京都社会保障推進協議会ブログ

京都社保協のニュースや取り組み案内、タイムリーな情報・資料などを掲載していきます。

続:京都市立病院PFIについて(5)

2009年06月30日 13時09分01秒 | 資料&情報

 高知医療センター問題に見られるように、PFI事業の最大の特徴であるVFM事態が、いい加減な規定であり、参入業者SPCにとって義務化されていないことを指摘しました。
 内閣府のPFI推進委員会の昨年の提言も、これらのほころびを是正するためのものです。
 しかし、いくら「要求水準書」や「契約・協定」に詳細な規定をもうけ、事前のチェックを行ったにせよ、いったん長期にわたる事業契約を結べば病院の経営を左右し、VFM自体が幻になってしまう、これが近江八幡と高知の教訓ではないでしょうか。


 そこで、京都市立病院の実態、特にVFMに注目をして見ます。


 京都市は昨年12月25日に、正式に「京都市立病院整備運営事業」をPFI手法で行うことを決めました。

 その中で、選定した根拠であるVFMについて以下の記述があります。

<PFI手法により実施するメリット>

(1) 本市が従前のように各業務を個別に契約する場合に比べ,約5.6%の財政負担の削減を期待できる。
(2) PFI手法を用いて,設計・建設・維持管理・医療周辺までの各業務を性能発注方式により一括して事業者に任せるため,業務ごとに仕様を定め分割発注する場合と比較して,各業務間の連携や効率性を配慮した人員配置や,単年度契約では困難であった長期的な計画に基づいた業務の最適化を図ることができることから,効率的な維持管理及び医療周辺業務の実施が期待される。
(3) 設計・建設から維持管理・医療周辺業務まで,各種委託業務を統括する特別目的会社による一貫したマネジメントにより,事業者の創意工夫が発揮されることによって,医療スタッフが本来業務に専念できる環境が整備され,より質の高い医療サービスを提供できることが期待される。


 京都市立病院整備運営事業のPFI法に基づく特定事業の選定について(広報)


 特定事業の選定について(本文)



 そこでまず(1)にあげた「約5.6%の財政負担の削減を期待できる」を資料にもとづき検証していきます。

 資料は昨年12月に公営企業等予算特別委員会が要求した「要求資料(保健福祉局)」で、
1、京都市立病院整備運営事業におけるPFI手法導入に係る債務府t何行為設定額の内訳並びに経費削減効果額及びその算出の考え方
2、京都市立病院整備運営事業の収支の見込み
3、PFI手法の導入効果についての京都市立病院整備基本計画(平成17年9月策定)からの変更点
が、記載されています。


 「削減効果額及びその算出の考え方」の整備費を検討します。



  「整備費」とりわけ「新館新築」の削減額と算出の考え方


<「資料」に記載されている内容>

 新館新築
○従来手法での経費見込み額     9,243百万円
▽PFI手法での経費見込み額      7,580百万円
◇PFI手法導入による削減効果額  ▲1,663百万円
 算出の考え方
本館建設時の整備単価に建物物価の上昇や消費税率の改定、免震構造とするための経費増要素を加味して従来手法による整備経費を積算した上で、他の公立病院や民間病院の整備費を参考に、18%程度の削減効果があると見込む。
 従来手法 424,000円/㎡×想定面積=9,243百万円
 PFI手法   347,700円/㎡(従来手法の▲18%)×想定面積=7,580百万円

<*1:従来手法による新館整備単価の積算>
 本館整備時の単価(335,780円/㎡)×消費税上昇分(1.05/1.03)×
 建築物物価指数上昇率[A]×免震構造化割増[B]+特殊要素[C] ⇒ 424,000円/㎡
  [A]:平成元年から平成20年度 1.146
  [B]:免震構造化割増  3%
  [C]ヘリポート・放射線防護設備等による加算 20,000円/㎡

<*2:PFI手法による整備単価の積算>
 ・従来手法の場合、工事費のうち80%を直接工事費、20%を共通経費と設定
 ・PFI手法の場合、従来手法に比べて直接工事費10%削減、削減後の直接工事費に対する共通費の割合を15%と設定
 [100×80%(従来手法直接工事費)×0.9×1.15 ⇒ 82% … 18%削減]
 従来手法による新館整備単価 424,000円/㎡×82% ⇒ 347,700円/㎡


 以上が、新館建設費用のVFM積算根拠です。


 数字が並んだので、次回に、㎡当たりの単価や1床当たり単価(病院建設費算定の指標によく用いる)などを検討していきます。上記の積算式を今後も参照してください。


(以上 つづく)






 






 


続:京都市立病院PFIについて(4)

2009年06月29日 08時01分15秒 | 資料&情報

 高知医療センターの検証の続きです。


  PFIの本質は「VFMが生じなかっても長期にわたって委託料が支払われる」


 前回に引用した高知市議会での論議は、岡田議員が指摘しているように「問題なのは,決定的な赤字構造でありながら,SPCには5億円のマネジメント料,給与相当分が支出され,取り仕切る委託関係費は同規模内容の病院と比較して約3億円も高い30億円に上ります。おまけに建設資金を貸し付ける割賦金利息も,オリックスに収入として入ります。5億7,000万円,まさに県民,市民の税金が民間企業に吸い上げられると言っても過言ではありません」という、病院の収支(赤字・黒字)に関係なく、長期間にわたってSPCに委託料等が支払われるしくみにあります。委託料等の固定的経費は、医療機関の経営構造(2年に一回の診療報酬の改定や薬価の変動、患者動態など絶えず変化する収益構造)に多大の影響を与えます。診療報酬そのものが政府・厚労省の政策的誘導に使われ、ましてや「都道府県単位の診療報酬制」が浮上している中で、「いかに固定的費用を削減するか」(柔軟に医療環境に対応できるか)が必要なことは言うまでもありません。

 オリックスSPCはPFI事業に参入するときに、多額のVFMを試算していますが、30年にわたる運営的経費削減の中心は医療材料費の民間手法による削減効果です。ところが、当初提案の削減効果が実行されないばかりか、企業団が試算したPSC(前回の注を参照)をも上回る材料費となり、この、材料費の割高が病院経営を圧迫し、資金ショート直前まで追い込むことになったのです。


   「まぼろしのVFM」


 気になるのは、オリックスSPCは
①PFI事業に応募したときの提案(VFMの計算)は、応募をするときの提案であり、契約内容とは異なるとしている。
②VFMは長期にわたって(契約期間をつうじて)効果が現れるものであり、数年間で判断するものでない。

 応募時の提案には具体的な経営貢献度が数値としても示されますが(応募時提出文書で詳細な提案内容(
京都市立病院PFI事業「提案仕様書」を参照)が審査され、SPC業者が確定される仕組になっています。
 ところが「提案」は「契約」ではないというSPC業者の言い分が主張できるのがPFIの本質です。また、「長期にわたってVFMの効果」があればよいとは、PFI事業の特徴である民間業者との長期契約がもつ「避けられない矛盾点」をついたSPCの主張といえます。


