っておりますので、特別調整交付金、これを負担分の半分ぐらいは国が見るという形でできないものかということで検討を進めておりますので、セーフティーネットは重層的に様々なものがあっていいと思いますから、これも一つとして活用したいと思っております。
○小池晃君
 やはり、年金財政と並んで国民健康保険というのは今の財政問題で非常に深刻な問題だと思いますので、きちっとセーフティーネットとしての役割を果たせるように見直していくということを引き続き求めていきたいというふうに思います。終わります。


 以上が質疑の内容ですが、
①国保44条により、ずべての自治体で「特段の定めがなくても実施することが可能」であること。
②同時に、条例等で基準を持っているのは1818自治体(保険者)のうち1003であり、その中でも低所得者を基準にしているものは、わずか155にすぎないこと。
③すべての自治体で「低所得を理由」とする減免規定を策定させる必要があること。
④単に「医療機関の未収金対策」でなく、重要なセーフティーネットとして「国保44条減免制度」を拡大・拡充することが大切であること。
などが、明らかにされた質疑といえます。

 国会内の答弁に終わらせず、実行をせまる運動を市町村に求めていきましょう。


 次回は、無料低額診療問題について検討します。

(つづく)

















一部負担金に係る2つの通知文書(2)

2009年08月06日 07時55分00秒 | 資料&情報

 まず「生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について」(以下、「通知文書」と記載)から見ていきます。

 「通知文書」では、
「(前略)医療機関の未収金は「生活困窮」と「悪質滞納」が主要な発生原因と指摘されているところである。このうち「生活困窮」が原因である未収金に関しては、国民健康保険における一部負担金減免制度の適切な運用や医療機関・国保・生活保護の連携によるきめ細かな対応により一定程度の未然防止が可能であると考えられる」とし、具体的には、「国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第44条第1項では、保険者は特別の理由がある被保険者で保険医療機関等に一部負担金を支払うことが困難と認められるものに対し、一部負担金の減免又は徴収猶予の措置を採ることができることとされている。実際の運用では適用の基準を設けている市町村が多くあるところであり、こうした基準や運営方針について、医療機関及び生活保護担当部局とも情報を共有し、対象者に対して適切に制度が適用されるよう努めること。」
と、記載しています。

 通知文書「生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について」



 問題は、いくら「対象者に対して適切に制度が適用されるよう努める」としても、実際の国保44条による減免・猶予規定がどうなっており、適切な運用がされているかが問題です。


 京都市の国民健康保険条例を参考にしてみてみます(具体的に運用基準を定めている市町村もほぼ同様の内容になっています)。


 京都市国保条例では

第5条 市長は,災害その他特別の理由により,法第36条第1項各号に掲げる給付に関する一部負担金を支払うことが困難であると認められる被保険者に対し,次の各号に掲げる措置を採ることができる。
(1) 一部負担金を減額すること。
(2) 一部負担金の支払を免除すること。
(3) 健康保険法第63条第3項第1号に規定する保険医療機関又は保険薬局に対する支払に代えて,一部負担金を直接に徴収することとし,その徴収を猶予すること。

と規定されており、京都市健康保険条例施行細則で

第6条 条例第5条の規定により一部負担金の減免又は徴収猶予を受けようとする世帯主は,国民健康保険一部負担金減額(免除・徴収猶予)申請書にその理由を証明する書類を添えて,区長に提出しなければならない。
2 区長は,前項の申請があったときは,速やかに当該申請の承認又は不承認を決定し,文書によりその旨を当該世帯主に通知しなければならない。
3 区長は,前項の規定により承認を決定したときは,当該承認に係る証明書を当該世帯主に交付しなければならない。

と、申請書が提出されたら、速やかに承認又は不承認を決定し文書による通知を義務付けています。


ところが、国保条例第5条にある「災害その他特別の理由」については、同じく国保条例施行細則では、

第5条 条例第5条及び第20条に規定する災害その他特別の理由とは,次の各号に掲げるものをいう。
(1) 被保険者又は納付義務者(以下「被保険者等」という。)が,その資産について災害を受け,又はその資産を盗まれたこと。
(2) 被保険者等がその事業又は業務を廃止し,又は休止したこと。
(3) 被保険者等がその事業又は業務について大きな損害を受けたこと。
(4) 前3号に掲げる理由に類する理由があること。


 これでは、多くの「生活困窮者」が一部負担金減免・猶予規定の適用を受けにくくし、実際に、「なかなか減免・猶予が受け付けてもらえない」事態となっています。
 今回の「通知文書」に基づき、早急に「一部負担金減免・猶予規定」を改め、柔軟に「特別な理由」の運用を行うべきです。


 なぜか!


