林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

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『時間と学費をムダにしない大学選び』という大学情報本

2011年06月01日 | 受験
評判が悪くなかったので、『時間と学費をムダにしない大学選び』という本を中古で購入してみた。毎年新しい版が出ている高校生向けの本でもある。

時間と学費をムダにしない大学選び
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著者によれば、この本は東大志望者をから専門学校志望者まで幅広くカバーしており、高校生ならば誰でも参考になる本とのことである。表紙にもあるが、若者あこがれの職業(業界)の実情がどのようなモノであり、またその業界に入り込むためにはどのような大学に入ればよいのかを指南してあるのだ。17の業界とは、たとえば、マスコミ、公務員、教育、エンジニア、医師、看護、動物、ファッション、栄養、マンガなどである。さらには未定などというのもある。

結論を先取りすると、なんだか身も蓋もない提案がされている。あこがれの業界のほとんどでは、東大に行くのが最高の進学先のようなのだ。ごく例外的に、ファッション・栄養などはお茶大、スポーツが筑波大、教員は地方国立大学で良しとなっているだけだ。それらの大学も、普通の高校生が安易に進学できる大学ではない。もちろん、料理などについては料理の専門学校というコースも示されてはいる。しかし、憧れの仕事に就くためには、たいていの場合は、国公立大学やMARCH以上、できたら早慶、いややっぱり東大が望ましいということらしい。私としては、その結論を否定するつもりは全くない。「憧れの職業につきたいのであれば、東大に行け!」というのは、かなりの場合本当のことだと思うからだ。たとえば、女子アナになりたいのであれば、東大出の美女であるのが手っ取り早いだろうからだ。どういう意図で本書は書かれているのだろうか。





上の文章を読むと、世の中を舐めきっている高校生に厳しい現実を知らしめようという意図があるのかもしれない。しかし、勘違いしている高校生は、まずはこういった本を読まないだろう。また仮に読んだとしても、妄想はなくならないとは思うけれども。。。

他方、地道に進路選択しようという高校生に対しては、本書はシビアーすぎるかもしれない。たとえば、↓の頁。
これは公務員の項目だけれども、公務員=東大・国家公務員キャリア官僚というイメージから始まって序列がつけられている。東大法学部の学生にとって公務員というのはエリート官僚というイメージだろうけれども、MARCHや地方国立大学学生にとっての(地方)公務員というのは、もう端から全然別の世界のイメージなんじゃないだろうか。別に東大と比較しなくてもよいのではないかと思ってしまうのだが。

とはいえ全体的に言うと、MARCH・地方国立以上を狙える進学校の生徒にとっては、世の中の仕組みについて情報を提供している希有な読み物だと評価できるだろう。つまり、中堅以上の進学校(このあたりでいえば、県立大和高校や逗子開成以上の高校)の生徒にはオススメだ。しかし、「高校生ならば誰でも参考になる本」かといえば、僕はちょっと首を傾げる(かしげる)。専門学校も視野に入れているとは言うが、普通の高校生にはもっと別の本が書かれてしかるべきではないだろうか。

あと、本書について一言苦情を書いておく。36頁には次のような文章があるのだ。「マスコミを目指すなら、早稲田大学は文学部よりも文化構想学部がよいかも」「あなどれないのが教育学部」だと書いてあるのだ。こいつら、馬鹿じゃないのだろうか、と思ってしまうのだ。早稲田に合格するのは難しいのである。普通の判断力をそなえている早稲田志望生ならば、文化構想学部、文学部、教育学部と全学部受験するはずだ。さらには、人間科学や社会科学、あるいはスポーツ科学部だって受けるかも知れない。早稲田に複数の学部に合格するのであれば、その段階で文化構想学部に入学すれば良いのだ。しかし、彼らの本を鵜呑みにする頭の悪いマスコミ志望の高校生は、文化構想学部と教育学部しか受けないかも知れないではないか。悪い影響があるのではないのか、ちょっと気になるところだ。(実を言うと、今年の当塾の早稲田合格者は、この二つの学部しか受けなかったのである。私はお年玉をはたいてでも、三学部を全部受けるように何度何度も説得したのだが、文化構想学部の他にはようやく教育学部を受験しただけだったのである。たまたま教育学部に合格したら過良かったようなものの。。。。。もしかしたら、本書を鵜呑みにしてしまったのかも知れない)。


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