 同時に、議会答弁で市長は「PFIは準備段階でも非常に手間がかかりやすく,現実として使いやすい手法となっていないということもこの報告書の中でも少し指摘をされております。また,効果が明確に確認し得ないということも指摘をされておりまして,当初国が想定したことになっていないという指摘がされているところでございます。」と発言しています。
 PFI事業が全国で「民間の智恵を生かす。VFMを生み出す」と導入されましたが、実施される中で多くの問題点が浮かび上がり、特に、近江八幡市民病院や高知医療センターが頓挫する中で内閣府のPFI推進委員会は「軌道修正」を余儀なくされます。(平成19年11月15日
付「推進委員会報告概要版」)


 この情勢の中でも強引に市立病院のPFI事業を推進しているのが京都市です。


 高知市長答弁では、もう一つ京都市立病院PFIにとって重要な点を指摘しています。それは、「医療センターを運営しております病院企業団は,特別地方公共団体でございまして,執行機関,議会ともに独立した組織でございますので,まずはその法律上のたてりの病院企業団の執行というところに留意をしなければならないと認識をしております。」ということです。高知医療センターは京都県立病院と高知市立病院の統合(新築・移転)により建設されましたが、統合に際し特別地方公共団体を設立し「病院企業団」としたことです。
 したがって県民・府民の健康やいのちを預かる財産ですが、直接的には県議会や市議会が関与できない(県民・市民の声やチェック機能が働かない)仕組になっていることです。
 京都市は、京都市立病院の独立地方行政法人化をすすめていますが、まったく同様の事態を引き起こすことが考えられます。


(以上 つづく)





続:京都市立病院PFIについて(3)

2009年06月28日 08時21分22秒 | 資料&情報

 今回、SPCとの解約を決めた高知医療センターの「要因」についての資料提供です。京都市立病院PFI事業の「将来」を見極める上での検証です。


 高知医療センターの場合は、近江八幡市とは違った問題点が浮上しました。オリックスSPCとの契約をめぐり、期待した削減効果が見られず、契約を継続すること事態が巨額の赤字を生み続ける構造になっていたからです。


 そして、今月16日に開催された「高知県・高知市病院企業団議会臨時会」で、企業長は以下の提案を行い、議会に諮り、オリックスSPCとの解約となります。

 「(前略)これまで企業団からは、PFI事業でSPCに支払う諸経費を含めれば、公共が行うよりも割高となっていると指摘してきており、SPCが、材料費や委託料を直ちに削減することが困難であるとする以上『合意によるPFI事業契約の終了』も選択肢の一つと考えています。(後略)」


 解約にいたる経過については、今年2月の「高知県・高知市病院企業団議会」における「附帯決議」に記載されています。


(以下「附帯決議」引用)

 「高知医療センターの経営改善と医療体制の維持向上を求める附帯決議」

 高知医療センターは本年度末、資金ショートを回避するために件・市両構成団体から多額の貸し付けを受けることとなる。
 このような経営危機に対して、早急な回避策を講じるために病院改革プランを策定しようとしたが、改革プランの策定には欠かすことのできない特定目的会社(SPC)高知医療ピーエフアイ株式会社の協力が得られないまま、来年度予算を編成することとなった。
 高知医療センターの運営をPFI事業として採用したのは、VFM効果を生じることが前提であり、公共の費用負担が軽減されるからであった。
 しかし、材料費などの費用が、PSCや応募者提案時より大幅に上回っている現状の中で、今後の協議において、特定目的会社(SPC)の経営改善の協力姿勢に変化が見受けられない場合は、PFI事業を継続しないことで経営改善を図ることを選択せざるをえないことも視野に入れた検討が求められる。
(後段部分は省略)
(注)「PSC」とは、公共側が自ら実施した場合に、事業期間全体を通して、いくらの財政負担になるかを現在の価値に計算してあらわしたものです。



 つまり、病院の「経営危機」の事態にもかかわらず、PFI事業による「VFM効果がなく」、その原因は「材料費などの費用がPSCや応募者提案時より大幅に上回っている」こと、「経営改善のための協力姿勢が見られない」などとしています。




 このような事態に至る経過の中で興味ある質疑が、企業団議会を構成する高知市議会で行われています。



(岡田泰司議員)
 私は1年前,PFI事業に反対してきた日本共産党として,高知医療センターは県民,市民の命と健康を守るとりでとしてかけがえのない役割を果たしていることを示しながら,SPCが役割を果たしていないことが赤字の主な要因であり,断固とした態度で臨むべきだと問題提起をしました。そして,同僚議員,また県議会も同じ認識に立ち,決議を上げることとなりました。まさに当初から指摘してきたとおりの事態になっています。問題なのは,決定的な赤字構造でありながら,SPCには5億円のマネジメント料,給与相当分が支出され,取り仕切る委託関係費は同規模内容の病院と比較して約3億円も高い30億円に上ります。おまけに建設資金を貸し付ける割賦金利息も,オリックスに収入として入ります。5億7,000万円,まさに県民,市民の税金が民間企業に吸い上げられると言っても過言ではありません。ところが,12月1日の病院議会では,SPC側は経費削減を株主に説明できないと拒否しました。これのどこがパートナーシップなのでしょうか。人権保障を担う公務と利潤追求が目的の民では,そもそも目的が違う,緊張関係こそが大事と指摘しましたが,まさにそのことが目前であらわれています。
 官と民のパートナーシップと発想自体に問題があったのではないか,何を教訓とするのか伺います。
 よほどの経営改善の見通し,SPC側の決断がない限り,議会としても安易な行政の肩がわりは市民に説明がつかない事態となっています。そんな中で,市長は7億6,000万円の不足資金を出すとマスコミに早々と答えるとはいささか拙速で,無責任ではないかと指摘しておきます。
 SPCの大もとであるオリックスは,企業像として高い能力と謙虚な姿勢を持ち,信頼される企業,社会との調和を図り,尊敬される企業とうたっています。グループ会長の宮内義彦氏は,規制改革・民間開放推進会議の議長としてPFIを推進した責任がありますが,オリックスの役職員行動実践には,社会のためにオリックスが存在するということを強く認識とうたわれています。この立場をきちっと守ってもらわなければなりません。
 12月中に企業団の提案に対し回答があると聞いていますが,結論が出る前に市民の代表,政治家として市長みずからがオリックス本社と交渉に当たるなど,構成団体の長として先頭に立つべきと思いますが,お聞きをいたします。
(岡崎誠也市長)
 次に,医療センターについて,特に官と民のパートナーシップということで御質問をいただきました。
 PFI事業につきましては,一番の大もとになっておりますのは,内閣府が平成19年11月に報告書を出しておりますが,真の意味の官民のパートナーシップの実現に向けてという報告書の中で,PFI事業の着実な実施は,低廉かつ良質な公共サービスの提供,公共サービスの提供における行政のかかわり方が改革されることによる新たな官民パートナーシップの形成,民間の事業機会を創出することを通じた経済の活性化,この3つの成果がもたらされるというのがPFIの一つの目標ということになっております。しかし,PFIは準備段階でも非常に手間がかかりやすく,現実として使いやすい手法となっていないということもこの報告書の中でも少し指摘をされております。また,効果が明確に確認し得ないということも指摘をされておりまして,当初国が想定したことになっていないという指摘がされているところでございます。
 この医療センターにつきまして,私たちも重大な関心を持って臨んでいるわけでございますが,御承知のとおり,医療センターを運営しております病院企業団は,特別地方公共団体でございまして,執行機関,議会ともに独立した組織でございますので,まずはその法律上のたてりの病院企業団の執行というところに留意をしなければならないと認識をしております。
 病院企業団からは,重要な課題につきましては,その都度事前に直接報告を受けておりますが,この病院企業団ではこれまで高知医療ピーエフアイ株式会社に対しまして,経営改革プランで検討している平成23年度の経営収支均衡に向けまして,委託料やSPCの諸経費等を3年間で6億円削減することを求めておりますし,また病院企業団とともに,経営改善に取り組むことをSPCに対して強く要請をしている状況にございます。病院企業団では,去る11月27日にオリックス本社に対しまして,割賦金の企業債への借りかえや,23年度の収支均衡に向けました先ほどの経費削減につきまして,オリックス本社にも強く協力を申し入れているところでございます。
 現在,病院企業団とオリックス本社との協議がこのように行われているところでございますので,まずその病院企業団の執行部としての協議の進捗状況を見てまいらなければなりませんが,設置者として知事と市長という立場から,その状況に応じて知事ともそれぞれ協議をしなければならないというふうに思っております。
 御質問の中で,7億6,000万を支援するというお話が少し出ておりましたが,私が記者会見で申し上げましたのは,医療センターを県民,市民の高度医療機関として守っていかなければならないという趣旨で発言をしたものでございまして,7億6,000万を直接全額支援するということは申し上げておりません。設置者の県,設置者の市,そして運営を執行しております病院企業団,それぞれ協議をした上で,新年度予算編成をどういうふうにしていくか,資金ショートに対して設置者としてどう支援していくかは,今後予算査定の中でも慎重に協議をしていかなければならないというふうに思っておりますので,そこは御理解を賜りたいというふうに思っております。
<平成20年12月15日 定例会議事録より>


