ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

河合俊雄『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』2011・新潮社-物語のちからを考える

2024年09月04日 | ユング心理学に学ぶ

 2011年のブログです

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 河合俊雄さんの『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』(2011・新潮社)を読みました。

 面白かったです。

 難しかったですけど…(河合さんの伝えたいことの2割くらいは理解できたかなあ?)。

 印象に残ったのは「物語の力」ということ。

 俊雄さんのお父さんの河合隼雄さんがどこかで、人はみな自分の人生の物語を書いている、というような趣旨のことを言われていたと思うのですが、本当にそう思います。

 我々は小説までは書けないけれど、自分の人生は書いているのだと思います。

 しかし、たいていは思うようには書けないし、思ってもみない悲しい物語や厭な物語になってしまうのかもしれません。

 でも、物語は書き換えることが可能なようです。

 村上春樹さんの小説を読むとそう感じますし、今回、河合俊雄さんのこの本を読んでますますそう思いました。

 良い小説、物語とはそういうものなのでしょう。

 そして、心理療法もおそらく同じような作業ではないかと思います。

 悲しい物語や厭な物語で苦しんでいるクライエントさんと一緒に、その人に何か他の物語がないのか、ゆっくりと検討をする作業ではないかと思います。

 カウンセラーは直接、クライエントさんの他の物語を見つけることはできませんが、クライエントさんが他の物語を見つけるプロセスのお手伝いはできそうに思います。

 少なくとも今後、そういう訓練を続けていきたいなと思いました。      (2011 記)

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 2020年5月の追記です

 物語の書き換え、といっても、なかなか難しいことだと思うのですが、精神分析では、反復の問題に注目します。

 人生の反復に気づくと、少しは何かが違ってくるのかもしれません。     (2020.5 記)

 

 

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川上弘美『これでよろしくて?』2012・中公文庫-男子には少し「こわい」小説です

2024年09月04日 | 小説を読む

 2019年のブログです

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 川上弘美さんの『これでよろしくて?』(2012・中公文庫)を読みました。

 この本も旭川の本屋さんで見つけました。

 こうしてみると、ずいぶんいい本を見落としているな、と反省します。

 しかし、これも人生。

 いくら計画的に生きようと思っても、結局は、一期一会で、目の前のことを一所懸命にやるしかないのでしょうね。

 さて、この小説、男子(じーじはもうそろそろ卒業ですが…)には少し「こわい」小説です。

 何が「こわい」って?

 それは読んでからのお楽しみですが、「こわい」みなもとは、「これでよろしくて?」同好会という女子会。

 普通の主婦やOLからなる女子会ですが、これがすごい!

 本音トーク炸裂です(もっとも、現実の女子会はもっとすごいのかもしれませんが…)。

 話されるテーマは、例えば、パンツ問題、機嫌がよすぎる男、ばばあ問題、などなど、なかなか深いです。

 これらの様子が、真剣、かつ、少しユーモラスに描かれるので、ついつい読んでしまいます。

 「こわい」もの見たさみたいな感じでしょうか?

 もっとも、川上さんの小説のすごいところは、女子会を描きながら、いつの間にか、男女を超えて、人間を見るところ。

 そんなに大げさなものでもないのですが、目線は温かくて、読後感はなかなか充実しています。

 いい小説に出会えたな、と思いました。      (2019.8 記)

 

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