続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

若林奮『百粒の雨滴』

2021-04-09 06:14:56 | 美術ノート

   『百粒の雨滴』

 百粒は百、多くの(数多の)という意味に違いない。
 雨は当然、天から地表に、そして地下深く浸透していく。もちろん蒸発し、天へかえり再び雲からの雨滴になるものもある。

 雨、水の循環は億の時間を秘めている。雨滴の履歴を公表することは難しく不可能である。しかし雨滴は厳然として大地に落ち、地下に浸透していく。
 地下には幾層もの時代が刻まれており、地球の歴史は動かしがたく残存する。

 作品は薄い板状の鉄板を幾層にも重ねていて、出ているからは細い線状のものが数本(任意)出ている。切断されたためつながりを失ったという景である。地層にはその時代の事件(噴火/地震)の痕跡があり、その時空の情報を告げ知らせている。存在するものは何らかの意味を告発している。

 すべては重力により下へと沈んでいく。雨滴はどこまで浸透していくだろう、あらゆるものに生気を与え、あらゆるものを酸化させていく。生と死を分ける雨滴は、地下深く地層深くにたどり着く。
『百粒の雨滴』は、地球の糧である。


 写真は『若林奮ーVALLEYS』横須賀美術館


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