太宰治作「斜陽」、私はこの本も若いときに読んだことあります。内容を思い出そうとするのですが、どうしても思い出せません。一つだけすごく鮮明に覚えていることがあります。登場人物「おかあさま」がスープを召し上がるシーンです。一番最初の書き出しです。とても自然に上手に上品に、一滴もこぼすことなく静かに召し上がるシーン。持って生まれたお育ちの良さがにじみ出ていると思います。何故私はこのシーンだけはっきりと覚えているのかわかりませんが、たぶん、おっちょこちょいのあわてんぼうの私にはないものだからでしょう。かず子さん(主人公)の語り口調は大変滑らかで、男性の太宰治がこのようにすらすらと書けるのが素晴らしいと思いました。「革命と恋」に生きるかず子さんは逞しく、私には眩しかったです。
お気に入り度:★★★★★ 図書館資料 分類番号:B/ダザ