資格証明書の発行に関して市町村当局がどのような立場に立っているか。長野県松本市議会での質疑と答弁を紹介します。
06年3月松本市議会定例会での日本共産党犬飼明美議員の質疑
△犬飼議員
そもそもなぜ資格証明書と短期保険証を発行しなければならないのか、収納率を向上させるためと言いながら、制裁的な発行という感じがしてなりません。行政に対してかえって不信感を広げる結果になっていないでしょうか。今は大変だけれども頑張ろうとか、生きる意欲につながるような取り扱いにしていくべきです。
とりわけ資格証明書の発行は憲法の第25条の生存権の精神から見ても慎重に取り扱うべきです。資格証明書では窓口で全額支払わなければなりません。後で審査を経て7割が返ってきますけれども、実際問題これでは病院にかかることができません。病院には来るなと言っているようなものです。最低限でも資格証明書は出さないという方向へ努力すべきではないでしょうか。
厚生労働省は2005年の2月15日の通知で、乳幼児が含まれる世帯を資格証明書の対象外とすることを検討すべきであると指示をしました。これを受けて千葉県内では乳幼児医療費助成制度の受給世帯を国保資格証明書の発行対象から除外する、あるいは除外を検討する市町村が6割に上っていることが明らかになりました。国でも国民の苦難を軽減しようとする動きが出てきたものと思います。これは一つの例ですけれども、資格証明書の発行を検討できないかという点についてお考えをお聞きいたします。
◎市長(菅谷昭)
2回目のご質問にお答えいたします。
資格証明書発行に関することでございますが、厚生労働省からの通知については、まず昨年の2月15日に「収納対策緊急プランの策定について」がございました。その後5月に収納対策緊急プランの考え方と作成方法の解説が通知されました。その中で、乳幼児の医療費助成の上乗せ支給をしている地域では対象となる乳幼児が含まれている世帯は資格証明書の対象外とすることを検討すべきであると明記されております。
そこで、松本市の現状と今後の対応について申し上げますと、現在、乳幼児のいる世帯に対しては、運用の中で資格証明書の交付はしておりません。乳幼児は最も発育、健康に注意が必要な時期と考えますので、子育て支援の観点から、改めて現行の交付基準を見直し被保険者証の更新時期である本年10月から、乳幼児のいる世帯には被保険者証を交付する方向で現在検討を進めているところでございます。
以上でございます。
06年6月松本市議会定例会での日本共産党倉橋芳和議員の質疑
△倉橋議員
次に、健康保険証の短期保険証及び資格証明書の取り扱いについてでありますが、私どもはこれまで国保税の減免制度とともに、たびたび取り扱いについて改善を求めてきましたが、減免制度は一定の実効ある制度として改善を加えてから少しずつ定着しつつあるというふうに理解しております。平成16年、17年ともに10数件の申請認定がなされたと伺っております。
この短期保険証及び資格証明書の取り扱いについては、とりわけ先ほども紹介しましたように、子育て世代等々乳幼児を抱える皆さんにとっては本当に大変なパスポートとも言えるわけでして、またお年寄りの払いたくても払えない事情を抱えながら健康に不安を抱く家庭の事情なども、まさに命の支えとなるパスポートであります。本当に大変なこの短期保険証、資格証明書の取り扱いは現在でも2,300件、証明書が67件ということもお伺いしましたが、県下では本当に松本市は多いということで、私どもはなぜ松本はあんなに多いのかということをあちこちの自治体の議員さんから聞かれて大変冷や汗かく、こんなケースでもあるわけですが、この税の滞納を理由とした保険証の制限は、特に悪質と認められるケース以外は、この制限を行うべきではないということを改めて申し上げながら、この取り扱いについて今後どのような改善が行われたのか、この状況についてもお聞きをいたします。
◎健康福祉部長(和田孝一)
国保行政、それから障害者計画、2点のご質問にお答えをいたします。
国民健康保険における資格証明書、短期被保険者証交付基準の見直し等についてでございますが、初めに資格証明書に関してでございます。平成18年2月定例市議会で犬飼議員からのご要望を受けまして、税の公平負担を考慮しながら、市民の健康は何よりも大切だということ、さらに子育て支援の観点から資格証明書交付基準の見直しを行いました。
