2019年のブログです
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荻原浩さんの『海の見える理髪店』(2019・集英社文庫)を読みました。
この本も旭川の本屋さんで見つけました。買ってから、直木賞受賞作と知りました(荻原さん、ごめんなさい)。
荻原さんの小説は結構好きで、『オロロ畑でつかまえて』とか『なかよし小鳩組』『さよならバースディ』などなど、いくつか読んでいますが、なかなかいいです。
いい本で、読ませる本が多いのですが、ユーモアも効いていて、プッ!と笑ってしまうことも多く、電車の中で読むのはやや危険です。
さて、本書、家族を見つめる短編小説6作からなります。
父子関係、母子関係、親子関係、夫婦関係、などなど、さまざまな家族関係の綾が描かれます。
じーじは、亡くなった娘の代わりに父母が成人式に出席をする「成人式」と虐待を扱った「空は今日もスカイ」が気に入りました。
「成人式」は笑いの中に夫婦の成熟が描かれて、切ないですが、明るくなれる小説。
一方、「空は今日もスカイ」は、虐待や差別の中でなんとか生き延びる子どもたちと、それを見守る少数のおとなと理解のない多数のおとなが描かれます。
辛い場面もありますが、元気がもらえる小説です。
やはり、ユーモアは力になりますし、哀しいことや苦しいことが多い人生の中でも、人はなんとか生き延びることができそうです。
良質のユーモアはこころの栄養ですし、こころのビタミンなのでしょう。
できれば、このブログでもそういう文章を書けたらいいな、と思います。 (2019.8 記)