柳井氏は、「ユニクロ」を「第三世代SPA」と位置づけています。
第一世代の代表はGAP、スポーツウェアのカジュアル化。第二世代はZARAやH&M、それにファッションの要素を加えたもの。そして、さらに「情報」をアドオンしたユニクロが第三世代というのです。
(p122より引用) ぼくはファッションだけが服を買う理由ではないと思っている。機能や素材、着心地、シルエットなど、その服の持つ情報そのものを、商品と一緒に伝えて買っていただく。・・・
商品そのものがいいということと、その商品の持つ情報が自分にとって有益だと思えること、そこに、広告などで伝わる商品のイメージが加わる。・・・我々のように、いろんな意味の情報を商品と同時に伝えるSPAを、第三世代SPAと名付けた。
これは、「服」に対する「意味づけ」の転換・発展を目指したものでした。
柳井氏は、本書で、いくつもの成功事例・失敗事例・リカバリー事例を紹介しています。その中で、私として注目したいのは「リカバリー事例」です。
たとえばその中のひとつ。「ジーユー」の例です。
ユニクロが「低価格にはこだわらない」ことを宣言した、その後のマーケットをカバーするために、柳井氏は低価格商品にチューンした「ジーユー」を展開しました。しかし、その経営状況は鳴かず飛ばずでした。
(p159より引用) よく、先行している商売人が流行を作り出すとか、お客様の心理を作り出すといった類の話があるが、そんなことは実際にはあり得ない。こちらから心理状態を変えるなんて滅相もないことだ。重要なのは、お客様の心理状態に合わせて商品を作り出すことなのだ。
この考え方に基づき「てこ入れ策」として登場したのが、大いに話題になった「990円ジーンズ」です。「不況の真っ只中で低価格の商品を求めている消費者でさえ驚くような価格」がポイントでした。
「お客様の心理状態(ニーズ)を読み、その上を行く『驚き』を提供する」、こういったことも世のマーケティングの指南書には書かれています。が、要は、必要なタイミングで決断実行できるかという1点に尽きます。その点が、マーケッター/コンサルタントと経営者の決定的な違いです。
この「990円ジーンズ」に見られる「低価格戦略」はユニクロの代名詞のような印象があります。しかしながら、柳井氏の「価格」についての意味づけはちょっと違っています。
(p205より引用) ユニクロはベーシックなカジュアルウェアを低価格で販売する企業という印象を持っている方が多いと思うが、安く売るという前に「よい商品をつくって、あらゆる人に買っていただきたい」という思いが強い。価格を安く設定しているのは、そのための手段と位置づけている。
価格は、それが「価値」だというのではなく、あくまでも「価値」を提供するための「手段」だと言うのです。確かにPriceは「4P」のひとつに過ぎないのですから、言われてみるとマーケティングの古典においても当たり前の考え方なのですが、改めて再認識させられました。
さて、最後の「柳井流」ですが、「企業内教育」についての取り組みです。
(p194より引用) ぼくが考えている教育の最終の姿は、仕事自体が教育そのものになるというものだ。
それぞれの人が自ら考えながら仕事をする。個々人が教育したり教育されたり、教え合ったり、育んだりする。この仕組みができれば、結果的に常に新しい企業に生まれ変わるための起爆剤になるのではないかと考えている。
企業の根幹を「人」と捉えた場合、重要なのは人材育成です。柳井氏の描く育成の理想像は、「相互教化」という仕組みでした。
教えあう職場は、仕事を「部分最適」から「全体最適」を導きます。組織として「全体最適」を求めることができるということは、まさに企業として「変化への対応」が自律化されるということです。
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