敗戦前後の「父の日記」を読む

昭和19年当時の世相、生活状況、父の考え方を読む。

土止め柵盗難

2011-01-24 23:00:24 | 日記 戦後編
昭和二十一年四月二十四日  曇、強風 後晴  明け

 朝起きて庭を一巡して見ると坂道の土止め柵を毀して持って行った者がある。
薪がないので取って云ったらしい。 日本人も悪くなったものだ。
昨日、里芋を植える代わりに蜀黍を蒔いて良かったと思った。 高い里芋なんか植えたら人の腹を肥やすばかりであったか知れない。 先日、苗を買いに行った農家(東武練馬)で甘藷の苗床から種芋を抜いて行かれたと云っていた。
 街も不潔になり池袋の地下道など小便くさくて通るのに実に不快だ。
松笠司令部で日本は四等国だと云ったが悲しいながら是認せねばなるまい。生産も急いで再開されねばならぬが道徳も急いで再建されねばならぬ。  
 日本の神官、僧侶は全く無力で斯う云うような事に関しては何の働きもしていない。今まで国家権力の陰に育ってきたためだ。新しく再出発し道徳再建のために野に叫ぶの気概がなければいけない。