 この「通知文書」のもとになっている「医療機関の未収金問題に関する検討会」で出された未収金患者の実態を見れば明らかです。
 検討会では、大規模な未収金問題の調査を全国の医療機関対象に行っています。そのなかで、「未収金のある患者の実態」調査もおこない、原因や患者の生活状況についての分析結果を公表しています。

  未収金に関するアンケート調査報告


 調査では、21,150件(患者数)の未払い者に対して、病院の担当者からみて「患者が今回の医療費を支払うだけの資力がないほどに困窮しているか」との問いに
◆生活困窮である … 17.0%
◆生活困窮でない … 38.6%
◆わからない    … 40.6%
と、17%が「医療費を支払うだけの資力がないほどに」生活が困窮している実態が明らかにされています。(実際には「わからない」が4割以上あり、生活困窮者はさらに増加すると推測されます)

また、「生活困窮と未収の理由」では
▲「生活困窮でない」なかでも
 ・医療費の支払い資力なし … 2.8%(232人)
▲「わからない」のなかにも
 ・医療費の支払い資力なし … 5.5%(473人)
となっています。


 

 「通知文書」に記載されているとおり「一部負担金減免制度等により未然防止が可能」とするならば、市町村の減免規定では最低限、以下の内容を具体化し、適用するのが当然と言えます。

(1)国保料法定減免対象者
(2)短期保険証交付者(短期保険証交付自体が入院・通院を抑制するものであり、一般の保険証を交付。ただし保険料が払えない実態があるとして)
(3)低所得者(生活全般の困窮者 少なくとも生保基準の1.5程度)
(4)その他、「災害その他特別の理由」など

とし、生活実態に見合った柔軟な適用をすることが求められています。

とことが、全国の市町村での減免規定整備状況は、約半数であり、ましてや未集金対策の「決め手」として運用できる「低所得者」を、免除規程としている自治体はきわめて少数であることが明らかにされました。

 まさに、自治体要求運動として取組む課題であることが必要になっています。

 次回に、国保一部負担金問題での国会質疑を取り上げます。


(以上 つづく)










一部負担金に係る2つの通知文書(1)

2009年08月05日 00時21分15秒 | 資料&情報
 国民健康保険法第42条及び44条に係る2つの通知文書が7月に相次いで厚労省から出されました。
 すべての市町村で国保44条に基づく一部負担金の減免・免除規定の運用を改善していくためにも、厚労省通知文書の内容を検討していきます。

 2つの通知文書とは、
①7月1日付「生活に困窮する国民健康保険の被保険者に対する対応について」
②7月10日付「国民健康保険における一部負担金の適切な運用に係るモデル事業の実施について」
であり、いずれも「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」に基づく対応として出されたものであり、医療機関が患者さんから窓口で受け取る一部負担金問題の扱いについての文書と言えます。


 まず、マスコミの報道記事を紹介します。


 

国保加入者の滞納治療費、市町村の徴収に厚労省が基準作り

「悪質滞納」なら差し押さえも

 厚生労働省は、国民健康保険に加入している人が病院で治療費を払わない未収金問題の対策として、市町村が病院に代わり患者から未収金を徴収する制度の運用基準を設けることを決めた。
 9月から全国でモデル事業を実施し基準の内容を詰め、来年度中に全市町村に通知する。
 市町村による未収金の徴収は国民健康保険法に規定されており、病院が努力しても回収できなかった場合、同保険を運営する市町村に要請して、財産差し押さえなどができる。しかし、病院がどこまで督促の努力をすれば市町村が徴収に乗り出すのかなど、運用基準が定まっていない。このため厚労省の調べでは、2006年度に実施されたのは34市町村の86件、回収額は33万円にとどまっている。
 今回始めるモデル事業は、各都道府県で1市町村以上を選定し、各市町村と医療機関で協議会を設置し、連携方法を確認する。医療機関は患者の治療終了から3か月過ぎても治療費未払いの場合、電話での支払い催促や内容証明郵便での督促状送付を行い、市町村も催促を始める。半年過ぎて、医療機関が催促や督促状送付、患者訪問を行っても回収できない場合は市町村が財産の調査に入る。払える能力があるのに払わない「悪質滞納」と認定すれば預金の差し押さえなどを行う。
 厚労省はモデル事業終了後、これら一連の手続きを検証し、運用基準として正式決定する予定だ。
 民間の医療機関でつくる「四病院団体協議会」の推計では、加盟5570病院の未収金総額は2002~04年度で853億円を超える。こうした未収金は病院の赤字として処理されており、厚生労働省の未収金問題検討会の資料によると、06年度には1病院あたり約277万円の未収金を損失計上した。厚労省は、未収金の約4割は国民健康保険加入の患者によるもの、約1割は「悪質滞納」とみている。(2009年7月30日  読売新聞)