内容を申し上げますと、世帯員にゼロ歳から6歳の乳幼児がいる方、また母子世帯の方を交付対象外といたしました。また資格証明書の有効期間は10月1日から翌年9月30日の1年間でございますが、次年度更新時期には資格証明書にかえて短期被保険者証を交付することといたしました。
次に、短期被保険者証交付基準についてでございますが、この件につきましても2月定例会で交付基準を緩和する旨答弁させていただきましたが、この件もやはり交付基準の見直しを行いました。内容につきましては、軽減世帯の方に通常の被保険者証を交付するとともに、子育て支援の観点から資格証明書交付基準と同じ条件でございますが、乳幼児世帯や母子世帯には通常の被保険者証を交付することにいたしました。また、有効期間は原則的に1カ月単位の短期被保険者証を取りやめまして、3カ月、6カ月、9カ月単位の被保険者証を交付することにいたしました。
このような交付基準の見直しによりまして、資格証明書、短期被保険者証の発行数は、概算でございますが、約1,000件減少する見込みでございます。この交付基準は平成18年、ことし10月の資格証明書、短期被保険者証更新時から適用をしてまいりたいと思います。
参考に直近の京都市議会での当局の答弁を紹介します。市民の生活実態からかけ離れた、あまりの違いに怒りをおぼえます。
07年5月京都市議会定例会での日本共産党加藤あい市会議員の質疑
△加藤あい議員
次に,国民健康保険の問題について伺います。国民健康保険料を滞納している世帯が全国で485万5,000世帯と過去最多となり,本市においても5万2,000世帯に達しています。高すぎる国保料が低所得者の生活を圧迫し滞納者を増加させています。国保加入世帯の約5世帯に1世帯が保険料を払いたくても払えない,市長は,この異常事態をどう受け止めておられるのでしょうか。本市においては,2年前,賦課方式が変更され低所得者の負担が一気に上がりました。総所得100万円の2人世帯の場合,所得に占める保険料の割合は,2004年度7.6パーセントだったものが今年は14パーセントへと倍近くにまで上がります。ある家内加工業者の夫婦2人世帯の方は,所得350万円のうち所得税が22万5,000円,府市民税が26万円,さらに国保料と介護保険料が48万4,000円,国民年金保険料が16万9,000円,合計で約114万円が税と保険料となりました。つまり所得の3分の1が税と保険料で消えてなくなる,とんでもない負担となっています。
副市長は,先の2月定例市議会で大変な御負担をいただいているという基本的な認識は持っていると答弁されました。現行の保険料が市民の負担の限界を超えていることは明らかです。今年は,この6月に保険料値上げの減額措置の廃止で4万世帯,公的年金控除縮小で1万7,000世帯,合計5万7,000世帯もの保険料が値上げとなります。さらには,その両方の影響が及ぶ世帯が1万5,000世帯もおられるなどその負担増は大変なものです。一刻の猶予もありません。低所得者や高齢者に多大な負担を求めている実態を踏まえ,高すぎる国保料を今こそ引き下げるべきです。いかがですか。国民健康保険は,国や自治体の手厚い援助があって初めて成り立つ医療保険です。本市でも所得200万円未満が8割以上と低所得者が加入者の大半であり,制度の維持には独自の財源確保策が必要です。現状では,京都市独自の国保会計への繰入れは,過去最高である2001年度の約79億8,500万円を9億円も下回っています。独自の繰入額を大幅に増やし,せめて過去最高水準まで早急に戻すことを求めます。自民党政府は,1984年の法改悪を皮切りに国の責任を次々と後退させてきました。1984年に49.8パーセント,5割近くあった市町村国保への国庫支出金が2004年度には34.5パーセントに減らされました。これこそ高い保険料の元凶です。国に対して国庫負担削減をやめ1984年の水準に戻すよう求めるべきです。
