林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

英語長文学習において英文和訳は必要か

2010年01月14日 | 英語学習
英語長文を学習するようになるとき、読んだ英文を一つひとつ和訳していくべきでしょうか、それとも敢えて和文を書くまでもないでしょうか。伝統的な英語学習法は英文和訳を重視してきましたが、最近では必ずしも重要ではないという考え方も力を得ているから、迷いますよね。


英文和訳が不要だという考え方は、(1)私大入試やセンター入試には和訳の問題は出てこない、(2)和訳するのは時間がかかるし面倒だ、(3)英語は英語のままで理解できるようにしなくてはイケナイ、というふうに分類できるでしょう。いずれせも正論です。たしかに英文和訳ばかりしていてはいけないのです。しかし、日本の現状では英文和訳を完全に放棄することは、やっぱり無理だと言わざるを得ないのです。

さて、英文和訳が必要と思われている最大の理由は何でしょうか。おそらく大部分の英語教師は同じ見解だと思うのですが、英語構文を正確に読みとっているのか、先生(添削者)または学習者本人がチェックできるようにするためだといって良いでしょう。

たしかに至極簡単な英文ならば、英文を頭から語句を訳していく方式でも構いません。たとえば、"Its main purpose was to stand united against oppression" ならば、「その主な目的は、であった」「抑圧に対して連帯して立ち上がること」とやっても、良いかも知れないのです。しかしちょっと難しい構文の文章になると、こういうやり方ではちょっと不安になってきます。だから、和訳してみるのが、たいていの場合有意義なのです。

しかし、実を言えば、英語構文のチェックするだけならば、わざわざ訳文を書くまでもないかもしれないのです。というのは、私どもの塾のような個別指導教室に通うならば、口頭でチェックできてしまうからです。だいぶ時間が節約できてしまいます。(もっとも口頭の和訳で間違った箇所については、訳文を書いて見る必要があるでしょう)。

ただし、ここで急いで但し書きをしておかなくてはなりません。和訳作成が全然要らないよと言えてしまうのは、簡単な英文を読めさえすれば良いという生徒だけだということです。英語で言えばセンター入試レベルが上限、大学で言えば日本大学、神奈川大学、大妻女子大学を目標とする生徒までです。青山学院が良いなあとか、学習院にあこがれる人、あるいは早稲田や横浜国大を目指そうとかいう生徒ならば、和訳作成はほぼ絶対に必要です!

訳文作成の練習をするのは、もちろん入試の和訳対策という要素もあります。GMARCHレベル以上の大学になると、和訳問題が絶対にでてくるからです。しかし、そういう些末なことのためではないのです。私たちは、1対1の個別指導で生徒に口頭和訳をさせ、できるだけ和訳の手間と時間を省こうとしています。だからできることならば、生徒に和訳をさせたくない! ところが、それでもなお、和訳の重要性を痛感していているのです。 どうしてでしょうか。

一言でいえば、GMARCHレベルになると、英語の文章に盛られている内容が相当難しくなるからです。つまり、和訳を読んでもすぐには理解できないような議論が展開されているからです。したがって、その文章を理解するためには、学習者の日本語の力を活用することがどうしても必要となってくるからです。たとえば、次の文章を読んでみましょう。

「アメリカ人が『自由』という言葉で意味しているのは、すべての個人が、政府や貴族の支配階級や教会や組織化された他のいかなる権威による外的干渉を受けずに、自分自身の運命を支配したいという要求と能力である」(青山学院大学経営学部2007年度の英語問題の訳文より)

GMARCHを目指す高校生でこの日本語が簡単だといえる人は少ないでしょう。ましてや英語で書かれてあるとすれば、ますます苦労するはずです。しかし、このレベルの文章は、英語だろうと日本語だろうと、しっかりと理解できるにしなくてはならないわけですね。それが大学受験の英語なのです。したがって、日本語力も英語力もフルに活用して、こういう文章が前提としている世界を獲得するように努めなくてはなりません。つまり、口頭で和訳をするのではなく、しっかりと和文を書きながら、じっくり考えていくべきなのです。

難解な和訳を作成すると言うことは、日本語力と英語力の世界を豊かにするために、どうしてもくぐり抜けなくてはならない重要で貴重な作業となることでしょう。(なおこのレベルの現代日本語なら簡単だという高校生はGMARCHではなく、ぜひとも東大・京大を受験して欲しいと思います)。

ここで推薦する問題集は、たとえば、宇井洋『英語長文―高校中級用 (発展30日完成 (12))』(日栄社)です。もちろん清水『英語長文―高校上級用』もお勧めです。

それから、日本語力も大いに鍛えてもらいたいと思います。