  読売新聞記事


 医療機関にとって一部負担金の「未収金問題」は深刻な事態です。何らかの解決方法が必要であることは言うまでもありません。
 しかし、今回の厚労省通知ではたして解決する方向に向かうのでしょうか。次回から、具体的な文書内容の検討を行っていきます。


(以上 つづく)


第2回あんしん医療制度研究会(京都府)の概要報告

2009年08月03日 18時26分04秒 | 資料&情報

 7月14日に京都府の第2回あんしん医療制度研究会が開催されました。「国保一元化」にむけたデーター整理と分析の内容について論議され、具体的なスタートが始まりました。

 研究会では、「調査研究の主要フレーム案」が提示され、レセプトデーターに基づく分析の具体的内容が明らかにされました。

 主要な内容は
(1)①患者の受診動向について
   ②疾病構造の分析について
(2)医療資源の分析について
(3)健診等の効果の分析
(4)医療資源と医療費の関係の分析について
(5)①市町村国保に関する調査研究
   ②将来における各市町村国保財政状況
   ③将来における各市町村の国保保険料
(6)都道府県の保健医療政策に関する調査研究




 研究会で池上医療企画課長が行った説明の要点。


〇レセプトデーターの活用が大きな特徴。傷病名データーを用いて受療率等の分析が可能。患者の住所データーを用いて市町村単位で患者数を掌握できる。医療費データーを用いて年齢別地域別の一人当たり医療費の分析が可能。

〇市町村及び二次医療圏を超える患者の受療行動状況を把握。分析は4疾病5事業に着目して実施する。

〇患者の受診行動は、二次医療圏ごとの疾病動向と、対応できる医療資源を関連付けて分析する。

〇疾患等別に医療資源の状況を地図上に図示したい。レセプト、患者調査、医療機能調査を組み合わせて実施する。

〇住んでいる地域から医療機関への移動にかかる時間の調査も行う。この場合、発症から治療までの時間が問題になる疾患を中心にしたい。

〇健診等の効果の分析。全国、京都府内の好事例の収集、保険事業の効果に関するデーターの分析。

〇必要な医療資源の分析は、現在の医療資源の状況、アクセス時間の重要性、実際の患者の移動状況を踏まえ、疾病別・事業別の望ましい医療供給体制を検討する。

〇将来における各市町村国保の財政状況の分析は、以下の試算で将来における各市町村の国保保険料を推計する。
 <試算1>現在の年齢階層別1人当たり医療費が変わらないと仮定し、年齢階層別人口のみが変化するとして、2025年における医療費を分析。
 <試算2>人口構成の変化とあわせて年齢別医療費の変化も踏まえた将来の医療費推計を行う。

〇こうした分析結果を踏まえて、詳細なデーターを用いた医療計画等の策定や市町村国保の一元化等、都道府県の保健医療政策をより効果的にするための方策について検討する。


 以上です。



 国保一元化問題については、以前にも「情報&資料」に掲載していますので参考にしてください。



   「第2回あんしん医療制度研究会」資料



(以上)


続:京都市立病院PFIについて(10)

2009年07月08日 07時05分01秒 | 資料&情報

 8月19日には、京都市立病院PFI事業参入業者の入札が行われます。ただし入札企業は1グループのみなので事実上の決定と言えます。



 今回は、まとめ的問題提起として資料提供します。


   入札参加業者が1社の矛盾


 神戸市立中央病院PFI事業(新築移転、同時に地方独立法人化)では、2つの民間企業が入札参加を申し込みましたが入札書類の提出期限直前に1グループが撤退。その結果、神戸製鋼及び伊藤忠商事グループが1社のみの参加となります。入札予定価格は事前に公表されていますので、神戸製鋼・伊藤忠SPCによる入札金額は、
  予定価格 102,380,000,000円
  入札金額 102,378,150,000円

