京都社会保障推進協議会ブログ

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資格証明書の発行は絶対に認められない あらためて不当性を問う(最終回)

2007年12月28日 07時31分36秒 | 資料&情報
 資格証明書の発行に関して市町村当局がどのような立場に立っているか。長野県松本市議会での質疑と答弁を紹介します。

 06年3月松本市議会定例会での日本共産党犬飼明美議員の質疑
△犬飼議員
そもそもなぜ資格証明書と短期保険証を発行しなければならないのか、収納率を向上させるためと言いながら、制裁的な発行という感じがしてなりません。行政に対してかえって不信感を広げる結果になっていないでしょうか。今は大変だけれども頑張ろうとか、生きる意欲につながるような取り扱いにしていくべきです。
 とりわけ資格証明書の発行は憲法の第25条の生存権の精神から見ても慎重に取り扱うべきです。資格証明書では窓口で全額支払わなければなりません。後で審査を経て7割が返ってきますけれども、実際問題これでは病院にかかることができません。病院には来るなと言っているようなものです。最低限でも資格証明書は出さないという方向へ努力すべきではないでしょうか。
 厚生労働省は2005年の2月15日の通知で、乳幼児が含まれる世帯を資格証明書の対象外とすることを検討すべきであると指示をしました。これを受けて千葉県内では乳幼児医療費助成制度の受給世帯を国保資格証明書の発行対象から除外する、あるいは除外を検討する市町村が6割に上っていることが明らかになりました。国でも国民の苦難を軽減しようとする動きが出てきたものと思います。これは一つの例ですけれども、資格証明書の発行を検討できないかという点についてお考えをお聞きいたします。
◎市長(菅谷昭)
 2回目のご質問にお答えいたします。
 資格証明書発行に関することでございますが、厚生労働省からの通知については、まず昨年の2月15日に「収納対策緊急プランの策定について」がございました。その後5月に収納対策緊急プランの考え方と作成方法の解説が通知されました。その中で、乳幼児の医療費助成の上乗せ支給をしている地域では対象となる乳幼児が含まれている世帯は資格証明書の対象外とすることを検討すべきであると明記されております。
 そこで、松本市の現状と今後の対応について申し上げますと、現在、乳幼児のいる世帯に対しては、運用の中で資格証明書の交付はしておりません。乳幼児は最も発育、健康に注意が必要な時期と考えますので、子育て支援の観点から、改めて現行の交付基準を見直し被保険者証の更新時期である本年10月から、乳幼児のいる世帯には被保険者証を交付する方向で現在検討を進めているところでございます。
 以上でございます。

 06年6月松本市議会定例会での日本共産党倉橋芳和議員の質疑
△倉橋議員
次に、健康保険証の短期保険証及び資格証明書の取り扱いについてでありますが、私どもはこれまで国保税の減免制度とともに、たびたび取り扱いについて改善を求めてきましたが、減免制度は一定の実効ある制度として改善を加えてから少しずつ定着しつつあるというふうに理解しております。平成16年、17年ともに10数件の申請認定がなされたと伺っております。
 この短期保険証及び資格証明書の取り扱いについては、とりわけ先ほども紹介しましたように、子育て世代等々乳幼児を抱える皆さんにとっては本当に大変なパスポートとも言えるわけでして、またお年寄りの払いたくても払えない事情を抱えながら健康に不安を抱く家庭の事情なども、まさに命の支えとなるパスポートであります。本当に大変なこの短期保険証、資格証明書の取り扱いは現在でも2,300件、証明書が67件ということもお伺いしましたが、県下では本当に松本市は多いということで、私どもはなぜ松本はあんなに多いのかということをあちこちの自治体の議員さんから聞かれて大変冷や汗かく、こんなケースでもあるわけですが、この税の滞納を理由とした保険証の制限は、特に悪質と認められるケース以外は、この制限を行うべきではないということを改めて申し上げながら、この取り扱いについて今後どのような改善が行われたのか、この状況についてもお聞きをいたします。
◎健康福祉部長(和田孝一)
 国保行政、それから障害者計画、2点のご質問にお答えをいたします。
 国民健康保険における資格証明書、短期被保険者証交付基準の見直し等についてでございますが、初めに資格証明書に関してでございます。平成18年2月定例市議会で犬飼議員からのご要望を受けまして、税の公平負担を考慮しながら、市民の健康は何よりも大切だということ、さらに子育て支援の観点から資格証明書交付基準の見直しを行いました。
 内容を申し上げますと、世帯員にゼロ歳から6歳の乳幼児がいる方、また母子世帯の方を交付対象外といたしました。また資格証明書の有効期間は10月1日から翌年9月30日の1年間でございますが、次年度更新時期には資格証明書にかえて短期被保険者証を交付することといたしました。
 次に、短期被保険者証交付基準についてでございますが、この件につきましても2月定例会で交付基準を緩和する旨答弁させていただきましたが、この件もやはり交付基準の見直しを行いました。内容につきましては、軽減世帯の方に通常の被保険者証を交付するとともに、子育て支援の観点から資格証明書交付基準と同じ条件でございますが、乳幼児世帯や母子世帯には通常の被保険者証を交付することにいたしました。また、有効期間は原則的に1カ月単位の短期被保険者証を取りやめまして、3カ月、6カ月、9カ月単位の被保険者証を交付することにいたしました。
 このような交付基準の見直しによりまして、資格証明書、短期被保険者証の発行数は、概算でございますが、約1,000件減少する見込みでございます。この交付基準は平成18年、ことし10月の資格証明書、短期被保険者証更新時から適用をしてまいりたいと思います。
 


 参考に直近の京都市議会での当局の答弁を紹介します。市民の生活実態からかけ離れた、あまりの違いに怒りをおぼえます。 

07年5月京都市議会定例会での日本共産党加藤あい市会議員の質疑
△加藤あい議員
次に,国民健康保険の問題について伺います。国民健康保険料を滞納している世帯が全国で485万5,000世帯と過去最多となり,本市においても5万2,000世帯に達しています。高すぎる国保料が低所得者の生活を圧迫し滞納者を増加させています。国保加入世帯の約5世帯に1世帯が保険料を払いたくても払えない,市長は,この異常事態をどう受け止めておられるのでしょうか。本市においては,2年前,賦課方式が変更され低所得者の負担が一気に上がりました。総所得100万円の2人世帯の場合,所得に占める保険料の割合は,2004年度7.6パーセントだったものが今年は14パーセントへと倍近くにまで上がります。ある家内加工業者の夫婦2人世帯の方は,所得350万円のうち所得税が22万5,000円,府市民税が26万円,さらに国保料と介護保険料が48万4,000円,国民年金保険料が16万9,000円,合計で約114万円が税と保険料となりました。つまり所得の3分の1が税と保険料で消えてなくなる,とんでもない負担となっています。
 副市長は,先の2月定例市議会で大変な御負担をいただいているという基本的な認識は持っていると答弁されました。現行の保険料が市民の負担の限界を超えていることは明らかです。今年は,この6月に保険料値上げの減額措置の廃止で4万世帯,公的年金控除縮小で1万7,000世帯,合計5万7,000世帯もの保険料が値上げとなります。さらには,その両方の影響が及ぶ世帯が1万5,000世帯もおられるなどその負担増は大変なものです。一刻の猶予もありません。低所得者や高齢者に多大な負担を求めている実態を踏まえ,高すぎる国保料を今こそ引き下げるべきです。いかがですか。国民健康保険は,国や自治体の手厚い援助があって初めて成り立つ医療保険です。本市でも所得200万円未満が8割以上と低所得者が加入者の大半であり,制度の維持には独自の財源確保策が必要です。現状では,京都市独自の国保会計への繰入れは,過去最高である2001年度の約79億8,500万円を9億円も下回っています。独自の繰入額を大幅に増やし,せめて過去最高水準まで早急に戻すことを求めます。自民党政府は,1984年の法改悪を皮切りに国の責任を次々と後退させてきました。1984年に49.8パーセント,5割近くあった市町村国保への国庫支出金が2004年度には34.5パーセントに減らされました。これこそ高い保険料の元凶です。国に対して国庫負担削減をやめ1984年の水準に戻すよう求めるべきです。
 次に,国民健康保険証の取上げ,資格証明書の発行問題について伺います。病院の窓口で医療費を全額負担しなくてはならない資格証明書の発行が大きな社会問題となりました。全日本民主医療機関連合会の調査で,2年間で正規の保険証を取り上げられ受診抑制により29名もの方が命を落としていることが判明しました。格差と貧困の広がりの中,命まで奪われる重大事態にマスコミも警鐘を鳴らしています。本市でも資格証明書発行によって重症化する悲惨な事態が発生しています。ある50代の方は1年間にわたって腹痛があるにもかかわらず病院に掛かっておられませんでした。見かねた友人が事情を聞くと,国保料が払えず資格証明書を交付されていたことが分かりました。その後,相談のうえ,生活保護を申請し受診,大腸がんだと分かり即手術となりました。その後,肝臓にも転移が判明し長期にわたる治療を余儀なくされたのです。さらに,別の方は5年前勤めていた会社が倒産,経営者の借金の保証人になり,商売を始めたものの多重債務に陥り保険料を払うことができなくなりました。保険加入者ではあるものの保険証はなく,病気になって耐え切れず相談に来られました。行政の窓口へは保険料を払えと言われるのでとても行けないと話され,我慢されていたのです。受診すると肺炎になっておられました。もっと早くに受診することができていれば,このような事態は避けることができました。
 資格証明証の方の受診率は,正規の保険証をお持ちの方と比べると142分の1と本市でも極めて低くなっています。市立病院での資格証明書の方の受診は,昨年度,一昨年度共にゼロとなっています。病院窓口での医療費全額負担が市民の受診を抑制しているのは明らかです。本市では,資格証明書は約3,000世帯,短期証は1万6,000世帯に発行と10年間で大きく増加してきました。今年は,送付手続の変更から資格証明書の発行数が減っていますが,返戻分の中に資格証明書も含まれており事態は改善されておりません。京都府内でもほとんどの自治体が発行を控えています。資格証明書を発行していない京田辺市の担当者は,資格証明書を発行すると医者に行けなくなりますから,結局,納付の放棄につながり収納率が上がりませんと述べています。命にかかわる保険証の発行を滞納対策とリンクさせるべきではありません。資格証明証の発行をやめるよう求めます。いかがですか。
 さらに,全国の自治体では国の定める基準以外にも発行対象外の範囲を独自に広げている所があります。長野県松本市では,母子世帯や乳幼児のいる世帯は資格証明書の発行対象から外していますし,旭川市では,保険料を納付することにより生計を維持することが困難な場合は適用を除外しています。子育て世帯や生活困窮者から容赦なく保険証が取り上げられている実態に,安倍首相は国会で,そんなことはしないように指導しなければならないと答弁しました。本市においては委員会で,子供のいるような世帯については,資格証明書の発行は対象にはないと思っていると答弁がありました。実際に子供のいる世帯,病人,生活困窮者に資格証明証を1枚も発行しないと言えますか。お答えください。
◎保健福祉局長(西村京三) 
国民健康保険の資格証明書の発行についてお答え致します。保険料は,国保の事業運営のための基幹的な財源であり,すべての被保険者に公平に負担していただくことが制度存立の前提でございます。本市では,国民健康保険料の滞納者に対しまして区役所,支所への来所を求め,できる限りの接触を図り制度の趣旨を御説明し,個々の世帯の状況等を十分にお聴きする中で減免制度の活用を含めたきめ細かな納付相談等を行っております。しかしながら,前年の所得に基づき決定している保険料について,納付意思を全く示すことなく特別な理由もなしに長期にわたり保険料を滞納している方に対して,法令に基づいた資格証明書を交付することはやむを得ないことと考えております。

