野口氏の著作は、代表作の「『超』整理法」をはじめ、「『超』勉強法」等何冊か読んでいます。
本書は、それら「超」シリーズ等の執筆を通して著者が整理した「文章法」を紹介したものです。10年ほど前の本ですが、まさに「野口流」、流石に要領よくまとまっています。
そのあたり、目次を眺めるだけでもわかります。
- 第一章 メッセージこそ重要だ
- 第二章 骨組みを作る(1)内容面のプロット
- 第三章 骨組みを作る(2)形式面の構成
- 第四章 筋力増強―説得力を強める
- 第五章 化粧する(1)わかりにくい文章と闘う
- 第六章 化粧する(2)一〇〇回でも推敲する
- 第七章 始めればできる
第二章から第六章までは、論文・解説文・企画書・評論といったジャンルを対象にした、分かりやすい文章を書くための実践的なHow Toの紹介です。機械的・即物的ではありますが、その分、著者のアドバイスはすぐ実行できるレベルにまで具体化されています。
それらTipsの紹介に先立ち、著者は、本書の冒頭で「メッセージ」の重要性を説いています。論文・解説文等の文章を書くにあたっては「メッセージが8割の重要性」を持つという主張です。(反面、著者は、小説等ではメッセージは重要ではないとしています)要するに、「何を言いたいのか」「何が結論なのか」に尽きるということです。
「結論」は「明快な主張」でなくてはなりません。その観点からは「外見」も重要です。著者は、「メッセージ」の最も重要な条件をこう規定しています。
(p12より引用) ある命題を「メッセージ」と言えるかどうかは、どのように判断できるか?
第一の条件は、「ひとことで言えること」だ。
その点から著者は、旧来の「生活綴方運動」に始まる「見たまま感じたままを書く」との考え方に異を唱えています。
(p18より引用) 文章を書く作業は、見たまま、感じたままを書くことではない。その中から書くに値するものを抽出することだ。見たこと、感じたこと、考えていることの大部分を切り捨て、書くに値するものを抽出する。これは、訓練しないとできないことである。
「主張」のある文章は、その内容の当否にかかわらず発展性があります。これも意味のあることです。
(p22より引用) あなたの文章が出発点になって、さまざまな議論が展開してゆくかもしれない。それは、最初の議論が不十分であったことを意味するものではなく、むしろ重要な問題を見出したことの証拠なのである。
こういった効用のあるメッセージですが、「的確」なメッセージを固めるのはなかなか容易にはできません。とても苦しいものです。考えて考えて考え抜かなくてはなりません。
本章で著者が紹介している「メッセージ(=テーマ)の見つけ方」のヒントをひとつ書き留めておきます。対象をとらえる「切り口」の工夫です。
(p23より引用) 「見えるものの中からとくに目立つもの」を指摘するのは、素人にもできる。しかし、「あって然るべきものがない」と指摘するには、対象に関する深い知識が必要である。だから、プロにしかできない。
「見えていないもの」に気づくのは確かに難しいのですが、それこそが独創性のある「新たな視点」になるという指摘です。
さて、最後に、著者が語るシニカルなコメントを。
(p211より引用) 「私が言うとおりにせよ」と注意するのは簡単だが、「私がするとおりにせよ」と示すのは至難のわざだ。
本書のあとがきで、著者自ら、「『私の文章読本』を書いてしまった」と記しています。
「超」文章法 (中公新書) 価格:¥ 819(税込) 発売日:2002-10 |
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