『人間の条件』
窓から見える景色と室内から描いたその景色が、差異なく一つの景色に見えるというように図って描かれた作品。これを称して『人間の条件』としている。
絶対にありえない状況であり、連続していない空間を差異なく連続させることは不可能である。
しかし、不可能を可能にすることが人間の条件だと言っているのではない。
《人間は錯覚・錯視をもって対象を見る》と言っているのではないか。
何故か。
人は経験上のデータの集積をもって対象を見るからであり、我意に沿うように差異を修復する傾向がある。思いのままにというわけではなく思い込みという確信が、視界をそうさせるのである。
任意の景色(空間)は、疑似化された景色(空間)と一致することはない。まして連続を肯定する技術などはあり得ない。
にもかかわらず、精神的な領域では安易に信じてしまう傾向がないとはいえない。
不確かさを確信する。
見ることの曖昧さである《知覚の現象》を指して『人間の条件』としたのだと思う。
(写真は『マグリット』西村書店刊より)
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