ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

一 子どものうちに経験させたい「言語活動」

2011-06-17 04:42:44 | Weblog
子どものうちにそだてておきたい心と表現力-①


一 子どものうちに経験させたい「言語活動」
(一)指導要領にある「言語活動例」
 新しく告示された学習指導要領の「国語」科の「各学年の目標及び内容」を読むと、これから小・中学校の国語科で、どのような文章表現指導が行われようとしているかがよくわかります。
 もっともよくわかるのが「言語活動例」として示されているところです。
 小学校の〔第1学年及び第2学年〕では、「2内容 B書くこと」の(1)で、書くことの指導事項がかかれています。その次に(2)として「(1)に示す事項については、例えば、次のような言語活動を通して指導するものとする。」と書かれています。

  ア 想像したことなどを文章に書くこと。
  イ 経験したことを報告する文章や観察したことを記録する文章などを書くこと。
  ウ 身近な事物を簡単に説明する文章などを書くこと。
  エ 紹介したいことをメモにまとめたり、文章に書いたりすること。
  オ 伝えたいことを簡単な手紙に書くこと。

 解説(平成20年8月)では、こう説明しています。
アは、想像したことを文章に書く言語活動として、「想像したことなどから、登場人物を決め、簡単なお話を書いたり、見たことや経験して感じたことを詩の形式で書いたりする。物語の内容について、書き加えたり、書き換えたり、続きを書 いたりするなどの活動も考えられる。」ということなどが書かれています。

イは、報告や記録の文章を書く言語活動例であるとしています。「経験したこと」を「報告する文章を書くときには、報告する相手を明確に設定するとともに、報告することの目的に沿って内容や文章構成を工夫することが必要となる。「観察 したこと」を記録するためには、「観察したことや観察して感じたことなどを、その場で確実に記録していくことが必要 になる。対象としては、低学年では、身近な自然の観察や、飼育、栽培している動植物などの観察が考えられる。」と書 かれています。

ウは、説明する文章を書く活動だと述べています。説明する「身近な事物」の「特徴に沿って、説明する順序を考えなが ら、形状や様子、動きなどを簡単に文章に書くことである。」としています。

エは、紹介したいことをメモや文章にまとめる活動だとしています。児童は、「人物や遊び、施設、本、絵など、日常生 活の中に紹介したいことを多く持っている。」そこでこれらを活用して、紹介のためのメモや文章を書くようにするこ  とが考えられると言うのです。

オは、実用的な文章を書く活動だと言うのです。「手紙を書く学習では、相手を明確にして伝えたり、返事をもらったりという交流を重視する必要がある。」といっています。低学年では、「形式を重んじることよりも、短い文や伝言でもよい ので、書いた手紙で交流する楽しさを感じとらせるようにすることが大切である。」とも書かれています。

(二)加えたい「言語活動例」
長い引用になってしまいましたが、新しい教科書は、この例示にそって作られていくことになります。
これをお読みになったかたがたはどう思われますか。たしかに、どれも大切なことのように思える、そう思われたかたもいらっしゃるでしょう。21世紀がいわゆる「知識基盤方社会」の時代であると言われていることから、必要なことなのだと納得された方もあると思います。

 その一方で、なんだか、一人ひとりの子どもの意欲や関心とかけはなれたことを求められていると感じた方もいらっしゃるのではないかと思います。育てたい大事な力とは思えるけれど、どこか、子どもの成長・発達を考えないで、「実用的」にという言葉も使われているように、社会で求められているものがそのまま、小学校や中学校におりてきてしまっているのではないか、そんなふうに思う人がいるのではないでしょうか。
 小学校や中学校では、もっと子どもの成長・発達にそって、言葉の獲得、文字の獲得、ものやことと結びつけた「書くこと」の指導をしていきたい。子どもの表現意欲や発想とむすびつけながら、子どもが表現することの喜びを感じとれるような文章を書かせたい。

 こう思っているかたが、多いのではないかと思います。わたしも、この点が抜けているように思うのです。
あるいは、どの学校でも、どの教師もだいじなことだと思っておこなわれているから、あえて「指導要領」では示さないというのでしょうか。

 それはともかくとして、子どもたちが、「日々の生活のなかでとらえたこと、考え感じたことを表現する」ことは、子どものこころをひらき、自立をうながすとともに、子どものときにこそさせたい表現活動なのです。子どもの成長・発達を考慮に入れて、今と未来を生きる子どものための文章表現力を育てることになるのです。
 この「自己表現力」を育てる指導を、国語科のなかにしっかりと位置づけなくてはならないと思います。
そのために、小学校の低学年から中学校にかけての「書くこと」指導のなかに、(「指導要領」にそって言うならば、)次のような「言語活動」を、くりかえし取り入れていくことが必要です。

(1)話したいこと(知らせたいこと・思ったこと)を、そのとおりに書くこと。
(2)「ある日、あるとき」に起きた出来事で、考え感じたことを文章に書くこと。
(3)「何日もつづいたこと」を、時間の経過にそってとらえて、文章に書くこと。
(4)「いつもあること」くりかえし経験していることを説明するように文章に書くこと。
(5)「いつもあること」くりかえし経験していることを、事実を入れて説明するように書くこと。

*この「言語活動」で、そのような文章が書かれるか、そのためにどのような具体的な指導が必要かについては『作文指導のコツ① 低学年』『作文指導のコツ② 中学年』『作文指導のコツ③ 高学年』(田中定幸著 子どもの未来社)等をご覧ください。

 こういった活動の中から育ってくる表現力を「文章表現の基礎・基本」とおさえるのです。そしてこれこそが、「子どものうちに育てておきたい文章表現力」なのです。
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