 ところが、1グループのみの参加状況の中で、最終的な審査結果は
  定性評価(提案内容の優劣) 合計600点
  定量評価(入札金額の評価) 合計400点
 で、
  定性評価は274点/600点
  定量評価は400点/400点
 という結果になっています。1グループのみの入札参加なので定量評価が満点となり、定性評価で基準の半数以下であっても参入できるしくみです。
 ちなみに定性評価は
  A:具体的に極めて優れた提案がある
  B:具体的に優れた提案がある
  C:愚弟的に提案がある
  D:特に提案がない
 4ランク評価で、審査結果は
  A:なし
  B:14項目中8項目
  C:      5項目
  D:      1項目
 これでは、VFMのもう一つの内容(同一金額で比較した場合サービスが向上する)も期待することはできないと思います。

 京都市立病院は、当初に述べたようにワタキューグループ(ワタキューと三菱商事、麻生)1社のみの入札になります。1社の場合には「予定価格は公表しない」としていますが、まさに「入札金額」及び「審査結果」が注目されます。



  神戸新中央病院「応募者提案に関する審査結果(答申)及び審査講評」



 
  PFI手法の見直しは、各地の公立病院ですすんでいます


 平成21年3月に公表された仙台市立病院基本計画では、新病院の建設について以下の記述をしています。
 「病院施設の整備方式としては,公共による財源調達方式のほか,民間資金を活用したPFI方式によるものがありますが,病院事業では,医療技術の進歩や診療報酬改定等の変動要素をあらかじめ見込んだリスク分担等が難しい上,院内に病院とSPC(受注事業者)の2つの指揮命令系統ができることによる運営面の弊害が懸念されます。」「新病院の整備にあたっては,PFI方式による整備は行わず,公共による財源調達方式を採用しますが,経済性を考慮した設計等により,整備費用抑制に取り組んでまいります。」とし、PFIにたいして率直な問題点を指摘しています。


  仙台市立病院基本計画(概要版)


 

 京都市が、算出根拠不明なVFMの幻想の上に立ち、全国の教訓であるPFI事業の問題点を学ばず、このまま京都市立病院整備運営事業をすすめるなら、市民にいのちと健康を守る上でも、税金の使い道としても、重大な負担を強いることになりかねません。

 「いまからでも遅くない」!

 京都市の賢明な判断を期待して連載を終わります。



(以上 京都社保協政策部)



 


 
  


続:京都市立病院PFIについて(9)

2009年07月07日 00時18分56秒 | 資料&情報

 なぜ、薬品費<診療材料費となるのか?当局の説明は?問題は「それでも高い委託料」にたどり着きます。


(前回の記事を参照してください)

 京都市の担当者の説明ではVFMの算出に当たり
○薬品費から「検査試薬」を、診療材料費に移し変えた。会計処理用の問題であり、国からも了解を得ている。
○診療材料費のうち、放射性同位元素は、病院が直接購入となるので、SPCをとうさない。したがってVFMの計算から除外している。


 との理由で、平成19年度決算からの数字でなく、「薬品費<診療材料費」となっているとのことだそうです。ただ検査試薬の金額がどれぐらいなのかは公表されていませんので、SPCに任せれば「薬品費で4%の削減効果」「診療材料費で3%の削減効果」といわれても、具体的な根拠を示さない限り(説明責任を果たさない限り)、だれも信用できないのではないでしょうか。


 ちなみに、市立病院がどのような会計基準を採用しているのかの問題があります。公営企業法に基づく会計処理なのか、地方独立行政法人法による会計処理なのか、総務省などは「公立病院ガイドライン」等で「病院会計準則」(民間病院並みの会計基準)をとるようにしていますが、市立病院の場合も「病院会計準則」に基づく会計基準をほぼ踏まえた基準を採用しているので、勘定科目(薬品費に含まれるものはなにか、診療材料費にふくなれるものはなにかなど)は、相違ないものとみてよいでしょう。


  平成16年8月19日付の書き都道府県知事宛「病院会計準則の改正について」では、「別表 勘定科目の説明」で
○医薬品費
 (ア)投薬用薬品の消費額
 (イ)注射法薬品(血液、マイコプラズマを含む)の消費額
 (ウ)外用薬、検査用試薬、造影剤など前記の項目に属さない薬品の消費額
○診療材料費 
 カテーテル、縫合糸、酸素、キプス粉、レントゲンフイルム、など1回ごとに消費する診療材料の消費額
○医療消耗器具備品費
 診療、検査、看護、給食などの医療用の器械、器具及び放射性同位元素のうち、固定資産の計上基準額に満たないもの、または1年以内に消費するもの


