有川 浩作「阪急電車」を読みました。作者はその名前から男性だと思っていましたが女性でした。「ありかわひろ」と読むそうです。阪急電車は昔からよく利用する慣れ親しんだ私鉄です。小説に出てくるのは今津線です。西宮北口から宝塚までのたった15分間の短い今津線で繰り広げられる人生模様。作者も今津線沿いにお住まいで、沿線のことに詳しく、共感できます。
宝塚駅→宝塚南口駅→逆瀬川駅→小林駅→仁川駅→甲東園駅→門戸厄神駅→西宮北口駅
と順に小説は進みます。そして折り返しで今度は西宮北口駅から宝塚駅まで。独身の頃、仁川に友達の家があって遊びに行きました。仁川沿いには大きなお屋敷が多くて塀から塀までの長いこと。友達の家から関西学院大学へ散歩に行ってその佇まいに品があってロマンティックに感じた関学の時計台。会社勤めの時には宝塚ホテルでセミナーがあり受付をして、最上階の回転レストランで食事をご馳走してもらったことなど思い出されました。そして西北(西宮北口の略語。ご当地の呼び名。私には専門用語に思える。)には同級生の友達のお嬢さんがお住まいで去年からは私の三男一家も住んでいて親しみを感じるところです。そういうご縁のあるところでのエピソード、ドラマが阪急電車の中や外で生まれます。登場人物のバックにある風景を、バックグラウンドを、想像したり連想できるのも面白いところです。人にはそれぞれドラマがあって文章力のある方に書いてもらったら誰でもすごい小説の主人公になれるのだろうなと思いました。とにかく面白い本でした。肩の力を抜いて阪急電車に乗って読んでいるつもりで読んだらもっと面白さが増すと思います。お薦めの本です。映画化されるそうですので今から楽しみに待ちたいと思います。
お気に入り度:★★★★★ 図書館資料 請求記号:913/アリ