デカルトは、年少のころから当時としては一流の教育環境にあり、人文学・スコラ学・医学・法学等を学びました。その後、彼は書物を捨て、旅にでて外部世界でさまざまな経験を積みました。
そういった中でデカルトが抱いていた問題意識は以下のようなものでした。
(p18より引用) わたしは、自分の行為をはっきりと見、確信をもってこの人生を歩むために、真と偽を区別することを学びたいという、何よりも強い願望をたえず抱いていた。
デカルトにとっては、旅での経験が極めて大きな意味をもっていました。
デカルトの旅は、文字通りの「旅」もあれば、オランダでの学究生活やドイツでの従軍生活等といった「異郷での暮らし」もありました。
そういったさまざまな経験から、デカルトは、従前から盲目的に信じられている事柄に対する「懐疑の姿勢」を体得していきました。
(p18より引用) われわれにはきわめて突飛でこっけいに見えても、それでもほかの国々のおおぜいの人に共通に受け入れられ是認されている多くのことがあるのを見て、ただ前例と習慣だけで納得してきたことを、あまり堅く信じてはいけないと学んだことだ。
そして有名なドイツ冬営地での「炉部屋の思索」に至ります。
(p23より引用) わたしは次のように確信した。・・・わたしがその時までに受け入れ信じてきた諸見解すべてにたいしては、自分の信念から一度きっぱりと取り除いてみることが最善だ、と。後になって、ほかのもっとよい見解を改めて取り入れ、前と同じものでも理性の基準に照らして正しくしてから取り入れるためである。古い基礎の上だけに建設し、若いころに信じ込まされた諸原理にだけ、それが真かどうか吟味もせずに依拠するより、このやり方によって、はるかによく自分の生を導いていくことに成功すると堅く信じた。