 以上が京都市の実態にほかなりません。

 国保証と資格証明書問題を5回にわたり掲載してきましたが、資格証明書の発行はいのちに係わる制裁措置であること、同時に様々な運動と議会での追及が一体となって資格証明書未交付の成果をあげてきていること、中でも高齢者や乳幼児などの世帯に交付させない運動が各地で取り組まれていることを紹介してきました。もちろん全ての事例や資料の掲載が出来たわけではありません。今後とも、ぜひ必要な情報や資料をお寄せください。
 また資料提供の目的であった後期高齢者医療制度での資格証明書発行「義務規定」の不当性も含め、制度そのものの撤回要求をさらに大きく盛り上げる必要があります。
 そのためにも、粘り強い運動とともに市政の転換を一刻も早く実現すること。来年の2月市長選挙に向け、全力で奮闘する必要があることを強く訴えて終わります。(以上 事務局山本隆)




資格証明書の発行は絶対に認められない あらためて不当性を問う(その4)

2007年12月27日 07時20分06秒 | 資料&情報
 まず週間国保実務05年5月23日付に掲載された「収納対策緊急プランの考え方と作成方法(厚生労働省保険局国民健康保険課課長補佐土佐和男)」について。同年の2月15日付で都道府県に送付された課長通知「収納対策緊急プランの作成について」の詳細な解説文書であり、市町村自治体がスムーズにプランを作成するためのマニュアル文書です。
 その中に以下の文書が記述されたいます。(週間国保実務P15より)。

 「資格証明書を発行していない保険者にあっては、発行基準を作成し、資格証明書の発行に努めること。なお、特別調整交付金の算定に当たっては、資格証明書未発行の保険者を対象から除外していることに留意されたい。
 資格証明書の役割については3の(1)の③で説明しているところだが、被保険者間の平等性を確保するため、発行にあたっては発行基準を作成していただきたい。発行基準も機械的なものだけでなく、地域の状況や市区町村の政策課題を考慮して、例えば、地域雇用開発促進法による雇用機会増大促進地域や求職活動援助地域の指定を受けている地域ではリストラ等により離職した世帯を資格証明書の対象外とするとか、乳幼児の医療費助成の上乗せ支給している地域では対象となる乳幼児が含まれる世帯は資格証明書の対象外とすることを検討すべきである。」
 
 以上が、関係する部分の抜粋ですが、文中の「乳幼児の医療費助成の上乗せ支給している地域」とは、乳幼児医療費助成制度を実施している市町村を指すことが、厚労省国保課への全国保険医団体連合会(保団連)の問い合わせで確認されています。もちろん、この「解説」文書は、国保料の収納率向上をめざして出されたものですが、この「解説」の記述は、乳幼児医療費助成対象受給世帯等への資格証交付をやめさせるために活用できるものとして、各自治体の議会で取り上げられました。
 
 乳幼児医療費助成制度の対象である世帯には資格証明書を交付しないようにと、正面から議会でとりあげ実施させた例が、静岡県三島市です。

 三島市議会06年2月定例会での日本共産党下山一美議員の質疑と答弁を紹介します。

 ◆14番(下山一美君)今、御答弁でもわかりましたように、資格証明書は特別な事情がない場合に発行されるということが前提になっているというふうに確認できると思います。この特別の事情ということの判断ですが、2001年3月22日の参議院の厚生労働委員会で、共産党の小池晃参議院議員が時の坂口厚生労働大臣に対して質疑をしたんですが、労働大臣は答弁の中で、特別な事情の判断は法律の趣旨にのっとって各市町村地方自治体が判断するというふうに答弁されています。まさにこのとおりだと思います。ですから、三島市が資格証明書を発行するかどうかについては、三島市独自の判断、三島市の判断で可能だと、もしくは発行しないことも可能だというふうに私は思います。
 そこで、1つの提案を述べたいと思います。厚生労働省の保険局国民健康保険課長補佐の土佐和男さんという方が、昨年5月23日発行の週刊国保実務の中の収納対策緊急プランの考え方と作成方法と題した解説を発表されています。その中で、乳幼児の医療費助成の上乗せ支給をしている地域では、対象となる乳幼児が含まれる世帯は資格証明書の対象外とすることを検討すべきである、このように述べていらっしゃいます。ここで言う乳幼児の医療費助成の上乗せ支給をしている地域というのは、乳幼児医療費助成制度を実施している自治体を指すということですので、当然三島市も含まれます。これは、もとより保険税を少しでも多く徴収しようという立場から資格証明書の活用をうたっている中のことですけれども、そうしたもとでも、資格証明書の発行については節度ある対応を国は求めているというふうに理解すべきだと思います。私はもとより、資格証明書そのものは発行すべきではないという立場です。しかし、少なくともこうした考え方は最低限の保証として持つべきではないかというふうに思います。そこで、乳幼児が含まれる世帯は資格証明書の対象外とする、資格証明書発行にかかわる要綱の見直しを求めます。当局の見解をお尋ねしたいと思います。
 1つ、数字を報告したいと思いますけれども、これは当局に確認したんですが、資格証明書は先ほど言いましたように2001年度から発行されましたけれども、この間、乳幼児該当の対象世帯が何件あったかということなんですが、3件でした。1件は市外に転出したことによって市民ではなくなりました。2件は、生活保護に移行することによって対象から外れました。3件です。いかがでしょうか。
◎環境市民部長(水口始君) 乳幼児医療助成対象世帯を資格証明の発行対象から除外すべきではないかという御意見でありますけれども、資格証明書の発行につきましては、先ほどお話し申し上げましたとおり、今までも一律の基準ではなく、それから個別の滞納理由や世帯の状況を十分考慮しながら実施してきました。先ほど議員さんの方から話がありましたとおり、厚生労働省の課長補佐から確かにそういう通知が来ていることは承知しています。それで、資格証明の発行はあくまでも国保税の収納対策で、税の滞納の解消を目的としたものであり、受診の抑制を図るというものではありません。それで、乳幼児医療助成対象世帯に対しまする扱いにつきましては、国保の関係者の御意見を聞きながら早急に検討してまいりますが、少なくとも乳幼児本人の医療が阻害されることのないようにしていきたいというふうには思っています。以上です。
◆14番(下山一美君) 今、部長が述べられましたように、資格証明書の発行というのは滞納の状況を是正する、そのために発行するんだというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど来私が言いましたように、資格証明書の発行件数が年々増えていく中でも収納率は変わらないんです。年々増えていますけれども、収納率は変わりません。一方で、その前段階としての短期保険証の交付もどんどん増えています。資格証明書は、もう明らかに保険税の引き上げがあった翌年ぐっと増えているんです。このように、滞納を改善する、目的は別にしましても、そうではなくて実態として被保険者が保険税の引き上げによって保険税が負担できない、払い切れないということによって、結局短期保険証の交付、そして、さらには結果的に資格証明書の交付につながっていって、受診抑制につながっていく。先ほど申し上げましたように、一般世帯の164分の1しか受診していないんです。これはもうまさに三島市として危機的事態だというふうに受けとめるべきだと思います。
 全国各地でこのようなデータの収集があるんですが、千葉県では20分の1というデータがありました。広島県では100分の1というデータがあって私はびっくりしたんですが、今回データをいただいて三島市が164分の1しか受診していないというのは、まさに全国的にも驚くべき事態なんです。これは改善すべきだと、しかし、その中で全面的な改善ができなくても、少なくとも当面、3件しか対象のなかった乳幼児医療費の助成世帯に対しては直ちに資格証明書の発行世帯対象から外すという措置はできるはずです。しても、国保会計に何ら影響は与えません。ですから、担当者の決断もしくは市長の決断で発行世帯から除外することが可能なんです、すぐにも。それによって、いろいろ社会的な困難の中で苦しんでいらっしゃる若い世帯の不安を解消できるんです。もちろん資格証明書発行世帯の方々が三島市に集中するなんてことはあり得ませんけれども、三島市はそうしたきめ細かな対策をとっているというところで、三島市の子育て支援に対する評価が、私は底上げされるというふうに思います。そういう点で、やはり担当者の決断で乳幼児医療費助成対象者世帯を資格証明書発行世帯から除外するという措置を僕は緊急にとるべきだと思いますけれども、重ねて答弁を求めます。
◎環境市民部長(水口始君) 先ほど話をさせていただいたんですけれども、厚生労働省の課長補佐からのそういう通知もありますんで、前向きな形で検討させていただきたいというふうに思います。