(以上 つづく)





続:京都市立病院PFIについて(2)

2009年06月23日 19時37分30秒 | 資料&情報

 京都私立病院PFIについての検討ですが、全国の公立病院PFI事業について新たな動きがありましたので掲載します。


 近江八幡市につづき、高知医療センターもPFI事業を解約

 全国の病院PFI事業の先駆けの一つであった近江八幡市総合医療センターのPFI事業が、SPC(大林組)に約二十億円の違約金を支払う条件で解約を行ったことはすでに報道されていますが、初めてPFI事業を導入した高知医療センターもSPC(オリックス)との契約を打ち切り、百四十億円以上の違約金を支払うことを決定しました。

  近江八幡市立病院PFI解約記事

  高知医療センターPFI解約記事
  同           解説記事

 いずれも「個別の問題」があることも明白ですが、それにとどまらず「はたして公立病院の整備や運営事業としてPFI事業が妥当なのか」という本質的な問題を含んでいます。

 近江八幡市立病院や高知医療センターのPFI事業解約の動きは、各地での効率病院PFI導入に影響を与えています。

  福岡市民病院PFI一部見直し

 

ところで、それぞれのPFI事業には「本質的な問題」があると述べましたが、当事者の自治体や病院はどのようにみているのか、今後の京都私立病院PFIについても「参考となる」とおもいます。


 平成21年3月に作成された「近江八幡市立総合医療センター病院改革プラン」の中で、「PFIの問題点と解約への取り組み」の章があります。
 そのなかの、PFI導入の評価について引用します。

 ●「公営企業健全化計画」に記載されているPFI の課題抽出≪平成20年11月≫
【その1】当初計画での問題点
①当初計画と現状の乖離
・PFI 導入にあたって想定された経営シュミレーションの目標達成困難
②契約期間中の支払額の固定
③起債を採用しなかったことによる金利負担の増
④支払計画の不備
【その2】医療・経営環境の変化
① 医療を取り巻く環境の変化
・平成18 年度の診療報酬の改定
② 経営を取り巻く環境の変化
・補助金が起債措置に置き換わったことによる元利償還金の発生
・システム関連費の前倒し
・金利の上昇

●「近江八幡市立総合医療センターにおけるPFI 事業の検証」に記載されているPFI の課題抽出 ≪平成21年3月≫
①総額(定額)契約とインセンティブ
・病院経営には関係なく固定経費をSPC へ30 年間支払うため、民間のインセンテ
ィブがはたらかない。
② 総額契約とモニタリング(その1)
・総額契約でもモニタリングシステムが完備していれば民間の活力を生かせることができたが、その構築は中断したままであった。
③ モニタリング(その2)
・モニタリングシステムを契約後に作成し、ペナルティーを設けることは総額契約による支払いを脅かすことになるため受け入れられにくいものとなった。
④ 業務の効率化と間接委託
・SPC を通じて二次委託化された事業委託制となっているため、指揮命令系統での手続きが煩雑になり、硬直的な形態になった。
⑤ 民間資金活用とコスト削減
・起債を導入可能であったが、結果的にスプレッドの上乗せをしてSPC を通して民間から借りるという形になった。金利が高くてもVFMは成り立つことから民間資金のみになり、後年度負担を大きくした。
⑥ 契約内容の行間の不透明性
・総額契約のため多少不透明な部分も包括的に契約されているものと多くの病院職
員が理解していたが、実際には不明確な部分は病院の持ち出しとなることがほとんどであった。


以上が、「病院改革プラン」に述べられている公式見解です。

 京都市当局は、「先行事例の教訓に学び」「施設整備は民間資金でなく起債とした」「SPCとの関係は要求水準書で詳細に規定している」などと議会答弁をおっこなっていますが、とんでもないです。近江八幡市立病院の「評価」は、個別の問題があるにせよ、単なる民間資金活用の失敗でなく、「当初計画とのずれ→たとえば病床稼働率(*京都私立病院の今年度予算での病床稼働率も検討の必要あり)」や「長期にわたる定額支払い契約→効率化のインセンティブが働かない」「モニタリング制度→不備ないしは実質SPCまかせ」「硬直した契約→契約以外は病院が負担」「SPCを通してしか委託業者との関係がとれない」など、京都市当局がどう「教訓化した」か、全く不明状態です。

 「先行事例の教訓」というなら、「当初の見込みの想定外」などとなれば、そのしわ寄せは京都市民に降りかかることを自覚すべきです。
 そしてBFMの詳細な積算根拠をはじめ、すべての資料を公表し市民に問うことが求められています。

 
  近江八幡市立総合医療センター病院改革プラン



(以上)



 

 


「与謝の海病院脳神経外科を再開せよ」と京都府・府医大に要請!