 上記のとおり、通常の病院会計勘定科目の仕分けは、
「検査用」→「医薬品費」
「放射性同位元素(固定資産計上以外)」→「医療消耗器具備品費」
となっています。

 これも、説明不足、資料提供不足、つまりVFMの算出根拠となる資料の詳細がまったく明らかにされていないことから来る「不明」といわなければなりません。


   「病院会計準則「勘定科目の説明」


 その他でも、施設整備費用の「直接工事費」と「共通費」の設定問題「従来手法にくらべて直接工事費10%削減、削減後の直接工事費に対する共通費の割合を15%と設定」の15%設定根拠などが、「公共建築工事共通費積算基準(国土交通省)」に基づいて妥当なのか。本館改修その他で15%程度の削減効果があるのかどうかなど、VFMの算出根拠が示されない限り、疑問点として残ります。

 ただ、数字を並べるのが続きましたので、最後に本質的な問題についてふれます。


 内閣府PFI推進委員会「VFMに関するガイドライン」では、
(1) VFMの評価は、基本方針に従い、特定事業の選定に当たって必ず行われなければならない。
(2) その他の段階においてVFMの評価を行うか否かは、公共施設等の管理者等の判断にゆだねられるが、民間事業者の選定においては、選定しようとする民間事業者の事業計画についてVFMがあることを確認することが適当である。この場合、PSCについては、原則として、特定事業の選定において算定したものを使用する。
(3) VFMの評価に当たっては、下記二以降の事項に留意の上、その時点において算定が可能である範囲において極力精度を確保するものとする。なお、この際、算定のために多大な労力をかけ過ぎることのないよう留意する。一方で、漸次その客観性及び透明性の向上を図るよう努めていくことが重要である。


  VFMに関するガイドライン(内閣府PFI推進委員会)


 つまり「極力制度を確保」「客観性及び透明性の向上」が求められるものであり、ましてや長期にわたり税金が投入される事業として、市民が納得できる「客観的資料の公表」が必須条件となります。



   VFMの本質


 結局、積算根拠が極めてあいまい(不明確)である設備整備を除き、VFMを生み出すとされる「運営・維持管理費」のVFMは、「確実に効果がある、そのことが目に見えて確認できる」ものは、人件費の削減しかありません。
 しかも、SPCが企業としての利益を最大限確保する手法(自らの取り分である運営等の委託費にかかるコストを下げる努力)も、SPCグループを通じて雇用される委託職員の削減や低賃金がその前提になっているのです。



 SPCに委託される運営・維持管理業務を再掲しておきます。


○ 全体マネジメント業務
(ア)経営支援業務
(イ)プロジェクトマネジメント業務
(ウ)個別業務統括業務

○ 病院運営業務
(ア)病院運営業務(医療法に基づく政令8業務のうち,次の業務)
 a 検体検査業務(病理検査を除く。)
 b 滅菌消毒業務
 c 食事の提供業務(献立作成業務等を除く。)
 d 医療機器の保守点検業務
 e 医療ガスの供給設備の保守点検業務
 f 洗濯業務
 g 清掃業務
(イ)その他病院運営業務
 a 医療事務業務(診療報酬請求業務,医事受付業務等)
 b 診療情報管理・運用業務
 c 医療支援業務
 d 物品管理及び物流管理(SPD)業務
 e 病院総合情報システムの運用業務
 f 利便施設運営管理業務(食堂,売店等)
 g 健診センター運営支援業務
 h 電話交換業務
 i 図書室運営業務(患者用,職員用)
 j 病院広報業務
 k 地域医療連携部門支援業務

○ 施設設備維持管理業務
(ア)病院施設維持管理業務
 a 建築物保守管理業務
 b 建築設備保守管理業務
 c 警備業務
 d 環境衛生管理業務
 e 植栽管理業務
(イ)職員宿舎,院内保育所,付帯施設等維持管理業務
 a 建築物保守管理業務
 b 建築設備保守管理業務
 c 外構施設維持管理業務
 d 付帯施設維持管理業務(駐車場を含む。)
 e 警備業務
 f 環境衛生管理業務

○ 調達業務
(ア)医薬品の調達業務
(イ)医療材料の調達業務
(ウ)医療機器及び関連備品の調達業務(新館整備時の新規導入分のみ)
(エ)消耗品及び消耗備品の調達業務

*なお,病院総合情報システムの維持管理及び更新業務,医療機器の更新業務,職員宿舎及び院内保育所の運営は,本市が行う。



(以上 つづく)


続:京都市立病院PFIについて(8)