 同様の質問は全国の多くの議会で取り上げられました。次回は、長野県松本市での議会論戦を紹介します。松本市長は「明るい民主市政をつくる市民の会(民医連、労働団体、共産党などが加盟)や社民党、住民団体が支援し当選した市長です。革新市長のもとで資格証明書がどのように論議されているのか。次回に掲載します。(以上)



資格証明書の発行は絶対に認められない あらためて不当性を問う(その3)

2007年12月26日 08時14分40秒 | 資料&情報
 国民健康保険料の収納率が低下する中、厚生労働省は05年2月15日付で国民健康保険課長通知「収納対策緊急プランの作成について」を都道府県に送付します。この通知は、収納率がアップすれば調整交付金を増額すること(ダウンすれば減額)、また「特別調整交付金の算定に当たっては、資格証明書未発行の保険者を対象から除外していることに留意されたい」とただし書きでのべるなど許しがたい内容です。この通知文書により多くの自治体が「緊急プラン」の作成に着手しました。まさに主戦場は地方自治体となってきています。
 その中でとくに資格証明書交付除外規定の「特別の事情」の範囲拡大や乳幼児医療助成世帯に対する資格書発行問題の動向について議会の論戦や住民運動の成果を報告します。

 東京都板橋区は都内トップの資格証明書を交付していましたが、生活と健康守る会や社保協の運動で大きく改善させた記事が全生連のホームページで紹介されています。区の回答は当然とはいえ明快な内容となっています。

 全生連「守る新聞」記事より

 「特別の事情」を自治体の裁量で拡大している各地の内容が、07年3月25日付「しんぶん赤旗」で紹介されています。

 「しんぶん赤旗」記事より

 上記の記事で紹介されている静岡県三島市議会で取り上げられた厚労省国保課長補佐「解説文書」問題は、保団連の「医療ニュース」でも報道されました。

 保団連「医療ニュース」より

 

 京都市国保改善署名が17万筆集約され、京都市長宛に提出されたこと(署名運動は引き続き継続)は、この「事務局通信」で報道していますが、京都市と上記に紹介されている自治体と大きな落差があります。あらためて怒りをおぼえるものです。

 京都市の取扱いはどうなっているのか。公費助成の乳幼児にたいし資格証明書が発行されている問題で、市議会で追及した内容(日本共産党のひぐち市議)を紹介します。(議員ホームページより 要旨)

07年年11月26日京都市議会決算委員会審議より
決算委員会の保健福祉局の質疑が行なわれ、わたしは、子ども医療費受給者証を持っている世帯に国民健康保険の資格証明書が発行されている問題を取り上げました。
わたしは、どんな世帯にも資格証を発行することは、その人の命を取り上げることと等しいものであり、許されないものであることを指摘した上で、特に子どものいる世帯からは取り上げるべきでないことを主張しました。
そして、ひとつのエピソードを紹介しました。ある小児科に、乳児を連れた親御さんが受診されました。ところが、窓口に出されたのは子ども医療費受給者証と資格証でした。親御さんは、10割負担になることが告げられると、とてもではないが払いきれないということで「帰ります」といって帰ろうとしました。そのときは、ぐったりしている子どもをそのまま返せないという医院側の判断で、とりあえず受診してもらったそうです。
この実例を紹介し、「何の罪もない子どもの命を危険にさらしてしまう、保険証のとりあげを京都市は続けるべきでない」と主張しましたが、京都市の答弁は「資格証を発行しないということにはならない。親にも責任がある」というものでした。
 高すぎて払えない保険料を設定しておきながら「親に責任がある」とはとんでもない言い分です。また、万が一親に様々な事情があったとしても、子どもには何の責任もないことは明らかです。京都市が保険証を取り上げることで、子どもの命を危険にさらしている、こんなことが今日の日本で許されていいはずがありません。
 なんとしても市政を転換しなければならない、この思いを一層強くした委員会のやり取りでした。

 


次回は、05年5月23日発行の週間「国保実務」に掲載された「収納対策緊急プランの考え方と作成方法(厚生労働省保険局国民健康保険課長補佐土佐和男)」の文書と三島市議会での質疑内容を紹介します。(以上)





京都府議会での論戦と意見書

2007年12月25日 15時30分47秒 | 資料&情報
 12月京都府議会本会議での、後期高齢者医療制度や医師確保・看護師対策等について日本共産党光永敦彦議員の発言を紹介します。

 光永敦彦議員の代表質問(大要)

 光永敦彦議員の代表質問(12月7日一覧より名前をクリックで動画が開始)


 議会最終日に「後期高齢者医療制度等に関する意見書」が採択されました。「意見書」は「後期高齢者の生活は、いっそう厳しさを増してきており、本制度による保険料の負担は大変重いものとなる」として「後期高齢者の健康と生命を守りうるものでなければならない」との立場を表明しています。

 京都府議会で採択された意見書

 また京都市議会でも12月14日に「意見書」が採択されています。

 後期高齢者医療制度の改善等を求める意見書(京都市会)

 京都府の後期高齢者保険料は、多くの府内市町村の国保料を上回る金額であり、普通徴収の対象となる年金18万円(年額)以下の高齢者に大きな負担を強いるものです。下記の記事は介護保険料の滞納が全国の主要都市と東京23区で約35万人(20%)にのぼるとの報道を紹介します。

 読売新聞報道より

 なお、12月1日開催の京都府後期高齢者医療広域連合議会第1回定例会に提出された「議員提出議案」および「請願」文書が広域連合のホームページに掲載されていますので参考にしてください。

 京都府後期高齢者医療広域連合の紹介ページ

(以上)





 

 
 


京都府地域ケア確保推進指針(中間案)に関するパブリックコメント

2007年12月25日 08時09分40秒 | 事務局通信
 京都府地域ケア確保推進指針は府内の療養型医療施設の削減と再編の基準を示すものであり、府民の健康と生命にとってきわめて重要な内容を作り上げるものです。中間案では「平成24年度末の療養型病床数目標を3000床台の中で確保を目指す」としており、現在の約7000床の療養型病床の大幅な削減につながる可能性があるなど、大きな問題点を含んでいます。
 今回のパブリックコメントに府民のいのちと健康を守る立場からの意見が求められています。募集締め切りは08年1月18日。意見募集の要項と中間案の内容が掲載されています。

 京都府地域ケア確保推進指針(中間案)に関するパブリックコメントの実施について

 皆さんのご意見・感想等を京都社保協にお寄せください。


「生活扶助基準に関する検討会」(その2)

2007年12月24日 08時16分17秒 | 資料&情報
 「検討会」資料は(その1)で掲載していますが、舛添厚生労働大臣は「下げる方向の数字が出る」と記者会見で発言。

 閣議後記者会見概要(11月30日)

 その後、あまりにも反響(怒りの抗議)が大きく、政府与党は「ひきさげは見送る」「ただし地域間の基準額の差を縮小する」との方向転換を表明した。

 産経ニュースの報道

 しかし「地域間格差の是正」とは「級地」の見直しであり、生保基準の切り下げそのものである。前回も引用した「生活保護問題対策全国会議」は、以下の声明を発表している。

[ 緊 急 声 明 ]「級地」の見直し(生活保護基準切り下げ)も許されない!

厚生労働大臣 舛添要一 殿
厚生労働省社会・援護局長 中村秀一 殿
(関連部署:社会・援護局保護課企画法令係)
                             
2007年12月10日

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
(事務局)〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-16西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所  弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

 私たちは、福祉事務所の窓口規制などの生活保護制度の違法な運用を是正するとともに生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として、今年6月に結成された、全国の弁護士・司法書士・研究者・市民184名で構成する市民団体である。
 12月10日付け産経新聞は、「 政府・与党は9日、平成20年度から引き下げを検討していた、生活保護費のうち食費や光熱費など基礎的な生活費となる生活扶助の基準額について、見送る方針を固めた。ただ地域間の基準額の差を実態に合わせ縮小するなどの微修正は行う。生活保護費全体の総額は維持される見通しだ。」と報道している。この報道の趣旨は、必ずしも明らかではない。しかし、仮に、これが級地間の格差が大きいことを理由に、都市部の基準を下げ、地方の基準を上げるということであれば、私たちが指摘してきた問題は何一つ解決していない。あたかも「引き下げを見送り」し譲歩したかのように装い、国民の目を欺こうとしている点で、より姑息であるとさえ言える。
 「級地間の格差が大きい」という厚生労働省の結論には、十分な裏付けがない。
1)この結論を導くときだけ、これまでとは違った根拠データを持ち出している。
 「生活扶助基準に関する検討会」第2回資料にあるように、「級地間の格差」は、第1・十分位との比較ではなく、また、「夫婦子1人世帯」や「単身高齢世帯」との比較ではなく、「2人以上の全世帯」しかも「第1~3・五分位」によって行われている。第1・十分位の「夫婦子1人世帯」および「単身高齢世帯」で見るとどうなのか、その検証は一切行われていない。厚生労働省にとって都合のいいデータだけを抽出して「級地間の格差が大きい」という結論を導き出している疑念がある。
 鈴木亘・東京学芸大学准教授・政府規制改革会議委員・参議院厚生労働委員会顧問はこの点、次のように批判している。
「地域差縮小も単身高齢者では確認されていない!・・・地域差が縮小しているので級地の見直しをすべきという重要な結論は、標準世帯にしようとしている単身高齢者の生活費を実際にみて得られた結論ではない。地域差縮小に関してだけは、なぜか、1から3・五分位(下から60%までの世帯)の状況から分析を行っており、非常にトリッキーな分析をしている。第1・十分位の低所得世帯において地域差が縮小しているかどうかすら明らかではないのである」
2)仮に「級地間の格差が大きい」としても、その是正のために必要なことは「地方の基準を上げる」ことであって、「都市部の基準を下げる」ことではない。
 この点、布川日佐史・静岡大学教授・生活保護制度の在り方に関する専門委員会委員は、当会議に次のようなコメントを寄せている。
 「生活保護費は、1級地の1を最初に決めて、級地で差をつけることになっている。100:90:80というイメージ。級地の格差をなくすなら、100:95:90という形にならないといけない。そうでなく、95:90:85にするというのが、今回の地域間の差の「是正」と呼ばれるものである。厚労省は、低いところは増えるぞといって、受給者の分裂をはかっているのだと思われる。しかし、1級地の1をそのままにして、差を減らすほうが、一番低いところの金額は、もっと上がるはずである(100:95:90)。95:90:85というのは、1級地の1、すなわち都市部の引き下げである。上がることになる3級地の1,2などの郡部は、人口も少ない上に、保護率も極端に低く、保護受給者はほとんどいないというところばかりである。上がる人、下がる人の数をみれば、狙いがはっきりすると思う。」
我々は、今後とも、広く市民各層との連帯のもとで、国会内外の活動を強め、生活保護制度の「切り下げ」阻止の運動をより一層強めて行く決意である。
以上