2009年06月22日 11時29分09秒 | 事務局通信

6月18日、今年4月から京都府北部の与謝の海病院脳神経外科が休止された問題で、丹後社保協と宮津・与謝社保協の代表団が、京都府と府立医科大学に早期再開を求めて要請を行いました。
 要請行動は、「府市民総行動(総評など実行委員会主催)」の一環として取り組まれました。

 丹後、宮津・与謝からバスで上京した代表団は8,493筆の「再開要請」署名を京都府に提出しました。短期間で取り組まれた署名運動は、「だれも断る人はいない」「診療所の待合で協力してもらっている」「隣組でまわしている」など、短期日で集約されたものです。
 与謝の海病院の脳外科医は、以前の4名から2名に、さらに1名になり、今年3月末には1名の医師の退職により、2次医療圏の丹後では救急受け入れができなくなりました。このため緊急の対応が必要になる重篤な脳疾患の患者は、遠く離れた舞鶴や兵庫県豊岡市に搬送されることになり、「ここで倒れたら助からない」事態となっています。
 18日当日は、「府北部の人間も、京都市内の人間も、命の重みに差はない」「一刻も早く再開を」と京都府庁前での街頭演説会、府庁包囲デモ、会派要請、要請書提出などを行いました。
 また、要請行動の終了後に、京都社保協主催の「激励交流会」を行い、「脳神経外科早期再開」にむけた決意をいっそう固めました。

<府庁包囲デモ>


<京都府に署名を提出>


<丹後、宮津・与謝社保協代表の訴え>


<府立医大への要請>


<京都社保協の「激励交流会」>



(以上)


続:京都市立病院PFIについて(1)

2009年06月17日 00時19分40秒 | 資料&情報

 「日ごろは、京都市立病院の運営に多大な御理解、御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。」で始まる京都市保健福祉局の文書が出されました。
 おそらく、約18年後までの京都市立病院の運営を左右するPFI事業の第一歩となる出来事です。


 平成21年5月付の保健福祉局文書には
「市立病院整備運営事業の一般競争入札参加資格の確認結果について」の表題で、以下の記述がされています。


 「市立病院整備運営事業につきましては、PFI法に基づく特定事業として実施するもので、事業者を選定するに当たり、本年2月6日に入札告示を行いましたが、入札参加表明を行う事業者がなかったため、4月16日に再入札の告示を行いました。
 5月15日から同月21日までの間に、入札参加表明の受付を行ったところ、ワタキューセイモアグループから入札参加表明がありました。
 入札参加表明と同時に提出された入札参加資格確認申請書に基づき、入札参加資格の審査を行った結果、同グループが入札参加資格を有することを確認し、5月26日、同グループの代表者であるワタキューセイモア株式会社に対して、その旨を通知しましたので、ご報告致します。
 今後、次のスケジュールで事業者を選定し、平成22年1月下旬の特別目的会社(SPC)との事業契約締結及び平成25年4月の新館での診療開始を目指してまいります。
 今後の主な日程
  入札         平成21年 8月19日
  落札者決定     平成21年10月上旬
  事業契約締結   平成22年 1月下旬
  新館での診療開始 平成25年 4月(当初予定どおり)

ワタキューセイモアグループの構成

  代表者      ワタキューセイモア㈱  京都府綴喜郡井手町  全体マネジメント
  構成員      三菱商事㈱        東京都千代田区     全体マネジメント
   同上      ㈱麻生           福岡県飯塚市       全体マネジメント
  主要協力企業  鹿島建設㈱        東京都港区        設計・建設
   同上      ㈱山下設計        東京都中央区       工事監理
   同上      ㈱ニチイ学館       東京都千代田区      医療事務
   同上      ㈱コモサ          北九州市小倉北区    医療事務
   同上      ㈱日本ホスピタルサービス東京都千代田区     調達



 以上が、「入札参加資格確認結果」のお知らせ文書です。

 予想されたとおり三菱グループ系の企業が入り、「スーパーゼネコン」建設会社とともに、現職総理大臣の麻生グループが参入するという、非常に「豪華」な企業名が並んでいます。

 これにより、8月に行われる一般競争入札は、1グループのみとなる事が決定しました。

 
今後、PFI及びワタキューセイモアグループで構成されるSPC参入予定グループについての問題点を掲載していきます。


  京都市ホームページ(6月15日掲載)



(以上 つづく)


京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(10)

2009年06月16日 07時18分28秒 | 資料&情報

 これまで京都府の「税務共同化」組織に関する準備等の資料は、なかなか見つけずらい状況でした。
 たとえば、「準備会」等の資料を、京都府のホームページから見るためには
 京都府トップ → 「暮らし・環境」 → 税金・府債・宝くじ・証紙等 → 税金の種類(税務課) → 府税について(府税課のページにようこそ) → トピックス・市町村と府の税務共同化 の順にクリックを繰り返し、やっと過去の検討状況の資料を見ることができます。

 ところが6月8日に「京都府・市町村税務共同化組織設立準備委員会ホームページ」が開設されました。

 ホームページの「準備委員会の活動」には、
平成20年4月15日 「準備委員会設立総会」資料
平成20年8月27日 「第1回準備委員会」資料
平成20年12月15日 「第2回準備委員会」資料
平成21年4月9日 「第3回準備委員会」資料
 が、掲載されています。

  「設立準備会」ホームページ


 「第2回準備委員会」資料には「徴収業務事務提要(案)」が掲載されています。長文ですが、ぜひ目を通して頂きたいと思います。
 本文は26ページに渡り、特に「滞納処分等」の内容では、「預貯金」「給与」「不動産」「動産」「自動車」の処分に関する「調査方法」「差押手続き」「取立手続き」などが詳細に記載されています。

  「徴収業務事務提要(案)」(16ページ)


 これらの「提要」による徴収業務が広域連合職員により実施されることを想定するなら、しかも国保料も含むとすれば、まさに住民の生活といのちを脅かすものといえます。

 事実、「税の共同徴収(地方税回収管理機構)」を行っている県では、『職員は県市町村から派遣された20人。徴収専門グループは12人で顧問に弁護士や警察・国税のOBを据えています。徴収専門グループは徹底した財産調査をおこない、預金、生命保険、売掛金などの差し押さえや不動産の公売で滞納税金を強制的に徴収。「1年以内のスピード処理」を売りに、「徴税吏員証」を持ち市町村税と個人県民税の徴収にあたります。「(令状なしで)家宅捜索もおこなえる。(事業が倒産することも)結果としてはあり得る」』(三重県)などが起こり、大きな問題になっています。

 長崎県の「税回収機構」が今年4月に配布しているチラシを紹介します。

 「地方税の滞納整理が強化されます」


 以上、京都府が住民無視とも言える強硬な姿勢で行おうとしている「税務共同化」と「国保一元化」問題を検証して来ました。

 どちらも進行中の課題であり、府民から疑問と怒りの声があがっています。今後も、引き続きとりあげることになるでしょうが、いったん終了します。


(以上)



京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(9)

2009年06月15日 00時00分00秒 | 資料&情報

 前回の掲載で、第1回あんしん医療制度研究会で配布された資料を掲載(ここから)していますが、具体的な内容について検証していきます。

 「研究会」が行う調査研究の課題として
①調査研究を行うデーターが不足であるとしてレセプトデーターの管理が必要。
②保健医療に関係する主体が市町村・府県・国に分散しており、一体的な施策の実施ができない。
③市町村国保が保険者機能を発揮できなくなっている。
の3点を挙げています。

1.レセプトデーターの管理とは

 課題の一番目に挙がっているレセプトデーターの管理とは、医療機関に受診した際の医療行為(診察や検査や入院治療など)を、医療機関が保険者に診療報酬にもとづいて請求する「請求書」のことです。請求先は市町村国保や組合国保、協会けんぽ、組合健保などの保険者であり、保険の種類によって相手が変わります。
 レセプトには、氏名、生年月日、病名、受診日、診療行為などが詳細に記載され、診療報酬の点数が計算されています。ただ「請求書」であるため、カルテ(診療の記録)でなく患者さんの訴えや医師の判断などは当然記載されていません。
 そこで問題なのは、
①レセプトは個人が特定できる指名等の情報が記載され、病名等のプライバシーにかかわる重要な個人情報であること。個人情報保護法では、個人情報の利用に当たっては本人の承諾く無しに行ってはならないとされて入り、、医療機関でも「個人情報保護の方針」を患者に明示しなければならないとされています。
 すこし、京都の医療機関の個人情報の取扱いについてみてみます。


