京都社会保障推進協議会ブログ

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京都社保協介護部会で京都府と懇談しました

2011年11月21日 13時42分15秒 | 事務局通信

社保協介護保険部会京都府と懇談

 介護保険料の値上げ(1000円程度)やめよ

 日常生活支援総合事業を創設するなと申し入れ

 

 京都社保協介護保険部会では、10月19日に、京都府の高齢支援課と第5期の介護保険事業計画作りに関して懇談し、以下のやりとりを行いました

 

1.日常生活支援総合事業について

 社保協)日常生活支援総合事業は、要支援の方に対する予防サービスの受給権への侵害だ。きっぱりと総合事業は創設しない方向指導すべきだ。 

 

 京都府)介護予防の対象者にも事業の対象に加えるとなると、それなりの理屈が必要。どのような水準で、それに見合った財源をどうするのかも課題。しかし、現時点では、不明な点が多い。国も必ずしも「24年度からスタートを」とは言っていない、最短でも25年度スタートになるのではないか。近々、日常生活支援総合事業についての政省令を出すと聞いている。府内の市町村でも、国の動向まちになっている。府としても、この事業に関して積極的な指導はしていない。

 

2.介護保険料について

 社保協)来年4月には、平均保険料が5000円を超えると見込まれるが、限界だ。もっと引き下げるべきだ。

 

  京都府)第5期の保険料は、4期より月1000円程度上る。介護報酬の改訂もあり、なおさら大変。より、応能負担の方向へ行かざるを得ない。国が考えているのは、第3段階の分割で、低所得者対策を考えている。

 

3.財政安定化基金の活用について

 社保協)保険料値下げのために、財政安定化基金を最大限活用すべきだ。

 

 京都府)間違いなく取り崩す。府の基金は62億円ある。国、府、市町村がそれぞれ1/3ずつ負担している。国の負担分は国が引き取る。市町村負担分を全部活用したとしても20億円、保険料で月80円の引き下げにしかならない。府の負担分も引き下げ当てる方向で財政当局とつめている。一部は、介護保険特別会計の赤字に備えて残しておく必要がある。

 

4.介護職員の処遇改善について

 社保協)処遇改善交付金は、介護職に限られるなど欠点はあるが、それを改善した上で、今後も続けるべきだ。介護報酬に繰り入れると保険料と利用料のアップにつながる。

 

 京都府)改善交付金は、本来イレギュラーである。報酬に組み込み、労使の交渉にゆだねるべきだと考える。

 

 

5.定期巡回・随時対応サービスについて

 社保協)定期巡回サービスを受けると、従来の滞在型の訪問介護が受けられない。柔軟に対応すべきだ。

 

 京都府)これは、運用の問題と考えている。例えば、一日3回の巡回の内、1回は長時間滞在してもらうなど、ケアプランに位置づければよい。ヘルパーの滞在についての基準や縛りも必要だと思う。

 

6.サービス付き高齢者住宅について

 社保協)サービス付き高齢者住宅と定期巡回サービスをセットにして、入所施設の増設を抑制しようとしているのでないか。

 

 京都府)待機者が多く、施設を作っても追いつかないのが実感だ。色々なサービスができるほうがいい。10月20日から、サービス付き高齢者住宅の登録受付がはじまる。京都市外でも応募がかなりありそうだ。登録の基準やサービス水準は、府で決める。特養ホームもでも水準には施設によって格差がある、サービス付き高齢者住宅はダメだとはならない。

 

 

7.京都式地域包括ケアについて 

 社保協)南丹保健所管内のモデル事業は具体的に進んでいるのか。

 

 京都府)南丹市は社協が中心、京丹波町は直営の病院と地域包括があるが地域に開業医が少ない、亀岡市は医療機関が多いなど管内の地域事情がある。南丹保健所の体制も強化して、関係機関のネットワーク作りを進めている。

 

 社保協)介護に関わる府の総合的な交付金について、単年度の交付金のため市町村にとって使い勝手が悪いと聞いているが

 

 京都府)京丹波町では、交付金を活用して、病院と自宅を結ぶタッチパネル式のテレビ電話を支給している。京丹後市では、地域支援事業の協力者にポイント制を導入するなど活用されている。

 

 社保協)日常生活圏域でのニーズ調査は各市町村でしっかり行われているのか。在宅での看取りに関しても調査項目に入れたらどうか。

 