 ところが、12月11日には「検討会」の委員全員の一致で「生活保護基準引き下げ慎重が委員の総意」との文書が公表された。報告書をまとめた当事者の意見であるが、以下、全文を掲載する。

 「「生活扶助基準に関する検討会報告書」が正しく読まれるために」

2007年12月11日
「生活扶助基準に関する検討会」委員
(座長)慶應義塾大学商学部 教授 樋口 美雄
首都大学東京都市教養学部 教授 岡部 卓 
早稲田大学法学学術院 教授 菊池 馨実
慶應義塾大学経済学部 教授 駒村 康平
神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 教授 根本 嘉昭

(説明をなぜ、改めて行なうのかの趣旨)

・「生活扶助基準に関する検討会」は、2004年の社会保障審議会福祉部会に設けられた「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」において、5年に1度発表される「全国消費実態調査」等に基づき、「生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か」を定期的に見極めることにする(本報告書1頁)と決められたのに従い、開催されたものである。
・政策について総合的に検討する前に、透明性を持って、客観的データに基づき統計分析を実施し、中立的に検証された分析結果を提示することは、民主主義国家において政策を論ずるうえで不可欠な作業であると考えられる。だが、わが国におけるこの分野では、必ずしも従来、こうした作業が、十分行なわれてきたとは言えない。今回、本検討会ではこうした客観的検証作業が実施されるとの趣旨を踏まえ、その意義を尊重することから、われわれは本検討会への参加を決意したものである。
・それにもかかわらず、本報告書の検証結果が必ずしも国民に正しく伝わっておらず、ときにはその内容が誤解されることにより、客観的に実施された中立的な統計分析に対する信憑性が失われ、今後、このような手法をとることに対する国民の信頼感が得られなくなるのではないかと懸念される。これらの点を鑑み、国民に「本報告書の内容を正しく理解」してもらいたいとの考えから、本検討会委員5人全員の総意により、以下の説明を記すことにしたものである。

(生活扶助基準の水準について)

・本報告書は、1.検討の趣旨・目的等、2.生活扶助基準の評価・検証((1)評価・検証の方法、(2)生活扶助基準の水準、(3)生活扶助基準の体系)から成るが、とくに現在、注目されている「生活扶助基準の水準」の項目について、正しい理解を得るべく、以下の説明を加えることにする。
(1)生活扶助基準額が高いかどうかを評価するには、言うまでもなく、何と比較するのか、その基準が必要であり、基準の取り方によって結論は異なる。
(2)その基準として、1984年以来、「水準均衡方式」が取られてきており、2004年の前回の報告書では、夫婦子1人の勤労3人世帯の年間収入階級第1・十分位(下位10%)の消費水準が用いられた(4頁三つ目の丸)。
(3)今回もこの基準に従えば、夫婦子1人の3人世帯については、平均生活扶助基準額は、わずかであるが、やや高め(金額にして1,627円の差、率にして1.08%の差、以下同じ)になっており、第1・五分位(下位20%)では、やや低め(Δ2,767円、Δ1.83%)になっている(5頁一つ目の丸)。
(4)夫婦子1人世帯について、第1・十分位の消費水準と比較することは、本報告書5頁に示されたア、イの分析結果から判断し、これを変更する理由は特段ないと考えた(5頁三つ目の丸の下から2行目)。
(5)ただし、夫婦子1人の3人世帯に関しては、この第1・十分位(下位10%)の消費支出は第3・五分位(中央値)の消費額の7割に達しているのに対し、単身世帯(60歳以上)では、この割合が5割程度にとどまっており、低い。したがって、単身世帯の生活扶助基準額について検討する場合は、第1・十分位を比較基準とすることが適当であるかどうかは、その消費支出が従来よりも相対的に低くなってしまうことに留意する必要があることが、全委員の総意により確認された(5頁脚注6)。
(6)単身世帯(60歳以上)の検討の結果では、第1・十分位(下位10%)を基準にすれば、現在の生活扶助基準額は高め(8,378円、11.77%)になっているが、上記(5)の理由を考慮し、仮に第1・五分位(下位20%)を基準に比較した場合、現在の生活扶助基準額は均衡した状態(186円、0.26%)にあると評価される(5頁二つ目の丸)。
(7)4頁の脚注4にも示されているように、相対的評価については、他の人との比較もあるが、同時に同一個人の過去との比較もある。経済学においては、最低生存費(必要消費額)は過去の消費に基づき習慣が形成されることにより、これまでの消費水準からも影響を受けることが示されてきたところである(4頁脚注4)。検討会においても述べられたように、この考え方に従うと、同じ生活扶助基準額であっても、それが引き下げられることによってその水準になった場合、最低生存費は高くなり、受給者の被る痛手は大きいと判断される。本報告書では、この点を踏まえ、全員の賛同を得て、「なお、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」(5頁下から7行目)と加筆されたところである。このことは、第5回検討会でも述べられたように、「生活扶助基準額の引き下げについては、慎重であるべき」との考えを意図し、全委員の総意により、確認されたところである。
(8)ただし、こうした政策的判断は『全国消費実態調査』等の客観的データに基づき、統計分析を実施することにより評価・検証を行うとの本検討会の目的の範囲を越えており、今後、行政当局、あるいは政治の場において、総合的に判断されるべきものであると考える。
・以上は本検討会委員全員の総意により、まとめられたものであることを、念のため再度、申し添える。
・本報告書が国民により熟読されることを期待したい。
以上


生活保護基準の引き下げは、憲法25条の生存権を脅かすものです。また前回の資料でも明らかなように、国民生活に直接的な悪影響をもたらします。全国でたたかわれている「生存権裁判」とあわせ、大きく世論をもりあげる運動が求められています。(以上)

追加資料

 12月21日付のしんぶん赤旗と朝日新聞に08年度の生活保護基準引き下げを断念との記事が掲載されています。ただし「断念」でなく09年度実施に向け先送りとの内容であり、引き続きの運動が求められています。

 しんぶん赤旗報道

 朝日新聞報道








 

  


 

 





 

「生活扶助基準に関する検討会」(その1)

2007年12月18日 07時30分16秒 | 資料&情報
 生活扶助基準に関する検討会は、今年10月19日に第1回会議が開催されて以降、第2回(10月30日)第3回(11月8日)第4回(11月15日)第5回(11月30日)と矢継ぎ早に開催された。開催の趣旨と検討会委員のメンバーは次のとおりである。
 検討会開催の趣旨と委員名簿

 資料として第1回~第5回検討会の配布資料を掲載する。
  第1回検討会配布資料-1
  第1回検討会回付資料-2
  第2回検討会配布資料-1
  第2回検討会配布資料-2
  第3回検討会回付資料-1
  第3回検討会配布資料-2
  第3回検討会配布資料-3
  第3回検討会配布資料-4
  第4回検討会配布資料-1
  第4回検討会配布資料-2
  第5回(最終)検討会配布資料

 検討会の報告書は生活保護基準を切り下げ格差をいっそう拡大するものとして抗議の声明が出されていますので紹介します。

 生活保護基準切り下げに断固抗議する声明

厚生労働大臣 舛添要一 殿
厚生労働省社会・援護局長 中村秀一 殿
(関連部署:社会・援護局保護課企画法令係)

2007年12月3日

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
(事務局)〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-16西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所  弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

私たちは、福祉事務所の窓口規制などの生活保護制度の違法な運用を是正するとともに生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として、今年6月に結成された、全国の弁護士・司法書士・研究者・市民184名で構成する市民団体である。
11月30日、貴省が設置した「生活扶助基準に関する検討会」(以下「本検討会」という)が報告書をまとめたのを受け、舛添要一大臣は記者会見において、来年度予算から生活保護基準の切り下げに踏み込む旨発表した。
しかし、現在の深刻な「貧困」の広がりの中で、市民がどんなに苦しんでいるのか、また、「最後のセーフティネット」としての生活保護制度がいかに重要であるかについて、全く理解がないまま、厚生労働省が今回の手続きを進めていることに、私たちは強い怒りをもって、厳重に抗議する。