 第一日赤病院「個人情報のとりあつかいについて」

1. 個人の情報は明示された目的のためにのみ使用します。
個人情報をお聞きする場合には、必ず利用目的を明示し、皆様ご自身の意思のもとに情報を提供していただきます。また、ご本人の承諾がない限り、利用目的以外に個人情報を使用することはありません。
2. 個人の情報は第三者に提供いたしません。
個人情報は、ご本人の承諾がない限り、第三者に提供することはありません。
3. 個人の情報はいつでも開示、訂正、追加又は削除します
お申し出があった時は、ご本人であることを確認し、登録された情報の開示、訂正、追加又は削除を行います。
4. 適用除外について
日本赤十字社では、皆様の個人情報を上記のとおり取り扱いますが、(1)法令に定めがあるとき、(2)本人又は第三者の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、緊急かつやむを得ないときのいずれかに該当するときは、上記の取り扱いを適用しない場合があります。

 京都市立病院「個人情報保護方針」(病院長あいさつの下段)

個人情報の利用及び提供について
 当院は,患者の個人情報の利用につきましては,以下の場合を除き,本来の利用目的の範囲を超えての使用いたしません。
  (1)個人識別できない状態にした場合(注1)
  (2)法令に定めがある場合
  (3)患者の同意を得た場合
  (4)出版,報道等により公にされている場合
  (5)個人の生命,身体又は財産の安全を守るため,緊急かつやむを得ないと認められる場合
  (6)公益上特に必要があり,かつ,本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合
また,法令の定める場合や緊急の場合等を除き,患者の許可なく,その情報を第三者(注2)に提供いたしません。


 多くを見ても同様の「個人情報取扱い」が各医療機関で公表され、患者の同意(掲示等も含む)が取られています。レセプトの扱いは「病院が請求上必要なもの」として同意との扱いであるが、「使用目的以外(請求のため)に利用しない」よう保護された情報となっています。問題は違いますが、レセプトインライン請求義務化に反対の保団連の主張でも、「患者・国民のプライバシーにとっても問題ある」とし、患者情報保護の立場からもレセプトの扱いに懸念を表明しています。
 また、第1回「研究会」では、委員から「レセプトは全ての医療情報が記載されたものではない。レセプトのみで医療保険政策の現状は分析できない」との意見が出されています。
 保険者でない京都府がレセプトデーターを管理することが妥当なのか、問題があるといえます。

2.主体が市町村・府県・国に分散しており、一体的な施策の実施ができないとは、都道府県単位の「国保一元化」「診療報酬への権限移譲」などのために必要とのことです。

3.問題は「市町村国保が立ち行かなくなっている」事態です。
 市町村国保が果たしてきた役割りについては、この連載でももべてきました。国民健康保険法により市町村は住民の健康やいのちを守るための様々な施策を行ってきています。ところが国は1984年に老人保険制度が新設されたことを理由に、これまでの国庫負担率約45%を38.5%に引き下げ、全国の国保財政を一気に悪化させました。日本の社会保障制度の特徴である国民皆保険制度として、必要な運営財源は国や都道府県、市町村が十分な手当てをするのが当然です。
 今回、「国保一元化」がすすむとしても京都府が「国保財政の赤字」をまかなうわけでないことは明らかです。国の責任を明らかにしないままでの「国保一元化」は、財政的裏づけのないまま、結局は非保険者負担(保険料の増額)でしか対処できません。
 「医療費適正化計画」による医療抑制、診療報酬上のコントロール、公平な負担の名による保健用負担増などが、このままでは「あんしん医療制度」の中味になることは明らかではないでしょうか。


 「あんしん医療制度研究会」の結論が、データー分析の結果、結局は住民へのしわ寄せにならないよう、審議内容に注目をしていきたいと思います。


(つづく)



 


 


京都総評が「連続 社会保障学校」を企画

2009年06月12日 06時23分49秒 | 学習会の案内
 京都総評主催の「社会保障学校」日程は以下のとおりです。

<第1講座>
 7月16日(木) 18:30~20:30
 講師:岡崎祐司先生
 演題:社会保障の財源問題を考える-本当に消費税しかないの?

<第2講座>
 7月24日(金) 18:30~20:30
 講師:浜岡政好先生
 演題:社会保障と雇用を考える-雇用を守るためにいま何が必要か

<第3講座>
 7月30日(木) 18:30~20:30
 講師:金澤誠一先生
 演題:社会保障と貧困を考える-格差と貧困の実態とその克服のために

<会場>
 いづれも ラボール京都4階 第9会議室
       京都市中京区四条御前西入 京都労働者総合会館

<参加費用>
 無料・予約不要

<問い合わせ>
 京都総評 TEL 075-801-2308

(以上)



京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(8)

2009年06月11日 06時49分21秒 | 資料&情報

 まず、国民健康保険中央会(国保業務を扱う中央組織)のホームページに掲載されている「ニュース」を紹介します。

 
国保一元化など研究 夏に中間報告/京都府が研究会を設置
 京都府はこのほど、国保の都道府県単位での一元化を含め、保健医療政策を効率的に展開するための方策を検討する「あんしん医療制度研究会」(座長=今中雄一・京大大学院教授)の初会合を開いた。国保保険者の財政状況と保険料の将来見通しをシミュレーションしたうえで、国保一元化の必要性を提言していく方針。また国保と協会けんぽのレセプトを分析し、必要な医療資源などの分析を進める。府は今夏に中間報告をまとめ、全国知事会に提示する方針としている。(06月04日13時10分)