 京都府)ほとんどの市町村でニーズ調査は行われたが、国が求める内容の提示(全数)が遅れたので、従来どおりの内容になっている。全数調査は、2箇所。亀岡がこれからと聞いている。


京都の子どもをめぐる最新の情勢学習会を開きました

2011年11月17日 11時38分50秒 | 学習会報告

子どもをめぐる最新の情勢を学習・討論しました

「保育所の待機児問題・最低基準の条例化・障害児の支援」などをテーマに 

(全体のまとめを報告する立命館大学峰島厚さん)

 京都の子どもたちをめぐる環境はどうなっているのか?最新の情勢を各分野の専門家から報告し、子どもを守り、育てていくにはどうすればいいのかを考える第一弾として、10月29日、ラボール京都で「京都の子どもをめぐる最新の情勢学習会」を開きました。土曜日の夜にも拘らず45人の参加で、熱心に論議してこれからの運動に大きな弾みとなりました。

1.保育所の待機児問題  藤井修さん(たかつかさ保育園長)

  学習会は、子ども達の保育・療育をよくする会の池添さんの司会で始まり、最初に挨拶に立った京都社保協事務局長の南さんは、国会でTPPが大問題になっているが、子ども・子育て新システムも併行して進められており、知らないまま成立していたということになりかねないので、しっかり声をあげていくことが大事。この学習会を契機に子どものいのち、育ち、暮らしを守るネットワークを立ち上げ、京都の子どもをどう守っていくか、育てていくか大人がどう関わっていくかに取り組む、今日はその第一歩だと強調しました。以下、各報告内容の概略を掲載します。

現在、京都市には保育園が225カ園あるが、どの保育園も定員を超過して保育している。定員は23,000人だが定員以外に2,000人以上入れている。最低基準があるのに、なぜ京都はこうなっているかというと、京都市は民間保育園の総面積を4.5㎡で割る形で収容人数を推定しているようで職員の休憩室や倉庫なども含めて計算しているので、私の園でいうと元の定員は120人だが189人まで詰め込めるということになる。なぜ、適正な規模に戻さないのかというと、設立理念の地域要求に応えるためにマンパワーを肥大させた結果、認定外保育士などの形で市の補助の無い職員の分を定員外の需要に応える形で収入を確保するやり方をしているから。これだけ詰め込むと、1:15では事故やケンカというものが起きているし、職員間の意思疎通が困難、事務量の増大など弊害も出ている。なぜこんなに過密かというと、京都市が定員外入所の緩和で、詰め込むだけ詰め込めという政策的な面もあるし、様々な理由でとにかく入りたいとの申請あれば入れるという制限がない状態。園のスローガンは進取の気性を絶やさず保育にあたろう、最低基準の見直しこそが必要な保育改革だということで、努力している。

 続いてフロアから澤田さん(新日本婦人の会)が3年前から「保育所に入りたいママの会」を立ち上げ、待機児童解消に取り組んでいる経験を報告、①保育所に入りたいという相談をするところが福祉事務所しかない、②お母さんたちは入れるか入れないかの保活(就活や婚活と同じ)の中で、働くことの誇りを傷つけられていく、③1歳児で入れないので、みんな頑張って0歳で4月に入れようとすることで女性が勝ち取ってきた産休・育休(3年)の権利をみんな放棄している、④運動の中で昨年予算が前年の3倍に。評価はいろいろあるがこれで入れた人がいることはうれしい、⑤今年もスタートしたが13人あふれていて、取り組む。

2.最低基準の条例化を考える 藤井伸生さん(京都保育運動連絡会長)

 待機児童の問題では、保育所に入れないのは児童福祉法24条に違反している。法律に違反しているから京都市は保育所を作らねばならない。他の都市では裁判してほとんど勝利している。そんな運動をつくれる力を持ってほしい。4月に「地域主権改革推進一括法」が成立し、厚生省令で定められていた保育所設置基準の最低基準を自治体に委任するという法律。これは今でも子どもを詰め込んでいるのに、もっと詰め込めという条例。来年4月実施・運用になるが、1年間の経過措置ある。保育所だけでなく児童福祉施設・児童養護施設・高齢者・介護・障害者など全ての福祉施設に適用される。他の分野と協力してこんな緩やかな基準でいいのかという運動を起こさないと大変なことになる。保育所では①現行②標準(緩和してもよい)③参酌基準(参考程度)の3つの基準に分けられ、京都市は職員配置は議会で現行維持公約、施設設備は標準に、食堂が最低基準に入ってない、ホールや足洗い場なども基準に入れてほしい。保育内容は給食が3歳以上は外部搬入可能になっているが、自園・直営方式にしてほしい。管理運営では新システムは、事務所が無くてもできる、非営利法人にするべき、などモデル条例案を提案しました。