1 まず、今回の検討会の検討の対象となったものは、憲法25条が規定する生存権保障の水準を決する生活扶助基準である。その切り下げは、生活保護利用者の生活を直撃するだけでなく、最低賃金、地方税の非課税基準、公立高校の授業料免除基準などの労働、医療、福祉、教育、税制などの多様な施策に連動し、低所得者全般の生活に多大な影響を及ぼす重大問題である。
にもかかわらず、手続き的に見ても、保護を利用している当事者の意見や幅広い市民の意見を聞くこともなく、約1ヶ月半という極めて短期間に結論を出していること自体、「拙速」以外の何ものでもない。厚生労働省は、最初から結論を決め、検討会を自ら敷いた筋書きどおりに操り、その「お墨付き」を得たという体裁を取り繕って、保護基準の引き下げを断行しようとしているものであって、このように姑息なやり方は、断じて容認することができない。
2 また、内容的にみても、全く説得力を欠くものとなっている。
保護基準の算定方式として採られてきた「水準均衡方式」は、もともと「一般国民の消費水準との均衡」を考えていたにもかかわらず、検討会報告書は、年間収入階級第1・十分位の消費水準と比較している。しかし、我が国における生活保護の「捕捉率」(生活保護を利用する資格のある人のうち現に利用できている人の割合)は極めて低く、保護の利用申請を窓口で違法に拒否する「水際作戦」の結果や制度が周知されていないため、制度を利用できていない漏給層が80パーセント以上もいると言われている。検討会報告書は、このように生活保護基準以下の収入での苦しい生活を余儀なくされている最低位の低所得者の消費支出を比較の対象とし、より低い方に合わせる考え方を採用しているが、これでは歯止めない「負のスパイラル」に陥り、国民の生存権保障の水準が地の果てまで転落することになる。
 なお、報告書には、「これまでの給付水準との比較をも考慮する必要がある」との指摘や、「単身世帯(60歳以上)については」、第1・十分位の消費水準が第3・五分位の「5割にとどまっている点に留意する必要がある」との指摘があること(5ページ)等からすれば、この報告書の内容をもってしても、生活扶助基準の「引き下げ」を結論づけることはできないと言うべきであり、この間、物価が高騰していることなどからすれば、なおのこと現時点での生活扶助基準の引下げは行われるべきではない。
3 生活扶助基準のあり方、年齢階層別の基準額の水準、第1類と第2類の区別、標準世帯、地域差の問題等制度の基本的問題については、最低賃金の水準、年金の給付水準、課税最低限度額、国保料の減免基準など他制度への影響も考え、制度利用者、市民の意見を十分に聞き、全国民的議論のうえで決定すべきであり、今回の手続きに基づく生活保護基準引き下げの方針は撤回すべきである。
4 我々は、今後とも、広く市民各層との連帯のもとで、国会内外の活動を強め、生活保護制度の「切り下げ」阻止の運動をより一層強めて行く決意である。(以上)

 京都新聞も12月6日付社説でこの問題を取り上げています。

生活保護減額  懸念される格差固定化
 高齢や病気などで生活が立ち行かなくなった人を支えてきた「最後のセーフティーネット」が揺れている。
 厚生労働省の検討会が生活保護基準の引き下げを求める報告書をまとめた。生活費である生活扶助が低所得世帯の生活費を上回るというのが理由だ。
 低所得者の生活向上を考えず、水準を「低い方」に合わせる手法は生活保護の老齢、母子加算の減額・廃止の時にもみられた。財政再建の必要性は理解できるが、これでは社会保障費抑制のための数字合わせととられても仕方あるまい。
 生活保護基準の引き下げは、受給者だけでなく社会的弱者をさらに追い詰め、格差の固定化につながりかねない。
 厚労省は二〇〇八年度予算に反映させる考えだが、慎重な議論を求めたい。
 生活保護世帯は〇六年度、百七万五千八百世帯で過去最高を更新した。六十五歳以上の高齢者世帯が四割を占める。
 報告書は厚労省などの調査を基に、全世帯のうち下から一割の低所得世帯と生活保護世帯を比較。生活保護費のうち食費など生活費に当たる生活扶助の水準が夫婦と子ども一人の勤労世帯、六十歳以上の単身世帯のいずれでも、生活保護世帯の方が上回っていると指摘した。
 現状のままでは「勤労意欲を減退させかねない」として、厚労省はこの実態を重視し、生活保護基準の引き下げに踏み切りたい意向だ。
 しかし、これでは順序が逆だ。働いても生活保護水準を下回る収入しか得られない「ワーキングプア」が拡大しているという現実を見据える必要がある。低所得を余儀なくされている要因を分析し、彼らの待遇改善を図るのが先決だろう。
 生活保護基準は介護保険の保険料・利用料や地方税の非課税基準、就学援助の給付対象基準などと連動している。安易に引き下げられれば、諸制度の適用を受けられない層を広げかねないなど「負の連鎖」の引き金となる可能性がある。
 今国会で改正した最低賃金法による賃金底上げも期待できなくなる。
 憲法二五条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」のレベルを限りなく下げることにならないか心配だ。
 現状でも、生活保護の窓口で受給者を減らす「水際作戦」が問題化している。会計検査院の調査では、七割が「門前払い」されたというデータもある。
 北九州市では生活保護を打ち切られた男性が餓死し、京都市でも生活保護を断られ、男性が母親と心中を図った。
 生活保護は受けている人だけの問題ではない。年金制度からの検討など、もっと幅広い議論が必要だ。
 一方で、〇六年度に年間九十億円にまで膨らんだ不正受給など、生活保護に対する国民の偏見や無理解もある。
 本当に保護が必要な人をどう救うか。適正な窓口業務を徹底するにはケースワーカー増員など体制整備も急務だ。[京都新聞 2007年12月05日掲載]

 生活保護基準の引き下げは、保護基準と連動する減免制度や地方税、国保料の負担増に直結するものです。以下、関連資料を生活保護問題対策会議の資料より転載します。

生活保護基準が下った場合の被害項目一覧  2007.10.23版

1 生活保護を利用していることから、負担能力がないとされ、利用時の負担が免除されているもの、生活保護費計算時に考慮(控除)されるもの
  (例) 地方税、所得税、国民年金保険料(法定免除)、NHK受信料、公立高校授業料、母子栄養食品支給、入院助産、保育料、児童養護施設など児童福祉施設一部負担、養育医療、更生医療・育成医療・補装具・療育医療、小児慢性特定疾患治療研究事業、地域福祉権利擁護事業利用料、医療保険(保険料、自己負担)、介護保険(保険料、利用時1部負担)、雇用保険(保険料)、心身障害者扶養共済年金掛金、生活福祉資金貸付金の収入認定除外と返還金は収入から控除、公営住宅家賃(住宅扶助超過額免除等)
 (その他法外援護・各自治体施策)私立高校授業料等への補助、バス・電車の無料証、交通共済掛金免除、水道料金減免など

2 生活保護基準と連動する制度、生活保護基準を減免基準にしている制度
(注)①地方税の非課税基準、⑥⑧境界層該当減額措置 以外は各自治体に任されており、実施自治体は必ずしも多いとはいえない。
(1)地方税
①地方税の非課税基準(均等割非課税=全額非課税)
生活保護基準以下の収入でも住民税が課税となるようになった時期が20年ほど前にあり、そうならないように定められた規定
生活保護法による前年の保護基準額(生活扶助費、教育扶助費、住宅扶助費)として算出された金額を勘案して、市町村の級地区分に関わるものを乗じて得た金額を「参酌して定める」こととされている。1級地は1.0、2級地は0.9、3級地は0.8とされている。
(根拠)地方税法295条3項、施行令第47条の3(2)号、施行規則第9条の4②
(夫婦子2人の限度額)近年生保基準の削減に従い漸減:⑮2600千円→⑯⑰2571千円→⑱2557千円(給与所得控除込み)
②地方税の減免
(例)高松市「世帯収入が生活保護の収入基準以下で、納税が著しく困難であると市長が特に認める者」については免除(高松市税条例36条、施行規則)
③滞納処分の停止
(例)京都府 生保基準額の120%以下の場合
(2)国民健康保険
④保険料の減免(申請減免)
(例)国分寺市 生活保護基準の1.1倍未満:100%減免~生保基準1.5倍未満:20%減免
(例)練馬区  生活保護基準の1.15倍未満は減免
(根拠)国保77条、地方税法717条
⑤一部負担金の減免
(例)京都市 生保基準120%以下は免除、130%以下は1部負担金の多寡により2割、4割、6割を減額、
  (例)川崎市 生保基準115%以下は免除、115%超~130%以下は減額
(例)広島市 生保基準 
110%未満は免除、110%
以上~130%以下は減額
(根拠)国保法44条
(3)介護保険
⑥利用料・保険料の減額(境界層該当)
高額介護サービス費、食費、保険料を1ランク下げれば生活保護にならなくて済む場合に、1ランク下げる。
(根拠)施行令38条1項等
⑦保険料の減額
(例)旭川市 年間収入見込額が生保基準以下、貯金が年間生保基準の2倍以下の場合、保険料を第1段階に減額
(4)障害者自立支援法
⑧利用料の減額(境界層該当)
利用料を1ランク下げれば生活保護にならなくて済む場合に、1ランク下げる。
(根拠)施行令17条1項等
(5)公立高校
⑨授業料減免
(例)都立高校…生活保護世帯及び同程度の世帯は免除、生活保護の1.2倍までの世帯は5割減額
(6)公営住宅
⑩家賃減免
(例)埼玉県:最低生活費以下は減免、

3 低所得層への現物給付及び現金給付や貸付に生保基準を用いている制度
①生活福祉資金
貸付対象者
(「低所得者」の範囲)
目安として生活保護基準の1.5倍~2倍が多い
  (例) 京都市 生保基準の1.8倍
(例) 沖縄市 生保基準の1.7倍
②就学援助
給付対象者(「準要保護者」の定義)
生保基準の何倍以下(1.3倍までが大多数)
(例) 足立区 1.1倍
中野区 1.2倍
宮津市 1.3倍
③自治体の低所得者向け貸付制度
貸付対象者
(例)京都市夏季歳末特別生活資金貸付制度
(貸付対象)世帯の合計収入が生活保護基準の1.5倍以内 (以上)

 
 その他、日弁連をはじめ多くの団体・個人から抗議の声明や抗議行動が巻き起こっています。ところが、厚生労働省は、検討委員会報告を受け、来年度予算で生活保護基準の引き下げを表明するなか、生活保護基準の切捨てに反対し、憲法25条をまもる運動は急務です。
 次回は、その後の展開と資料を掲載します。(以上)






   

  
  


 

願いこめ国保署名170,165筆を京都市に提出

2007年12月17日 14時50分08秒 | 事務局通信

 提出会場では、対応した京都市保健福祉局保険年金課長に実行委員会代表が「国保料の引き下げを」「短期証や資格証証明書を発行するな」と厳重に申し入れました。

          
          会場に続々と寄せられる各地域実行委員会の署名


市民の皆さんにご協力頂いた署名を直接手渡す。
         
            
       署名提出に先駆けて行われた市役所前宣伝行動。

 後期高齢者医療制度による新たな負担などこれ以上の保険料負担はすでに市民の限界を超えています。17万筆もの市民の声を必ず実行させるまでさらに奮闘しましょう。


 



後期高齢者保険料全国一覧(年金所得208万円の場合)

