ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

『国分一太郎童謡集』 ―先生ー

2020-10-17 09:05:56 | Weblog
『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、先生のあたたかいまなざしの中で育った。

226 夕がた

 子んもりしてたら
 先生が通って
 ごはんは まだかと
 みんなにきいた。

 まだだといったら
 そうかといって
 先生の自転車
 あっちに行った。

 先生のかげが
 ここまでのびて
 先生を みんなで
 もいちどよんだ。

 先生がふりむき
 帽子をふって
 子もりのぼくたち
 「さいなら」といった
           『国分一太郎文集(10)』

「夕がた」
 村の夕方の一場面。子守をしている子供達の所へ、教師がとおる。勤務の帰りか、子どもたちの様子を見周りにいったのかはわからない。先生のすがたを見た時に、子どもたちは「あっ、先生だ」と声を上げたに違いない。すると先生は、ごはんが待ち遠しいであろう子どもの気持ちを推し量って、「ごはんは、まだか」と声をかける。「まだだ」といったら、「そうか」と、「早くごはんになるといいね」という表情をあらわして、先生は去っていく。
 夕方である。傾いている日差しが、先生と自転車のかげを、子どもたちの足元につれていく。こどもたちが、もういちど呼ぶ。先生は、ふりむいて、帽子をふる。すると、夕暮れの中に、子どもたちの「さいなら」がこだまする。
 赤い夕日、黒い影、手を振っている子どもたちと、自転車に乗った先生、その情景と気持ちを共 有することで心がかよう。「夕方」という「とき」をたくみにとらえている。
                                (本書 185頁より)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