
『コーヒー挽き器』
コーヒー挽き器の平面図のような作画。
デュシャンを総括的に見ると、円・回転・粉砕(変移)などに関心が深いことが分かる。つまりは、霧消あるいは回帰である。
起承転結の一巡、入口であり出口であるような円の形態、始まりと終わりの境界線を持たない永遠の持続を内包した円という形態。
閉じながら開かれている円の持つ独特な時空への憧憬。
しかし、この作画のコーヒー挽き器は機能しているだろうか、機能不可の形ではないか。
作動しているかに見えるが、作動の巡回を停止させている。
あらゆる回転・作動を沈黙のうちに停止させる、即ち破壊である。静かにも無空に帰している。
世界の動きを秘密裏に停止させ、あたかも起動し続けているように見せかけているのではないか。
不思議な息遣い、現実世界への大それた否定をそれと分からぬように提示してみせている。デュシャンの含み笑いが聞こえてくるような・・・デュシャンは未だ生きているのかもしれない。
(写真は『マルセル・デュシャン』(株式会社美術出版社刊より)
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