3.障害児の支援について 池添素さん(子ども達の保育・療育をよくする会)

 来年4月から障害児支援の仕組みが大きく変わる。支援の強化とか相談支援体制の充実を謳っているが、利用契約・応益負担・日額報酬の仕組みは無くならない。何が変わるかというと、児童ディサービスが児童福祉法に再編入され、既存の障害児施設の機能と体系・名称が大幅に変わる。児童福祉法も①肢体不自由、知的障害、難聴幼児、児童ディなど無くなり「児童発達支援」に再編、②地域支援の強化(保育証等訪問支援)、③府から市町村に権限移譲(児童相談所の関与無くなる)、④在宅で通所利用する福祉サービスの全てに関る「障害児相談支援事業」を創設など。保育所等訪問支援とは、新システムと同じく個別給付で、直接国から個人にかねが出る。もうひとつの問題は支援決定プロセスで大幅に変わる。サービス等利用計画案を持っていかないと契約できない。実態に合わせた支援スステムを私たちの手でつくるネットワークづくりをと強調しました。

 この後、自治労連の佐藤さんから府内自治体の最低基準と実態について報告、福保労の玉木さんから基準のない児童館の現状について報告。質問を受けたのち立命館大学の峰島厚さんが全体のまとめを発言されました。

4.全体のまとめとコメント 峰島厚さん(立命館大学教授)

 全体の動きを見ておく必要ある。社会保障と税一体改革は昨年12月頃から動きがあって、大震災で加速された。復興は所得税・法人税で、それと併行して社会保障改革推進本部がつくられた。消費税を10%にすると言っているが、社会保障改革に使われるのは1%で、良くなると思われているがそうではなく実際には医療窓口負担を増やす、年金の支給年齢を68歳まで繰り下げるなど、全般的に社会保障を削る。1%試算の根拠は社会保障費の自然増を1%に抑えるということ、例えば障害者の介護保険への合併とか保育も介護保険に吸収させる、それの第1弾が子ども新システム。

 障害者は自立支援法を廃止して総合福祉法をつくる。これは応益負担を無くすことを明記、日額払いでなく80%は基本報酬で実現しようとなっている。しかし、一方で介護保険がうまくいっているので、子どもも介護保険のようにしてしまえば、残るは障害者だけで孤立させられるので、バラバラでなく力を合わせることが大切。野田政権は総合福祉法をつくる気は全然ない。

・新システムになったら、待機児童がなくなると思われているが逆だ。保育時間がお母さんの働く時間で決まるので今、毎日来ている    子どもたちがかなり追い出される。利用契約制度になると待機児という概念が無くなるので、保育要求として待機児を意図的に保育につなげる運動が大事。

・新システムが入ってくると最低基準という言葉が無くなる。要件を満たしていればどんな事業所でもかまわない「指定基準」というものが規制緩和のときによく使われる。もう一つは常勤職員の配置がほとんど無くなる、常勤換算でよいということで、非常勤が常勤に置き換わる。それに伴い人件費の補助金単価も低くなり、基準どおりやっても補助金は減る。

・来年は児童福祉法が変わって、自分で保育所を探して契約しなければならなくなる。親として保育が必要という認識がないと置いていかれる。保育だけに目を向けるのでなくその背景に何があるか大きく考え、輪を大きくしていく運動を創造的に取り組んでいくことが大切。


「社会保障と税の一体改革」をテーマに学習会を開きました

2011年11月07日 10時55分14秒 | 学習会報告

「社会保障と税の一体改革」の中身を学んで、多くの人に知らせ

 社会保障の充実をめざす運動を広げよう

野田政権が「社会保障と税の一体改革」という名のもとに消費税を増税する案を検討しています。しかも「社会保障改革案」には、医療費の窓口負担増や年金開始年齢の引き上げ、生活保護制度の改悪をはじめ保育・介護・障害の分野などさまざまな大改悪が目白押しです。京都社保協では、10月25日に神戸大学の二宮厚美教授を招いて「社会保障と税の一体改革と私たちの課題」と題してお話しいただき、大いに学んで大いに知らせていこう、社会保障の充実をめざして大いに運動を広げていこうと確認し合いました。

