25日
昭和二十一年三月二十四日 晴 二、三直出勤
西北風が窓にガタガタするので目を覚ましたら陽の光が窓に当たって居た。 風で昨夜の雨雲を吹き飛ばしてしまったのだろうが風は冷たい。 しかし屋内に居ると寒さは感じない。 もう春だ。
妻と四女(四歳)はもう山形辺りまで行ったであろう。 あんな乗り方で大変な苦しみであったろう。 帰りが無事であってくれれば良いが。
薪がなくて困った。 縁の下の羽目板も燃やしつくしてしまった。 電熱器は無届であるがなんと云ったって使わぬわけには行かぬ。 敗戦国は惨めだ。
久しく読書をしなかったが 夜、文芸春秋別冊を読んだりラジオの選挙放送を聞いたりした。 聞いていると 皆、軍部が無理な戦争をした。 負ける事は始めから判って居たが軍部が口を利かせないので黙って居たと揃って先見の明を誇って居る。 可笑しい話だ。 日本人がこんなに節操のない国民だとは思わなかった。
西北風が窓にガタガタするので目を覚ましたら陽の光が窓に当たって居た。 風で昨夜の雨雲を吹き飛ばしてしまったのだろうが風は冷たい。 しかし屋内に居ると寒さは感じない。 もう春だ。
妻と四女(四歳)はもう山形辺りまで行ったであろう。 あんな乗り方で大変な苦しみであったろう。 帰りが無事であってくれれば良いが。
薪がなくて困った。 縁の下の羽目板も燃やしつくしてしまった。 電熱器は無届であるがなんと云ったって使わぬわけには行かぬ。 敗戦国は惨めだ。
久しく読書をしなかったが 夜、文芸春秋別冊を読んだりラジオの選挙放送を聞いたりした。 聞いていると 皆、軍部が無理な戦争をした。 負ける事は始めから判って居たが軍部が口を利かせないので黙って居たと揃って先見の明を誇って居る。 可笑しい話だ。 日本人がこんなに節操のない国民だとは思わなかった。
昭和二十一年三月二十二日 晴 明け
朝 霧がひどく寒かったが日中暖かくなった。 帰宅後薪を作ったりして一日過ごした。
給料 五百円以上が封鎖になるから郵便貯金通帳を持って来いと云う。
昭和二十一年三月二十三日 雨 一直出勤
妻の実家(山形)の甥の結婚式に妻と四女(四歳)が行く。
午前中、次女が 午後は長男が上野駅の列の中に立たせて置いた。 次女が帰って来て三十組に入って居ると云う。 それなら乗れると思って妻と子供を連れて四時頃家を出て上野に行った。 ところが復員と海外引揚者を入れたので私だけ先に入って行って、席を取るどころか乗車が出来ない。 ようやく乗車して妻を待ったが来ない。 多分切られたのだろうと出て見ると改札のところに居た。 仕方がないので十時十五分の列車で行くことにして妻の兄には先に行ってもらった。
次の列車も復員と海外引揚者で一杯。 仕方がないので妻と子供を窓から押し込んで来た。 妻は席に着いて居る人の膝の上に横倒しになって居たがその後どうしたか。
窓は一枚残らず板だったので閉められて中は見えなかった。 大変な話だ。
朝 霧がひどく寒かったが日中暖かくなった。 帰宅後薪を作ったりして一日過ごした。
給料 五百円以上が封鎖になるから郵便貯金通帳を持って来いと云う。
昭和二十一年三月二十三日 雨 一直出勤
妻の実家(山形)の甥の結婚式に妻と四女(四歳)が行く。
午前中、次女が 午後は長男が上野駅の列の中に立たせて置いた。 次女が帰って来て三十組に入って居ると云う。 それなら乗れると思って妻と子供を連れて四時頃家を出て上野に行った。 ところが復員と海外引揚者を入れたので私だけ先に入って行って、席を取るどころか乗車が出来ない。 ようやく乗車して妻を待ったが来ない。 多分切られたのだろうと出て見ると改札のところに居た。 仕方がないので十時十五分の列車で行くことにして妻の兄には先に行ってもらった。
次の列車も復員と海外引揚者で一杯。 仕方がないので妻と子供を窓から押し込んで来た。 妻は席に着いて居る人の膝の上に横倒しになって居たがその後どうしたか。
窓は一枚残らず板だったので閉められて中は見えなかった。 大変な話だ。
昭和二十一年三月七日 曇 明け
新円生活の対策として又、野菜の配給制が始まった。 昨日その第一回配給があった。
人参四本。 一人一日 十匁。 三日分九人で二百七十匁 その値 二円七十銭である。
此れでは足りない、 又買い出しが始まるかも知れない。 貯金を引き出して買い出しをすれば又新円インフレが起きるかも知れない。 闇値の味を知った悪農家達は新公定価では荷を出すまい。 政府がどんな手を打つか それが見ものだが期待は掛けられない。
政府案の憲法改正草案が発表になった。 専門家でない私達に批判はできないが随分変わったものだと云うだけである。
財産税に関する調査申告書が来た。 調査して持って行かねばなるまい。
新円生活の対策として又、野菜の配給制が始まった。 昨日その第一回配給があった。
人参四本。 一人一日 十匁。 三日分九人で二百七十匁 その値 二円七十銭である。
此れでは足りない、 又買い出しが始まるかも知れない。 貯金を引き出して買い出しをすれば又新円インフレが起きるかも知れない。 闇値の味を知った悪農家達は新公定価では荷を出すまい。 政府がどんな手を打つか それが見ものだが期待は掛けられない。
政府案の憲法改正草案が発表になった。 専門家でない私達に批判はできないが随分変わったものだと云うだけである。
財産税に関する調査申告書が来た。 調査して持って行かねばなるまい。