2007年12月15日 08時30分16秒 | 資料&情報
 後期高齢者医療制度の各都道府県広域連合議会がすべて終了し、保険料等の詳細が確定しました。中央社会保障推進協議会の調査一覧を資料として掲載します。

 後期高齢者保険料全国一覧

 後期高齢者保険料全国一覧 年金所得208万円の場合

                                   (以上)

<資料> 介護関係者の必携リンク集(その4)

2007年12月14日 10時40分15秒 | 資料&情報
多くの介護関係者(団体)が掲示板を開設して、様々な情報交換を行っています。その中から全国的に最も利用されている掲示板を2つ紹介します。過去ログや掲示板以外の情報もあわせて利用してください。あったかい「板」です。

①北海道登別にある特別養護老人ホームが開設するmasa(施設長)の掲示板です。ホームページ左の「介護・福祉情報掲示板」から入ってください。「掲示板過去ログ」も利用価値があります。

 特別養護老人ホーム緑風園

②保健福祉介護関係の総合掲示板です。介護保険のみでなく、障がい者自立支援、介護予防・地域包括、特定健診・特定保健指導、後期高齢者など様々な分野の掲示板を運営しています。ドキュメントにも貴重な情報が掲載されています。

 保健福祉介護保険の情報サイトWEL

③最後に、2000年介護保険施行前後に、当時、行政の情報がほとんど入手できない状況のなかで、神奈川県の介護保険に係る関係職員が、ほぼすべての厚生労働省のなま資料をタイムリーにホームページでアップしていました。現在は閉鎖されていますが、2000年前後の古いが貴重な資料が掲載されています。過去の資料(政省令や通知文書)を調べたいときは現在でも役立ちます。施行当時から介護問題に係ってきた関係者の努力と情熱に敬意を表して、リンク集を終わります。

 福祉&介護保険情報

 
 すでに活用されている方もおられると思いますが、まだの方はぜひ一度はアクセスしてください。皆様のお役に立てることを願っています。ただし、あくまで個人(集団)が開設したホームページなので、「情報源」としての活用以外は、掲載されている主張や内容については、くれぐれも個人責任で判断をお願いします。(以上)





<資料> 介護関係者の必携リンク集(その3)

2007年12月12日 11時26分16秒 | 資料&情報
①JTさんの介護保険情報BANKページ
 02年9月オープンからすでに約430万の来訪者をカウントしています。介護保険に関係した各種情報サイトへのリンク集。最新の報道記事などもリアルタイムに掲載されます。
 とりわけ、トップページのタイトル右隅にある「Q&A検索」は、厚労省や各自治体のQ&Aを検索用に編集した労作です。「疑問があればまずQ&A検索で!」。

 介護保険情報BANK

②BOBさんのページ
 老企第○○号といえば、介護関係者の「必携文書」ですが、すべて最新版でアップされています。その他、よくつかう通知文書等も掲載されています。

 BOB

③どるくす工房さんのページ
 障害者自立支援法を中心にした法令集をメインに掲載されていますが、介護保険関係の法令・通知集も含まれています。法律や政省令など、関係法令を左右画面で対比できるという優れものです。

 どるくす工房

④どんたくアカデミーのページ
 介護支援専門員実務研修受講試験の支援専門ページですが、1998年~直近の試験問題と回答が掲載されています。

 どんたくアカデミー

すでに活用されている方もおられると思いますが、まだの方はぜひ一度はアクセスしてください。皆様のお役に立てることを願っています。ただし、あくまで個人(集団)が開設したホームページなので、「情報源」としての活用以外は、掲載されている主張や内容については、個人責任で判断をお願いします。



<資料> 介護関係者の必携リンク集(その2)

2007年12月10日 09時24分50秒 | 資料&情報
①埼玉県の介護保険課「さいたま介護ねっと」です。中段にあるメニューの介護サービス事業→介護サービス事業について→サービスの提供→介護保険法改正に伴う通知等について(平成18年4月改正・事業者向け)に入ってください。テーマ毎にわかりやすく分類されています。

 さいたま介護ネット

②申請の書式(様式)等も含めて情報提供している自治体は多くありますが、代表的なページを紹介します。

 東京都介護サービス情報 書式ライブラリー
 東京都書式ライブラリー

 大阪府介護保険 事業者支援センター(ページ上の「様式集」)
 大阪府事業者支援センター

③京都府及び京都市の介護事業者向けホームページも紹介しておきます。情報量の少なさに驚きます。

 京都府保健福祉部介護保険室 介護事業者に関する情報
 京都府事業者向けの情報

 京都市保健福祉局介護保険課 介護サービス事業者向けの情報
 京都市事業者向けの情報

④厚生労働省関係の法令等データーベースシステムのページです。
 法律、政令、省令、告示及び通知等が検索できます。

 厚生労働省法令等検索システム

すでに活用されている方もおられると思いますが、まだの方はぜひ一度はアクセスしてください。皆様のお役に立てることを願っています。
 次回は、主に個人で公開されている介護関係のホームページ等を紹介の予定です。



<資料> 介護関係者の必携リンク集(その1)

2007年12月07日 00時14分52秒 | 資料&情報
行政ホームページから個人のブログにいたるユニークな役立つリンク先を順次紹介します。今回は自治体関係のホームページをアップします。

①自治体職員の「労作」です。よくここまでまとめあげたと感心します。愛知県高齢福祉課のホームページから「平成18年4月改正概要(愛知県版)」は学習資料としても最適です。最新の情報も加えて適時充実を図っています。

平成18年4月改正概要(愛知県版).doc

②厚労省が自治体に発信した情報も含め、日本一早い(?)と評判の三重県の健康福祉部長寿社会室のホームページです。ページ内の【更新情報】に最新情報や、厚労省「介護保険最新情報」が掲載されています。

三重県健康福祉部長寿社会室

③上記に比較して京都府・市は「自分たちで勝手に勉強しろ」と言わんばかりに、きわめて少ない情報提供です。その中でWAMNETの「全国センター」からアクセスできる京都府センターの掲示板(府からのお知らせ)は、例外的に京都府の情報も含めた発信をしています。介護サービス事業者は必見です。

京都府からのおしらせ(WAMNET全国センター)

すでに活用されている方もおられると思いますが、まだの方はぜひ一度はアクセスしてください。皆様のお役に立てることを願っています。(以上)
 

京都府地域ケアあり方検討会議の概要報告(11月28日開催)

2007年12月05日 14時45分43秒 | 事務局通信
療養病床削減目標数の考え方と見通しを示す

地域ケア確保推進指針は、政府与党が進める医療制度改革の一環として療養病床の見直し・再編成が進められる中、その受け皿を含めた将来的な介護・医療サービス等を含む京都府内の「地域ケア」の確保及びその推進を図ることを目的としたものです。検討会の参加団体は京都府医師会、京都私立病院協会、京都府病院協会、京都療養病床協会、京都府老人福祉施設協議会、京都市老人福祉施設協議会、京都府老人保健施設協会、京都府介護支援専門員会、京都社会保険事務局、京都府市長会、京都府町村会、京都市、認知症の人と家族の会京都府支部、高齢社会をよくする女性の会・京都の14団体。またこの間に地域ケアに係る府政円卓会議が3回開催され、各分野の報告者14名を交えて意見交換を行ってきました。
 検討会では
①昨年10月に続き、本年8月時点で調査された療養病床を持つ医療機関に対して府が行ったアンケート結果が報告されました。回答医療機関は85医療機関・6466床(回答率100 %)。医療機関の転換意向は前回調査より「未定」が増加しているのが特徴。今回は「未定」の回答が医療療養で66.5%(前回は59.0%)、介護療養は91.1%%(前回は87.4%)となり、さらに「未定」が増えています。「未定の理由」は転換後の経営の見通しが不透明である」が最も多い理由ですが、委員からは7年間でころころ方針を変える政府への不信感が前提と意見が出されました。医療療養型に入っている患者さんの「医療区分1」は、やや減少(48.1%→45.1%)し、介護療養型で、「大幅に増加(82.5%)」です。
②提案された「京都府地域ケア確保推進指針中間案(案)」では、療養病床転換にたいする見通し、目標数の考え方が提示されました。
国提示基準及びアンケート結果による割合(注*)でカウントした場合は、いずれも平成24年末の病床数が1,982床~2,609床となり、現状から大幅に減少することになります(単純に国基準で計算すると2,249床、転換率64.7%)。
京都府としては、一律的な対応でなく、後期高齢者人口の伸び率を最大ピークとなる平成37年までの伸び率として計算する(この場合3,185床が必要数)。昨年アンケートで、医学的見地等により医師が判断した「転出不可能」などの患者割合で計算する(この場合3,660床が必要数)。医療区分2・3の全員、医療区分1のうち要介護度4・5を療養病床対応として計算する(この場合4,953床が必要数)と3パターンの試算を行い、3案の中では医学的知見・総合判断により医師が患者の状態をみて判断した目標値の3,660床が最適としています。ただし中間案として提示する数値目標は「平成24年度末の療養病床目標案:3,000床台の中で確保を目指す」との記述にとどめました。理由として、国の参酌標準をそのままあてはめると、京都府は影響が大きすぎる。京都は介護療養が医療療養より多い(ばっさりなくされる病床が多い)こと、医療区分1の患者が多い、転換意向未定が多い(おそらく全国1)ということと説明しています。
(注*)国の数値は医療区分1が50.2%、区分2が36.6%、区分3が13.2% アンケート結果は区分1が45.1%、区分2が41.6%、区分3が13.3%であり、区分2のうち「うつ、褥瘡、創傷」患者割合は国数値30%、アンケート結果は17%台など、介護保険施設に移行する対象患者数の数値が大きく乖離している)。
③委員からは「苦肉の策で3000床としたことは理解できる」しかし、「そもそも数字を入れなければいけないのか。それがキャップになってしまわないか」との声が出されていました。府は「目標病床数はあくまで現時点での見通しであり、3000床の数にこだわらない。2000床もあれば4000床もあり得ると言うことだ」と繰り返していました。
④今後、指針中間案のパブリックコメントの実施後、来年2月の検討会で最終案の検討、3月には指針の策定を行う予定ですが、4月には再度のアンケート調査を実施し、指針の見直しも含めて反映させていきたいとしています。京都府は「療養病床を減らすために計画を立てたり、在宅を強要するために計画をつくっているのではない」とのニュアンスで受け答えをしていましたが、反面、国がこの計画をつくらせるねらいは、病床数の削減、医療費の抑制が目的であり、それを受けて府は削減計画をつくらざるを得ないのが現実なのでしょうから、行政としては、かなり深い矛盾を抱え込んでいると言えます。
中間案のパブリックコメントへの積極的提言をはじめ、患者追い出しに直結する病床数削減の計画を許さないため運動を強化していくことが求められます。 (以上)