次に,国民健康保険証の取上げ,資格証明書の発行問題について伺います。病院の窓口で医療費を全額負担しなくてはならない資格証明書の発行が大きな社会問題となりました。全日本民主医療機関連合会の調査で,2年間で正規の保険証を取り上げられ受診抑制により29名もの方が命を落としていることが判明しました。格差と貧困の広がりの中,命まで奪われる重大事態にマスコミも警鐘を鳴らしています。本市でも資格証明書発行によって重症化する悲惨な事態が発生しています。ある50代の方は1年間にわたって腹痛があるにもかかわらず病院に掛かっておられませんでした。見かねた友人が事情を聞くと,国保料が払えず資格証明書を交付されていたことが分かりました。その後,相談のうえ,生活保護を申請し受診,大腸がんだと分かり即手術となりました。その後,肝臓にも転移が判明し長期にわたる治療を余儀なくされたのです。さらに,別の方は5年前勤めていた会社が倒産,経営者の借金の保証人になり,商売を始めたものの多重債務に陥り保険料を払うことができなくなりました。保険加入者ではあるものの保険証はなく,病気になって耐え切れず相談に来られました。行政の窓口へは保険料を払えと言われるのでとても行けないと話され,我慢されていたのです。受診すると肺炎になっておられました。もっと早くに受診することができていれば,このような事態は避けることができました。
資格証明証の方の受診率は,正規の保険証をお持ちの方と比べると142分の1と本市でも極めて低くなっています。市立病院での資格証明書の方の受診は,昨年度,一昨年度共にゼロとなっています。病院窓口での医療費全額負担が市民の受診を抑制しているのは明らかです。本市では,資格証明書は約3,000世帯,短期証は1万6,000世帯に発行と10年間で大きく増加してきました。今年は,送付手続の変更から資格証明書の発行数が減っていますが,返戻分の中に資格証明書も含まれており事態は改善されておりません。京都府内でもほとんどの自治体が発行を控えています。資格証明書を発行していない京田辺市の担当者は,資格証明書を発行すると医者に行けなくなりますから,結局,納付の放棄につながり収納率が上がりませんと述べています。命にかかわる保険証の発行を滞納対策とリンクさせるべきではありません。資格証明証の発行をやめるよう求めます。いかがですか。
さらに,全国の自治体では国の定める基準以外にも発行対象外の範囲を独自に広げている所があります。長野県松本市では,母子世帯や乳幼児のいる世帯は資格証明書の発行対象から外していますし,旭川市では,保険料を納付することにより生計を維持することが困難な場合は適用を除外しています。子育て世帯や生活困窮者から容赦なく保険証が取り上げられている実態に,安倍首相は国会で,そんなことはしないように指導しなければならないと答弁しました。本市においては委員会で,子供のいるような世帯については,資格証明書の発行は対象にはないと思っていると答弁がありました。実際に子供のいる世帯,病人,生活困窮者に資格証明証を1枚も発行しないと言えますか。お答えください。
◎保健福祉局長(西村京三)
国民健康保険の資格証明書の発行についてお答え致します。保険料は,国保の事業運営のための基幹的な財源であり,すべての被保険者に公平に負担していただくことが制度存立の前提でございます。本市では,国民健康保険料の滞納者に対しまして区役所,支所への来所を求め,できる限りの接触を図り制度の趣旨を御説明し,個々の世帯の状況等を十分にお聴きする中で減免制度の活用を含めたきめ細かな納付相談等を行っております。しかしながら,前年の所得に基づき決定している保険料について,納付意思を全く示すことなく特別な理由もなしに長期にわたり保険料を滞納している方に対して,法令に基づいた資格証明書を交付することはやむを得ないことと考えております。
以上が京都市の実態にほかなりません。
国保証と資格証明書問題を5回にわたり掲載してきましたが、資格証明書の発行はいのちに係わる制裁措置であること、同時に様々な運動と議会での追及が一体となって資格証明書未交付の成果をあげてきていること、中でも高齢者や乳幼児などの世帯に交付させない運動が各地で取り組まれていることを紹介してきました。もちろん全ての事例や資料の掲載が出来たわけではありません。今後とも、ぜひ必要な情報や資料をお寄せください。
また資料提供の目的であった後期高齢者医療制度での資格証明書発行「義務規定」の不当性も含め、制度そのものの撤回要求をさらに大きく盛り上げる必要があります。
そのためにも、粘り強い運動とともに市政の転換を一刻も早く実現すること。来年の2月市長選挙に向け、全力で奮闘する必要があることを強く訴えて終わります。(以上 事務局山本隆)