 あんしん医療制度は、「国保一元化」提案が基本。


 今年1月29にの知事記者会見では、記者との質疑で次のような発言を山田知事がしています。

記者先日、全国知事会の勉強会で、京都府が国保の都道府県一元化を提案するということがあって、厚労省も関心を示したようだが、知事のその件に関する思いとねらい、今後どうなっていくのかというようなことをお聞きしたい。
知事 : 長寿医療制度により、市町村が今たいへん苦しい状況にある中で、ある面では府としましてもこれからどうなっていくのだろうという問題があります。実は、長寿医療の時に知事会では、財政的負担もはっきりしない中で、これは受けることができないという結論を出したところであります。そして、それが都道府県単位の広域連合になった。しかし、この制度もある面では非常に難しかったというのを我々はよく承知しております。その中で、市町村が国保会計を今後うまくやっていけるのかどうかという問題が一点あります。それで実は知事会は、全国一元化としての医療保険制度というものを打ち出したわけであります。しかし、全国一元化の具体的な中身については誰も考えたことがないわけです。ですから私が、「全国一元化というのは、それこそ厚生労働省が社会保険庁に続いて国民医療健康保険庁を作るんですか。そういうことを知事会としては言っているんですか」と聞くと、知事の皆さんは押し黙ってしまうのが現状です。そうした中で、都道府県はどのような形で役割を果たせるのだろうか。小さな市町村では国保会計の維持は難しい。これは誰もがわかっていることです。その問題に対して逃げていてはいけない。都道府県として保険の一元化を言った以上、具体的に都道府県も役割を担うような仕組みを提案していかなければ、単なる抵抗勢力になってしまうのではないかというのが一点であります。それからもう一つは、これからの医療保険制度というのは、医療政策と整合性をとっていかなければならない。例えば、私どもは「健康長寿日本一」の医療政策を掲げておりますけれども、がん検診ですとか医師確保対策、そうした医療政策との整合性をとっていかなければいけない。医療政策というのは、市町村レベルではなかなかとれないのです。全体像として、医師確保対策を我々が一所懸命やっているように。そうすると、医療政策と医療保険というものをどのような形でマッチさせていくのかという問題にも突き当たっているわけです。これも絶対に逃げてはいけない問題です。そのために私たちは基礎的な勉強をして、これから市町村よりももっと広範囲な形での保険医療政策を提案していくべきだというのが、私の基本的な考え方であります。まず第一歩といたしましては、今回の予算で基礎的なデータなどというものを持っていなければ、そういう制度自体の研究もできませんので、厚生労働省とタイアップをする形で。厚生労働省は、国保連合会の方に出すのかな。
猿渡副知事国保連合会の方へ厚労省から6,000万円。
知事6,000万円です。そして我々は1,000万円の費用を積んで、データをきちんと整理して、今後その検討に当たっていく。そして、できれば知事会、京都府において具体的な案を出していきたいという思いでおります。


 最後に出てくる「厚労省からに補助金6000万円」を活用した「あんしん医療制度構築共同検討事業」とはどういうものでしょうか。


<事業の概略>
1.事業の総額は9000万円
  ・厚労省から京都府国保連合会に6000万円の補助金
  ・京都府から1000万円の補助金
  ・国保連合会の通常経費として2000万円
  *厚労省からの補助金は「京都府が先駆けて行う事業として特例的な補助」の性格があると考えられる。
2.事業目的は「広範囲な保険医療制度」のありかたの検討に役立つ各種のデーターの分析。
  ・国保連のコンピューターからレセプトデーターを提供する。
  ・社会保険からは「協会けんぽ」や健保組合のレセプトデーターの提供を受ける。
  ・健診事業データーや疾病構造、医療施設、医療従事者数、人口動態、市町村国保財政等の各種統計データーをあわせ分析を行う。
3.経費内訳(大まかな概算) 業務委託は京都大学。
  ・ハードウエア費用         11,000千円
  ・ソフトウエア費用          12,000千円
  ・作業環境構築作業費        9,000千円
  ・データーウエアハウス構築等   28,000千円
  ・連合会データー処理等      30,000千円

 *第1回あんしん医療制度研究会では、「協会けんぽ」京都支部は、独自のデーター分析内容も含め、レセプト情報の提出に協力するとしています。
 *また、介護保険データーは利用しないとしています。
 *研究会は後期高齢者医療広域連合会の副連合長もメンバーであり、協力関係が作られています。

 
   第1回「あんしん医療制度研究会」資料



(以上 つづく)


 


 







京都市国保運営協議会で国保料(介護分)の引き下げを答申

2009年06月10日 07時26分03秒 | 資料&情報
 京都市の国保料は、今年度、大幅なな引き上げを行うなど市民の大きな怒りをかっています。

 今回の引き下げ内容は京都市の「努力」でなく、国からの交付金が「介護報酬3%アップによる保険料アップの激変緩和措置」として支給されることにより、自動的に保険料が引き下げられるものです。
 これにより、京都市国保料は
  ①医療分(変化なし)
     平等割 19,110円
     均等割 25,520円(ひとりあたり)
     所得割 7.72/100
  ②後期高齢者支援分(変化なし)
     平等割  6,200円
     均等割  8,270円
     所得割  2.77/100
  ③介護分
     平等割  4,580円   → 4,430円
     均等割  8,510円   → 8,230円
     所得割  2.15/100 → 2.04/100
 となります。

 「激変緩和措置」としての交付金は、「介護従事者処遇改善臨時特例交付金」の名の通り、政府・与党が昨年末から「ひとり2万円アップ」などと宣伝をしていたものですが、結果は処遇改善につながらない失策になったものです。介護報酬の3%アップも、全体が底上げされるのでなく、介護報酬上の「加算」部分の引き上げになり、対象が限られた内容です。介護事業者や介護従事者の期待を裏切ったものです。

 また、介護報酬のアップによる保険料負担増を解消するためと説明を行いながら「臨時特例交付金」として、今年度は全額、来年度は半額とし、2年間で打ち切られるものです。
 したがって、京都市国保料は今年度は当初保険料からは引き下げられますが、来年、再来年と段階的に引き上げられることも明らかです。 
 介護労働者や事業者を支える報酬アップを保険料や利用料に跳ね返さない対応として、一時的な補助でなく継続的な国の補助が求められます。


(以上)



京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(7)

2009年06月09日 06時14分11秒 | 資料&情報

 前回の掲載で、国民健康保険法は、第1条で「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」とされ、社会保障制度としての保険制度であることをうたっています。また、国民保健の向上に寄与するため、「国は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるようにつとめなければならない。 」「都道府県は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるように、必要な指導をしなければならない。 」と国と都道府県の責任を明確にしています。と紹介しました。

 しかし、昨年からの「後期高齢者医療制度創設」や「医療費適正化計画」のスタート、「政管健保」の「協会けんぽ」への民間保険化などの流れの中で、国民健康保険は「都道府県単位による広域化」が打ち出されます。

  2008年6月20日に開催された「地方分権改革推進本部(内閣の機構)」で決められた要綱(第1次推進要綱)には、「国民健康保険の運営に関し、保険財政の安定化や保険料の平準化の観点から、都道府県単位の権限と責任の強化とともに、都道府県単位による広域化の推進等について検討し、平成21年度中に結論を得る。」とされています。

  地方分権改革推進本部(第4回)議事の
配布資料1を参照

 また、今年2月21日に開催された「全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議」でも、あらためて先の「地方分権改革推進会議推進要綱」を引用し、都道府県の「積極的な役割が期待されている」「見直しの議論にあたっては都道府県・市町村の意見も良く聞きながら、具体的な対応を検討していきたいと考えて」いると報告しています。

  平成21年2月21日の会議資料

 
 4月3日の与党高齢者医療制度に関するプロジェクトチーム「高齢者医療制度の見直しに関する基本的考え方」では、今後の高齢者医療の在り方について「広域連合について、都道府県の関与の強化を含め、保険者機能の強化等を図るとともに、同じ地域保険である国民健康保険併せて、運営主体のあり方について検討する」とし、後期高齢者医療制度と国保との運営の一元化を含めた抜本的な見直しを今後進めて行くとしています。

  高齢者医療制度の見直しに関する基本的考え方

 
 すでに健康保険組合は、「再編・統合の受け皿」として「都道府県単位の地域型健保組合」設立が可能になっています。

  地域型健保組合について

 
 
 「国保一元化」の行き着く先は、「低福祉、高負担の医療制度」の道!


