敗戦前後の「父の日記」を読む

昭和19年当時の世相、生活状況、父の考え方を読む。

本の値段

2012-03-21 23:07:49 | 日記 戦後編
昭和二十一年六月十六日 晴後雨 休み

 買出しに行こうと思ったが今日は日曜日で汽車や電車が混雑かと思い中止した。
胡瓜や蕃茄に散水したり南瓜の棚を作ったりした。 縄がないので縄ないをした。
午後蔬菜作りの参考書を読んだ。 胡瓜の摘心法が「蔬菜園十二ヶ月」に出ていて大変参考になった。 此の本は十八年に渋谷で 五円九十銭で買ったものだ。 高いと思ったが父に聞いても教えてくれないし 本なら何回聞いても怒らないので買ったのだった。 先日神田で久し振りに本屋を覗いて見た時此の本が沢山出ていた。 最近の物で製本も紙も悪く実に粗末な物で 定価は四十三円だった。 本の高いのに驚く。

 朝はすいとん、昼と夜はパン(小麦粉を練ってフライパンで焼いたもの)。 毎日小麦粉だけで過ごしている。 子供等はすいとんよりパンを好む。 代用そばも汁に入れたのではくさいがパンに入れて焼くとくさくなくたべられる。 青紫蘇を入れるととても良い香りだ。 昨年まで利用価値が少なかった物も結構役に立つ。 之も食糧欠乏の結果の収穫だ。

昭和二十一年六月十七日 雨後曇 二,三直出勤

 午後 長女と一緒に市ヶ谷の粉食研究所に製パン講習を受けに行った。
酵素を売るのかと思ったら会員制になっていて三十円を納入すると酵素もくれて講習もしてくれると云うのである。 人が十五人程集まって工場みたいな中で製パンの講義が始まった。 一時半頃から三時頃までかかった。