06年3月松本市議会定例会での日本共産党犬飼明美議員の質疑
△犬飼議員
そもそもなぜ資格証明書と短期保険証を発行しなければならないのか、収納率を向上させるためと言いながら、制裁的な発行という感じがしてなりません。行政に対してかえって不信感を広げる結果になっていないでしょうか。今は大変だけれども頑張ろうとか、生きる意欲につながるような取り扱いにしていくべきです。
とりわけ資格証明書の発行は憲法の第25条の生存権の精神から見ても慎重に取り扱うべきです。資格証明書では窓口で全額支払わなければなりません。後で審査を経て7割が返ってきますけれども、実際問題これでは病院にかかることができません。病院には来るなと言っているようなものです。最低限でも資格証明書は出さないという方向へ努力すべきではないでしょうか。
厚生労働省は2005年の2月15日の通知で、乳幼児が含まれる世帯を資格証明書の対象外とすることを検討すべきであると指示をしました。これを受けて千葉県内では乳幼児医療費助成制度の受給世帯を国保資格証明書の発行対象から除外する、あるいは除外を検討する市町村が6割に上っていることが明らかになりました。国でも国民の苦難を軽減しようとする動きが出てきたものと思います。これは一つの例ですけれども、資格証明書の発行を検討できないかという点についてお考えをお聞きいたします。
◎市長(菅谷昭)
2回目のご質問にお答えいたします。
資格証明書発行に関することでございますが、厚生労働省からの通知については、まず昨年の2月15日に「収納対策緊急プランの策定について」がございました。その後5月に収納対策緊急プランの考え方と作成方法の解説が通知されました。その中で、乳幼児の医療費助成の上乗せ支給をしている地域では対象となる乳幼児が含まれている世帯は資格証明書の対象外とすることを検討すべきであると明記されております。
そこで、松本市の現状と今後の対応について申し上げますと、現在、乳幼児のいる世帯に対しては、運用の中で資格証明書の交付はしておりません。乳幼児は最も発育、健康に注意が必要な時期と考えますので、子育て支援の観点から、改めて現行の交付基準を見直し被保険者証の更新時期である本年10月から、乳幼児のいる世帯には被保険者証を交付する方向で現在検討を進めているところでございます。
以上でございます。
06年6月松本市議会定例会での日本共産党倉橋芳和議員の質疑
△倉橋議員
次に、健康保険証の短期保険証及び資格証明書の取り扱いについてでありますが、私どもはこれまで国保税の減免制度とともに、たびたび取り扱いについて改善を求めてきましたが、減免制度は一定の実効ある制度として改善を加えてから少しずつ定着しつつあるというふうに理解しております。平成16年、17年ともに10数件の申請認定がなされたと伺っております。
この短期保険証及び資格証明書の取り扱いについては、とりわけ先ほども紹介しましたように、子育て世代等々乳幼児を抱える皆さんにとっては本当に大変なパスポートとも言えるわけでして、またお年寄りの払いたくても払えない事情を抱えながら健康に不安を抱く家庭の事情なども、まさに命の支えとなるパスポートであります。本当に大変なこの短期保険証、資格証明書の取り扱いは現在でも2,300件、証明書が67件ということもお伺いしましたが、県下では本当に松本市は多いということで、私どもはなぜ松本はあんなに多いのかということをあちこちの自治体の議員さんから聞かれて大変冷や汗かく、こんなケースでもあるわけですが、この税の滞納を理由とした保険証の制限は、特に悪質と認められるケース以外は、この制限を行うべきではないということを改めて申し上げながら、この取り扱いについて今後どのような改善が行われたのか、この状況についてもお聞きをいたします。
◎健康福祉部長(和田孝一)
国保行政、それから障害者計画、2点のご質問にお答えをいたします。
国民健康保険における資格証明書、短期被保険者証交付基準の見直し等についてでございますが、初めに資格証明書に関してでございます。平成18年2月定例市議会で犬飼議員からのご要望を受けまして、税の公平負担を考慮しながら、市民の健康は何よりも大切だということ、さらに子育て支援の観点から資格証明書交付基準の見直しを行いました。
