南会津生活記

南会津での日々の〝ひとコマ〟をご紹介しています。
by s-k-y (presented by taito)

駒止湿原 その前に

2008年06月23日 07時19分26秒 | 駒止湿原
駒止湿原の写真をアップする前に、少々語らなければならない事があります。
駒止湿原について詳しくはこちら→〝駒止湿原〟

実は、微妙なバランスの上に成り立っている湿原の環境が病んでいるんです。
理由は様々あるのでしょうが、代表的には「木道が湿原の水の流れを妨げ、人の重みで泥炭層の水分がしぼり出された結果、湿原の乾燥化が進んでいる」とのこと

確かに、一枚目の写真の木道を見ても、駒止湿原の木道は〝ベタ置き〟
これには少々驚きました
慣れ親しんだ浄土平湿原や裏磐梯では、下の写真のように杭を打って、その上に木道を渡していました。その分、湿原に直接重量をかけずにすみ、しかも木道の下を水が流れるので、負担を最小限に抑える事が出来ているような気がします。

この杭がすれ違う時にも好都合な足掛かりになります。


勿論、原因はハード面ばかりでなく、訪れる方々にも問題があります。
まずは、湿原に三脚を立てるカメラマン

風景写真をメインに楽しんでいるカメラマンは、その殆んどが三脚を使っています。三脚を使わなければ風景写真としては邪道と思っている向きもあります。果たしてそうでしょうか?

≪ここからは少々テクニカルなお話し≫
この日の撮影条件は予想外の快晴。EV値(Exposure Value)は14。スポット的には15まで上がる場合もあります。
仮にEV=14とした場合、絞り8のシャッタースピード1/250でいい感じでしょう!コッテリ&ギラッとした絵にしたい場合は8の1/500で
さて、ここに居たカメラマン達のレンズはCANONの赤帯の黒レンズ。つまりは高級品のLレンズを振り回していました。少々悔しい
多分、人気のEF28-70mmISかEF16-35mmISではないかと!?
さて、70mmと仮定して、手振れせずに撮る事ができるシャッタースピードとしては1/90、熟練すれば半分の1/45でも行けるでしょう。しかも手振れ防止機能のIS搭載ともなれば1/30では行けるでしょう。
EV=14の条件で、シャッタースピード1/30であれば、絞りは22まで絞り込めます。ということは、被写体までの距離にもよりますが、相当の被写界深度が得られます。
手前から奥までピンを入れた絵づくり(パンフォーカス)をしたい場合は、必然的に焦点距離を50mm、35mmと広角側にしてしていくことが多いでしょう。焦点距離が短くなれば、当然シャッタースピードをもっと削って絞り込んで行けます。ただし、絞り22以上絞り込んだとしても回析現象でかえってシャープさが損なわれます。

つまり、中判カメラ以上でない限り、35mmフィルム使用の通常の一眼レフなら手持ちでも十分撮影可能なわけで、それくらいのスピードでシャッターを切れるようでなくては、基礎がなっていないと言わざるを得ません。
マクロレンズで繊細なピンを得たいのであっても、当日は無風。そこそこは行けるはずです。
何より、撮影を楽しむアマチュアが、自然を犠牲にして三脚を立ててまでピントを追求する価値があるのかどうか?
時には〝清く諦める〟ことも必要だと感じます。

風景写真は三脚を使わないとダメ!という昔気質に凝り固まった撮影スタイルは改めていく必要があります。中にはデジタル一眼レフで三脚を使っている方までいて。。。デジタルならISOを400にしてシャッタースピードを2段稼げば十分でしょうし、粒子の荒れが気になるなら高速シャッターでアンダー目にRAWで撮ってPCで明るめに現像すればいいのです。

EV値=14で絞り8のSSが1/250、絞り11でSSが1/125
ボケ味を出したいのであれば絞り5.6でSSが1/500。絞り4ならSSが1/1000にもなります。
これでも三脚を使わなければ撮れないのか?ネイチャー写真を追求するなら、湿地に足を踏み入れる前に、露出に対する感覚を今一度磨いてもらいたいと思います。

ちなみに、当日のボクの機材はOM ZUIKO 24mm/F2、50mm/F2マクロ、100mm/F2。どれもマニュアルレンズで手振れ防止機能はありません。三脚も持参していましたがEVが高かったため、手持ちで十分と判断して使いませんでした。それでも低速シャッターでハイキーな絵づくりを楽しめます


しかし何よりも、この〝生徒〟さんたちを引率していた先生格のカメラマンにモノを言いたい。「湿原に三脚を下ろすな。後ろから人が来たら進路を譲りなさい。」こう言った基本的なことをなぜ教えられないのでしょうか?

彼らを軽蔑の意味で〝カメラマン〟と言わせていただきますが、機材を我が物顔で振り回しているようでは、たとえ雑誌のフォトコンで一時的に入賞しても、自身とその写真を見てくれた人々の心に響く作品は到底残すことはできないと思います。
〝素晴らしい風景の一部分を複写させて頂く〟という謙虚な姿勢で、自然に敬意を払いつつ、時には清く諦め〝悔しいけどまたね!〟と言って去るくらいの〝粋〟が欲しいものです。
高度な倫理観を持つ事で全ての〝カメラマン〟が〝写真家〟として尊敬を集めるようになってもらいたいものです。勿論、自戒を込めて



酷いのはカメラマンばかりでなく、団体ツアー客も同じです。
湿原には足跡がシッカリ



木道には所々すれ違えるように板の幅を広くしている場所があります。
向うから人が来たら、待避所に近い方がそこで待つというのは暗黙のルールだと思うのですが、団体客にはそれが通用しない

平気で歩いてきて、当然擦れ違えないわけですから、湿地に足を踏み入れる。
ガイドがちゃんとしていればそういうこともないのでしょうが、ガイド自身が我が物顔。というか得意満面の顔で案内をしていて。。。そして、彼らの感覚ではどちらかと言うと年功序列!?
つまり、相手(ボク)が年下と見ると年下の者が避けるものと思っているのか、自分からは決して避けません。
この団体さん、日傘があたって痛かった



駒止湿原は気軽に行けるため多くの観光客が訪れます。それがアダとなっているのですが、観光客を呼び込みたい地元としては立入制限まで踏み込めないのが現状です。
せめて、訪れる方々に最低限度のルールは守ってもらいたいですし、引率する方々にはしっかりとマナーやローカルルールを教えた上でガイドをして欲しい。そして、勇気のいることですが〝見て見ぬ振り〟とせず、ダメな行為を見つけたらボクらもちゃんと注意していく。

駒止湿原へ行って、環境の素晴らしさ以上に〝危機的状況〟を感じたもので、書いてみました



6月21日撮影の駒止湿原シリーズ
 オープニングフォト その前に その1 その2 その3 その4