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フリーによる価値の転化 (フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略(クリス・アンダーソン))

2010-03-26 19:04:36 | 本と雑誌

 デジタル化により価格破壊が起き、さらに無料(フリー)のサービスが登場したことによって縮小・退出していったものはたくさんあります。
 その代表例が「百科事典」です。1セット1,000ドルを越す百科事典を全世界で大量に販売していたブリタニカは、1993年マイクロソフトがエンカルタという電子百科事典を99ドルで売り出したことにより大きな打撃を受けました。

 
(p174より引用) マイクロソフトは6億ドル以上も規模を小さくする市場で、1億ドルを売り上げました。・・・マイクロソフトは市場を縮小することでお金を稼いだのです。

 
 そして、現在は、無料のウィキぺディアが現れ、マイクロソフトはエンカルタの提供を打ち切りました。

 
(p174より引用) 現在のウィキペディアは巨大なうえに、無料で利用しやすく、ブリタニカよりも多くの人の生産性を上げている。だが、それは直接にお金を生まないだけでなく、ブリタニカの売上げを大きく奪った。つまり、直接収入という計測できる価値を縮小させて、私たちの集合知という計測できない価値を大きく増やしたのだ。
 これがフリーの成すことだ。十億ドル産業を百万ドル産業に変えてしまう。だが、見た目どおりに富が消滅するわけではなく、富は計測しにくい形で再配分されるのだ。

 
 「無料」にすることにより、より多数の人々が便益を享受できる、そして、その無料を実現するための「収入」は別の仕組みで確保するというモデルです。競合が無料化を武器に参入してきた市場のみを自社のビジネスドメインにしていた企業にとっては壊滅的です。

 さて、「フリー」のビジネスモデルでの難問は、この収入(あるいはお金に代わる何らかのメリット)の確保方法ですが、この点について著者は4つの類型に整理しています。

 
(p343より引用) フリーでないほかのものを販売し、そこからフリーを補填する「直接的内部相互補助」、第三者がスポンサーとしてお金を支払うけれど、多くの人々にはフリーとして提供される「三者間市場」、さらに、・・・「フリーミアム」という、フリーによって人を惹きつけ、有償のバージョン違いを用意するフリー。これらはあくまで貨幣市場でのモデルだが、フリーにはそれと異なる「非貨幣市場」があり、そこでは贈与経済、無償の労働、等々があると説く。

 
 これらの中で、著者が、特に重要なコンセプトとして紹介しているのが「フリーミアム」。
 フリーミアムとは、(繰り返しになりますが、)「フリー」(無料)と「プレミアム」(高額の有料商品/サービス)を組み合わせた造語で、無料のサービスや商品で多くのユーザーを集め、さらに高度な機能や特別な仕様などを有料サービスとすることにより、両者のバランスの中で利益を確保するビジネスモデルをいいます。別の言い方をすると「少数の有料利用者が多くの無料利用者を支えるモデル」です。

 このモデルの原始的なスタイルは、従来から無料サンプルの配布による集客といった形で存在していたものです。が、デジタルの世界になって、多くのユーザにサービスを提供するための限界費用が飛躍的に低下したことから、さまざまな活用方法が登場したのです。

 本書を通読しての感想ですが、まず、デジタルの世界ではその限界コストの極小化による「フリー(無料)」への流れを制することはできないとの主張は理解できます。
 問題は、その次です。
 そういった「フリー(無料)」といった大きな潮流のなかで、いかにして「ビジネスモデル」を構築できるか、「選択と集中」なのか「多角化」なのか、どこに「儲ける」仕掛けを作り込むのか・・・、知恵比べですね。
 
 

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発売日:2009-11-21

 
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