内容を申し上げますと、世帯員にゼロ歳から6歳の乳幼児がいる方、また母子世帯の方を交付対象外といたしました。また資格証明書の有効期間は10月1日から翌年9月30日の1年間でございますが、次年度更新時期には資格証明書にかえて短期被保険者証を交付することといたしました。
次に、短期被保険者証交付基準についてでございますが、この件につきましても2月定例会で交付基準を緩和する旨答弁させていただきましたが、この件もやはり交付基準の見直しを行いました。内容につきましては、軽減世帯の方に通常の被保険者証を交付するとともに、子育て支援の観点から資格証明書交付基準と同じ条件でございますが、乳幼児世帯や母子世帯には通常の被保険者証を交付することにいたしました。また、有効期間は原則的に1カ月単位の短期被保険者証を取りやめまして、3カ月、6カ月、9カ月単位の被保険者証を交付することにいたしました。
このような交付基準の見直しによりまして、資格証明書、短期被保険者証の発行数は、概算でございますが、約1,000件減少する見込みでございます。この交付基準は平成18年、ことし10月の資格証明書、短期被保険者証更新時から適用をしてまいりたいと思います。
参考に直近の京都市議会での当局の答弁を紹介します。市民の生活実態からかけ離れた、あまりの違いに怒りをおぼえます。
07年5月京都市議会定例会での日本共産党加藤あい市会議員の質疑
△加藤あい議員
次に,国民健康保険の問題について伺います。国民健康保険料を滞納している世帯が全国で485万5,000世帯と過去最多となり,本市においても5万2,000世帯に達しています。高すぎる国保料が低所得者の生活を圧迫し滞納者を増加させています。国保加入世帯の約5世帯に1世帯が保険料を払いたくても払えない,市長は,この異常事態をどう受け止めておられるのでしょうか。本市においては,2年前,賦課方式が変更され低所得者の負担が一気に上がりました。総所得100万円の2人世帯の場合,所得に占める保険料の割合は,2004年度7.6パーセントだったものが今年は14パーセントへと倍近くにまで上がります。ある家内加工業者の夫婦2人世帯の方は,所得350万円のうち所得税が22万5,000円,府市民税が26万円,さらに国保料と介護保険料が48万4,000円,国民年金保険料が16万9,000円,合計で約114万円が税と保険料となりました。つまり所得の3分の1が税と保険料で消えてなくなる,とんでもない負担となっています。
副市長は,先の2月定例市議会で大変な御負担をいただいているという基本的な認識は持っていると答弁されました。現行の保険料が市民の負担の限界を超えていることは明らかです。今年は,この6月に保険料値上げの減額措置の廃止で4万世帯,公的年金控除縮小で1万7,000世帯,合計5万7,000世帯もの保険料が値上げとなります。さらには,その両方の影響が及ぶ世帯が1万5,000世帯もおられるなどその負担増は大変なものです。一刻の猶予もありません。低所得者や高齢者に多大な負担を求めている実態を踏まえ,高すぎる国保料を今こそ引き下げるべきです。いかがですか。国民健康保険は,国や自治体の手厚い援助があって初めて成り立つ医療保険です。本市でも所得200万円未満が8割以上と低所得者が加入者の大半であり,制度の維持には独自の財源確保策が必要です。現状では,京都市独自の国保会計への繰入れは,過去最高である2001年度の約79億8,500万円を9億円も下回っています。独自の繰入額を大幅に増やし,せめて過去最高水準まで早急に戻すことを求めます。自民党政府は,1984年の法改悪を皮切りに国の責任を次々と後退させてきました。1984年に49.8パーセント,5割近くあった市町村国保への国庫支出金が2004年度には34.5パーセントに減らされました。これこそ高い保険料の元凶です。国に対して国庫負担削減をやめ1984年の水準に戻すよう求めるべきです。
