まずは編者・解説が著名な地球物理学者である竹内均氏であることが(私にとっては)驚きの本でした。
竹内氏は1981年大学を退職された後、科学雑誌Newtonの創刊者・編集長として、難解と思われる科学を広く一般の読者に身近なものとすることに尽力されました。その竹内均氏の手によるためかもしれませんが、内容は非常に平易な印象です。
ひとつひとつの項について詳細な解釈が記されているものではありません。しかしながら、渋沢栄一氏自身が論語の教えを忠実に守りそれを生涯の行動規範として実践したこと、そして、それにより超一流の実業家としても成功したという事実がこの本の重石となっています。
渋沢氏と同時代の人物評が随所に見られるのはこの本ならではの楽しみです。言行一致の人物を高く評価する等「論語シフト」のコメントは簡素です。
論語は、孔子と弟子との問答形式のものが多く、そこで語られる孔子の教えは対象である個々の弟子にtuneされたものになっています。したがって同じ問であっても孔子の答はその時々で異なっているように思える場合があります。
これは、(答の本質は同じでも)その答に達する道程を、それぞれの弟子の個性・熟達度等にあわせて具体適切に示しているためです。
論語が学問ではなく実行を重視する実学の教えであることの証左と言えますし、(この本を読んで改めて思ったのですが、)孔子は学者・思想家というよりはむしろ超一流の教育者であったのです。
論語で検索して、ここにたどりつきました。
私は孔子に恋する元乙女です。
渋沢栄一氏の本は、私も書店で手に取ったことがあります。メルヘン頭の私は、実業家特有のアクの強い解釈が鼻について、ちょっとあわないかもと、書架に戻してしまいました。
「論語物語」(下村湖人)などは好きです。
人によっていろんな読み方があるんだなと感心しました。