環境は変化します。その変化に追随するためには、さらにその変化を先取りするためには、常に変わり続けなくてはなりません。
企業に「変革」が求められる所以です。
変化は動的なものです。したがって、企業のアクションは動的なもの、すなわち「プロセス」に結晶化されるべきです。
著者は、その「プロセスのつくり込み」において、一人ひとりの「内発的動機」が絶対的に必要不可欠だと指摘します。
(p24より引用) 大切なのは、立派な方針がつくられているかどうかではなく、改革の「プロセスがつくり込まれていくかどうか」なのだ。このプロセスのつくり込みには、質の高い徹底的な議論が不可欠だから、かかわる人々の主体的な参加が求められる。つまり、内発的動機を伴った参加なしに、つくり込みが成立することはありえない。プロセスは儀式ではつくり込めない、ということだ。
たとえば、種々議論されている「成果主義」の評価についても、そのめざすところの是非ではなく、その導入に至るプロセスの適否に重きを置くのです。
(p29より引用) 成果主義という考え方自体が問題なのではなく、その背景にある価値観がみんなに共有されていくプロセスを大切にして導入されたかどうかが問題なのである。
著者は、本書の中で「内発的動機」を生み出すための具体的方法をいくつか提示しています。
そのひとつが「セーフティネット」です。
(p138より引用) セーフティネットとは
個人の一歩を踏み出す勇気を下支えする安心感を生み出す、「経営や上司への信頼感」「同僚への信頼感」のこと
一人ひとりが安心して自分の考えを表明できるような場や雰囲気を作り上げるのです。
キーコンセプトは「信頼」です。
この「セーフティネット」を実際的に機能させる重要な要素として、「スポンサーシップ」があります。上司には、「社員一人ひとりが改革の主役になるための機会を演出する」という役割があります。
(p148より引用) スポンサーシップとは、このような「持続性のある改善力」をつくり上げていくリーダーシップのことなのだ。持続力のある改善力をつくり上げるには主体的な取り組みが不可欠であり、そのためには内発的な動機づけがどうしても必要になる。スポンサーシップというのはまさに、社員の内発的な動機を引き出してゆくリーダーシップのことなのだ。
とはいえ、やはり変革するということは簡単なことではありません。
(p221より引用) 変革と言うと、「よくなっていくこと」だと単純に理解している向きがあるが、そう単純ではないのだ。確かに長期的に見るなら「よくなっていくこと」なのだが、だからといって、けっして一直線によくなっていくものではない。途中には必ずといってよいほど紆余曲折がある。
「変える」ということは、今までのやり方を否定することでもあります。
「変える」ためには「考え」なくてはなりません。
(p221より引用) 多くの場合、対話の機会が増えると、考える機会も増えてくる。しかし、考えることが習慣化してくると、最初に現れるのは、多くの場合、成果ではなく混乱である。なぜかと言えば、今まで隠されていた問題が顕在化してくるためである。「どうせ言っても仕方がない」とあきらめていた問題が「なんとかならないか」と表に出てくる。
この混乱を、現状を乱す「破壊的混乱」として否定するか、改善の過程の「建設的混乱」として支援するか。
関係者が「内発的動機」に基づき知恵を出し合ってつくり込んだプロセスであるならば、生みの苦しみは、必ず報われます。
仮にそのプロセスに新たな問題が発生したとしても、継続的変革のサイクルが駆動されるはずです。
なぜ社員はやる気をなくしているのか 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2007-05-16 |