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単純 vs 複雑 (非線形科学(蔵本由紀))

2007-11-04 20:09:41 | 本と雑誌

Chaos  「複雑系」に関しては、ちょっと関心があったので、以前も「複雑系の意匠」という本を読んでみたりしました。

 本書の著者の蔵本氏は「非線形科学」の第一人者です。
 氏は、「まえがき」において、デカルトにはじまる近代合理主義精神をベースにした現代科学のあり方に対して、今、「何か足りないのでは」という疑問が感じられ始めていると指摘しています。それが、現代の「複雑系」「非線形科学」への関心の高さの背景にあるとの考えです。

(p18より引用) 広く認められた見解というよりは私個人の提案に近いのですが、非線形科学というものを「生きた自然に格別の関心を寄せる数理的な科学」とみなしてはどうかと思います。

 ここでの「生きた自然」を感じる元にあるものが「創発」という現象です。
 これは、結晶化や磁化のように、構成要素間の緊密な相互作用から生れる新しい性質の発現を言います。この創発が、複雑な様相を表わす非線形現象の源なのです。

 著者は、現代に至る科学の流れを「樹木」にたとえます。
 不変構造の源を物質の構成要素の細分により求める考え方です。

(p244より引用) 「物理学がそのすべてのエネルギーを傾注すべきものはミクロの世界であり、ミクロな要素こそ扇の要であって、そこさえ押さえればこの世界は原理的に理解可能である」という信仰が生れたのも無理からぬところがあります。
 このような自然観の信者たちは、科学という知識体系を一本の樹木のようにイメージしがちです。樹木の根もとには物質と時空の根源を探究する素粒子物理学があります。・・・
 樹木のイメージでは、多様なものを統合しようとすると、根もとに向かう方向でしか考えられません。・・・

 他方、非線形科学の採る方向は、末端の現象世界に止まって考察を進めるのです。

(p246より引用) 樹木の根もとにさかのぼることなく、枝葉に分かれた末端レベルで横断的な不変構造を発見できるという事実を、非線形科学は確信させてくれました。

 視座の転換です。

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価格:¥ 735(税込)
発売日:2007-09


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コメント (1)
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