一体改革の出発点は財界の「グローバル戦略化」に組み込まれた結果の政策

二宮教授の講演から要点を以下に記載します。①野田政権が進めようとする様々な政策は、財界が出発点とする「グローバル戦略化」に組み込まれてしまった結果、社会保障や福祉に必要な金を大企業や富裕層から税金を取れなくなったので、どんなに高い税金を突き付けられても海外に逃げ出すことができない人=庶民から消費税という形で税金を取る。これが一体改革の出発点。

地域主権改革の正体

②国が富裕層の減税、大企業の法人税減税を行ってこれ以上税金を取れないとなると、国が実施しなければならない福祉や教育、保育などの施策が困難になるので、地方自治体にやらせる。ここから地域主権改革が出てきている。

消費税を社会保障目的税にしたら安心か?

③消費税の増税もほかに使われるのは困るけど老人の介護や年金・医療、保育などに使われるのなら、国の台所も自治体の台所も厳しいのだから、構わないのでないかというのは全くの誤解。一体改革が進行すると「社会保障税」になり、消費税が10%に引き上げられるとこれが全部社会保障にまわされるが、限られた、限定された支出のためにしか使わない財源は利権化してしまうから、もともと財政学では禁じ手である。例えば日本ではガソリン税を田中角栄がつくって、道路族の権益になってきた。ガソリン税は道路づくりにしか使えない、法律を変えないと福祉や医療にまわせないということ。

なぜ社会保障目的税か?

④ではなぜ、禁じ手の目的税にするか?いま国民に公共事業の金に消費税をあてますと言ったって「それは嫌や」ということ間違いない、大震災の復興財源にしても「消費税をあてますよ、増税しますよ」と言ったら、被災地域で暮らす明日の生活も心配という人からも消費税は無差別に税金を取るわけですから、これもおかしい。だから、社会保障という餌を使って消費税増税を国民から引き出すしか道はないというわけです。厚労省は財務省がどう言おうと社会保障、すなわち厚労省の管轄の中で使える、利権化できるということです。

社会保障目的税ではお手上げ

⑤消費税が完全に社会保障目的税になったとすると、社会保障のすべての経費をまかなうとなっているが、そうなるといくら企業から税金を取れといっても社会保障には1円もまわらない、我々が納める所得税も1円もまわらないことになる。健康保険の企業負担も、児童手当の企業拠出金も含めてすべて消費税でまかなうとして、消費税10%でだいたい20兆円ちょっとしか集まらないのに、現在でも30兆円以上の社会保障費をどうやってカバーするか?お手上げです。

一体改革で進む社会保障の変質

⑥日本の社会保障は、憲法によって「健康で文化的な最低限度の生活を」万人に保障している。そのために「国は、社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定められている。しかし、厚労省は「みんなのために、みんなで作り、みんなで支える」社会保障と言って、財源が「みんなが公平に負担する消費税だから」共助・連帯としての社会保障に変質させる。つまり、人間の権利としての社会保障でなく、お互いがお互いに助け合うというのが社会保障だからということになり、社会保障の考え方がくずれてしまう。

財源の枠内に社会保障を抑圧し、圧縮する

⑦これまで政府の取ってきたやり方は、保険の原理の第一原則である収支均等を貫くということで、保険料は上がるは給付は下がるという形で苦しめられてきたが、これを突破するには収支のバランス第一でなく、人権を保障するという原理を持ち込んで、例えば保険料で足りなければ税金を入れる、公費を入れるということで、保険料を抑制することが必要です。しかし、社会保障目的税になったら、高い消費税をがまんしてみんなが負担するのか、それが嫌だったら医療や介護や年金は抑えますよということになる。

社会保障目的税は「最悪の消費税」という宣伝を

⑧次の国会で野田政権は「社会保障のためなんだ」という宣伝のもとに消費税の増税に踏み切る意欲を持っている。我々社会保障関係者が中心になって急いで誤解を解く運動を進める。野田政権が進めようとしている社会保障目的税は「最悪の消費税」だということを広く知らせ、これはだめだという運動を起こしていただきたい。