今、村上春樹氏の「1Q84」が驚異的なベストセラーになっていますが、もうひとつの「1984」、ジョージ・オーウェルの作品は近未来の管理世界を描いた一種の「予言」の物語です。
本書は、1858年から1996年までの約140年間になされた科学・技術の分野を中心とした発明や発見のエピソードと、その将来への影響を語った言葉を集めたものです。
先見の明もあれば、見事な外れもあります。
「結果論」として合否を云々するのではなく、「その当時」の世情がそういう「将来予測」をなさしめたと思うと興味深い話題が数多くありました。
たとえば、当時、日の出の勢いのアメリカを象徴するヘンリー・フォードの言葉です。
(p85より引用) 1908年のT型車・・・を発表するにあたって、フォードは「わたしは自動車を大衆のものにする。そしてそれをやり終えたときには、誰もが1台の車を買えるようになり、ほとんどすべての人が車を持っているだろう」と語った。この自信たっぷりの予言は、まさに的中した。
もうひとつ、第一次大戦を前にして「平和の希求」が表れた飛行家たちの思いです。
(p109より引用) 第一次世界大戦前夜、イギリスの飛行家クロード・グラハム=ホワイトとハリー・ハーバーは、航空機は、たとえ目の前に迫った戦争を阻止できないとしても、いずれ世界の国々に恒久的な平和をもたらすと主張した。
「まずはヨーロッパが、そして次には地球全体が、航空機によってつながれ、各国は互いにしっかりと結びついて、隣人同士に成長するだろう」
当時は、まだ、航空機は主力兵器ではありませんでした。
(p109より引用) 1917年になるころ、オービル・ライトは、後悔の念をこめて、次のような言葉を書いていた。
「兄とわたしが初めて人間を乗せる飛行機をつくって空を飛んだとき、二人はこれ以上戦争を起こさないための招待状を世界に出しているのだと考えていた」
ライト兄弟の思いも虚しく、第二次大戦は航空機の戦いでもありました。人類史上初の原子爆弾は、広島市の上空に飛来した航空機から投下されました。
飛行家たちの想いは、無残にも裏切られてしまいました。
最後に、もうひとつ、実現方法は異なっていますが、最近の話題でもある「図書館の蔵書のアーカイブ」についての話題です。
(p251より引用) 1965年、ポピュラー・サイエンス誌は、マイクロフィルムの進歩によって開かれる可能性についての記事を掲載し、それを「図書館を靴箱のなかにおさめる」と形容した。・・・「新しいマイクロフィルムの技術を用いれば、いつか大図書館の全蔵書をフィルムにして所有することができるようになるかもしれない-すべてを6つほどのファイリング・キャビネットにおさめて」
電子化された本は「キャビネット」ではなく、今や「ネット」という雲(クラウド)の中に納められつつあるのです。
当った予言、外れた予言 (文春文庫) 価格:¥ 650(税込) 発売日:1999-01 |
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