弁理士法人サトー 所長のブログ

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フォルクスワーゲン問題と技術標準

2015-10-02 13:35:08 | その他の情報
またまた自動車の話題。

今回は、映画の宣伝風にいえば「世界を震撼させた自動車メーカのウラワザ!」とでもなりそうなフォルクスワーゲン(VW)の話題です。

問題の中身についてはご存知の通りと思いますが、ディーゼルエンジンの排気をクリーンにするための制御を試験の時だけ実行する隠れソフトが組み込まれていたとか。

ディーゼルエンジンの排気をクリーンにするためには、制御(EGR)や後処理(SCR、PF)などが必要なのですが、これらの制御や後処理をするとどうしても燃費や出力の低下を招いてしまいます。自動車を買ってくれるお客さんにとって重要なのは、環境性能よりもオサイフやフィーリングです。
そうなると、メーカも、クルマを売るためには、お客の満足のために環境性能を向上するよりも燃費や出力を高めたい、ということで、環境性能を偽装する方向へ進んでしまいがちなのでしょう。
EGR:燃焼室から排出された排気の一部を吸気とともに再吸入する仕組み。排気に含まれる酸素は新しい空気よりも少ないので、燃焼室での燃焼温度が低下し、窒素酸化物(NOx)の低減に寄与します。
SCR:排気に尿素を添加して、排気に含まれるNOxを還元する仕組み。
PF:ディーゼルの排気に含まれる炭素の微粒子(PM)を集めるフィルタ。


今回は、実用時と試験時とで制御が変化するようなプログラムを用いて、実用時の出力・燃費向上と、試験時の環境性能向上とを目指していたようですね。
つまり、試験の時は合格点を達成するのですが、実際はそれほどでもという結果になるようです。模試ではすらしい点数を取るのに、本番の試験では全然ダメという感じ、いや違うかな。

何がいいたいのか分からないことになってきました。

さて、お伝えしたかったのは、今回のような出来事は、日本人の感覚ではなかなか理解できない事態だということです。何となくですが、日本人は、ルールがあると「そういうものか。」と何気なく守ってしまいますよね。しかし、ヨーロッパの感覚では、ルールがあっても、そのルールをいかに上手にすり抜けるか、自分たちに都合のいいルールに作り替えるか、を日々考えているように思えてなりません。特に、トップのエリート層にはそんな考えが染みついているような。「世界は俺たちがリードしている!」って。
例えば「F1」。ガチガチのレギュレーションに固められているのに、必ずルールの隙をついたチームが出てきます。
それから昔のノルディックスキーの「ジャンプ」。日本がオリンピックで大活躍すると、あからさまなルール改正で自分たちを有利にもっていく。
「F1」でも「スキー」でも割を食うのは、決まって台頭してきたヨーロッパ以外の国。「柔道」ではなく「ジュード-」でもそうですね。

これがアメリカだとやや違う感じがします。
アメリカ発のスポーツのルールや技術的な規格は、ヨーロッパなどに比べるとずいぶん公平です。

そして、これが本題なのですが、技術や特許の世界でも同じだということです。
標準化というのは、まさに技術のルール作りです。先日ちょっと触れた「インダストリー4.0」などもルール作りです。日本には「成立したルールに従う」という意識があるのですが、ヨーロッパでは「ルールは自分たちが作る」、特に「ルールは自己都合(自分に有利)で作る」といった意識があります。
ヨーロッパサイズで土俵を作り、その身の丈に合わないサイズの土俵で日本は相撲を取らされる、という感じです。
特許についても同じです。ヨーロッパは、EPの特許システムを世界標準にしようとしているとかいないとか。

そのあたりにようやく気づいた日本人もいるのですが、まだまだ主導権はヨーロッパに握られたまま。だからこそ、今回のような上から目線のルール違反もヨーロッパから。
そろそろ、技術の分野でも、日本をはじめとする新世界から新しい秩序を生み出してもいいかもしれませんね。



コメント
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