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OMOI-KOMI - 我流の作法 -

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失敗を生かす上位概念化 (失敗を生かす仕事術(畑村 洋太郎))

2006-02-12 09:41:51 | 本と雑誌

(p68より引用) ここで出てくる大切な考え方は、一般化した知識をもとに「上位概念」(メタコンセプト)に上るということです。・・・ロケットの技術者に欠けていたのは、自分たちの分野の研究ではなく、たとえば自動車という人間の生活に非常に近い、長年の高度な知識の集積が見られる分野からの「知識の移転」(水平法)だったのです。・・・

 この話は私たちに広い視野を持つことの大切さを教えると同時に、ある失敗から得た教訓は、それをしっかり知識化し、その知識を一般化することではじめて、まったく別の世界でも使える幅の広いものになるということを示しています。

 「水平法」というのは、他分野の知識を自分の分野に当てはめる(その逆も)ということです。その「当てはめる」際の具体的な工夫のひとつが「上位概念化」です。
 扱う対象が異なると、他の失敗事例がそのままの平行移動的な形で当てはめられるとは限りません。ひとつの具体的事例からの教訓を、一段階高い俯瞰できる立ち位置に持ち上げて一般化・抽象化することにより、その適用範囲を広げるのです。

(p70より引用) これを「自動車工場のある失敗」と限定的にとらえるのではなく、たとえば「熱による影響と失敗」というもうひとつ上位の概念に上ってみると、H2ロケットへの応用だけでなく、たとえば「台所でガスコンロに火をつけて作業をしているときだって、注意しなければならないことはたくさんある」という発想にもつなげることができます。

 折角の過去の教訓(失敗事例)があっても、それに気がつかないとなんともしようがありません。ただ、「気がつかなかったからしようがない」では済まされない時代です。

 「気がつきにくい」のなら「気づきやすくする」具体的な手を打たなくてはなりません。その一つが「上位概念化」による教訓の汎用化ですし、それらの教訓のデータベース化によるナレッジ共有の仕掛けも有効な道具立てにはなります。

 ただ、それらも「気づこうとする意思」がなければ豚に真珠ですし、「活かそうとする意志」がなければ宝の持ち腐れです。
 最も大事なことは、「同じ失敗は決して繰り返したくない」という強い気持ちだと思います。

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2 コメント

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畑村先生については、以前六本木ヒルズの回転ドア... (m-fun)
2006-02-12 12:01:45
畑村先生については、以前六本木ヒルズの回転ドア事故の原因究明に携わっておられたのをTVで見ました。確かに、他の人の成功事例には関心を持ちやすいのですが、失敗事例については、ついなおざりになってしまいます。そのため、他の人の失敗が活かされず、結局他の人と同じような失敗をしてしまうのでしょうね。私自身、繰り返し失敗することもあります。大きな損失を被ったり、苦い思いをしないと、同じ失敗を繰り返さないという強い意志を持ちにくいのかもしれません。一度この本を読んでみたいと思います。
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m-fun様 (思案中)
2006-02-12 15:57:02
m-fun様
 コメントありがとうございます。
 過去の成功体験は、そのときと同じ条件や環境下においては適用できますが、最近のように新たな環境(市場・競合等)下での営みが求められる場合は、かえって足枷になりかねないと言われています。
 その点で、今後ますます失敗事例の活用の重要性は増大していくはずです。アメリカで転職市場の場合、失敗経験のある人材を重視するのと同じ発想です。
 あと、最近何冊か畑村氏の本を読んでみていますが、説明に使われている「図」がシンプルで私にとっては参考になりました。
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