本書の具体的な内容はまさに「How to」のエッセンスなので、個々に紹介していてはきりがないのですが、その中で、改めて留めおきたいフレーズを記しておきます。
まずは、相手の立場にたって考えるという「視座の転換」です。
(p57より引用) 自動車王ヘンリー・フォードが人間関係の機微にふれた至言を吐いている-
「成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることのできる能力である」。
最近のメンタルヘルス関係の対応でよく出てくる「アサーション(自分も相手も大切にした自己表現)」に通じるところがあります。
あと、こちらは万人が万人、賛同するとは限らないのですが、議論をする際の勘所です。
(p159より引用) 議論に勝つ最善の方法は、この世にただひとつしかないという結論に達した。その方法とは-議論を避けることだった。・・・
議論に勝つことは不可能だ。・・・
-「議論に負けても、その人の意見は変らない」。
チョッと見では「孫子の兵法」にも似ていますが、趣旨は異なります。
孫子の教えは、「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。」とあるように、「戦わずして勝つ」という「不戦の薦め」です。
著者のこの示唆は、(内容の当否はともかく、)一般に「議論で白黒をはっきりさせる」と言われているアメリカにおいて「How to」として推奨されているという面でも面白味を感じます。
最後に、本書で挙げられている数多くの教訓・示唆のなかで、これが原点だという「黄金律」をご紹介します。
(p139より引用) 人間関係の法則について、哲学者は数千年にわたって思索をつづけてきた。そして、その思索のなかから、ただひとつの重要な教訓が生まれてきたのである。それは決して目あたらしい教訓ではない。人間の歴史と同じだけ古い。・・・
「すべて人にせられんと思うことは人にもまたそのごとくせよ」。
人を動かす 新装版 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:1999-10 |