敗戦前後の「父の日記」を読む

昭和19年当時の世相、生活状況、父の考え方を読む。

闇市

2011-11-25 21:31:24 | 日記 戦後編
昭和二十一年六月十日  曇時々小雨 休み

 昨日程でもないが南風が吹いて荒れ模様であった。時々風につれてパラパラと雨が来た。 そしてパット太陽が出たかと思うとすぐ陰る なんとなく暑苦しい日であった。
 何も食べる物がないので馬鈴薯の探り掘りをした。 五〇〇匁かっきり掘った。そして腕豆とキャベツと一緒に煮て昼に食べた。 今日、粉の配給があるらしい。
 食べ物がないのだから茶だけでもと思って茶屋で買わせた。 二十五円だと云う。 大変美味しい茶でとても安かった。 闇市ではこれより悪いので五十匁二十円だ。  斯様に高く売る闇市の取り締まりをしない政府も政府だ。 今日の毎日新聞に闇市をなくせと云う社説が出て居たが遅い。 もっと早く政府を鞭撻せねばならない。 糸、布、ゴム靴等 少しも配給がないのに闇市では山と積んで売って居る。政府の無力を闇市に表明しているようなものだ。

 コッペパンを漬物屋で売って居るので五個三十五円で買って来て食べさせた。 コッペパンが代用物かと思ったら配給のと仝じ物であった。 斯様な物を闇で堂々売って居る目下の世相を考えさせらる。 配給はなくとも闇なら何でもある。