2009年07月06日 06時22分58秒 | 資料&情報

 資料は昨年12月に公営企業等予算特別委員会が要求した「要求資料(保健福祉局)」で、これまで引用してきた「1、京都市立病院整備運営事業におけるPFI手法導入に係る債務府t何行為設定額の内訳並びに経費削減効果額及びその算出の考え方」の数値を使用します。



  18年間の運営・維持管理費のVFM効果-最大は人件費


 市立病院のPFI手法では、SPC(PFI事業を請け負う民間株式会社グループに長期の病院運営・維持管理を任せたほうが、従来の運営・維持管理費より18年間で△18憶4900万円程度安くつく(VFM効果:ただし委託費は増加するので差し引きした額です
)としています。その最大の科目は人件費で「PFI手法の挿入を契機に委託する薬品等の調達業務等に係る病院職員16人分の人件費の削減を見込む」として△22億円程度の削減効果としているのが特徴です。


 すでにPFI事業が導入されている東京都立駒込病院では、「ベッドの回りの掃除やごみ集めもしてくれない。掃除が行き届いていないと苦情が患者さんから寄せられた。物流システムで、薬品を週三回補充するとしていたのに、週二回にするという。事務と作業係りが二人いるがこれから兼務するという。電話で連絡するとすぐに対応すると返事するが時間がかかり過ぎる。すべてのことで混乱している。こうした事態は移行期の混乱というよりPFIの本質による混乱だと思う(看護師)」。「定員が二十七人から十七人に減らされた。就労時間が月から金まで三十分、土曜日は午前中が夕方までと延びた。宿直が四人から三人へ。定期点検が一カ月から二カ月に延ばされた(委託職員)」などの声が聞かれています(4月16日の「緊急集会」での発言)。


 営利追及を目的とするSPCの一端を垣間見ることができます。ちなみに、都立駒込病院のSPCグループは、京都市立病院SPCへの参加資格が確定されたワタキューグループの共同出資者である三菱商事と株式会社麻生(1000床以上の病院を福岡県飯田市に持つ)が参画しています。
 
<株式会社麻生ニュースより>
 株式会社麻生は、東京都がPFI(Private Finance Initiative)事業として行う「がん・感染症医療センター(仮称)整備運営事業(現 都立駒込病院)」の総合評価一般競争入札に、代表企業の三菱商事株式会社、並びに戸田建設株式会社、株式会社NTTデータ他と共同して応札し、2007年3月19日に落札者に選定され、2007年3月23日に東京都と基本協定書を締結しました。
 今後は、特別目的会社(SPC、資本金5億円)を他の出資予定者と設立し、事業契約書締結を経て、2009年4月の本工事着工及び維持管理・運営を開始する予定です。
 当社の本事業への関わり方としては、代表企業を支えるマネジメントサポート企業としてSPCへの出資、及び取締役1名を業務統括チームとしてSPCに派遣する予定です。ヘルスケア分野で医療関連ソリューションビジネスを展開する三菱商事株式会社が行う、プロジェクト全体のマネジメント(設計、建設、医療関連サービス、病院経営支援等)並びに医療機器、医薬品、診療材料等の調達に対して、当社は飯塚病院の経営実績や病院コンサルティングのノウハウ等をもとに、SPCのマネジメント支援及び病院経営支援機能等の提供を行います。




  運営・維持管理費の詳細-薬品費と診療材料費


 「資料」に戻ります。
 「資料」では、運営・維持管理費でのVFMを

〇薬品・診療材料費(18年間の試算)
 ・従来手法での経費見込み額  53,262百万円…(2,959百万円/年)
 ・PFI手法での経費見込み額    51,413百万円…(2,856百万円/年)

〇さらに「薬品」のみを見てみると、
 ・従来手法での経費見込み額  18,244百万円…(1,014百万円/年)
 ・PFI手法での経費も込み額   17,740百万円…(  986百万円/年)
*算出の考え方:現状での医業収益に対する薬品費の比率(平成19年度15.9%)を基に従来手法での将来の購入見込み額を算出した上で、民間調査の結果やアドバイザーの意見を参考に、3%の経費削減効果があると見込む。
〇また、「診療材料費」は、
 ・従来手法での経費見込み額  35,018百万円…(1,945百万円/年)
 ・PFI手法での経費も込み額   33,673百万円…(1,871百万円/年)
*算出の考え方:現状での医業収益に対する薬品費の比率(平成19年度13.7%)を基に従来手法での将来の購入見込み額を算出した上で、民間調査の結果やアドバイザーの意見を参考に、4%の経費削減効果があると見込む。


