高知医療センター問題に見られるように、PFI事業の最大の特徴であるVFM事態が、いい加減な規定であり、参入業者SPCにとって義務化されていないことを指摘しました。
内閣府のPFI推進委員会の昨年の提言も、これらのほころびを是正するためのものです。
しかし、いくら「要求水準書」や「契約・協定」に詳細な規定をもうけ、事前のチェックを行ったにせよ、いったん長期にわたる事業契約を結べば病院の経営を左右し、VFM自体が幻になってしまう、これが近江八幡と高知の教訓ではないでしょうか。
そこで、京都市立病院の実態、特にVFMに注目をして見ます。
京都市は昨年12月25日に、正式に「京都市立病院整備運営事業」をPFI手法で行うことを決めました。
その中で、選定した根拠であるVFMについて以下の記述があります。
<PFI手法により実施するメリット>
(1) 本市が従前のように各業務を個別に契約する場合に比べ,約5.6%の財政負担の削減を期待できる。
(2) PFI手法を用いて,設計・建設・維持管理・医療周辺までの各業務を性能発注方式により一括して事業者に任せるため,業務ごとに仕様を定め分割発注する場合と比較して,各業務間の連携や効率性を配慮した人員配置や,単年度契約では困難であった長期的な計画に基づいた業務の最適化を図ることができることから,効率的な維持管理及び医療周辺業務の実施が期待される。
(3) 設計・建設から維持管理・医療周辺業務まで,各種委託業務を統括する特別目的会社による一貫したマネジメントにより,事業者の創意工夫が発揮されることによって,医療スタッフが本来業務に専念できる環境が整備され,より質の高い医療サービスを提供できることが期待される。
京都市立病院整備運営事業のPFI法に基づく特定事業の選定について(広報)
特定事業の選定について(本文)
そこでまず(1)にあげた「約5.6%の財政負担の削減を期待できる」を資料にもとづき検証していきます。
資料は昨年12月に公営企業等予算特別委員会が要求した「要求資料(保健福祉局)」で、
1、京都市立病院整備運営事業におけるPFI手法導入に係る債務府t何行為設定額の内訳並びに経費削減効果額及びその算出の考え方
2、京都市立病院整備運営事業の収支の見込み
3、PFI手法の導入効果についての京都市立病院整備基本計画(平成17年9月策定)からの変更点
が、記載されています。
「削減効果額及びその算出の考え方」の整備費を検討します。
「整備費」とりわけ「新館新築」の削減額と算出の考え方
<「資料」に記載されている内容>
新館新築
○従来手法での経費見込み額 9,243百万円
▽PFI手法での経費見込み額 7,580百万円
◇PFI手法導入による削減効果額 ▲1,663百万円
算出の考え方
本館建設時の整備単価に建物物価の上昇や消費税率の改定、免震構造とするための経費増要素を加味して従来手法による整備経費を積算した上で、他の公立病院や民間病院の整備費を参考に、18%程度の削減効果があると見込む。
従来手法 424,000円/㎡×想定面積=9,243百万円
PFI手法 347,700円/㎡(従来手法の▲18%)×想定面積=7,580百万円
<*1:従来手法による新館整備単価の積算>
本館整備時の単価(335,780円/㎡)×消費税上昇分(1.05/1.03)×
建築物物価指数上昇率[A]×免震構造化割増[B]+特殊要素[C] ⇒ 424,000円/㎡
[A]:平成元年から平成20年度 1.146
[B]:免震構造化割増 3%
[C]ヘリポート・放射線防護設備等による加算 20,000円/㎡
<*2:PFI手法による整備単価の積算>
・従来手法の場合、工事費のうち80%を直接工事費、20%を共通経費と設定
・PFI手法の場合、従来手法に比べて直接工事費10%削減、削減後の直接工事費に対する共通費の割合を15%と設定
[100×80%(従来手法直接工事費)×0.9×1.15 ⇒ 82% … 18%削減]
従来手法による新館整備単価 424,000円/㎡×82% ⇒ 347,700円/㎡
以上が、新館建設費用のVFM積算根拠です。
数字が並んだので、次回に、㎡当たりの単価や1床当たり単価(病院建設費算定の指標によく用いる)などを検討していきます。上記の積算式を今後も参照してください。
(以上 つづく)