弁理士法人サトー 所長のブログ

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イソジンのカバ

2016-02-10 14:46:36 | その他の情報
イソジンの「カバ」ですよ。「バカ」じゃないですよ。

うがい薬の「イソジン」を販売する明治が、大人の事情でライセンス先が代わった相手先のパッケージが誤認混同を招くとしてパッケージデザインの使用差止を求めて仮処分を申し立てたというニュース、ネットや新聞でご覧になった方もあると思います。

そもそも、「イソジン」は、オランダの薬品会社(ムンディファーマ)からライセンスを受けた明治が日本国内で販売し、うがい薬と言えば「イソジン」というほどに定着しました。病院などでも、うがい薬が出されるときは、「イソジン」が多いですよね。最近は、カモミール由来のアズレンも用いられていますが。
さてこの「イソジン」といえば、「ただいまーのあと・・・」のCMでの歌とともに「カバ」のキャラクターが思い浮かびます。

今回、問題になっているのは、この「カバ」のキャラクターに類似(ここでは「類似」としておきましょう。)するキャラクターが新たなライセンス先のパッケージにデザインされていることです。

整理しておきますと、上記のように「イソジン」は、オランダの薬品会社からライセンスを受けた「明治」が販売し、少なくとも日本国内で「うがい薬」と言えば「イソジン」として有名になり、そのキャラクターは「カバ」である、ということはみなさんもご存知でしょう。
そして、このたび、大人の事情により、「イソジン」のライセンス先が「明治」から「塩野義」系に代わったことはご存知でしょうか。

でも、このライセンス先の変更は、「うがい薬」としての「イソジン」です。ですから、契約に「カバ」が含まれていないのであれば、「明治」がやめて欲しいと主張している「カバ」を継続して使用するのは問題ありですよね。

「明治」は、「イソジン」のキャラクターとして「カバ」を採用して市場を開拓し、ブランドを育ててきたわけです。ですから、ライセンス先が代わったからといって、新たなメーカが「イソジン」+「カバ」を無制限に使用してよいとはいえません。
つまり、「明治」は、「イソジン」を売るために「カバ」を用いてブランディングしてきたわけですから、新たなメーカが「カバ(類)」を用いるのは「明治」が構築したブランドにタダ乗りするような形になり、「明治」が使用差止を求めるのもやむを得ないでしょう。

新しいメーカは、元のライセンス先である「明治」のブランドに頼ることなく、自社のブランドイメージの「イソジン」で正々堂々と市場に参入すればよい(したい?)のでしょうが、オランダの薬品会社の意向などがあって避けられないのかもしれません。
特に、医薬品メーカは、複雑なライセンス関係、製造-販売関係があり、一般的な商品とはルールが異なることも多いですからね。

今回は、意匠法や商標法における知的財産権の侵害問題では無く、不正競争防止法の「周知表示混同惹起行為(2条1項1号)」、「著名表示冒用行為(同2号)」における不正競争行為が争点になります。
被告(塩野義&ムンディ)側は、パッケージのキャラクターが「類似していない」との主張のようですが、「イソジン=カバ」の関係は強いように思います。
ただ、被告のキャラクターは「カバ」なのかと言われると、「ヘタウマ」な「カバ」のような微妙なキャラです。

あまりに露骨な「フリーライド(タダ乗り)」は、企業イメージを却って損なうおそれもあるので、十分な注意が必要です。

この春、「カバくん」のパッケージと、微妙な「カバ」のパッケージがドラッグストアに並ぶのでしょうか。
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