資格証明書の発行は絶対に認められない あらためて不当性を問う(その2)

2007年12月04日 11時35分04秒 | 資料&情報
97年成立(2000年4月施行)の介護保険法は、国保加入者(世帯主)に対し介護保険料徴収を国民健康保険料医療分と介護分とし、保険料徴収率の底上げをねらいました。97年に関連法案の改正として、国民健康保険法の一部改正が成立し、いわゆる「義務化」へと改悪された経過があります。

1997年以前の国民健康保険法
第九条
3 市町村は、災害その他の政令で定める特別の事情がないのに保険料(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による国民健康保険税を含む。第五項、第六十三条の二及び第七十二条の四において同じ。)を滞納している世帯主(その世帯に属するすべての被保険者が老人保健法の規定による医療又は原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)による一般疾病医療費の支給その他厚生省令で定める医療に関する給付(次項及び第六項において「老人保健法の規定による医療等」という。)を受けることができる世帯主を除く。)に係る被保険者証の返還を求めることができる。この場合において、当該世帯主は市町村に当該被保険者証を返還しなければならない。
4 前項の規定により世帯主が被保険者証を返還したときは、市町村は、当該世帯主に対し、その世帯に属する被保険者(老人保健法の規定による医療等を受けることができる者を除く。)に係る被保険者資格証明書(その世帯に属する老人保健法の規定による医療等を受けることができる者があるときは、当該被保険者資格証明書及びその者に係る被保険者証)を交付する。

介護保険法と同時に改悪された国民健康保険法
第九条 
3 市町村は、保険料(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による国民健康保険税を含む。以下この項、第七項、第六十三条の二及び第七十二条の四において同じ。)を滞納している世帯主(その世帯に属するすべての被保険者が老人保健法の規定による医療又は原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)による一般疾病医療費の支給その他厚生労働省令で定める医療に関する給付(第六項及び第八項において「老人保健法の規定による医療等」という。)を受けることができる世帯主を除く。)が、当該保険料の納期限から厚生労働省令で定める期間が経過するまでの間に当該保険料を納付しない場合においては、当該保険料の滞納につき災害その他の政令で定める特別の事情があると認められる場合を除き、厚生労働省令で定めるところにより、当該世帯主に対し被保険者証の返還を求めるものとする。
4 市町村は、前項に規定する厚生労働省令で定める期間が経過しない場合においても、同項に規定する世帯主に対し被保険者証の返還を求めることができる。ただし、同項に規定する政令で定める特別の事情があると認められるときは、この限りでない。
5 前二項の規定により被保険者証の返還を求められた世帯主は、市町村に当該被保険者証を返還しなければならない。
6 前項の規定により世帯主が被保険者証を返還したときは、市町村は、当該世帯主に対し、その世帯に属する被保険者(老人保健法の規定による医療等を受けることができる者を除く。)に係る被保険者資格証明書(その世帯に属する老人保健法の規定による医療等を受けることができる者があるときは、当該被保険者資格証明書及びその者に係る被保険者証)を交付する。

 新旧比較で明確なように、第九条第3項で「被保険者証の返還を求めることができる」から「被保険者証の返還を求めるものとする」とし、さらに「省令で定める期間が経過するまでの間に当該保険料を納付しない場合に」と1年間の期間を定めるなどの改悪となっています。また、あらたに第4項として「省令で定める期間が経過しない場合においても、同項に規定する世帯主に対し被保険者証の返還を求めることができる」として、1年間の経過をまたないで、「短期保険証」発行の根拠を明文化した改悪も行っています。

参議院厚生委員会(97年11月13日)での西山登紀子議員(日本共産党)の委員会質疑。(関連部分のみ抽出)

○西山登紀子君 わかりました。その数字は確認をさせていただきたいと思います。
 (中略)ですから、国保の実態というのはこういうふうに払えない実態が非常に広がっている中で、質問は介護保険なんですけれども、介護保険のこの保険料がさらに加わるわけです。そうなりますと、国保の保険料も介護の保険料も払えなくなる未納者の世帯がふえるのではないでしょうか。
○政府委員(高木俊明君) まず一点が被保険者証の返還の件なのでありますけれども、厚生省としましてもこの取り扱いについて全国的な通知(昭61.12.27課長通知=前回参考資料を参照のこと)を出しておりまして、これはやはりこの実際の運用といいますか実務に当たっては、それぞれその実情、被保険者の方の実情というものを十分考えて運用してもらいたいということを通達いたしております。
 その中で、被保険者証の返還を求めるというケースについての例を掲げてございますけれども、例えば納付相談とかあるいは納付の指導、そういったものを行おうとしても一向に応じようとしないというふうな場合、あるいはまた、こういった納付相談なり指導というものの結果、所得あるいは資産というものを勘案しますと十分な負担能力があるんではないかというふうに認められる場合、それからまた、納付相談なり指導……
○西山登紀子君 済みません。ちょっと時間がないので、未納者がふえるかどうかというそのことについてだけお答えいただきたい。
○政府委員(高木俊明君) わかりました。ただ、もうあと一、二ですから、申しわけありませんが。
 その際に、一応こういう保険料というものを納付いただきたいということで納付方法等をお互いに取り決めたと。しかし、誠意を持って履行しようとしない、そういうような等々ございますが、そのようないわゆる悪質という言葉は適当かどうかわかりませんけれども、そういったケースについて保険証の返還というような措置をとるようにということを言っておりますので、事情のいかんにかかわらず保険証を取り上げるというようなことではないということは御理解をいただきたいと思います。
 それから、この介護保険が導入されますと、国民健康保険の保険料にあわせて納付していただくわけでありますけれども、やはりこれは制度に対する理解といいますか、そういったものと非常に大きく結びついていると思いますし、そういった意味で、新しい介護保険制度ができましたら、やはりその介護保険の趣旨なりというものを十分御理解いただいて、そしてこの保険料というものもきちっと納めてもらうような、そういうような指導なりあるいはPRなりというものを十分していく必要があるだろうというふうに思っております。
 したがって、こういう制度ができたからさらに滞納者がふえてくるということは一概には言えないのではないかと思いますし、またそういうことがあっては制度そのものが成り立ちませんから、私どもとしては、やはりその辺のところについて十分国民の御理解というものを求めていかなきゃならないというふうに思っております。
(中略)
○西山登紀子君 ところが、やはり厚生省も、未納者がふえるということを考えて、介護保険法施行法第三十六条で国民健康保険法の一部改正を行うということを提案していらっしゃるわけですね。国保の現行の規定では滞納者に対して被保険者証の返還を求めることができると。ところが、この規定を変えて、納付期限が一定期間を過ぎて滞納している場合は世帯主に対して被保険者証の返還を求める、こういうふうに変えようとしているわけです。つまり、介護保険の導入を機会といたしまして保険料が払えない世帯主に対するペナルティーを強化しようとしている、そういうことではないかと思うわけです。
 先ほど高木局長は、実際の運用はいろいろだと、保険証の取り上げはそんなに機械的に強制的にやっているわけじゃないというような弁明がございましたけれども、今度この法案の改正が行われますと、これは一律に、「できる」じゃなくて「返還を求める」ということですから、これは強制的にペナルティーが強化されるということになるんじゃありませんか。
○政府委員(高木俊明君) 今提案しております法律の中で、御指摘のとおり、国民健康保険法の改正をいたしまして、従来は「返還を求めることができる」という規定でございましたけれども、これを「返還を求めるものとする」という形に変えております。
 これは、今回の制度が、介護保険制度が新たにできるというような中で、やはりこの辺のところについてもきちっとした法制的な制度として確立をしていくということでやっておりまして、しかしそういった中でも、先ほど申し上げましたような制度の運用ということについては、これは今の規定が「できる」という規定だからそういう運用をしているということではありませんで、やはり新たな法律の条文になりましても、実際の運用に当たりましては、これはやはり実情というものを十分勘案して、そしてそれぞれ被保険者の実態というものに合った形の、被保険者の実態というものを十分しんしゃくした上での運用というものをしていかなきゃならないというふうに考えておりますので、私は実態的にはそれほど変わらないというふうに考えております。
○西山登紀子君 ちょっとおかしいと思うんですね。実態的に変わらないというのなら、この法改正、変えなきゃいいんですよ。私は変える必要はないというふうに思います。
 次の質問に移りますけれども、そういうように法改正がされた場合に、今の自治体の裁量権、「できる」となっているこの裁量権が否定をされるということになるんじゃないかと思うんです。そこで、懸念されますのは、先ほど資格証明書の数、それから短期被保険者証の数を私紹介いたしましたけれども、それは資格証明書を出すというふうに決めていたり短期被保険者証を出すと決めている自治体は全国のまだ二割か三割の自治体なんですよ。ところが、今度法改正されて、これは返還を求めるというふうになりますと、今現在、そういう資格証明書や短期被保険者証を持つ世帯は約二十一万世帯、約四十万人になるわけですが、それが全国的に拡大されるということになれば、そういう人たちが、私の推定ですが、約八十万から百万世帯に拡大されるんじゃないか、そんな懸念を持つんですけれども、いかがでしょうか。
○政府委員(高木俊明君) そんなに大幅に拡大されてしまうと、これは制度が成り立たないというふうに思います。私どもは、先ほど申し上げましたように、この被保険者証の返還という措置自体が先ほど御説明したようなケースについて対象とする、そういった中で慎重に対応していくということで考えております。やはり負担能力があるケース、それにもかかわらず納付をしていただけないというようなケースについては、これはやはり制度全体がいわゆる相扶共済といいますか、保険制度というのはお互いに助け合いの中でできているものでありますから、能力に応じた負担というものはしていただかなきゃならないということでありますので、これを厳正にやっていくということは、これは各市町村の努力のもとにお願いしているわけですが、大事なことであろうというふうに思っておるわけであります。
 そういった意味で、私どもとしては、制度の趣旨というものを十分理解していただいて、そしてまた負担できる方については応分の負担ということをやはりお願いをしていくということではないかというふうに思います。
 そういった意味では、そんなに大勢の滞納者、滞納世帯というものが出てくるというようなことはないと思っておりますが、またあってはならないというふうに思っております。
○西山登紀子君 「国保が人を殺すとき」というふうな書物が出されたことがあるわけですけれども、介護保険が加わって医療保険の給付が制限される、つまり介護保険のために医療保険の給付が制限される、つまりお医者さんに行けなくなる、こういう深刻な事態が生まれる大変な心配があるわけです。特に、四十歳から六十四歳のいわゆる二号被保険者の場合には、これは世帯主ということになって家族を抱えております。子供もいれば親の面倒も見ているというその世帯が、介護保険が加わって払えなくなったら医療保険ももらえないということになる、これは非常に深刻だと思います。高知の市長さんもペナルティーはなくすべきだという陳述を先日もなさっているわけです。
 最後に大臣にお伺いいたしますけれども、未納者というのは決して悪質な滞納者ではなくて、経済的な理由から納入困難な人だということはせんだっての参考人招致でも、この場でも生松参考人が述べられましたことでもありますけれども、新しい制度を発足させるときには、この保険料を払えないという人を最初から排除する、保険料のハードルを高くして越えられないようなものをつくって、そして払えないからあなたにはペナルティーだ、こういう制度ではおかしいんじゃないかなと思います。
 十分に低所得者に配慮をし、ペナルティーをなくして過重にならない、そういう抜本的な再検討が必要だと思いますけれども、お考えをお伺いして終わります。
○国務大臣(小泉純一郎君) 保険制度というのは皆さんに参加していただかないと成り立たない制度でありますので、当然負担能力に応じた保険料を設定しなきゃならない、そして確実に納付していただくために、よく制度の趣旨を理解していただき協力を仰ぐ。特に、今お話しのように、低所得者に対しても無理のないような負担料を設定しないとこの制度は成り立ちません。最初からもう負担してもしなくても同じだということでありますとこの制度そのものが成り立ちませんので、できるだけ多くの方々に御協力いただけるような、理解と協力を求めるような啓発活動と、そして無理のない負担設定に十分な配慮をする必要があるというふうに考えております。(以上)

