いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
フリート横田さんの著作は初めてです。
対象者へのインタビューをベースにしたノンフィクション作品ですが、取り上げた舞台がユニークだったので気になりました。
期待どおり興味を惹いたところは数多くありましたが、その中から特に印象に残った部分を書き留めておきます。
第4章の主人公 “新宿二丁目文化のパトロン” と冠された雑誌「バディ(Badi)」発行人の平井孝さん。
昭和中期から走り続けてきました。
(p147より引用) 「でもね、稼ごうと思ってはじめたお店なんてないのよ。だけど、手を抜いたこともないよ」
飾りもしない、卑下もしない言葉を煙とともに吐く平井。商売で大事にしていることはずっと変えずに走った。人におカネを借りないし、貸しもしない。「他人に頼らない」をモットーとして。
平井さんは今「(二丁目も)普通の街になったな」と語ります。そこには “ネット社会” の隆盛も一枚噛んでいるようです。
(p148より引用) 今、ネットの中へ入っていけば、自分を折らずに立っていられるし、ふたたび現実世界に戻っても誰かと繋がっていられる。生身の己れの姿を特定の街にいつでもさらし、塗りこめなくても、あらゆる街で明滅する点となって生きていくこともできる。この「生きやすい」流れ自体は悪いことじゃない。平井の興した雑誌も、いつしか奔流に取り込まれた。
2019年、「バディ(Badi)」休刊。なるほど。
この平井さんをはじめとして、本書で紹介された方々はみなさんキャラクターが立っていて何と魅力的だったことでしょう。
戦中から戦後、昭和から平成にかけて世情は大きく変化していくなかで、“盛り場”に生きたエピソードの数々は刺激に満ちたものでした。
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