あっという間に6月です。
サトー国際特許事務所では、GW明けからクールビズを採用しております。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
さて、今日のテーマは、「知財コスト」。
知財業界では、当たり前のように「知財コスト」という言葉が使われていますが、とても違和感があります。
特許などの知的財産の権利取得や維持のために、代理人である弁理士や特許庁に支払うお金のトータルを「知財コスト」と呼んでいるのでしょうが、これって正しいのでしょうか?
知的財産は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権という「権利」です。この「権利」を取得するために必要なお金を「コスト」と考えるのはちょっとヘンではないでしょうか。
世の中、「基本的人権」、「参政権」、「日照権」、「債権」といったようにたくさんの「権利」があります。そして、知的財産権も、これらの「権利」の一つにすぎません。
歴史的に考えると、「基本的人権」や「参政権」を獲得するために、絶対権力に対して市民は蜂起し、多くの血や涙を流した引き替えに、これらの「権利」を獲得しました。この市民が流した多くの血や涙は「コスト」なのでしょうか。
他にも、「日照権」を得るためにも、裁判を起こして「権利」を取得することもあるでしょうが、このための訴訟費用を「日照コスト」なんていいませんよね。
このように権利を取得するためには、金銭に限らず、血や涙などその引き替えとして何らかの代償が必要なわけですから、これを「コスト」と呼ぶのは違うような気がします。確かに、出願人から見ると、弁理士の費用は「コスト」にしか見えないのでしょうが、知的財産権は他の権利と違って表現一つで権利範囲が変化するという特異性を有しています。そうなると、より強力で安定した権利を取得するためには、自分で権利範囲を策定するよりも能力の高い弁理士に依頼した方がよい結果をもたらすことは言うまでもありません。
ですから、この弁理士へ支払う金銭は、「コスト」ではなく、価値ある権利を創造するための代償(投資)なのです。
この「知財コスト」という言葉が使われ出してから、「知財」も牛丼や衣類と同様に「安いほどよい」という風潮が一部にあるようですが、安くて強い権利を取得しようという甘い考えが通用しないのはどの世界も同じですよね。
このような面からも「知財」は将来事業体を支える権利を取得するための「投資」であって、「コスト」ではないということに気づいて欲しいですね。
反面、「貴社の知財コストの低減に貢献します!!」と、弁理士が「知財コスト」という言葉を使っているのも事実なのですが・・・。
http://www.popjisyo.com/WebHint/Portal.aspx
元々が日本語でない語句を使っているので、人によって意図しているところのズレが出ている語句の1つです。
深く考えられずに使われている語句でしょうね。
当ブログへのコメントありがとうございました。
おっしゃる通り、日本語は人それぞれの使い方がありますね。知財を金のかかる「コスト」とみるか、金を産む「財産」とみるか、日本語の視点からもおもしろい分析ができそうです。
これからもよろしくお願いいたします。
企業会計においては、費用は経済的価値の減少を意味します、まあつまり事業のマイナスということです。
そしてこのマイナスを収益というプラスで相殺し、プラスが多ければ黒字、マイナスが多ければ赤字ということになります。まあ、この辺は事務所を経営していらっしゃる所長先生にとっては釈迦に説法ですが。
これを特許出願で考えてみると、出願は費用でマイナス、権利活用でなんからのプラスを出して、トータルでプラス=黒字といきたいところですが、
通常の弁理市は、特許出願~権利取得までの話はしても、その後に、取得した権利をどう活用してプラスを出すかの話を、特許出願時から口にする方は殆どいらっしゃいません。
これを企業側、特に偉い連中の目から見ると、弁理士は費用を使わせる話ばかりで、収益を出させる話はまるでしない、ここで使った費用は無駄になるのでは?という風に見えたりします。
それで悪い意味で「知財コスト」と指摘されるのではと思います。
では、これを解消するにはどうしたらいいかですが、答えは簡単なことで、この特許出願が権利化された際にどのくらいの見返りがあるかを費用と同じ単位に換算して見せてやること、すなわち、出願時の段階で定量的な権利活用プラン(ライセンス料以外も含む)まで弁理士の口から説明してやればいいということです。
もちろん黒字前提ですが。
そうすれば、所長先生が懸念している「知財コスト」という話が出てくることは、暫くは無くなるのではないでしょうか?
お返事が遅くなりました。
まさにおっしゃる通りと思います。
知財を使って顧客がいかに儲けるかが大切なのに、弁理士の多くは出願でいかに自分が儲けるかばかりを考えていたように思います。
そして、実は、儲かるネタは特許をはじめとする知財じゃないところにあるんですよね。これを周辺から知財を含めた権利でカバーするのが弁理士の仕事だと思っています。