 実は、保健福祉局の「公営企業等予算特別委員会要求資料」が明らかになったときに、大きな疑問を持ちました。それが、この「薬品・診療材料費」のVFM計算でした。だれがみても説明のつかない数字が並んでいるからです。

 まず、平成19年度市立病院決算書では(決算なので年間の金額です)
・ 医業収益       12,626百万円
・ 材料費合計      3,071百万円        
   薬品費       1,593百万円(12.6%)
   診療材料費    1,377百万円(10.9%)
   給食材料費       76百万円
   医療消耗備品費    25百万円

ところが、「資料」の説明にかかれている医業収益に対する比率を当てはめると
     医業収益に対する薬品費比率   15.9%  約2,008百万円
     医業収益に対する診療材料費比率13.7%  約1,730百万円


これに「民間調査の結果やアドバイザーの意見を参考」とする要素を加えたとしても
・決算数値では         薬品費(2,008百万円)>診療材料費(1,730百万円)
・「資料」の手法別の数値は  薬品費(1,014百万円)<診療材料費(1,945百万円)=従来手法
                  薬品費(986百万円)<診療材料費(1,871百万円)=PFI手法



  平成19年度京都市病院事業特別会計決算書
  (市立病院と京北病院が一体なので「市立病院会計」の附属明細を参照すること)

 

 常識では考えられない(説明がつかない)数字であることは明白です。よく、「説明」もなしに、このようなでたらめな「資料」を提出した無責任さに呆れかえりました。「資料」自体が荒い試算なので多少の数字のあいまいな部分は当然あるものですが、薬剤費と診療材料費(PFIで給食材料費は委託費に振り替わるとしても)の逆転はないものです。


 とことがです……わかりました?!


(以上 つづく)


  
 





 


「医療・福祉」の切り売りを強引に進める京都市は許せない!

2009年07月05日 00時24分27秒 | 資料&情報

 まず、二つのホームページを紹介します。

<京都市立看護短大の廃止反対運動を進める京都府学連>

   京都府学連WEB

<京都市立病院の地方独立行政法人反対の運動を進める市職労病院支部>

   京都市職労病院支部


 いずれも京都市が運営してきた病院と看護短大を「PFI事業」や「廃止・民設民営」とする計画です。


 これらには、「このままでは第二の夕張になる」などとして、市民犠牲の市政を強引に推し進めようとする京都市長の姿勢が反映しています。

 市政全般の問題点は、日本共産党市会議員団が出した声明を参照してください。



   2009年度京都市予算案について「生活直撃の値上げと負担増を撤回せよ」


 また、京都市の財政分析は、京都市職労「京都市財政研究プロジェクト」の研究論文を参照してください。


   京都市財政の現状と未来まちづくりプランの評価について(研究論文)


 こればかりではありません。

 京都市は、PFIによる市立病院整備運営事業と同時に、京都市立病院院内保育所の職員の雇用打ち切り(平成22年度末)を打ち出しました。
 毎年の保育所運営に係る負担金が多く、病院経営を圧迫しているとの理由です。不要不急の公共事業へは金を出すが、市民の健康・生活に直結する医療・福祉分野は、「看護短大を建て替える金はない」「院内保育所を維持する金はない」と民間への丸投げをどんどんすすめる、これが実態です。



 京都市立病院院内保育所は、設置主体が京都市、運営は京都市から委託された「院内保育所運営委員会」が当たってきました。院内保育所「青い鳥保育園」は昭和52年開所という、病院職員の労働と生活、子どもの健やかな成長を支えてきた歴史を持っています。



 ところが、昨年9月の市議会委員会での議員質問に対し、細見副市長は「委員お尋ねのこの院内保育所の運営についてですけれども(中略)、それにしてもあまりにも、京都市の負担9000万円を超えておりますので、これは何とかしなきゃならないというところで今委員から色々ご指摘を受けたところでございますが、昨年度、この勧奨退職制度を踏み切ったけど、やっぱり応募ゼロでございました。今後の取り組みとしては、委員の貴重なご意見も踏まえまして、考えていますのは、運営委員会委託ということを見合わせて、SPCという特別目的会社とは別に民間委託を考えたらどうかという風なことを考えておりますが、これには、今職員12名がおりますが、お雇用問題などがあって大変な力仕事になるんですが、気合いを入れてやっていきたいという風に考えております。」との発言を行っています。