 後期高齢者医療制度を作った法律は「高齢者の医療の確保に関する法律」です。この法律の第1条(目的)には、「この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け」るとされ、第2条(基本的理念)では「国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、高齢者の医療に要する費用を公平に負担するものとする。」とされています。

 地方分権改革推進要綱にある「保険財政の安定化」や「保険料の平準化」の観点とまったく趣旨が同一な「目的」であり「基本理念」ではないでしょうか。

 市町村の国保財政が赤字(原因は国庫負担の削減)をテコに、「都道府県が国保を運営すれば赤字を解消してくれるような幻想」をもたせ、実は、国保制度そのものを「自助と連帯」「公平な負担」の名の下に作り変え、医療費が増加すれば保険料や利用料に跳ね返る制度にもっていこうとするねらいです。介護保険制度も…、後期高齢者医療制度も…、障害者自立支援法も…。


 京都府は、「都道府県は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるように、必要な指導をしなければならない。 」という法律上の義務があります。それは「一元化」ではありません。最も住民の生活に密着した市町村がおこなう国保運営のための援助と指導を、財政的な支援も含めて積極的に行うこと。なによりも毎年社会保障費2200億円の削減をしてきた政府に対し、市町村の声を代表して方針の転換を求めることが必要です。


(以上 つづく)



京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(6)

2009年06月08日 06時33分05秒 | 資料&情報

 京都府の「国保一元化」問題は、すでにこのブログでも取り上げ資料提供を行っています。(2月9日付資料&情報

 この「国民健康保険等医療制度に関する京都府の提案について」の文書では、都道府県の医療行政上の課題の解決策の検討として
(1)必要なデーターの収集方法
(2)都道府県単位で行われる健康医療政策をより効果的にするための方策
 ①都道府県への権限委譲
 ②国民健康保険の都道府県単位での一元化
と、記載しています。

 なぜ「都道府県単位」での医療政策なのか。「医療費の増加を保険料に反映させ、都道府県単位で医療費抑制を競わせる」仕組み。

 まず、なぜ「都道府県単位」なのかを検討していきます。
(1)「都道府県単位」で一番に思い浮かべるのは後期高齢者医療制度です。都道府県が直接運営に責任をもつものではありませんが、市町村が法律により強制的に参加する都道府県単位の「広域連合」が保険者として運営される、これまでなかった保険制度が昨年に設立されました。後期高齢者医療制度は、世界に類のない年齢により従来の保険から切り離され、独自の保険制度に高齢者が組み込まれること、保険料が年金から強制的に天引きされることなど、大きな批判の声が起こり「廃止しかない」と全国的な運動が起こっていますが、その後期高齢者医療制度の保険者である「広域連合」は、各市町村からの選出議員(京都市は4名、宇治市2名、その他の市町村は1名)が年2回の半日程度の定例議会で審議されるのみであり、国民や府民の声が届く制度ではありません。
(2)昨年10月から、これまで全国一律の保険料と運営を行っていた「政府管掌健康保険」も、規制改革の名の下に「健康保険協会」となり、都道府県単位での事業制(独立した収支)が導入され、今年10月からは都道府県支部ごとに違った保険料となります。「医療費が高くつくのは住民の責任であり、保険料も高く設定する」という考えが導入されます。ちなみに、保険料を算定する保険料率で、最も保険料率が高くなる北海道が8・75%、最も低くなる長野県が7・68%となり、1・07%の差がつきます。
(3)介護保険は市町村単位の運営になっていますが、訪問介護サービスや介護施設など、必要な介護サービスを受ければ受けるほど介護保険料に跳ね返り、「保険あって介護なし」の事態を生み出しています。応益負担の利用料とあわせ、サービスを受ければ受けるほど保険料に跳ね返えり、結果としてサービス利用の抑制につながる保険制度として10年前にスタートしました。この「給付が増えれば負担も上がる」仕組みが、後期高齢者医療や「協会けんぽ」に引き継がれています。京都府内の市町村別介護保険料は、和束町で月額5175円、南山城村で月額2760円と約1.9倍の開きがあります。
(4)そして極め付きは、後期高齢者医療の「抜本的改革」を打ち上げ、検討会で「姥捨て山行きバス」と同時に都道府県単位の国保運営を提案した厚労大臣の発言です。厚労大臣は検討会で「現行では、長寿医療制度は、県単位の広域連合で、その下に国保があり、被用者保険と分かれております。赤い色で囲んだ長寿医療制度が右側に移って、都道府県単位に一体化させるということですので、長寿医療制度にある市町村単位の部分は国保とともに、県単位とし、被用者保険からの財政調整を行うということです。資料の下部の「現在の長寿医療制度のねらい」としては、制度としては年齢にかかわらず一本化する。 2番目に、国保を都道府県単位とすることで、国保の財政が安定化する。 3番目に、地域医療において、都道府県が主体的な役割を果たすということでございます。」と発言し、都道府県単位の国保一元化にあわせ後期高齢者医療制度も一体化する案を示しました。(
資料1)(資料2

 いずれにせよ、これらの流れの中で、京都府が「国保一元化」を打ち出してきたことは間違いありません。

 では、これらのながれの背景には何があるのでしょうか。


 「医療費適正化路線」で国と都道府県が手をつなぎ「医療費削減」を行う


 京都府が「国保一元化」を推進する背景には後期高齢者医療制度が係わっています。後期高齢者医療制度が作られた法律「高齢者の医療の確保に関する法律」では、これまでの老人保健法とちがい、「医療費適正化を図るための取組の円滑な実施(国の責務)」「住民んお高齢期における医療に要する費用の適性はを図るための取り組みと高齢者医療制度の円滑な実施(自治体の責務)」が織り込まれています。そして、都道府県は「医療費適正化計画」策定を義務付けられ、「特定健康診査実施率」「特定保健指導の実施率」「メタボ該当者・予備軍の減少率」「療養病床の削減」「平均在院日数の削減」の目標値をきめ、5年ごとに点検される仕組みが作られました。

 国からの「医療費適正化計画=医療費削減計画」と、京都府からの「目標達成のための医療費抑制計画」の思惑が、今回の「国保の都道府県単位の運営」構想で一致し、京都府が診療報酬の決定権限も含めた「国保一元化」を積極的に打ち出した背景であると言えます。
 「平均在院日数の減少」にみられるように、都道府県で一番日数の少ない長野県を他の県が計画目標とする→また次の計画で一番日数が低い県の数値を目標にするやり方が、「医療費適正化」の手法です。
 都道府県単位の保険制度は、あらゆる面で比較・検討がしやすく、住民とかけ離れたところで数値を操作し、「蟻地獄」の競争を可能にするといえます。


 「国保一元化」は、国保解体の一里塚?

