句集「夏薊」2011年
秋天に漕ぎ出す櫂もなかりけり 岩岡中正(1948~)
岩岡氏は政治思想史の研究家で長く熊本大学で教鞭をとった。
掲句は高く澄み切った秋の空を見上げて爽快な句だ。
「なかりけり」と否定されても読者は「漕ぎ出す櫂」をイメージせざるを得ない。それによって空が広く深い水に喩えられるのだと小川軽舟は評している。
「薊」は「あざみ」と読みます。
秋の空を海や水に喩える人は多いと思うが、この否定形で喩える人は少ない。
金魚もこの喩え方は凄いと思う。
正直勉強させて頂きましたとお礼を言うだけです。