 市立病院の独法化・PFI事業導入と一体となった、今回の雇止め通告と言えます。また露骨な「職員敵視」の副市長の発言は、「経営危機の名のもとに、(京都市の正規職員でない保育園職員を)まっさきに雇い止めする」昨今の大企業経営者とダブルものを感じるのは、言いすぎでしょうか。


 京都市立病院独法化問題、市立看護短大廃止問題、病院院内保育所職員雇い止め問題など、結果的に「民間への身売り」をすすめる京都市の強引な姿勢を許すことはできません。


(以上)



 
  

 


続:京都市立病院PFIについて(7)

2009年07月03日 06時29分03秒 | 資料&情報

 前回記載の一部を再度掲載しますので見てください。

 <*1:従来手法による新館整備単価の積算>
 本館整備時の単価(335,780円/㎡)×消費税上昇分(1.05/1.03)×
 建築物物価指数上昇率[A]×免震構造化割増[B]+特殊要素[C] ⇒ 424,000円/㎡
  [A]:平成元年から平成20年度 1.146
  [B]:免震構造化割増  3%
  [C]ヘリポート・放射線防護設備等による加算 20,000円/㎡

 上記の計算式の「建築物物価指数」は、おそらく建築工事に関する材料等が、本館建設時と比較してどれだけの値上げ(値下げ)になっているかの指数だと思います。
 正直、1.146倍の値上がり指標が妥当かどうか、根拠となるデーターが示されていないので評価が難しいです。ぜひ、1.146の裏付けになる資料の公表を求めます。


   1.146(建築物物価指数)の根拠


 ただ、WEB上で様々なデーターが公表されていますので紹介します。京都市が提示した「指標」の妥当性判断の一助になると思います。


 [財団法人建設物価調査会総合研究所経済研究部]のデーターから引用します。
 ただし、数値は東京都を参照しているので京都とは違いがあります。
 *すべて2000年を100とした変動値です。

   年     工事原価     純工事費    建物     設備
 1980年     88.0     90.0     92.8     86.8
 1981年     90.8     92.8     95.4     90.0
 1982年     92.2     94.0     96.7     90.9
 1983年     91.4     93.0     94.6     92.1
 1984年     92.1     93.5     95.0     92.7
 1985年     91.5     92.7     93.5     93.3
 1986年     91.5     92.7     93.5     93.3
 1986年     90.6     91.6     92.0     92.8
 1987年     92.3     93.3     94.0     93.9
 1988年     97.6     98.9    102.0     95.4
 1989年    102.6    104.1    109.2     96.9
 1990年    108.4    110.3    117.1     99.8
 1991年    115.7    118.1    124.2    108.7
 1992年    119.0    121.3    126.1    113.8
 1993年    116.5    118.4    120.0    116.0
 1994年    111.5    112.8    112.2    113.7
 1995年    108.2    109.2    109.7    108.3
 1996年    106.6    107.2    108.8    104.9
 1997年    106.1    106.6    107.9    104.6
 1998年    103.8    104.1    105.2    102.4
 1999年    101.9    102.1    102.4    101.6
 2000年    100.0    100.0    100.0    100.0
 2001年     98.4     98.4     98.3     98.5
 2002年     96.3     96.5     96.4     96.5
 2003年     93.3     93.3     93.8     92.3
 2004年     91.8     91.6     92.3     90.3
 2005年     91.0     90.7     91.0     90.3
 2006年     91.6     91.3     91.5     91.0
 2007年     93.9     93.8     94.4     92.9
 2008年(1月) 94.8     94.8     95.2     94.2

 *赤字のアンダーラインが、本館建設時(平成元年)で建築単価(335,780円/㎡)の基準とした年。

 
これでいくと、2008年との比較で工事原価▲7.8ポイント、純工事費▲9.3ポイント、建築▲14.0ポイント、設備▲2.7ポイントm建築価格が低下していることになります。


 また、同じ研究所のモデル指数(総合病院RC工法、地上4階11,494㎡)では、2004年から2008年経過で(基準時は2003年)、

   年      純工事費    建物     設備
 2004年     97.0     96.3     97.8
 2005年     96.1     94.7     97.8
 2006年     96.9     95.3     98.7
 2007年     99.6     98.8    100.6
 2008年    103.6    104.0    103.2
 2009年1月  103.1    101.8    104.7

 となっています。モデル指数では若干値上げ傾向が見られますが、いすれにせよ、平成元年 からの比較では、1.146増もの値上がりにはなりません。


    建設ナビ(建設物価調査会)のホームページ


(以上 つづく)