Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol264:英語は無料でeラーニング

2008年03月08日 | e-Learning業界動向
1月ほど前に読んだ週刊アスキー連載のコラム「著作権という魔物(岩戸佐智夫氏)」にこんなことが書いてありました。

もはやアフィリエイトとアドセンス収入を得るしか、今後の読み物は存在しえないのではないか?
という話を取材の中で聞いた。

読み物や写真、動画は言わばおまけのような形でしか、存在しえないのではないかと言うのである。
正直言ってなるほどと思った。多分そうなのかもしれない。



R25等のフリーペーパーの増加、ページの大半が広告で占められている有料雑誌、ほとんどのWebページが広告収入によって成立しているという事実、それらの現実を受け入れると「コンテンツ=グリコのおまけ」というのは確かにうなずける説ではあります。

あらゆるコンテンツの「おまけ化」が進む中、教育事業を生業とする者としては「お願い!教育だけは」と思っていたのですが、最近そうでもなくなってきています。元来インターネット自体が知識を獲得するツール=eラーニングなので、有料でコンテンツを配信すること自体に本来無理があるのかも知れません。

なにはともあれ、今週は「英語教育」をテーマとした気になる3つの無料コンテンツについてご紹介したいと思います。

NHKラジオビジネス英会話
パソコンやインターネットが普及する前から、無料で学習可能という点ではNHKの教育放送は無料コンテンツの老舗なのかもしれません。

「でも、本当はテレビで支払っている受信料にラジオの受信料が含まれてるから、有料なのでは?」と思い調べたところ、放送法32条下記のような記述がありました。

第32条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。


回りくどい表現ではありますが、そもそも受信料は、視聴しているかどうかでなく、受信設備を保有しているかどうかに課せられており、ラジオは受信設備に含まれないという解釈のようです。実際にはラジオ放送を運営するための資金はテレビの受信料から充当されていると思われますが、受け手からすると無料であることには変わりありません。

前置きが長くなりましたが、最近NHKラジオ英会話にちょっとした異変が起きています。それは下記のサイトの存在です。

「NHKビジネス英会話」(音声配信サイト)
http://www.nhk.or.jp/gogaku/english/business/index.html

インターネットでラジオ英会話の放送を配信しているのです。Webサイトには「3月までは試験的なもの」と書いてありますが、先日購入したビジネス英会話のテキスト3月号によると「(4月より)インターネット放送で同じ音声が聞けます!」となっており、どうも継続してネットでの放送配信を続けてくれるようです。

筆者はこの英会話番組を8年ぐらい聞き続けているのですが、現在住んでいるマンションに引っ越してからはAM放送の電波が入りづらく困っておりました。インターネットなら音は綺麗だし、何より留守録音のセットを忘れてもOKというメリットは計り知れません。

残念なことに上記のネット配信では
1)デジタルファイルのダウンロードが不可
2)公開は2週間まで(前週の放送を毎月曜日にアップ)
という制限があります。

とは言っても、イヤフォン端子からアナログ音声をアウトプットし、それをMDや再度パソコンにインプットすることで放送の録音は可能です。さらには某ツールを利用すると、直接デジタルファイルとして保存できないこともないようです。

今までAMという音質の悪さ、録音の手間等の足かせがありましたが、このインターネット配信によって、大いに無料英語教育コンテンツとしての価値を高めたと言えます。テキストも月350円で入手できますしね。

Pod Casting
3月2日現在のiTunes Music Storeの「トップPodcast」によると

第一位:英語でキャリアアップ(東京大学&ベネッセ)
https://blog.benesse.ne.jp/berd/blog/eigodecareerup/
第三位:Brain Foods 英会話(Station81.com)
http://station81.com/main.asp
第七位:日常英会話(Station81.com)
http://station81.com/main.asp
第八位:English as a Second Language Podcast(ESLPod.com)
http://www.eslpod.com/website/
第十位:南美布のStep up with TOEIC(日経デジタルメディア)
http://nikkei.hi-ho.ne.jp/toeic_podcast/

とベスト10以内に英語学習用コンテンツが5つもランクインしています。この他にもCNNの英語ニュースとCNN student Newsが10位以内にあるので、実際には10位中7つが英語教育のコンテンツといえそうです。

そんな中、今話題なのは第一位の「英語でキャリアアップ」です。おそらく英会話の教育機関の中には「こんなの無料で公開されたら商売あがったりだよ~」と嘆きの声を上げている組織もあるかもしれません。上記サイトには音声のPodCastingだけでなく、iPodQuizeを用いてのインタラクティブな確認テストまで用意されてています。

少し前までの英語PodCastingは、Netラーニング社のEnglish Aya Podのように、機能を限定することで無償版と有償版を切り分けていました。
http://www.ayapod.com/index.html

しかし、最近「すべての機能が無償」の傾向に拍車がかかっているように思えます。もちろん無料の代わりにバナー広告等で他の商材を紹介するアフィリエイトを実施したり、今後有償化を想定しているサービスもありますが、同じ教育事業者からみると「どうやって儲けているのだろう」と不思議な気がします。いずれにせよ、学習者にとっては嬉しい状況であることは確かです。

無料学習コミュニティiKnow
http://www.iknow.co.jp/
さらにグリコのオマケを進化させ「グリコ自体が無い上に、おまけの品質が格段に向上している」英語学習サイトを発見しました。簡単に説明すると英語学習システムにSNSがくっついたようなサイトです。

これだけなら普通にありそうなのですが、すべてのサービスが無料の上に、英語学習部分の作りが大変丁寧にできているのです。筆者は仕事柄多くののeラーニングコンテンツやシステムを見てきましたが、このiKnowの学習設計のクオリティは相当に高いです。

さらにコンテンツの量にも驚かされます。このサイトには、TOEICチャンネル、トラベルチャンネル等7つのチャンネルがあり、それぞれにコースが設定されています。3月3日現在45コースが受講可能です。そして各コースにはiKnow,Dictation,Mobile,BrainSpeedの4つの学習アプリケーションが用意されています。

各アプリに用意されたレッスンは10~15分前後で終了するので、スキマ時間に学習するのに最適です。基本的には徹底的に単語を覚える。覚えた単語の意味が即座に理解できることを意図して開発されているようです。単語の意味を問う問題で選択肢の中に「該当なし」というのがあるところが、筆者のお気に入りです。

このサービスの最大の不安は、「どこから収益を得るのか」という一点だけです。今のところベータ版ということもありSkypeのバナーがあるだけなのですが、今後優良なスポンサーが付き、サービスが継続してくれることを願っています。

まとめ
百聞は一見にしかずと言いますが、まず、実際に上記のサイトにアクセスし、コンテンツを受講していただければと思います。その上で「やっぱり無料のものは限界があるよね」と思うのか、それとも「これ本当に無料でいいの?」と思うのかをご確認ください。確認結果を下記のサイトでクリックいただければ幸いです。
http://clickenquete.com/c/q.php?CQ0000639R0000323C0fc4

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