林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

我が国の英語教育論に欠けているもの(その2):私立中学入試の英語化の可能性

2011年02月16日 | 受験
さて、松本茂に限らず、多くの大学の英語教育専門家の英語教育改革に関する議論には、ちょっと物足りない。私見では二つの問題点がある。一つには受験体制についての言及が少なすぎること、もう一つは私学や民間の英語教育について議論をしようしない事である。

松本は、小学校の英語教育に賛同する立場であり、ここでも賛成の意見が述べられている。だが、松本教授は、そして対抗馬である慶応大学の大津教授も、将来の小学校英語教科化のインパクトについて、本当のことを全く書いていないように思われる。

ずばり、書いてしまおう。小学校における英語の教科化の最大かつ潜在的焦点は、私立中学受験に英語が採用されるか否かなのである。

今までは小学校で英語を勉強するということは、中学受験をしないということを意味していた。こういう状況が続いているのであれば、小学校教育に英語が導入されたところで、実は英語教育状況にそれ程のインパクトは生じない。せいぜい小学校の先生が苦しむくらいのものである。

だが、ひとたび早慶や御三家などの一流中学が英語を受験科目として採用すれば、我が国の小学生英語熱は一気に加熱する。首都圏と京阪神のエリート候補小学生が、2~3年の間、毎日のように塾・予備校と家庭で必死に英語を勉強するようになるのだ。

つまり、小学校における英語の教科活動の導入は、私立中学入試の英語化の可能性を秘めている。もちろんそれは、日本の一流私立中高一貫校の英語力が劇的にアップする事を意味する。小学校英語賛成派がこのメリットについて論じないのは、不思議としか言いようがない。

もちろん、上記のような私立中学入試の英語化は、うんざりする程の英語力格差の時代が到来する事をも意味する。首都圏あるいは京阪神に住居を構え、私立一流中高一貫校に合格しなければ、一流大学には合格できない時代が来るということに他ならないからだ。もちろん今でも東大・京大や慶応大学に合格できる者の多くは、私立中高一貫校の出身者である。しかし、英語格差がこんなふうに広がれば、地方公立高校出身者が一流大学に合格できる余地は限りなくゼロになってしまうだろう。残念ながら、このデメリットについて、小学校英語反対派は論じていないのではないだろうか。