  
 「国保一元化」の狙いは、「医療費適正化計画」を推進するためだけではありません。
 現行の国民健康保険法は、第1条で「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」とされ、社会保障制度としての保険制度であることをうたっています。また、国民保健の向上に寄与するため、「国は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるようにつとめなければならない。 」「都道府県は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるように、必要な指導をしなければならない。 」と国と都道府県の責任を明確にしています。
 また国民健康保険は、疾病や負傷に対する保険給付のみでなく、住民の健康を守るための病院・診療所の開設を行い(国保組合)、出産援助や死亡時の給付金支給など、地域に密着した仕事もしています。
 ところが、都道府県単位の「国保一元化」をすすめることは、国民健康保険法の改定が必要であり、国民健康保険法の内容を、「医療費適正化」をもとめる内容に、改悪される恐れがあります。現行の健康保険制度のなかで唯一、社会保障お四に国民保健の向上を目的とうたい、国と自治体の責任を明確にしている国民健康保険法の改悪につながりかねない、今回の国と京都府挙げての「国保一元化」推進は、見過ごすことができません。


(以上 つづく)






 


「なんでも相談会」を府内32ヶ所で行います。

2009年06月06日 06時34分39秒 | 事務局通信

 恒例の「なんでも相談会」を、今年は府内32ヶ所で開催します。雇用や貧困と格差がさらに増大する中で、「なんでも相談」できる窓口です。雇用、労働問題、税金、年金、国保、医療、介護、生活保護など、労働組合や団体の相談員が相談に応じます。
 主催は各地域の社保協や、地区労・地労協など労働組合・団体で構成する実行委員会が行います。

 メイン「なんでも相談会」
 6月21日(日)10:00-16:00 全労働京都会館
 当日の専用電話 075-353-8003


 各地域の「相談会」
<左京区>
 6月21日(日) 10:00-13:00  あすかい診療所
<東山区>
 6月19日(金) 13:00-18:00  弥栄自治会館
<山科区>
 6月27日(土) 10:00-15:00  ギャラリーハウス・菫
 6月28日(日) 10:00-13:00  大宅診療所
<北区>
 6月20日(土) 14:00-17:00  紫野診療所
<上京区>
 6月20日(土) 14:00-16:00・18:00-20:00 京都職業能力開発センター4階
<中京区>
 6月27日(土) 10:00-14:00 中京区役所4階、太子道診療所、京建労中京、中京民商
<下京区>
 6月20日(土) 10:00-12:00 企業組合しんまち6階
<南区>
 6月20日(土) 14:00-18:00 久世診療所、吉祥院病院、南区生健会、九条診療所
<西京区>
 6月27日(土) 13:30-16:00 京都市西文化会館ウエスティ第2会議室
<右京区>
 6月21日(日) 10:00-13:00 春日診療所
 6月21日(日) 18:00-20:00 油掛集会所
 6月22日(月) 18:00-20:00 ふれあい文化会館第1会議室
 6月23日(火) 18:00-20:30 KPC会館別館会議室
 6月24日(水) 18:00-20:00 うずまさ診療所2階会議室
 6月27日(土) 16:00-20:00 ドラッグストアー2階
<伏見区>
 6月29日(月) 14:30-16:30 呉竹文化ホール第2会議室
 6月30日(火) 14:30-16:30 城南診療所地下健康指導室
<乙訓>
 6月28日(日) 10:00-13:00 乙訓医療生協医誠会診療所
<亀岡>
 6月28日(日) 10:00-20:00 ガレリアかめおか
<福知山>
 7月4日(土)  13:00-16:00 勤労者福祉会館10号室
<綾部>
 7月4日(土)  13:00-16:00 綾部建築会館
<舞鶴>
 6月21日(日) 13:00-20:00 JR西舞鶴駅交流センター
<宮津・与謝>
 6月21日(日) 10:00-17:00 宮津市労働会館・地労協事務所
<丹後>
 6月28日(日) 10:00-15:00 丹後地域職業訓練センター

*その他、準備中の地域も有ります。

(以上)



京都府・市町村税務共同化と国保「一元化」問題を考える(5)

2009年06月05日 06時13分46秒 | 資料&情報

 国民健康保険の「資格証明書」交付は、事実上の「無保険状態」におかれることになります。全国の社保協や「国保を良くする会」をはじめとした「資格証明書を発行するな」の運動は、大きく前進してきました。各自治体でも「資格証明書」を発行しない処置をとるなど(短期保険証への切り替え)が行われてきました。
 今年4月からは資格証明書交付世帯であっても子どもに対しては「短期保険証」を発行することが法律によって義務付けられました。
 また、世帯主が病気で受診する必要があるときは、多額(10割)の負担が出来ない場合に、短期保険証を交付することになりました。
 そして、後期高齢者医療での資格証明書交付は(従来は高齢者は資格証明書交付対象となっていなかった)、生活が困難な場合は保険料滞納があっても、短期保険証に変えるとする厚労省の通知文書(注)が出されました。


(注)「後期高齢者利用制度における被保険者資格証明書の運用に係る留意点について(平成21年5月20日保高発第0520001号)」では、資格証明書等の運用については「機械的に行われることにより、高齢者が必要な医療を受ける機会が損なわれることのないよう、制度の趣旨に留意しつつ適切に行う必要があること。」と、受診機会を損なわないことが大切であるとしています。


 最近では、「新型インフルエンザ」の発熱外来受診については、資格証明書交付世帯であっても「3割負担扱いとする」通知が出されています。京都市は、この通知内容を文書ですべての資格証明書交付世帯に徹底しています。八幡市では、未更新手続き者等の「無保険」状態にある世帯に対し、短期保険証を郵送しました。


 新型インフルエンザに係る発熱外来の受診時における被保険者資格証明書の取扱いについて


 それぞれの「対応」は、不十分さはありますがこれまでの運動の一定の成果と言えます。とくに「資格証明書」交付が、実際には「受診抑制」であり「無保険状態」であり、国民の健康やいのちに重大な事態を生じさすものであることが認識されてきたことです。

 今回の「税務共同化」で国保料(税)も同時に徴収・滞納処分を行うということは、これらの流れに逆行するものと言えます。

1.保険料(税)の滞納世帯は、その多くが「払いたくても払えない」高い保険料のなかで、ぎりぎりの生活を余儀なくされやむなく保険料の滞納となり、くらしといのちに係る事態に追い込まれていることです。
2.保険料(税)の徴収には「個別の事情や生活実態を詳細につかみ、ていねいな個別相談を行い、被保険者の健康状態や労働実態により、保険料の減免や免除規定も説明して、長期滞納即「資格証明書」の交付につながらないようにすることが必要です。
3.上記のことが、広域化された機構と職員を通じて、地方税の滞納と同一に「催告センター」からの一括した通知。納税折衝や財産調査、財産の差し押さえなどを行うことにより、一律的・機械的な対応に逆戻りすることは明らかではないでしょうか。


 実は、後期高齢者医療の保険料についても、保険料滞納情報を「後期高齢者医療広域連合」が掌握できるようにする動きがあります。
 4月に開催された「長寿医療制度 都道府県ブロック会議資料」(
ここから)では、後期高齢者への資格証明書交付を慎重に扱う必要があるとの資料とともに、保険料収納率集計機能の追加として「今後、広域連合及び市町村による効果的な収納対策の実施の強化が求められていく中で、広域連合における標準システムに、区域内の市町村の収納状況を把握・分析するための保険料収納率等の集計機能を追加することとし、本年7月頃のリリースを予定している」とし、「滞納者のリストアップ」まで行おうとしています。
 
事態によっては、後期高齢者医療の保険料(普通徴収)滞納者も「税務共同化」事業に加えられ、機械的な取り立てにあう可能性があります


 京都府は、この6月~7月に開催される市町村議会で、「税務共同化」のための広域連合設立の可否を問うとしています。「税務共同化」事態が住民の合意を得ていません。まして国保料(税)も含めた一括徴収・滞納処分を行うことはとんでもないことです。拙速な議会の判断をさけることがのぞまれます。


(以上 つづく)