ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

『国分一太郎童謡集』 ―働くー

2020-10-17 12:00:47 | Weblog
      『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、働く家族の中で育った。

60 いねつけ

 いねつけ こんもり
 こん車
 僕が のつてる
 いねの上

 よいこら あねちやが
 つなひいて
 うしろで おつかが
 おしてゐる

 いねつけ こんもり
 こん車
 がんばつて 父ちやが
 ひいてゐる

 ばんげの あひさつ
 する人に
 車の上から
 僕がする。
             「『教育』と『文学』の研究」8号

98 わらうち

 わらうち ひとりは
 ガッケン トンよ
 ひとりうちなら
 おとうさん

 わらうち ふたりは
 ガッケン トンよ
 ガッケン トンよ
 ふたりうちなら
 にいさんも

 わらうち ふえたら
 ガッケン トンよ
 ガッケン トンよ
 ガッケン トンよ
 三人うちなら
 ぼくまでも
             国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』


『国分一太郎童謡集』 ―先生ー

2020-10-17 09:05:56 | Weblog
『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、先生のあたたかいまなざしの中で育った。

226 夕がた

 子んもりしてたら
 先生が通って
 ごはんは まだかと
 みんなにきいた。

 まだだといったら
 そうかといって
 先生の自転車
 あっちに行った。

 先生のかげが
 ここまでのびて
 先生を みんなで
 もいちどよんだ。

 先生がふりむき
 帽子をふって
 子もりのぼくたち
 「さいなら」といった
           『国分一太郎文集(10)』

「夕がた」
 村の夕方の一場面。子守をしている子供達の所へ、教師がとおる。勤務の帰りか、子どもたちの様子を見周りにいったのかはわからない。先生のすがたを見た時に、子どもたちは「あっ、先生だ」と声を上げたに違いない。すると先生は、ごはんが待ち遠しいであろう子どもの気持ちを推し量って、「ごはんは、まだか」と声をかける。「まだだ」といったら、「そうか」と、「早くごはんになるといいね」という表情をあらわして、先生は去っていく。
 夕方である。傾いている日差しが、先生と自転車のかげを、子どもたちの足元につれていく。こどもたちが、もういちど呼ぶ。先生は、ふりむいて、帽子をふる。すると、夕暮れの中に、子どもたちの「さいなら」がこだまする。
 赤い夕日、黒い影、手を振っている子どもたちと、自転車に乗った先生、その情景と気持ちを共 有することで心がかよう。「夕方」という「とき」をたくみにとらえている。
                                (本書 185頁より)