クリステンセンは、本書において、革新的なビジネスアイデアを創出し事業化した起業家やCEO―ピエール・オミダイア(イーベイ)、ジェフ・ベゾス(アマゾン・ドットコム)、マーク・ベニオフ(セールスフォース・ドットコム)らへのインタビューやスティーブ・ジョブズ(アップル)、ハワード・シュルツ(スターバックス)らの自伝等の分析から、「イノベータのDNA」としての5つのスキル(発見力)を抽出しその詳細を解き明かしています。
本書の後半では、そのDNAを特別な人に止めるのではなく、組織に伝播させる方法について言及しています。
(p191より引用) イノベーティブな企業が組織の人材、プロセス、指針となる哲学に、イノベーションのDNAコードを直に組みこんでいることがわかった。
著者は、この知見をイノベーティブな組織をつくる「3P (People・Process・Philosophy)の枠組」として整理しています。
たとえば、最初のP(eople)、「人材」についてです。
イノベータ個人に必要は素養については、本書の前半で解説されていますが、チーム・組織は、個人の集まりとして一つの有機体として機能しなくてはなりません。そこで重要になるのが「メンバ構成」です。
(p203より引用) メンバーが互いに補い合う発見力をもっていれば、スキルの多様性がチーム全体のイノベーション能力を高める。・・・チーム全体として見たときの新しいアイデアの創出力は、一人ひとりの能力の総和や、一つの発見力だけに優れたチームの能力を一貫して上回るのだ。
個々のメンバが自らの得意とする「○○力」を発揮し、互いに補完し合うことにより、組織としての「発見力」の最大化を実現するのです。そして、そのプロセスを経ることで、イノベーティブな個人のDNAはより拡大・充実した形で組織内に反映されます。
(P239より引用) イノベーティブなリーダーは、自分自身の発見行動を組みこんだプロセスを構築することで、自らのイノベータDNAスキルを組織に植えつけているのだ。
さて、こうした「発見力」の強化に併せて、組織(企業)としては、もうひとつの重要な「力」を高める必要があります。「実行力」です。
この力は、多くの場合、イノベータ型の人間には欠けている素養のようです。
(p203より引用) 五つの発見力に優れた人材をチームや組織に集めることは確かに大切だが、発見志向型の人材さえいればよいというものではない。・・・発見志向型のリーダーは、結果を出すのがうまい人材のもつ実行力を必要とする。イノベーティブなチームを巧みに率いるリーダーは、自らの発見力と実行力の構成を知り、自らの弱みをほかのメンバーの強みによってしっかり補っている。
HONDAの本田宗一郎氏には藤沢武夫氏、SONYの井深大氏には盛田昭夫氏・・・、しばしば、イノベーティブなリーダの横には、自分の弱点を補完してくれる素晴らしいパートナーが据わっていました。
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press) 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2012-01-18 |
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