次に,国民健康保険証の取上げ,資格証明書の発行問題について伺います。病院の窓口で医療費を全額負担しなくてはならない資格証明書の発行が大きな社会問題となりました。全日本民主医療機関連合会の調査で,2年間で正規の保険証を取り上げられ受診抑制により29名もの方が命を落としていることが判明しました。格差と貧困の広がりの中,命まで奪われる重大事態にマスコミも警鐘を鳴らしています。本市でも資格証明書発行によって重症化する悲惨な事態が発生しています。ある50代の方は1年間にわたって腹痛があるにもかかわらず病院に掛かっておられませんでした。見かねた友人が事情を聞くと,国保料が払えず資格証明書を交付されていたことが分かりました。その後,相談のうえ,生活保護を申請し受診,大腸がんだと分かり即手術となりました。その後,肝臓にも転移が判明し長期にわたる治療を余儀なくされたのです。さらに,別の方は5年前勤めていた会社が倒産,経営者の借金の保証人になり,商売を始めたものの多重債務に陥り保険料を払うことができなくなりました。保険加入者ではあるものの保険証はなく,病気になって耐え切れず相談に来られました。行政の窓口へは保険料を払えと言われるのでとても行けないと話され,我慢されていたのです。受診すると肺炎になっておられました。もっと早くに受診することができていれば,このような事態は避けることができました。
資格証明証の方の受診率は,正規の保険証をお持ちの方と比べると142分の1と本市でも極めて低くなっています。市立病院での資格証明書の方の受診は,昨年度,一昨年度共にゼロとなっています。病院窓口での医療費全額負担が市民の受診を抑制しているのは明らかです。本市では,資格証明書は約3,000世帯,短期証は1万6,000世帯に発行と10年間で大きく増加してきました。今年は,送付手続の変更から資格証明書の発行数が減っていますが,返戻分の中に資格証明書も含まれており事態は改善されておりません。京都府内でもほとんどの自治体が発行を控えています。資格証明書を発行していない京田辺市の担当者は,資格証明書を発行すると医者に行けなくなりますから,結局,納付の放棄につながり収納率が上がりませんと述べています。命にかかわる保険証の発行を滞納対策とリンクさせるべきではありません。資格証明証の発行をやめるよう求めます。いかがですか。
さらに,全国の自治体では国の定める基準以外にも発行対象外の範囲を独自に広げている所があります。長野県松本市では,母子世帯や乳幼児のいる世帯は資格証明書の発行対象から外していますし,旭川市では,保険料を納付することにより生計を維持することが困難な場合は適用を除外しています。子育て世帯や生活困窮者から容赦なく保険証が取り上げられている実態に,安倍首相は国会で,そんなことはしないように指導しなければならないと答弁しました。本市においては委員会で,子供のいるような世帯については,資格証明書の発行は対象にはないと思っていると答弁がありました。実際に子供のいる世帯,病人,生活困窮者に資格証明証を1枚も発行しないと言えますか。お答えください。
◎保健福祉局長(西村京三)
国民健康保険の資格証明書の発行についてお答え致します。保険料は,国保の事業運営のための基幹的な財源であり,すべての被保険者に公平に負担していただくことが制度存立の前提でございます。本市では,国民健康保険料の滞納者に対しまして区役所,支所への来所を求め,できる限りの接触を図り制度の趣旨を御説明し,個々の世帯の状況等を十分にお聴きする中で減免制度の活用を含めたきめ細かな納付相談等を行っております。しかしながら,前年の所得に基づき決定している保険料について,納付意思を全く示すことなく特別な理由もなしに長期にわたり保険料を滞納している方に対して,法令に基づいた資格証明書を交付することはやむを得ないことと考えております。
以上が京都市の実態にほかなりません。
国保証と資格証明書問題を5回にわたり掲載してきましたが、資格証明書の発行はいのちに係わる制裁措置であること、同時に様々な運動と議会での追及が一体となって資格証明書未交付の成果をあげてきていること、中でも高齢者や乳幼児などの世帯に交付させない運動が各地で取り組まれていることを紹介してきました。もちろん全ての事例や資料の掲載が出来たわけではありません。今後とも、ぜひ必要な情報や資料をお寄せください。
また資料提供の目的であった後期高齢者医療制度での資格証明書発行「義務規定」の不当性も含め、制度そのものの撤回要求をさらに大きく盛り上げる必要があります。
そのためにも、粘り強い運動とともに市政の転換を一刻も早く実現すること。来年の2月市長選挙に向け、全力で奮闘する必要があることを強く訴えて終わります。(以上 事務局山本隆)