また、改悪国保法実施後の2002年にも、資格証明書や短期保険証が増加する中での国会論議も行われていますので参考にしてください。

衆議院厚生労働委員会(2002年6月5日)での小沢和秋議員(日本共産党)の質疑。

○小沢(和)委員 (中略)
 福岡市の例でいえば、国保加入世帯の七割が、年間所得二百万円以下の低所得者であります。その中で滞納は特に年間所得百万円以下の世帯に集中し、滞納率は実に五〇・三七%、半分を超えております。次が二百万円以下で、一九・四四%、約二割であります。それ以上は、所得が上がるのに応じて滞納が下がっております。全世帯の二四%、五万三千世帯が滞納し、そのうち一万二千世帯、約五分の一が資格証明書になっている。
 滞納者の多くは、生活が苦しいために払いたくても払えない人ではないかと思うんですが、こういう人々は悪質な滞納者でしょうか。
○大塚政府参考人 こういう人たちと申しましても、具体的な状況がわからないで悪質か悪質でないかということを断定することはとてもできませんけれども、考え方といたしましては、先ほども申しましたように、特別な事情がないにもかかわらず保険料を滞納する。逆に申しますと、特別な事情といいますのは、さまざまな事情があり得るわけでございますけれども、例えば災難、災害に、特に世帯の中心者である世帯主が被害を受けた、あるいは疾病の場合も、大きな疾病に世帯主がかかってしまった、あるいは事業の廃止をして収入が途絶えた等々あるわけでございます。
 そうした事情はそれぞれの市町村が個別に納付相談というような形を通じて状況を把握し、場合によっては延納したり分割納付をお願いしたりという形で処理をしたり、どうしても状況によって減免をする、免除をするというようなケースもあり得るわけでございまして、一概にこういう人たちと言ってこれが悪質というわけではございませんが、逆に申しますと、残念なことながら、そういった特別な事情がないにもかかわらずなかなか保険料をお納めいただけないという方々が現実におることも事実でございまして、それぞれの市町村におきましては大変御苦労されているということは私どもよく承知をしております。
 いずれにいたしましても、それぞれの地域において、いわば居住者、住民が力を合わせて相扶共済の考え方で運営する国保でございますから、そうした特別な事情がないにもかかわらず滞納するという方につきましては、公平の観点からも、ある意味では厳しく対応せざるを得ないというふうに考えているところでございます。
(中略)
○小沢(和)委員 じゃ、具体的な事例を挙げてみたいと思うんですが、私が住んでいる北九州市の小倉南区のAさんは三十二歳の女性ですが、長期の病気で働けず、保険証の取り上げで治療もできず、最後は救急車で病院に担ぎ込まれて、結局、二日後に亡くなりました。Aさん夫婦は、夫が失業したため国保に加入したところ、失業前の収入に基づいて年間四十数万円の保険税をかけられた。二人はアルバイトや職探しに追われて、とてもそれだけの額を払うことができなかった。資格証明書にされてから慌てて役所に行き、生活保護の申請の相談をしましたが、相手にされなかった。このことは市議会でも問題になり、テレビでも国保問題特集の中で取り上げられ、全国に報道されました。
 Aさんのケースは、世帯主が失業中ということで、今私が引用した国保の制裁措置の適用除外とする特別の事情に該当していたことは明らかではありませんか。
○大塚政府参考人 ただいまのケースにつきまして、私、具体的な実態を持ち合わせているわけではございませんから、そのケースを前提に申し上げることはできませんけれども、例えば、収入が皆無である、しかも長期間の疾病にかかっているというような状況の場合に、保険料を払うというのはなかなか難しいのが実態でございますから、通常のケースであれば、市町村とよく御相談をいたしますれば、全く何らの対応もないというようなケースではないと思います。
 したがいまして、逆に申しますと、個別事情にほかのどういった事情があるか、これは私はわかりませんので何とも申し上げられませんが、一般的なケースでいえば、おっしゃったような範囲でのケースであるならば、何らかの市町村の対応というのは期待されるべきものと私は考える次第でございます。
○小沢(和)委員 繰り返しになるかもしれませんけれども、資格証明書発行などの制裁措置を行ってはならない適用除外となる特別な事情として、世帯主の事業の廃止、つまり廃業が明記されているわけですね。そしてさらに、それに類する事由も挙げられている。そうすると、世帯主のAさんが失業しているのに資格証明書を発行したことはこれに反しているということは確認していただけますか。
○大塚政府参考人 ただいま申し上げましたように、もちろん、ただいま御指摘の世帯主が、事業を廃止する、あるいは疾病にかかり生計上困難を来しているというようなケースが特別な事情の例として挙げてあることは確かでございますから、これに該当するというお申し出があるならば、市町村といたしましては、その事情をよくお聞きをして、例えば、その他の生計のたつきがあるのかないのか、現状はどうだというようなことを調べるべきものだと思います。
 ただ、それだけがすべての状況なのかどうか、これは私の申し上げられる範囲を超えますので、おっしゃいますような条件の一つに、特別の事情というものに、ただいまおっしゃったようなケースが特別の事情の一つの例であるということは、私も当然のことと考えておるわけでございます。
○小沢(和)委員 だから、議論をすれば特別の事情に当たるケースだというようなものが実際には資格証明書になっている、そういうケースがあっちこっちにあるわけです。ぜひ、これについては是正させるような指導をお願いしたい。
 この際、考えていただきたいのは、資格証明書を発行されることが、このAさんの事例でもわかるとおり、事実上、医療から締め出されるということであります。資格証明書を病院の窓口に提出しても医療費全額を自分で支払わなければなりませんから、ほとんど持っている意味がありません。もともと窓口で全額支払うほどの金があれば、滞納するはずもありません。
 だから、福岡市当局の集計では、普通の国保世帯一人当たりの年間受診回数は十・二一回であるのに、資格証明書の世帯はわずか〇・〇九回、実に百分の一以下という結果になっております。福岡県全体では、受診率は百三十七分の一という数字が出ている。私のところには、北海道札幌市の場合はさらに低く、百七十七分の一だという資料も寄せられている。
 一番生活に困っている人たちが、こうして医療からも締め出される。小泉首相は、必要な受診を抑制しておりませんとしばしば言明しておりますけれども、普通の人の百分の一以下しか受診できない状態でも必要な受診は抑制されていないと言えるのか。大臣は、今のこういうやり方でよいとお思いになるかどうか、所見を伺いたい。大臣。
○大塚政府参考人 資格証明書の趣旨、性格、これは繰り返し申し上げたわけでございまして、費用負担が本当にできない、保険料を払うことが経済状況その他の特別な事情があってできないという方につきましては、一定の特別の事情という形で対応できる道が開かれておるわけでございます。しかしながら、残念なことに、そういうケースばかりではないということがありますから、こうした仕組みを導入しているわけでございまして、これは事医療保険に限った問題でないわけでございます。
 したがいまして、おっしゃいますようなケースであれば、よくよく市町村に御相談をいただければ、適切なアドバイス、適切な対応というのはあり得ると思うわけでございまして、むしろ、残念ながら、こう言ってしまっては言い過ぎかもしれませんけれども、多くの資格証明書交付の対象になっておられる方は、十分に市町村に接触をしていただけないケース、あるいはこの制度の趣旨を必ずしも十分御承知いただけないケースではないかというふうに考えます。
 もちろん、この適切な運用ということは重要なことでございますから、引き続き市町村を指導してまいりますけれども、基本的には、従来のこの制度を使った国民健康保険の運営の安定化ということは極めて重要なことだと考えております。(以上)