夕焼け金魚 

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ガラスのハート

2023-06-13 | 創作
本日も雨模様。
雨の日でもたまに公園に来ています。
毎日掃除とかしていると、自分の庭みたいに思えてきて成長が楽しみになります。
庭って成長するのです。ご存じでしたか。
雨の日も傘を差して、東屋で雨音を聞きながら、公園を眺めることがあります。
その日も眺めていると、雨の中にキラリと光る物が見えました。
何だろうと見に行くと、ガラスのハートです。
繊細なお嬢様のモノでしょうか、薄いピンク色に僅かですが、ヒビが入っています。
誰かが落としたのでしょうか、ひびの入ったハートを拾い上げて、周りの土を少し取って振りかけてみます。
割れたガラスハートの回りには割れた欠片が落ちていることが多いのです。
調べるとひび割れたところに少し盛り上がる用ほどのガラス粉が付きました。
公園の土には、ガラスハートの粉が落ちていることが多いので、その粉でひび割れたところを埋めるようにしてから、丁寧に磨くとヒビが治るのです。
東屋のベンチに腰掛けて、雨音を聞きながらガラスハートを磨くのもいいものです。
磨き終わる頃に顔を上げると目の前に女の人が立っていました。
近所のスーパーのお嬢さんです。
「すみません、そのハート、私ので」と消え入りそうな声で仰るのです。
「そうでしたか、落ちてたので少し磨いておきましたから」と言って返してあげました。
「ありがとうございます」お礼を言われて雨の中に消えて行かれました。
優しいお嬢様で、近所でも評判なのです。
あのお嬢様のお母様は、一大の立志伝の方です。
嫁いでこられたときは、今のお嬢様のように、消え入りそうな声で話していたのですけど、旦那様が亡くなって、お子様三人をお一人で育て上げた方です。
しかも、旦那様の稼業であったお魚屋さんを元に、瞬く間に大きくして地元のスーパーチェーンの女社長です。
「金魚さん、よろしくお願いしますね」と私の顔を見ると挨拶して頂けます。
一度、女社長のガラスのハートを見たことがあるのですけど、筋金入りでした。

お嬢様も子供の母となると、ガラスにも筋金が入るようです。
今のお嬢様も将来は、きっと筋金入りになるのでしょうね。
その点、男はダメですね。
私は自分のハートを見て、しみじみそう思うのですよ。
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